学校

2017年7月25日 (火)

公立中学の部活動中の熱中症での脳梗塞⇒国賠請求(肯定)

大阪高裁H28.12.22      
 
<事案>
Y(東大阪市)の設置する本件中学校のバドミントン部に所属していたXが、指導教諭等による熱中症予防対策が不十分であったことにより、部活動中に熱中症に罹患して脳梗塞を発症⇒国賠法1条1項に基づき5639万円余の損害賠償を求めた。 
 
<原審>
Yの損害賠償責任を認め、Yに対して411万円余の支払を求める限度で請求を認容。 
 
<判断>
●中学校長等の過失
スポーツ活動中の熱中症を予防するための措置を講ずるには環境温度を認識することが前提となり、その把握が極めて重要であることは、平成22年当時において学校関係者に既に周知されていたと認められる。
Yの中学校長に温度計を設置すべき義務があった
 
●本件過失と脳梗塞との間の因果関係 
Xは少なくとも当日の検査でいずれもプロテインS抗原量等の数値が基準を下回っている⇒原審がXのプロテイン欠乏症が脳梗塞の発症及びその重篤化に相当大きく寄与したと推認され、寄与度70%と認定したことは相当
 
<解説>
国公立学校の教育活動に伴う事故について、国賠法1条の公権力を広義に解し、学校教育活動もそれに含まれる(最高裁)。
クラブ活動であっても、それが学校の教育活動の一環として行われるものである以上、その実施について、学校側に生徒を指導監督し事故の発生を未然に防止すべき一時的な注意義務のあることを否定することはできない(最高裁昭和62.2.6)。
危険から生徒を保護するために、常に安全に十分な配慮をし、事故の発生を未然に防止べき一般的な注意義務がある(最高裁H9.9.4)。

学説:
注意義務の具体的基準について
①クラブ活動の性質・危険性の程度
②生徒の学年・学齢
③生徒の技能・体力
④教育指導水準
などの要素を考慮すべき。

熱中症の死亡事故について
千葉地裁H3.3.6は、顧問教諭の過失を肯定しているが、そこでは、水分・塩分の補給が問題。
本件では、環境整備義務の一環として温度計設置義務違反が認められている。

判例時報2331

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2016年1月25日 (月)

生前や死後の縁故の程度に応じて、被相続人の相続財産総額1億4000万円の預金のうち、被相続人の義理の姪に500万円、義理の従妹に2500万円をそれぞれ分与した事例

東京家裁H24.4.20    

生前や死後の縁故の程度に応じて、被相続人の相続財産総額1億4000万円の預金のうち、被相続人の義理の姪に500万円、義理の従妹に2500万円をそれぞれ分与した事例
 
<事案>
A:被相続人の姉Dの長男Eの妻であり、被相続人の義理の姪(3親等)
B:被相続人の妻Fの母Gの妹Hの娘であり、被相続人の妻の実の従妹で被相続人の従妹(4親等)。
A・Bは、いずれも被相続人と生計を共にしておらず、また被相続人の療養看護に努めたものでもない。
被相続人は平成21年自宅で死亡し、時を経て平成22年死亡の事実が判明。
被相続人の財産は、1億4259万7381円の預金債権。
 
<規定>
民法 第958条の3(特別縁故者に対する相続財産の分与)
前条の場合において、相当と認めるときは、家庭裁判所は、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者の請求によって、これらの者に、清算後残存すべき相続財産の全部又は一部を与えることができる。
 
<判断>
Aは民法958条の3第1項の特別縁故者に該当し、分与額は500万円が相当。

①被相続人とE間では相当程度密接な交流がされ、被相続人は、E生存中は同人に対して財産の管理処分を任せる意向を有するなどしてEを頼りにしており、申立人Aとも主としてEを通じて被相続人と密接な交流を継続。
②被相続人がEに財産の管理処分を託する遺言書を書いた旨伝えており、被相続人はAに対しても一定程度の経済的利益を享受させる意向を有していた。

Bは特別縁故者に該当し、分与額は2500万円が相当。

長期にわたり被相続人夫婦と交流を続け、特に平成14年からは被相続人自宅の鍵を預かり、比較的高い頻度で被相続人自宅を訪問して家事を行い、被相続人の妻の世話をしたこと、被相続人の死後その葬儀には参列しなかったものの、被相続人の遺骨をY寺に納骨したことなどからすれば、被相続人はBに相当程度の財産を遺す意向を示していたことが認められる。
 
<解説>
比較的事例が少ない「その他被相続人と特別の縁故があった者」の事例を新たに加えたもの。
残り1億1千万円余は国庫に帰属。

判例時報2275

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2014年12月 4日 (木)

予備校生が契約を解除した場合の納付済みの授業料不返還特約と消費者契約法(違反)

大分地裁H26.4.14   

予備校生と学校法人間の、同法人が設置管理する大学受験予備校の在学契約における、予備校生が契約を解除した場合に納付済みの授業料全額を返還しない旨の特約は、学校法人に生ずべき消費者契約法9条1号所定の平均的な損害を超えるものであり、同号により無効となるとして、適格消費者団体の学校法人に対する右特約の意思表示等の差止請求が認容された事例 
 
<事案>
消費者契約法13条に基づき内閣総理大臣の認定を受けた適格消費者団体であるXが、Y学校法人に対し、予備校生とY間の、Yが設置運営する大学受験予備校の在学契約における、予備校生が契約を解除した場合に授業料全額を返還しない旨の特約は、同法9条1号により無効であると主張して、同法12条3項に基づき、当該不返還条項を内容とする意思表示等の差止めを求めた事案。 
 
<規定>
消費者契約法 第13条(適格消費者団体の認定)
差止請求関係業務(不特定かつ多数の消費者の利益のために差止請求権を行使する業務並びに当該業務の遂行に必要な消費者の被害に関する情報の収集並びに消費者の被害の防止及び救済に資する差止請求権の行使の結果に関する情報の提供に係る業務をいう。以下同じ。)を行おうとする者は、内閣総理大臣の認定を受けなければならない。

消費者契約法 第9条(消費者が支払う損害賠償の額を予定する条項等の無効)
次の各号に掲げる消費者契約の条項は、当該各号に定める部分について、無効とする。
一 当該消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項であって、これらを合算した額が、当該条項において設定された解除の事由、時期等の区分に応じ、当該消費者契約と同種の消費者契約の解除に伴い当該事業者に生ずべき平均的な損害の額を超えるもの 当該超える部分

消費者契約法 第12条(差止請求権)

3 適格消費者団体は、事業者又はその代理人が、消費者契約を締結するに際し、不特定かつ多数の消費者との間で第八条から第十条までに規定する消費者契約の条項(第八条第一項第五号に掲げる消費者契約の条項にあっては、同条第二項各号に掲げる場合に該当するものを除く。次項において同じ。)を含む消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示を現に行い又は行うおそれがあるときは、その事業者又はその代理人に対し、当該行為の停止若しくは予防又は当該行為に供した物の廃棄若しくは除去その他の当該行為の停止若しくは予防に必要な措置をとることを請求することができる。ただし、民法及び商法以外の他の法律の規定によれば当該消費者契約の条項が無効とされないときは、この限りでない。
 
<争点>
A校の在学契約には、YとA校の在学契約を締結した予備校生が、在学生の地位を取得する日である4月1日以降の特定の日より後同契約を解除した場合には授業料全額を返還しない旨の特約(本件不返還特約)が定められているところ、本件不返還特約のうち、Yが在学契約における役務を履行していない部分、すなわち、解除日以降の授業に対応する授業料についても返還しないとする部分が、平均的損害(消費者契約法9条1号)を超えるものとして無効となるか?
 
<判断>
①予備校に入学するための試験は実施されていない
②・・・定員数を超過しない限り、入学を希望する者は、年度途中からであっても入学することが可能
③A校各校舎では、ごくわずかな例外を除きほぼすべての年度で定員には達しておらず、一部の校舎においては、毎年のように定員を大幅に上回る入学者を受け入れている。
⇒各校舎の定員数が、大学受験予備校が希望者を受け入れる限界としての機能を十分に果たしていない。
A校においては、1人の希望者との間で在学契約を締結したために別の1人の希望者との在学契約締結の機会が失われたといった関係はおよそ認められない。 

少なくとも、本件不返還条項が定めるような、当該消費者が納付した解除後の期間に対応する授業料全額について、一般的、客観的に損害を被ることにはならない
⇒本件不返還条項は、平均的な損害を超えるものとして法9条1号に該当し、平均的な損害を超える部分が無効となり、Xの消費者契約法12条3項に基づく本件不返還条項を含む意思表示等の差止等の請求には理由がある
 
<解説>
最高裁H18.11.27:
大学の入学試験の合格者と当該大学との間の在学契約における納付済みの授業料等を返還しない旨の特約は、同契約の解除の意思表示が3月31日よりも後にされた場合には、原則として、上記授業料等が初年度に納付すべき範囲内のものにとどまる限り、上記平均的損害を超える部分は存しないものとしてすべて有効となると判示。

判例時報2234

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2014年11月17日 (月)

ヘイトスピーチに対する損害賠償・差止請求(肯定)

大阪高裁H26.7.8   

学校法人朝鮮学園を中傷する街頭宣伝が学校の授業を妨害するなどとし、同学園による損害賠償及び差止請求が認められた事例 
 
<事案>
学校法人京都朝鮮学園が、Y「在日特権を許さない市民の会」及びそのメンバーらが、Xの設置・運営する朝鮮第一初級学校周辺で、同校を中傷するヘイトスピーチでの示威活動で授業を妨害し、その映像をインターネットを通じて公開して名誉を棄損したとし、Yらに対し、損害賠償を請求するとともに、本件学校を統合した新設学校に対する示威運動等の差止めを求めた事案。 
 
<原審>
Yらの示威活動は本件学校の教育活動を妨害するものとして違法であり、その映像をインターネット上に公開したことによりX学校法人の名誉を棄損したと判断し、Xの損害賠償及び差止請求を認容。
 
<判断>
①示威活動等は、人種差別撤廃条約1条1項にいう「人種差別」に該当する。
②右示威活動等は専ら公益を図るものであったとは到底認められないし、表現の自由によって保護されるべき範囲を超えていることも明らか。
③Yらの行為は、全体として、在日朝鮮人及びその子弟を教育対象とするXに対する社会的な偏見や差別意識を助長し増幅させる悪質な行為であることは明らかである。
④本件学校に在籍していた児童・園児は、何らの落度がないにもかかわらず、その民族的出自の故だけで、侮辱的、卑俗的な攻撃にさらせれたものであって、人種差別という不条理によって被った精神的被害の程度は多大であった。
⑤その他原判決の「理由」に記載のとおり。

原判決は相当であるとして、Yらの控訴を棄却。
 
<解説>
「ヘイトスピーチ」とは、特定の人種や民族への憎悪や差別をあおる言動

人種差別の撤廃を求める人種差別撤廃条約は176か国で批准され、英仏独などの欧州主要国は刑事罰を科しているが、日本は表現の自由などを理由に法規制には消極的。

判例時報2232

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2014年11月13日 (木)

プール学習での事故と教師の安全配慮義務違反による国賠請求(肯定)

京都地裁H26.3.11   

市立小学校1年生の女子児童が、夏休み中、学校でのプール学習中に溺死した事故につき、遺族が、右事故は学校の教師らの安全配慮義務違反によるとして市及び県に対して求めた国賠請求が認容された事例 

<事案>
Aの両親であるX1とX2は、プール学習を指導する教員らんは、水泳中の児童を常時注意深く見守る注意義務を怠った過失があるなどと主張し、同小学校を設置管理するY1(京都市)と同教員らの給与等を負担するY2(京都府)に対し、国賠法1条1項、3条1項に基づき損害賠償を請求。 
 
<判断>
①プール学習を指導していた教員らは、プールに巨大なビート板を16枚も浮かべ、下部に潜り込む児童を自ら監視が困難な状況を作り出した
②同教員らは、プールに入って特定の児童と遊んだり、プールサイドを掃除したり、プール内の動静を監視していなかった
⇒過失を認定し、Yらの損害賠償責任を肯定し、Xらの本訴請求を認容。 
 
<解説>
学校の課外のクラブ活動であっても、それが学校の教育活動の一環として行われるものである以上、その実施について、顧問の教諭に生徒を指導監督し、事故の発生を防止すべき一般的な注意義務があることは当然。(最高裁昭和58.2.18)

判例時報2231

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2014年10月 2日 (木)

市立中学の校長、教頭、県教育委員会、教育センターの指導者のパワハラと国賠責任(肯定)

鹿児島地裁H26.3.12    

精神疾患をかかえる市立中学校の女性教員に対する同校の校長、教頭、県教育委員会、教育センターの指導官のパワーハラスメントにより女性教員の精神疾患を増悪させ自殺を選択させたとして市及び県の国家賠償責任が認容された事例 

<事案>
Y1市立中学の教員であったAが、Y2県の設置する教育センターにおける指導力向上特別研修の受講期間に自殺。

遺族である父母Xらが、Y1市及びY2県に対して連帯して、民法715条によるい使用者責任信義則上の安全配慮義務違反の債務不履行責任、または、国賠法1条1項及び3条による損害賠償請求権に基づく損害賠償金及びその遅延損害金の支払いを求めた事案。

<判断>
亡Aは、昭和49年生まれ、平成8年3月短期大学専攻科を就業し、中学校の音楽科の第二種教員免許を取得。

・・・Aは平成16年12月4日に精神科医師からストレス反応の診断を受け、同月6日から平成17年3月5日まで病気休暇を取得。

本件中学の校長B、教頭Cは、Xの精神疾患を知りながら、平成17年度の教会配分として、Aに音楽科及び家庭科に加えて第一学年及び第二学年の国語科の授業を担当させ、同18年度も引き続き担当させた。

Y1市教育委員会は校長Bの申請によるY2県教育委員会の決定を受けて、Aに平成18年9月19日付けで、同年10月1日から同19年3月31日まで、教育センターにおける個別の指導力向上特別研修を受けることを命じ、同18年10月2日から同研修を強制的に受講させ、その際にAは指導官から教員退職を促しているとも受け取れる発言を受けた。
Aは同月28日に父X1所有の空き家で自殺。

校長B、教頭C、Y2県教育委員会、教育センターにおける担当指導者のAに対する一連の行為は、Aの精神疾患を増悪させる危険性の高い行為であるといえるところ、Aに対する教育センターでの個別研修を決定した段階で、校長B等はAが精神疾患により通院治療中であることを知っていながら、主治医に対しAの病状の十分な確認ししなかった
このことは、教員の健康状態を把握し、その悪化を防止するというY2県及びY1市の信義則上の安全配慮義務違反にあたる。

また、平成17年以降の校長B、教頭C、Y2県教育委員会、本件指導官らのAに対する一連の行為が、Aの精神疾患を増悪させて正常な判断ができない状態に追い込み、Aを自殺させたものと認定できる。

校長B等のAに対する一連の行為とAの自殺との間には相当因果関係が認められる。

Aの自殺が業務上の負荷とAの精神疾患とが共に原因⇒素因減額として3割、過失相殺として2割を控除するのが相当。

<解説>
精神疾患をかかえる市立中学校の女性教員に対する同校の校長、教頭、県教育委員会、教育センターの指導官等のパワーはラスメントにより女性教員の精神疾患を増悪させ自殺を選択させたとして、遺族による市及び県に対する国賠請求を認容したもの。 

判例時報2227

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2014年9月25日 (木)

市立小学校の小学生のいじめによる自殺と損害賠償

前橋地裁H26.3.14   

市立小学校6年の女子児童が、同級生のいじめにより自殺した事故につき、同校校長、担任教諭に児童の自殺につき予見可能性がないとして、市及び県にいじめに対する範囲の損害賠償責任が認められた事例 

<事案>
Xらの子であるAがY1市立小学校に在学中に、同級生から陰湿かつ執拗ないじめを受け自殺したことにつき、Xらが、
同小学校の校長や担任教諭に安全配慮義務違反があるとして
主位的にAの自殺による損害の賠償を
予備的にいじめを防止する措置を講じなかったことによりAが被った損害の賠償を求め、

Y1市がAの自殺の原因の調査報告をせず不誠実な対応をしたと主張して、
Y1市に対しては国賠法1条1項に基づき、
Y2県に対しては国賠法3条1項に基づき
連帯して損害賠償金の支払を求めた事案。 

<規定>
国賠法 第1条〔公務員の不法行為と賠償責任、求償権〕
国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。

国賠法 第3条〔賠償責任者、求償権〕
前二条の規定によつて国又は公共団体が損害を賠償する責に任ずる場合において、公務員の選任若しくは監督又は公の営造物の設置若しくは管理に当る者と公務員の俸給、給与その他の費用又は公の営造物の設置若しくは管理の費用を負担する者とが異なるときは、費用を負担する者もまた、その損害を賠償する責に任ずる。

<判断>
担任教諭は精神的に疲弊して余裕がない状態で児童らに対し適切な対応ができないでいたという状況において、
Aは同級生から継続的で頻繁な悪口(暴言)、給食時の仲間外れ及び校外学習日における執拗な非難といういじめを受けていたことが認められること、

校長及び担任教諭は、右の悪口を認識可能であった同年6月下旬以降、学級内の児童の言動について的確かつ十分に把握し、悪口を言った児童とその保護者に指導を行うとともに、Aに右指導内容を伝えて教諭らがそのような言動を許さない強い姿勢で臨んでいることを示して安心させるなどの措置を講じる必要があったし、遅くともAが1人だけで給食を食べる状態が続いた段階で、給食時の席を強制的に決めるなどAが1人で給食を食べることのないようにしたりAや他の児童から聞き取りをしたうえで、いじめ排除の抜本的な措置を講ずるべきであったのにこれらの対応を怠った。

校長らにはAに対する安全配慮義務違反が認められる。 
but
校長らにはAが自殺することについてまで具体的に予見することができなかった

Xらの主位的請求は理由がない。

Xらの予備的請求であるいじめ防止義務違違反に基づく請求は認められ、その損害はAの被った精神的苦痛に対する慰謝料として300万円が相当であり、X1が相続。 

Y1市はXらに対しAのいじめに関する調査義務を怠っておりこれによるXらの精神的苦痛に対する慰謝料はそれぞれ50万円が相当(なお、X2はAと養子縁組をしていないが、事実上の親として調査・報告を求めることができる)。

Y1市国賠法1条1項に基づきY2県本件小学校の校長及び担任教諭の給与を負担するものとして国賠法3条1項に基づき連帯して損害賠償責任を負う。

<解説>
市立小学校6年生の女児児童が同級生のいじめにより自殺した事案につき、同校校長及び担任教諭に児童の自殺についての責任はないが、いじめについての安全配慮義務違反があり、また、市には遺族に対するいじめについての調査報告義務違反があるとして、市及び県の国家賠償責任を認めたもの。 

いじめの結果自殺に至った事案につき、学校側に自殺の予見可能性がなくても損害賠償責任を認めた先例(福島地裁いわき支部H2.12.26)。

公立学校生徒の自殺の事案について、担任教諭に自殺の予見可能性を肯定した上で国賠責任を認めたもの(東京高裁H14.1.31)。

判例時報2226 

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2014年8月17日 (日)

市の常勤的非常勤職員の退職手当の支給請求が認容された事例

福岡高裁H25.12.12   

市の常勤的非常勤職員の退職手当の支給請求が認容された事例 

<事案>
Xは、昭和54年4月1日又は昭和56年4月1日、1年間の任期で、Y市の非常勤職員に任用され、以後、平成24年3月31日に退職するまで、毎年1年間の任期で再任用。⇒「中津市職員の退職手当に関する条例」に基づき、Yに対して、1092万8632円の退職手当の支払を求めた。 

Yの主張:
特別職の退職手当条例が別途制定されているから、本件条例1条の「職員」には特別職の職員は含まれない。
Xを教育センター嘱託員として任用しているので、Xは特別職。

<判断>
Xは、中学校図書館において、勤務日数や勤務時間の点で正規職員と異なることなく勤務。その勤務条件からすると、他職に就いて賃金を得ることは不可能であり、さらには、校長による監督を受ける立場にあり、勤務成績が不良である場合には、市長によって解任される場合がある。
Xは一般職の職員に当たる

Xは、本件条例2条1項の「常勤勤務に服することを要する者」には当たらないが、任期は、会計年度ごとの1年間であったが、空白期間のない再任用により事実上雇用関係が継続することになり、正規の職員について定められている勤務時間以上勤務した日が18日以上ある月が12月を超え、以後引き続き所定の勤務時間により勤務してきた者に該当。
職員とみなされる
⇒本訴請求を認容。

<解説>
いわゆる「常勤的非常勤職員」が退職手当を求める訴訟が相次いで提起。 
地方公務員の職員の性質決定につき任命形式によるかそれとも勤務実態によるかという判断は、微妙かつ困難。
本判決は、勤務実態を重視し、Xを非常勤嘱託職員として任用することは、地方公務員法の解釈を誤った任用であると判断。

判例時報2222

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2014年6月18日 (水)

公立中学校の廊下に瑕疵があったとして学校側の損害賠償責任が認められた事例

福岡高裁H25.12.5   

公立中学校の生徒が校舎内の廊下で同級生に手を引っ張られて転倒して負傷した事故につき、廊下に瑕疵があったとして学校側の損害賠償責任が認められた事例

<事案>
XはA中学校の2年生であったところ、A中学校の校舎内の廊下で同級生であったY1に手を引っ張られて転倒し負傷
⇒Y1に対して損害賠償を請求するとともに、同校の設置者であるY2(佐伯市)に対し、同校の廊下が結露等により滑りやすくなっていたのに放置していたとして、国賠法2条1項に基づき損害賠償を請求。 

<規定>
国賠法 第2条〔営造物の設置管理の瑕疵と賠償責任、求償権〕
道路、河川その他の公の営造物の設置又は管理に瑕疵があつたために他人に損害を生じたときは、国又は公共団体は、これを賠償する責に任ずる。
②前項の場合において、他に損害の原因について責に任ずべき者があるときは、国又は公共団体は、これに対して求償権を有する。

<原審>
XのY1に対する請求を認容したが、Y2に対する請求を棄却。
⇒XとY1が控訴。 
 
<判断> 
Y1は、バランスを崩し転倒する危険を伴う滑り遊びに誘うためXの手を引いた⇒不法行為責任を肯定。 

校舎内の廊下は、多湿な立地条件及び熱的に結露が長時間にわたり発生する造りであることから壁面の結露が床面に溜まるという状況。その状況に適した床材が使用されていないため、滑りやすく危険。

生徒の多様な行動を踏まえた転倒防止対策が施されたものとはいえず、同廊下は通常有すべき安全性を備えていなかった

Y2の国賠法2条1項の責任を肯定。
 
<解説>
国賠法2条1項にいう営造物の瑕疵とは、営造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいう(最高裁昭和45.8.20)。

安全性の欠如があったか否かは、当該営造物の構造、用法、場所的環境及び利用状況等の諸般の事情を総合考慮して具体的、個別的に判断すべき(最高裁昭和53.7.4)。

通常の用法に即しない行動の結果生じた事故については、設置管理者としての責任を負う理由はない(最高裁昭和53.7.4)。

判例時報2217

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2014年5月19日 (月)

大学水泳部選手の死亡事故と大学・コーチの安全配慮義務違反(否定)

東京高裁H25.8.7   

大学水泳部員が中国での高地合宿で潜水中に急死した事故につき、死因が不明であり、大学及びコーチに安全配慮義務違反は認められないとされた事例 

<事案> 
Aの両親であるXらが、本件事故は、Y1(学校法人)及びY2(水泳部のコーチ)の安全配慮義務違反によるものであると主張し、Y1に対し、安全配慮義務違反又は使用者責任に基づき、Y2に対し、不法行為に基づき、9500万円余の損害賠償請求をした。

<原審>
Aの死因は原因不明の突然死。
Y1にはAに対する健康管理上の安全配慮義務違反は認められず、Y2にも合宿を実施する上での安全配慮義務違反は認められない。
⇒Xの請求棄却。 

<控訴審>
双方からの申請された専門家(医師)2名の証人尋問を実施。 
Aが肺動脈血栓塞栓症により死亡した高度の蓋然性があると認めることは困難。

Xらの主張する損害賠償請求は、Aの死因につき肺動脈血栓塞栓症であることを前提としてYらに予見可能性及び結果回避義務を措定し、これらの義務違反と死亡との因果関係があるというものであるが、主張の前提を欠くことになる以上、その損害賠償請求は理由がない。

<解説>   
スポーツ指導にかかる学校事故に関する近時の裁判例での学校側の責任肯定事例:

①県立高校の生徒がバレーボール部の顧問から暴行(違法な有形力の行使)を受けたとして、県の国賠責任を認めたもの。

②高校の柔道部員の生徒が、練習試合中に対戦相手によって負傷し、重篤な後遺障害が残った事故につき、顧問教諭及び学校長に安全配慮義務違反があると認めたもの。

③県立高校の2年生の生徒が剣道部での練習中に倒れ搬送された市立病院で熱射病により死亡した事故につき、剣道部顧問の教諭に過失があると同時に搬送された病院の医師にも治療上の過失があるとして、共同不法行為による損害賠償責任を認めたもの。

④町立中学校の生徒が部活動で柔道の練習中に顧問の過失により受傷し死亡した事故につき、町の国賠責任を認めたもの。

⑤高校1年生の柔道部員が、先行する脳震盪から17日後に行われた試合前のウォーミングアップ練習中に急性硬膜下血腫を発症した事故につき、顧問教諭に生徒の生命・身体に対する事故の危険を除去し、事故の被害を受けることを未然に防止すべき注意義務違反があったと認めたもの。


本件:
Xらの主張したAの死因は、肺動脈血栓塞栓症であり、これは血液の粘度が高くなって血栓ができ血管を詰まらせたというもの。
事故直前のAのヘマトクリット値55%が異常値であるとすれば、それを前提として、コーチ安全配慮義務を措定する余地もある⇒死因・死亡に至る機序が最大の争点。

Yらの反論・反証により、①ヘマトクリット値55%は異常値とはいえないこと、②その他の間接事実からAは水分補給のできる環境にあったこと、③死亡直前の運動の態様と性質
血栓を生じさせる蓋然性は認められない

判例時報2214

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