渉外

2014年12月28日 (日)

船舶先取特権の準拠法

水戸地裁H26.3.20   

1.船舶先取特権の準拠法について(累積適用説)
2.物件準拠法の解釈(原因事実完成時の所在地法説) 
 
<事案>
英領ヴァージン諸島法人であるXが所有するパナマ共和国船籍の船舶について、その再定期傭船者であるAとの間での供給契約に基づきシンガポール共和国において約24万ドル相当の重油等を供給した大韓民国法人であるYが、上記船舶が茨城県鹿島港沖合に停泊していた際に、水戸地方裁判所に対し、上記重油等の代金債権及びこれに対する遅延損害金請求権を請求債権・被担保債権、パナマ共和国商事法及び米国連邦法規集に基づく船舶先取特権を担保権とする船舶競売を申し立て、その開始決定がされた
⇒XがYに対し、船舶先取特権の不存在の確認を求めた。 

<争点>
①船舶先取特権の準拠法について、物権準拠法のみを適用すべきか、物権準拠法と被担保債権準拠法の累積適用(物権準拠法のみならず、被担保債権準拠法によっても法定担保権の成立が認められなければならないとする見解)をすべきか。
②本件事案における物権準拠法及び被担保債権準拠法はいずれの国の法律となるのか。
③②の結論を前提として船舶先取特権の成立が認められるか否か。 

燃料油のような船舶航行のための必要品の供給について船舶先取特権の成立を認めている国は世界的には少数であり、本件事案に関連する国の中では、米国、パナマ及び日本がこれを認めている。
 
<判断> 
争点①について:
通説的見地に従い、累積適用説を採用

争点②についてのうち物権準拠法については、旗国法(パナマ法)説及び法廷地法(日本法)説を退け、通則法13条2項の明文との整合性等を重視し、原因事実完成時の所在地法(シンガポール法)説を採用
⇒必要品のための船舶先取特権が成立しない。

被担保債権準拠法についても念のため検討し、
取引につき米国法を適用する旨の合意が成立しており米国法の適用があったとしても、準拠法として米国法を選択したこと以外の要素につき米国との関連性をうかがわせる事情が認められないとの事実関係⇒船舶先取特権の成立は認められない。

判例時報2236

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