一般

2024年12月 7日 (土)

健康診断業務について契約締結上の過失が認められた事例

東京地裁R5.5.9

<事案>
X:健康診査事業等を行う公益財団法人
Y:健康保険組合

Xは、
❶主位的には:覚書の取り交わしがなくても、Xが行う健康診療業務の概要が合意されたことにより、令和2年度の健康診断業務を受託する旨の契約が成立⇒本件個別契約又は本件基本契約による報酬請求権に基づき
❷予備的には、Xの契約締結上の過失を理由として、債務不履行又は不法行為に基づき、
報酬金又は報酬金相当額1億7504万4319円及び遅延損害金の支払を求めた。

<判断>
❶について
X:Xは、実際には令和2年度の健康診断業務を行うことはなかったが、
それは、Yが一方的に他の機関に健康診断業務を委託した結果⇒民法536条2項により、本件個別契約又は本件基本契約による報酬請求権を失わないと主張。
①本件においては、基本的に毎年覚書を取り交わす方法によって個別契約が締結されてきた
②本件個別契約は報酬金が3億5000万円を超える高額な契約であって、担当者間のやりとりのみによって成立したとは考え難い

本件個別契約の成立は認められない。

X:仮に本件個別契約が成立していなかったとしても、本件基本契約に基づいて相当な報酬を請求することができる。
vs.
本件基本契約に基づいて個別契約の締結が予定されていた本件においては、本件個別契約の成立gが認められない以上、本件基本契約にもtづいて直接報酬請求権が発生すると見ることはできない。

❷について
◎ 契約締結準備段階に入った当事者は、相手方に損害を被らせないようにする義務を負い、これに違反して、相手方に損害を与えた場合、その賠償義務を負う。
①契約無効型
交渉破棄型
③不当表示型
④保護義務違反型
の4類型。

法的性質としては不法行為とするものが多い(判例)。
判断:交渉破棄型に当たる本件について、契約成立に至らなかった以上、債務不履行責任と構成することはできない。

契約締結上の過失のうち、交渉破棄型に当たるものであるが、過失が認められるためには、
ア:契約締結(交渉)の成熟度が高いこと、
イ:信義則違反と評価される帰責性があること
が要件とされている。

◎本判決:
①Xが20年もの長きにわたってYから健康診断業務を受託してきたこと
②令和2年度においても、Xは、Yの協力を得ながら、健康診断業務の準備を進めていたこと
⇒契約締結(交渉)の成熟度が高い。
Yが令和2年度の蹴能診断業務を委託しなかったことには、新型コロナウイルスの感染拡大という当時の状況を最大限に勘案しても、信義則違反と評価される帰責性が認められる。
⇒Yの不法行為責任を認めた。

◎ 契約締結上の過失が認められる場合の損害賠償の範囲:
その契約が有効である又は契約締結がされると信じて行動したことにより支出した又は被った損害(信頼利益)に限られ、相手方が契約を履行すれば得られたであろう利益(履行利益)は含まれない。

判例時報2605

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2019年10月16日 (水)

桜の会の討論会(10月13日)のレジュメ

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2013年4月30日 (火)

司法改革の勘違い

企業にとって間接部門は不可欠である。
しかし、間接部門は、利益を生む部門ではない。

 

間接部門が肥大化した企業は、日本航空のように倒産する。
スリムな間接部門で効率的に管理していくことが好ましい。

 

これは「企業」だけでなく「社会」にも妥当する。

 

弁護士があふれる米国に比較して、日本の弁護士は少なかった。
それで不都合があっただろうか?

 

米国に比較して日本で訴訟が少ないのは、「泣き寝入り」しているというより、訴訟より合理的な「紛争予防」「問題解決方法」が機能していたからである。
企業間でも、がちがちの契約で縛る関係ではなく、長期的関係を前提とする「柔軟な規律」が機能していた。
「今回は損をさせても次回で埋め合わせをする」という、長期的な関係を前提とした解決方法が機能していた。
個人間でも「お互い様」の文化があった。
弁護士が少なくても、特に不都合はなかったのである。

 

スリムな間接部門で機能する企業が優位性をもつように、スリムな間接部門でワークしていた社会は日本の「優位性」であった。
その「優位性」を「未熟さ」と勘違いしたのが、そもそも誤りだった。

 

少子化の中、日本は、「司法」という付加価値を生み出さない「社会の間接部門」を肥大化させるのではなく、それをスリムにした上で、優秀な若者を付加価値を生み出す分野に向けるべきなのである。

 

そもそも「需要」は「供給」で決まらない。
需要が供給で決まるなら、失業など発生しないことになる。

 

現実に需要があるところに適正な人数を供給するというのがまともな考えである。
それが、増やせばなんとかなるという考えで、需要がないところに供給を増大させた。
それが司法改革による法曹増員だった。

 

まともな訴訟が増えない中(弁護士の宣伝で交通事故や離婚事件は増えているかもしれないが、それがいいことだとは限らない)、あふれた弁護士の活躍の場を「企業」に求める世間知らずの司法改革関係者の声は大きいが、企業の間接部門の肥大化がバカげたことだということは、肝心の企業の方が理解している。

 

 

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2013年4月25日 (木)

自分も撃たれた米国の議員による意見(英文)。

A Senate in the Gun Lobby’s Grip

 

http://www.nytimes.com/2013/04/18/opinion/a-senate-in-the-gun-lobbys-grip.html?_r=1&

 

自分も撃たれた議員による意見(英文)。

 

米国における、NRA(ナショナルライフル協会)による多額の寄付やロビー活動の下、口先では犠牲者への同情を示しながら、銃規制に賛成できない議員達。
民主主義では力のある者が守られる。

 

 

http://www.simpral.com/hanreijihou2013zenhan.html

 

 

 

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2012年11月23日 (金)

弁護士の役割と価値

他の弁護士ができないことをする。
選ばれる価値はそこにある。

 

どの弁護士がついても結果が変わらない案件は、誰に頼むかは大した問題ではない。
(依頼を受けても仕事をしない弁護士もいるようだから、そうともいえないかもしれない。)
問題は従来のやり方では解決できない案件。

 

ビジネスでも、全く異なる業界からの参入者がブレークスルーを起こすように、ブレークスルーを起こすには「新たな視点」が必要になる。
それは「狭い範囲」に特化した弁護士からは生まれない。

 

「その分野」の考え方を知った上で、それ以外の(場合によっては法律以外の)分野からの(新たな)発想や視点があり、なんとかして突破しようという執念をもつことで、ブレークスルーの可能性ができる。

 

と思いながら、日頃扱わない分野の判例もフォローし、法律以外の勉強も行っている。

 

やりがいのある仕事は、依頼者に「正義」がある仕事
それがあれば、なんとかするのは弁護士の役目。

 

言うは易く行うは難しなんだけどね。

 

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2012年11月21日 (水)

子供がいじめにあったら

子供に聞いた具体的な事実関係を「手紙」に書いて、学校に対応を求めるのがいい。
(コピーもとって手元においておく。)

 

いつどういう申し入れがされたのかが「明確」になることで、学校も無視できない。

 

怪我をした場合には、病院に行くとか、写真にとるなどして、証拠を残しておく。

 

担任や学校を「敵」にするのはよくない。
先生は「敵」ではなく、協力してもらえるように動くのがいい。

 

その観点から手紙の内容も、宛先(担任か校長も入れるか)も考える。

 

 

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2012年11月19日 (月)

ポーターが指摘する産業の収益性の要因で弁護士業界の収益性を考えてみる

会社の収益性を左右する要因の1つは、どの産業にあるかということ。
収益性の高い産業にあれば、儲かる可能性も高くなる。

 

ポーターは、産業の収益性を左右する要因として、

 

① 新規参入の脅威
② 売り手の交渉力
③ 買い手の交渉力
④ 代替製品/サービスの脅威
⑤ 既存の競争相手

 

の5つの要因を指摘した。

 

弁護士業界でいえば、司法試験合格者を以前の4倍にすることにより、新規参入が増え(①)、過当競争に陥り(⑤)、サービスの受け手の交渉力(③)が高まったという状況。
ついでにいえば、弁護士になるのに金と時間をかけているから、一度参入すれば撤退しない(撤退障壁が高い)。

 

ポーターが指摘した産業の収益性を決める要因の視点から見てみると、弁護士業界という産業の収益性の現状がよくわかる。

 

http://www.simpral.com/rontensenryaku.html

 

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2012年10月 8日 (月)

弁護士の能力

弁護士の能力は総合力。少なくとも次の能力が必要だと考えている。

 

(1)法律や判例の知識
(2)リーガルマインド
(3)戦略や交渉力
(4)何とかしようとする意欲

 

(1)法律や判例の知識
これは①依頼者が置かれた状況がどのような「法律効果(権利や義務)」をもたらすかを判断し、②訴訟において「どのような事実が重要か」を把握するために必要である。

 

裁判で、自分に正義があるということをどれだけ主張しても、それが法的に意味あるものでなければ、望む判断がなされることはない。
裁判所は「(主観的な)正義」ではなく「法」に基づき判断する場である。

 

(2)リーガルマインド
「契約の解釈」であれ「解雇の正当性」であれ、最終的に判断するのは裁判所である。
そして「リーガルマインド」とは「裁判所の思考方法」や「判断基準」についての「法的な感覚」である。

 

裁判所は「常識」ではなく特有の「法的な思考」によって判断する。
また、どのような状況の下でどのような認定を行うのかという「基準」についても、「実際の判断」を見なければ、その感覚は身につかない。
そのような「リーガルマインド」を身につけることで、事案についての「正確性の高い」見通しやそれを踏まえた戦略を立てることが可能になる。
そして「リーガルマインド」を身につける唯一の方法は、「裁判所の思考や判断」を学ぶこと、つまり判例を勉強するという地道な努力しかないと考えている。

 

(3)戦略や交渉力
「戦略」や「交渉力」は「法律」ではない。だから法律学者には必要ない。
しかし「依頼者の正義を実現する」弁護士には重要なスキルである。

 

世の中には「事実」を認める人ばかりではないし「法律」に従う人ばかりでもない。
「裁判」は当事者に「負担」をかける。
また(判決を書きたくない)裁判官が和解に応じるよう当事者を説得?する場合もある。
そのような具体的な状況の中で、相手(場合によっては裁判官)の状況をふまえ、依頼者の主張を通し、また「依頼者に有利な解決」を得るための技術が必要となる。
それが「交渉理論」や「ゲーム理論」であり「戦略的な考え方」である。

 

(4)何とかしようとする意欲
「意欲」がなければ、「能力」があっても、いい仕事はできない。これは全ての仕事に共通することである。
そして「意欲」こそが、プラスアルファの解決につながるものである。
しかし上記の能力((1)~(3))がなければ、「意欲」だけでは依頼者の利益を守ることができいないことも事実である。

 


優秀な弁護士になるためには、「論理的思考力」や一義的に明確な文章を書く「文章力」など他にも様々な能力があると思うが、意識的に学ばずして身につくことはほとんどない。

 

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2012年2月 3日 (金)

真の再生とは

自己破産をしても解決にならない。本当の問題(=自分)を解決しなければ、再び多重債務に陥るだけ。本当の問題を解決するには、自分(の考え)を変えるしかない。

 

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2011年8月25日 (木)

光星学院の問題について・・・マスコミの責任

選抜で準優勝した光星学院の一部の野球部員の飲酒等の問題が、ネットで叩かれている。
彼らはまだ高校生。
良くないことではあるが、飲酒をしたことがある高校生は結構いるだろうし、見つかっても相応の処分で終わる。

 

彼らが叩かれているのは、そのしたことのためではない。
マスコミに持ち上げられたがために叩かれる。

 

マスコミは、高校野球を連日放映し、高校生をスター選手のように持ち上げる。
震災をからめて美談をつくり、これでもかと放映する。
そんな扱いをされたら、当の高校生に「勘違いするな」という方が無理だろう。

 

甲子園に出場する高校球児をスターのように持ち上げ、報道価値を徹底的に高める。
不祥事がでると、野球部員がブログに掲載していたという写真まで掲載して、今度は叩く。
持ち上げようが、叩こうが、新聞や雑誌が売れ、テレビの視聴率もとれる。

 

そして、高校野球が終り、彼らに報道価値がなくなれば、潮が引くようにマスコミはいなくなる。
取り残されるのは、勘違いした高校生。

 

最近も、高校野球の準優勝投手の窃盗事件が報道されていたが、加害者はマスコミ、被害者は高校生。
「応援するふりして高校生を利用するのはいいかげんにしろ!」と言ってやりたい。

 

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