租税

2017年9月11日 (月)

私道の用に供されている宅地の相続税における財産評価での減額の要否等

最高裁H29.2.28      
 
<事案>
共同相続人であるXらが、相続財産である土地の一部につき、財産評価基本通達(「評価通達」)の24に定める私道の用に供されている宅地(「私道供用宅地」)として相続税の申告⇒相模原税務署長から、これを貸家建付地として評価すべきであるとしてそれぞれ更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分
⇒Yを相手に、本件各処分(更正処分については申告額を超える部分)の取消しを求める事案 
 
<一審・原審>
一般の通行の用に供している私道は、特段の事情のない限り、これを廃止して通常の宅地地して利用することが可能
⇒評価通達24にいう私道とはその利用に道路内の建築制限や私道の変更等の制限などのような制約があるものを指すと解するのが相当。 

本件各歩道状空地は、建築基準等の法令上の制約がある土地ではなく、また、市からの要綱等に基づく指導によって設置されたことをもって制約と評価する余地があるとしても、これは被相続人の選択の結果であり、Xらが利用形態を変更することにより通常の宅地と同様に利用できる潜在的可能性と価値を有する
⇒私道供用宅地に該当するとはいえない。
⇒Xらの請求をいずれも棄却。
 
<判断>
私道の用に供されている宅地の相続税に係る財産の評価における減額の要否及び程度は、
私道としての利用に関する建築基準法等の法令上の制約の有無のみならず、当該宅地の位置関係、形状等や道路としての利用状況、これらを踏まえた道路以外の用途への転用の難易等に照らし、
当該宅地の客観的交換価値に低下が認められるか否か、また、その低下がどの程度かを考慮して決定
する必要がある。

本件を原審に差し戻した。
 
<規定>
相続税法 第22条(評価の原則)
この章で特別の定めのあるものを除くほか、相続、遺贈又は贈与により取得した財産の価額は、当該財産の取得の時における時価により、当該財産の価額から控除すべき債務の金額は、その時の現況による。
 
<解説>
●相続税法22条の規定と私道の意義等 
相続税法22条は、相続等により取得した財産の価額は、当該財産の取得の時における時価による旨を規定(=時価主義を採用)
相続税における「取得の時」とは被相続人の死亡の時であり、「時価」とは課税時期における当該財産の客観的な交換価値をいう(最高裁)。

不特定多数の独立当事者間の自由な取引において通常成立すると認められる価額を意味する。

「私道」:
一般的には、「私人がその所有権に基づき維持管理している道路」又は「私物たる道路」と定義。

「道路」:
一般に広く人の通行の用に供されている物的施設をさし、道路法上の道路とそれ以外の道路(農道等の公道と私道)に大別され
歩道とは、歩行者が通行するための道路。
 
●財産評価基本通達24の定め等について 
相続税の課税対象となる財産は多種多様であり、その客観的な交換価値は必ずしも一義的に確定されるものではない
⇒国税庁によって相続税・贈与税及び地価税に共通の財産評価に関する基本通達として評価通達が定められている。

評価通達24は、「私道の用に供されている宅地」(私道供用宅地)と規定するのみであり、その逐条解説は、
①不特定多数の者の通行の用に供するいわゆる通抜け道路
②袋小路のように専ら特定の者の通行の用に供するいわゆる行き止まり道路
に分類
①⇒私道の価額を評価せず
②⇒路線価等の100分の30として評価
ただし、
所有者の通路としてのみ使用されている私道は、敷地部分と併せて路線価等としての評価を行い、私道としての評価は行わないとしている。
 
●相続税法22条の時価評価と不動産鑑定評価等について 
評価通達は法令ではなく、個別の財産の評価はその価額に影響を与えるあらゆる事情を考慮して行われるべきもの

財産の評価が評価通達と異なる基準で行わたとしても直ちに違法となるものではない。
(下級審裁判例は、評価通達の定める評価方法は一般的に合理性を有するものとして課税実務上も定着している同通達によって評価することが相当でないと認められる特段の事情がない限り、同通達に規定された評価方法によって画一的に評価するのを相当とするものが多い。)

本件で検討されるべき問題は私道の相続税法22条における時価評価
ここでの時価は、不動産の鑑定評価における正常価格と基本的には同一の概念である(地価公示法2条参照)。

不動産鑑定士による土地評価の統一基準である不動産鑑定評価基準には、私道に関する独自の評価基準は存在しない。
but
私道については、、不動産鑑定評価基準に基づく鑑定評価等において、建築基準法等の法令上の制約の有無に加えて、道路としての利用状況、他の用途への転用の難易の程度等を踏まえて減額評価しているように思われる。
 
●私道の用に供されている宅地の相続税法22条の財産評価について 
私道の用に供されている宅地の財産評価において一定の減額が認められるのは、当該財産の使用、収益又は処分に一定の制約が存在することによって宅地としての最有効使用を実現することができないことにあると解されるところ、
本判決は、このような理解を前提として、
当該宅地が第三者の通行の用に供され、所有者が自己の意思によって自由に使用、収益又は処分をすることに制約が存在することにより、その客観的交換価値が低下する場合に、そのような制約のない宅地と比較して、相続税に係る財産の評価において減額されるべきであると判示。

本件各歩道状空地は、
①車道に沿って幅員2mの歩道としてインターロッキング舗装が施されたもので相応の面積がある上に、本件各共同住宅の居住者等以外の第三者による自由な通行の用に供されていることがうかがわれる
②本件各共同住宅を建築する際、都市計画法所定の開発行為の許可を受けるために、市の指導要綱等を踏まえた行政指導によって私道の用に供されるに至ったもの

本件各共同住宅が存在する限りにおいて、Xらが道路以外の用途へ転用することが容易であるとは認め難い

本件各共同住宅の建築のための開発行為が被相続人による選択の結果であるとしても、直ちに本件各歩道状空地について減額して評価をする必要がないとはいえない

判例時報2336

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2017年1月 4日 (水)

信託契約の受託者が所有する複数の不動産の固定資産税に係る滞納処分としてされた、信託財産である土地とその上にある固有財産である家屋に係る賃料債権の差押え(適法)

最高裁H28.3.29      
 
<規定> 
(信託財産に属する財産に対する強制執行等の制限等)
第二十三条  信託財産責任負担債務に係る債権(信託財産に属する財産について生じた権利を含む。次項において同じ。)に基づく場合を除き信託財産に属する財産に対しては、強制執行、仮差押え、仮処分若しくは担保権の実行若しくは競売(担保権の実行としてのものを除く。以下同じ。)又は国税滞納処分(その例による処分を含む。以下同じ。)をすることができない。 
 
<争点>
本件処分においては、信託財産である本件土地に係る固定資産税とX1会社所有名義の本件土地以外の不動産に係る固定資産税を区別せず、その全体を差押えに係る地方税として、信託財産である本件土地の賃料相当額部分を含む本件賃料債権全体に対する差押えが行われた
⇒旧信託法16条1項(新信託法23条1項相当)との関係でその適法性が争われた。 
 
<判断>
信託契約の受託者が所有する複数の不動産の固定資産税に係る滞納処分としてされた、同各不動産のうちの信託財産である土地とその上にかる固有財産である家屋に係る賃料債権の差押えは、滞納に係る同固定資産税等のうち信託財産である同土地以外の不動産の固定資産税相当額部分に基づき、同賃料債権のうち同土地の賃料相当額を差し押さえる点において旧信託法16条1項との関係で問題があるものの、その問題となる部分は右の限度にとどまり、差押えを全体として違法とするような特段の事情もうかがわれないなど判示の事情の下においては、適法である。

原判決を破棄し、控訴を棄却。 
 
<解説>
●本件賃料債権及び本件固定資産税について、信託財産に架kる部分と固有財産に係る部分を識別し得るとすると、実体的に見るならば、本件処分については、本件滞納固定資産税等のうち本件土地以外の不動産の固定資産税相当額に係る部分に基づき、本件賃料債権のうち本件土地の賃料相当額部分を差し押さえることとなる点において旧信託法16条1項との関係で問題。
but
本件滞納固定資産税等のうち本件土地の固定資産税に係る部分に基づき、本件賃料債権を差し押さえることや、本件滞納固定資産税等に基づき、本件賃料債権のうち本件家屋の賃料相当額部分を差し押さえることは、同項に反するものではない。

●どの段階で、右の実体的関係を反映させるための調整を行うべきか?
A:差押えの段階で調整する必要はない
B:実体的な観点から調整の余地がある以上、差押えの段階で対応すべき

最高裁昭和43.7.16:
滞納者の所有財産(宅地)に対する滞納処分が、その滞納者の滞納税金のみならず、誤って他の者の滞納税金をも徴収するために行われた場合には、同所分の瑕疵は、他の滞納者の滞納税金に対するものとしてなされた部分についてのみ存し、その滞納処分全体を違法ならしめるものではない。

●本件賃料債権を信託財産部分と固有財産部分に識別した上、信託財産部分を本件土地に係る滞納固定資産税に充当した結果、同滞納固定資産税が全て徴収された場合には、本件賃料債権のうち信託財産部分について取り立てた金員があれば、これをX1会社に交付すべきこととなり、X1会社からは不当利得の返還請求をすることが可能。 

●本件賃料債権中消費税相当額部分についても差押えの対象となし得るか?
について、本判決は肯定。

そもそも消費税の納税義務者は消費者ではなく事業者であり(消費税法5条1項)、消費税相当額の実質的な出損をしたのが消費者(訴外会社)であったとしてもこの点は同様であり、消費者の負担する消費税相当額は、消費者からの預り金ではなく、事業者と消費者の間の商品・役務の対価の一部であるべきものと解される。
消費税相当額を差し押さえたことに何ら違法はない

判例時報2310

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2016年9月14日 (水)

法人税法(平成22年法律第6号による改正前のもの)132条の2(組織再編成に係る行為又は計算の否認規定)の適用

最高裁H28.2.29      
 
<事案>
①ヤフー㈱の代表取締役社長は、平成20年12月26日、ソフトバンク㈱の完全子会社であるソフトバンクIDCソリューションズ㈱(当時、多額の未処理欠損金額を保有)の取締役社長に就任。
②ヤフーは平成21年2月24日、ソフトバンクからIDCSの発行済株式の全部を譲り受け、IDCSをヤフーの完全子会社とした。
③ヤフーは、同年3月30日、ヤフーを合併法人、IDCSを被合併法人とする吸収合併。 
ヤフーは、本件事業年度(平成20年4月1日から同21年3月31日までの事業年度)の法人税の確定申告に当たり、本件合併は法人税法2条12号の8の適格合併であるところ、法57条3項の委任に基づく法人税法施行令112条7項5号に想定されている特定役員引継要件(要旨、合併法人と被合併法人の常務取締役以上の役員のいずれかの者が、合併後にそれぞれ合併会社の常務取締役以上の役人になる見込みがあるという要件)を充たしており、適格合併における被合併法人の未処理欠損金額の引継を制限する法57条3項の適用はないとして、同条2項に基づき、IDCSの未処理欠損金額約542億円をヤフーの欠損金額とみなして、同条1項の規定に基づきこれを損金の額に算入。

麻布税務署長(処分行政庁)は、組織再編成に係る行為又は計算の否認規定である方132条の2を適用し、前記未処理欠損金額をヤフーの欠損金額とみなすことを認めず、ヤフーに対し、本件事業年度の法人税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分。

ヤフーが被上告人(国)を相手に、本件副社長就任につき法132条の2は適用されないなどと主張し、本件更正処分等の取消しを求める。
 
<判断>
●不当性要件

法人税法(平成22年法律第6号による改正前のもの)132条の2にいう「法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの」とは、法人の行為又は計算が組織再編税制に係る各規定を租税回避の手段として濫用することにより法人税の負担を減少させるものであることをいう。 

その濫用の有無の判断に当たっては、
①当該法人の行為又は計算が、通常は想定されない組織再編成の手順や方法に基づいたり、実態とは乖離した形式を作出したりするなど、不自然なものであるかどうか
②税負担の減少以外にそのような行為又は計算を行うことの合理的な理由となる事業目的その他の事由が存在するかどうか
等の事情を考慮した上で、当該行為又は計算が、組織再編を利用して税負担を減少させることを意図したものであって、組織再編税制に係る各規定の本来の趣旨及び目的から逸脱する態様でその適用を受けるもの又は免れるものと認められるか否かという観点から判断するのが相当。

①ヤフーがIDCSの発行済株式全部を買収して完全子会社とし、その後IDCSを吸収合併した場合において、ヤフーの代表取締役社長が前記買収前にIDCSの利益だけでは容易に償却し得ない多額の未処理欠損金額を前期の買収及び合併によりヤフーにおいてその全額を活用することを意図して、前記合併後に井上がヤフーの代表取締役社長の地位にとどまってさえいれば法人税法施行令(平成22年政令第51号による改正前のもの)112条7項5号の要件が満たされることとなるよう企図されたものであり、②その就任期間や業務内容等に照らし、井上がIDCSにおいて同号において想定されている特定役員の実質を備えていたということはできないなど判示の事情

法人税法(平成22年法律第6号による改正前のもの)132条の2にいう「法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの」に当たる
 
●行為主体要件 
法人税法(平成22年法律第6号による改正前のもの)132条の2にいう「その法人の行為又は計算」とは、更正又は決定を受ける法人の行為又は計算に限られるものではなく、同条同号に掲げられている法人の行為又は計算を意味する。
 
<解説>
●不当性要件の意味

ヤフーの主張:
①法132条の2が法132条の枝番
②不当性要件に係る文言の共通性等

同族会社の行為計算の否認規定である同条1項の不当性要件に係るいわゆる「経済合理性基準」(専ら経済的、実質的見地において当該行為計算が純粋経済人の行為として不合理、不自然なものと認められるか否か)を採用し、かつ、その具体的な内容とし、その通説的見解とみられている「(行為・計算が)異常ないし変則的で租税回避以外に正当な理由ないし事業目的が存在しないと認められる場合」という基準を採用すべきである旨主張。
具体的には、「法132条の2の不当性要件は、私的経済取引プロパーの見地から合理的理由があるか、すなわち純経済人の行為として不合理・不自然な行為又は計算か否かという観点から判断されるべきである。そして、純経済人の行為として不合理・不自然とは、行為が異常ないし変則的で、かつ、租税回避以外に正当な理由ないし事業目的が存在しない場合をいう」と主張
vs.
①経済合理性基準においては、「純経済人の行為として不自然・不合理であるか否か」という基準が用いられるところ、組織再編成は売買契約や雇用契約などの典型契約とは異なるため、必ずしも一般的な取引慣行や取引相場があるわけではなく、多数の企業が関与して複雑かつ巧妙な租税回避行為が行われた場合、そもそも純経済人(特殊な利害関係のない一般的な経済人)の行為として自然かつ合理的な組織再編成とは何かという議論の出発点からその審理判断に困難を来し、その不当性を適切に判断し得ない場合もあり得る。
⇒法132条の2の不当性要件の該当性の判断基準として経済合理性基準をそのまま用いることは、組織再編成という事柄の性質上、必ずしも適切ではない。
②法132条の2が方132条の枝番となっていることは、法133条以下の各番号の変更を避けるための立法技術上の措置
⇒不当性要件の解釈に直ちに影響するものとはいえない。
③立法主義が異なれば、同一の文言であってもその意義や内容に差異が生じることはあり得るというべきであり、法132条1項との文言の同一性もその解釈の決め手となるものではない。
④「租税回避」の概念についても、その意味内容は多義的であり、不当性要件の解釈の決め手となるようなものではない。

国の主張:
法132条の2の立法趣旨等に照らし、いわゆる「制度濫用基準」を採用すべきであると主張。
具体的には、「法132条の2の不当性要件については、組織再編税制における各個別規定の趣旨、目的に鑑みて、ある行為又は計算が不合理又は不自然なものと認められる場合をいい、租税回避の手段として組織再編成における各規定を濫用し、税負担の公平を著しく害するような行為又は計算がこれに当たる」と主張。

本判決:
同条の立法趣旨に照らし、同条の不当性要件の解釈につき、制度濫用基準の考え方を採用する旨を明確に示した。

●濫用の有無の判断に係る考慮事情 
濫用の有無の判断に当たっては、
行為・計算の不自然性
そのような行為・計算を行うことの合理的な理由となる事業目的等の有無
との2点を特に重視して考慮すべきである。

経済合理性基準の具体的な内容に係る通説的見解とされている「(行為・計算が)異常ないし変則的で租税回避以外に正当な理由ないし事業目的が存在しないと認められる場合」に含まれている二つの要素を、組織再編成の場面に即して表現を修正し、特に重要な考慮要素として位置づけたもの。

制度濫用基準の考え方を基礎としつつも、その実質において、経済合理性基準に係る通説的見解の考え方を取り込んだもの。

●濫用の有無の判断における具体的な観点 
「制度の濫用」の意味内容について、最高裁H17.12.19:
企業が外国税額控除制度を濫用した事例につき、当時の法人税法69条を限定解釈して同条の適用を否定したもの。
「本件取引は・・我が国の外国税額控除制度をその本来の趣旨目的から著しく逸脱する態様で利用して納税を免れ、我が国において納付されるべき法人税額を減少させた上、この免れた税額を原資とする利益を取引関係者が享受するために、取引自体によっては外国法人税を負担すれば損失が生ずるだけであるという本件取引をあえて行うというものであって、我が国ひいては我が国の納税者の負担の下に取引関係者の利益を図るものというほかない。そうすると、本件取引に基づいて生じた所得に対する外国法人税を法人税法69条の定める外国税額控除の対象とすることは、外国税額控除制度を濫用するものであり、さらには、税負担の公平を著しく害するものとして許されないというべきである。」

本判決が、濫用の有無の判断において、
①組織再編成を利用して税負担を減少させる意図(租税回避の意図)
②組織再編税制に係る各規定の本来の趣旨及び目的から逸脱する態様でその適用を受けるもの又は免れるものであること(趣旨目的からの逸脱)
をその要素としているのは、上記平成17年判決の説示における「制度の濫用」の評価の基礎とされた内容が参考にされたもの。

判例時報2300

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2016年4月 9日 (土)

地方公務員に支給された通勤手当と国税徴収法76条1項柱書にいう「これらの性質を有する給与」(肯定)

旭川地裁H27.7.21    

<事案>
処分行政庁A(稚内市長)が、滞納処分としてXの給与等に係る支払請求権を差し押さえた上、第三債務者(B)(北海道)から領収した金銭について4件の配当処分をしたところ、Xが、計算方法に違法があり、配当処分も違法であると主張して、Y(稚内市)に対し、上記4件の配当処分の取消しを求めた事案。
 
<争点>
XがBから支給された通勤手当が、国税徴収法76条1項柱書きにいう「これらの性質を有する給与」に当たるか否か、すなわち国税徴収法上差し押さえることができる債権であるか否か。 
 
<判断>
法76条1項の趣旨に照らすと、同項柱書きにいう「これらの性質を有する給与」とは、雇用関係又はこれに準ずる職務関係に基づき雇用主等から支給される報酬その他の収入をいうものと解され、本件の通勤手当はこれに該当する。 

労務を提供する債務は持参債務であるから、通勤に要する費用は本来労働者が負担すべきものであり、通勤手当が支給されていれば労働者はその分だけ自分の財産から支出を免れることになる
⇒雇用契約等において定められた支給基準に従って支給される通勤手当を「これらの性質を有する給与」に含めてその一部を差押可能なものと取り扱っても不合理といえない。

民事執行法と国税徴収法とではその目的等や差押禁止範囲の規律が異なっていることなどに照らすと、仮に民執法152条1項2号についてはXの主張するとおりに解すべきであるとしても、これに法76条1項柱書きの解釈を合わせることが論理必然とはいえない。
 
<解説> 
法76条1項柱書きにいう「これらの性質を有する給与」については、雇用関係又はこれに準ずる職務関係により雇用主等から支給される報酬その他の収入で賞与又は退職手当の性質を有する給与以外の給与とかいされており、国税基本通達76条関係一も、通勤手当を「これらの性質を有する給与」に含める解釈を示している。
 
他方、民執法152条1項2号にいう「これらの性質を有する給与」には、通勤手当は含まれないと解するのが通説。

通勤費は給与の性質を有しない実額支給金にほかならないから、給与等の差押えの対象に含まれず、差押禁止額の計算の基準額から除外して計算されるべき

判例時報2282

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2016年4月 6日 (水)

財産評価基本通達に従って決定される不動産の価格とその適正な時価との関係

東京高裁H27.12.17    

<事案>
4階建てマンション5棟で構成された集合住宅(「本件住宅」)の住戸、階段室及び事務所の各部分並びにその敷地の持分(本件各不動産)を平成19年に贈与により取得。
不動産鑑定士の鑑定評価による本件各不動産の価格により課税価格を算定して贈与税の申告。 
控訴人らは、各処分行政庁から、本件各不動産の価額は財産評定基本通達に定められた評価方式に評価すべき⇒平成19年分の贈与税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分。

控訴人らが、被控訴人に対し、本件各処分のうち控訴人らの申告に係る課税価格及び納付すべき税額を超える部分並びに賦課決定処分の各取消しをそれぞれ求めた事案。
 
<原審>
評価通達に定められた評価方式が贈与により取得した財産の取得の時における時価を算定するための手法として合理的なものであると認められる場合においては、評価通達の定める評価方法による課税実務は、納税者間の公平、納税者の便宜、効率的な徴税といった租税法律関係の確定に差姉弟求められる種々の要請を満たし、国民の納税義務の適性な履行の確保(国税通則法1条、相続税法1条参照)に資するものとして、相続税法22条の規定の許容するところであると解される。 

上記の場合においては、評価通達の定める評価方法が形式的に全ての納税者に係る贈与により取得した財産の価額の評価において用いられることによって、基本的には素材負担の実質的な公平を実現することができるものであって、同条の規定もいわゆる租税法の基本原則の1つである租税平等主義を当然の前提としているものと考えられる。

評価通達に定められた評価方式によっては適正な時価を適切に算定することのできない特段の事情があるとき(評価通達六参照)を除き、特定の納税者あるいは特定の財産についてのみ評価通達に定められた評価方式以外の評価方法によってその科学を評価することは、たとえその評価方式によって算定された金額がそれ自体では同条の定める時価として許容範囲内にあるといい得るものであったとしても、租税平等主義に反するものとして許されない。

・・・本件各不動産について評価通達に定められた評価方式によっては適正な時価を適切に算定することのできない特段の事情があるということはできない。

<控訴>
本件各贈与がされた時期は本件住宅の建替計画に係る建物基本計画案が承認されていたにすぎず、本件住宅に係る一括建て替え決議がされていない
⇒本件住宅の建替えが実現する蓋然性が高いとはいえず、本件各不動産については評価通達による評価方法によっては適正な時価を適切に算定できない特段の事情が認められるというべきであって、本件各処分は実質的には老朽化マンションを新築マンションと同様に評価するものであり、不当と主張し控訴。 
 
<解説・判断>
●相続税法22条は、贈与等により取得した財産の価額を当該財産の取得の時における時価によるとするが、ここにいう時価とは当該財産の客観的な交換価値をいう(最高裁H22.7.16)。
相続税法は、地上権及び永小作権の評価(同法23条)、定期金に関する権利の評価(同法24条、25条)及び立木の評価(同法26条)については評価の方法を自ら直接定めるほかは、財産の評価の方法について直接定めていない。

納税者間の衡平の確保、納税者及び課税庁双方の便宜、経費の節減等の観点から、評価に関する通達により全国一律の統一的な評価の方法を定めることを予定し、これにより財産の評価がされることを当然の前提とする趣旨。

国税庁長官は財産評価基本通達を定め、この通達に従って実際の評価が行われている。

評価対象の不動産に適用される評価通達の定める評価方法が適正な時価を算定する方法として一般的な合理性を有するものであり、かつ、当該不動産の贈与税の課税価格がその評価方法によっては適正な時価を適切に算定することのできない特別の事情の存しない限り贈与時における当該不動産の客観的な交換価値としての適正な時価を上回るものではないと推認するのが相当(最高裁H25.7.12)。

租税法律主義との関係で評価通達の法的意義が問題。
最高裁H25.7.12は、固定資産評価基準(「評価基準」)による土地の価格とその適正な時価との関係等につき、総務大臣が評価基準を定めてこれを告知しなければならない旨を規定する地方税法388条1項を法的根拠として、評価基準の定める評価方法により土地の登録価格は当該土地の適正な時価を上回るものではないと推認されると判示。

これに対し、評価通達は、評価基準とは異なり、上記のような法的規定を欠くため、最高裁H25年判決が説示する趣旨が直ちに評価通達まで及ぶとはいえず、評価通達の法的意義という問題は、判例法理上重要な法律問題として残されている
 
●裁判例 
裁判例は、租税平等主義という観点から評価通達の法的根拠を説示するものが多数。

最高裁H22年判決:
社団医療法人の増資等における出資の引受けに係る増資時における出資の引受けに係る贈与税の課税について、当該社団医療法人の定款には出資した社員が退社時に受ける払い戻し及び当該法人の解散時の残余財産分配はいずれも当該法人の一部の財産についてのみすることができる旨の定めがある場合であっても、評価通達194-2は、社団医療法人及びその出資に関する事情を踏まえつつ、出資の客観的交換価値の評価を取引相場のない株式の評価に準じて行うこととしたものであるから、その方法によっては当該法人の出資を適切に評価することができない特別の事情の存しない限り、これによってその出資を評価することには合理性がある。
 
●金子:評価に関する通達の内容が、不特定多数の納税者に対する反復・継続的な適用によって行政先例法となっている場合には、特段の事情がない限り、それと異なる評価を行うことは違法になると解すべき

評価基本通達の基本的内容は、長期間にわたる継続的・一般的適用とそれに対する国民一般の法的確信の結果として、現在では行政先例法になっていると解されるので、特段の理由がないにもかかわらず、特定の土地について評価基本通達と異なる方法を用いて高く評価することは違法であると解すべき。 
 
●本判決
本判決は、評価通達が評価の統一を図るための財産の時価の算定に係る技術的かつ細目的な基準として定められている点については評価基準と共通していることに鑑み、相続税法は不動産の評価の方法につき直接定めるものではないが、納税者間の公平の確保、納税者及び課税庁双方の便宜、経費の節減等の観点から、同法は評価通達により全国一律の統一的な評価の方法を定めることを予定しこれを当然の前提とする趣旨。

相続税法26条の2が土地評価の意見を土地評議審議会に委ねたのも、上記趣旨を踏まえたものと解した上、相続税法自体を法的根拠として、評価通達の定める評価方法による不動産の課税価格が当該不動産の適正な時価を上回るものではないと推認されると判示。

評価通達の法的根拠が納税者間の衡平の確保その他の相続税法の趣旨を踏まえたもの
⇒評価対象の財産の価額が評価通達の定める評価方法に従って決定された場合に、かえって納税者間の公平を著しく害するなどの特別の事情の存するときは、当該財産の課税価格が評価通達によって決定される価格を上回るときであっても、上記相続税法の趣旨に照らし、その課税価格の決定が違法となると認めるのは相当ではない

とすると、最高裁平成25年判決が評価基準によって決定される土地の価格を上回る登録価格の決定が違法となると判示したところは、評価通達には直ちに及ばないと解するのが相当。

判例時報2282

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2016年3月 4日 (金)

医療法人の設立に際しての税理士の説明義務違反⇒委任契約の債務不履行による損害賠償責任肯定

東京地裁H27.5.28   

医療法人の設立に際しての税理士の説明義務違反⇒委任契約の債務不履行による損害賠償責任肯定
 
<争点>
ⅠYがAに対し資産総額を1000万円未満とすれば二期分の消費税が免税になる旨を説明したかどうか
Ⅱ本件債務不履行に基づく損害賠償請求権の消滅時効の起算点 
 
<判断>
Ⅰについて、①X設立の目的が節税であった、②提訴前のAとYとの通話の録音内容⇒X設立の際においてもYが重大な勘違いをして誤った説明をしたことが推認される。
Ⅱについて、本来の債務である、Aに対する税務指導の履行期であるXの医療法人設立登記日⇒提訴による時効中断

<解説>
法人設立登記の日までは誤った説明を撤回して資産総額を1000万円未満とすることが可能⇒本来のYの債務の履行期は法人設立登記の日とし、同日から消滅時効が進行

税理士の説明義務違反等の職務上の事務処理の過誤に関する近時の裁判例
①税理士が顧客に提案した会計処理を実施することによって課税を受けるリスクが生じることについて税理士に説明義務違反があった。
②税理士に消費税課税事業者選択届出書の提出について助言等をする義務を否定した事例。
③確定申告書の作成を委任された税理士が依頼者から提出された不備のある資料の内容を精査、確認しないまま、その内容に基づいて確定申告書等を作成したことにつき、債務不履行を認めた事例。

判例時報2279

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2016年3月 2日 (水)

地方税法343条2項後段の類推適用により、当該土地の所在する地区の住民により組織されている自治会又は町会が固定資産税の納税義務者に当たるとした原審の判断は違法

最高裁H27.7.17   

登記簿の表題部の所有者欄に「大字西」などと記載されている土地につき、地方税法343条2項後段の類推適用により、当該土地の所在する地区の住民により組織されている自治会又は町会が固定資産税の納税義務者に当たるとした原審の判断は違法。 
 
<事案>
堺市の住民であるXが、平成18年度から平成20年度までについて当時の堺市長が固定資産税及び都市計画税の賦課徴収を違法に怠った⇒地方税法18条1項の徴収権に係る消滅時効の完成により堺市に損害⇒地方自治法242条の2第1項4号に基づき、同市の執行機関であるY(堺市長)を相手に、本件固定資産税等の徴収権に係る消滅時効が完成するまでの期間において堺市長の職にあった者及びその賦課徴収に係る専決事項を有する各市税事務所長の職にあった者(本件各専決権者)に対して本件固定資産税等相当額の損害賠償請求をすること等を求める住民訴訟 
 
<規定>
地方税法 第343条(固定資産税の納税義務者等)
固定資産税は、固定資産の所有者(質権又は百年より永い存続期間の定めのある地上権の目的である土地については、その質権者又は地上権者とする。以下固定資産税について同様とする。)に課する。
2 前項の所有者とは、土地又は家屋については、登記簿又は土地補充課税台帳若しくは家屋補充課税台帳に所有者(区分所有に係る家屋については、当該家屋に係る建物の区分所有等に関する法律第二条第二項の区分所有者とする。以下固定資産税について同様とする。)として登記又は登録されている者をいう。この場合において、所有者として登記又は登録されている個人が賦課期日前に死亡しているとき、若しくは所有者として登記又は登録されている法人が同日前に消滅しているとき、又は所有者として登記されている第三百四十八条第一項の者が同日前に所有者でなくなつているときは、同日において当該土地又は家屋を現に所有している者をいうものとする。
 
<原審> 
①関係自治会等は、本件固定資産税等の賦課期日における本件各土地の登記簿上の所有名義人であるとはいえない⇒地方税法343条2項前段に基づいて本件固定資産税等の納税義務者に当たるとみることはできない。 
②関係自治会などは、台帳登録財産である本件各土地につき、堺市により同市の定める要綱等に従ってその管理処分権限を有する団体として取り扱われる本件各土地の実質的な所有者を評価することができる。

本件各土地については、地方税法343条2項後段を類推適用して、関係自治会等が同項後段にいう「現に所有している者」として当該土地の本件固定資産税等の納税義務者に当たるとみるべき。
 
<判断>
原審は、本件各土地につき、本件固定資産税等の賦課期日におけるその所有権の帰属を確定することなく、・・要綱等における取扱い等に照らして関係自治会等をその実質的な所有者と評価することができるなどとして、地方税法343条2項後段の規定を類推適用することにより、関係自治会等が本件固定資産税等の納税義務者に該当する旨の判断をしたものであり、このような原審の判断には、同項後段の解釈適用を誤った違法がある
 
<解説>
●租税法律主義について

最高裁昭和60.3.27:
租税は、国家が、その課税権に基づき、特別の給付に対する反対給付としてではなく、その経費に充てるための資金を調達する目的をもって、一定の要件に外とするすべての者に関する金銭給付であるが、およそ民主主義国家にあっては、国家の維持及び活動に必要な経費は、主権者たる国民が共同の費用として代表者を通じて定めるところにより自ら負担すべきものであり、わが国の憲法も、かかる見地の下に、国民がその総意を反映する租税立法に基づいて納税の義務を負うことを定め(30条)、新たに租税を課し又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要としている(84条)。それゆえ、課税要件及び租税の賦課徴収の手続は、法律で明確に定めることが必要である・・・

課税要件法定主義(課税要件及び租税の賦課徴収の手続は法律によって規定されなければならないこと)と
課税要件明確主義(課税要件及び租税の賦課徴収の手続はなるべく一義的で明確でなければならないこと)
を確認したもの。

租税法律主義の原則は、国民の経済生活における法的安定性を図り、将来の予測可能性を与えることをその趣旨とするものであるところ、この原則は、単に立法上の原則にとどまるものではなく、租税法規の解釈にもその趣旨が及ぶ

租税法規の解釈は原則として文理解釈によるべきであり、みだりに拡大解釈や類推解釈を行うことは許されない。(金子租税法20版、114頁)
 
①最高裁昭和48.11.16:
譲渡担保による不動産の取得につき地方税法73条の7第3号(当時)を類推適用した原審の判断につき、「地方税法73条の7第3号は信託財産を移す場合における不動産の取得についてだけ非課税とすべき旨を定めたものであり、租税法の規定はみだりに拡張適用すべきものではない
⇒譲渡担保による不動産の取得についてはこれを類推適用すべきものではない。

②最高裁H22.3.2:
ホステスに対する報酬に係る所得税法施行令322条の「当該支払機関の計算期間の日数」とは、集計期間の日数ではなく、その実際の出勤日数であるとした原審の判断につき、「原審は、上記・・・のとおり判断するが、租税法規はみだりに規定の文言を離れて解釈すべきものではなく、原審のような解釈を採ることは、・・・文言上困難である」などとして、原審のような解釈は採用できないとした。

課税実務上想定されていなかった方法による租税回避を容認することが適当でないというのであれば、「法の解釈では限界があるので、そのような事態に対応できるような立法により対処すべきものである」とする最高裁H23.2.18
 
●地方税法343条2項後段は、土地又は家屋の固定資産税の納税義務者たる所有者の意義について、登記簿等に所有者として登記又は登録されいている法人が賦課期日前に消滅しているときについては、同日において当該土地又は家屋を現に所有している者をいうものとする旨規定

ある土地につき同項後段により固定資産税の納税義務者に該当するというためには、少なくとも、「当該土地を現に所有している者」であること、すなわち、賦課期日において当該土地の所有権が当該者に現に帰属していたことが必要
but
原審は、本家土地につき、本件固定資産税等の賦課期日におけるその所有権の帰属を確定することなく(すなわち、本件各土地の所有権の帰属につき当事者間に争いがあるにもかかわらず、関係自治会等がその所有権を承継取得又は原始取得した事実関係を認定することなく)、堺市の要綱等における取扱い等に照らして関係自治会等をその実質的な所有者と評価することができるなどとして、地方税法343条2項後段の規定を類推適用。 
 
●たとえ原審の採用した解釈が正当であるとしても、このような解釈は一般的なものではない本件各市長や本件各専決権者が原審と同様の解釈を採用しなかったからといって、その法令解釈の誤りにつき過失があるとはいえない(最高裁H16.1.15)。 

判例時報2279

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2016年3月 1日 (火)

米国デラウェア州の法律に基づいて設立されたLPSの所得税法2条1項7号及び法人税法2条4号に定める外国法人該当性(肯定)

最高裁H27.7.17   

1.外国法に基づいて設立された組織体の所得税法2条1項7号及び法人税法2条4号に定める外国法人該当性の判断
2.米国デラウェア州の法律に基づいて設立されたLPSが行う不動産賃貸事業への出資と、その損失の損益通算の可否
 
<事案>
米国デラウェア州の法律に基づいて設立されたリミテッド・パートナーシップが行う中古集合住宅の賃貸事業に係る投資事業に出資した投資家らが、当該賃貸事業により生じた所得が同人らの不動産所得(所得税法26条1項)に該当するとして、その所得の金額の計算上生じた損失の金額を同人らの他の所得の金額から控除して所得税の申告又は更正の請求

所轄税務署長から、上記のような損益通算をすることはできないとして、それぞれ所得税の更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分又は更正をすべき理由がない旨の通知処分。

各処分の取消しを求めた。
 
<規定>
所得税法 第2条(定義)
この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
七 外国法人 内国法人以外の法人をいう。

法人税法 第2条(定義)
この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
四 外国法人 内国法人以外の法人をいう。
 
<争点>
外国法に基づいて設立された事業体ないし組織体(「外国事業体」)が我が国の租税法上の法人に該当するか否かにつき、いかなる判断枠組みを採用することが相当か。
かかる判断枠組みを前提に本件各LPSが我が国の租税法上の法人に該当するか。 
 
<一審・原審>
本件各LPSが我が国の租税法上の法人には該当せず、我が国の租税法上の人格のない社団等にも該当しない。
⇒本件各LPSが行う不動産賃貸事業により生じた所得は、本件出資者らの不動産所得に該当。
⇒その不動産所得の金額の計算上生じた損失の金額あるときは損失通算をした上で総所得金額及び納付すべき税額を算定すべき。 
 
<判断>
ある組織体が法人として納税義務者に該当するか否かの問題は我が国の課税権が及ぶ範囲を決する問題である。

外国法に基づいて設立された組織体が所得税法2条1項7号等に定める外国法人に該当するか否かは、当該組織体が日本法上の法人との対比において我が国の租税法上の納税義務者としての適格性を基礎付ける属性を備えているか否かとの観点から判断することが予定されている。
 
外国事業体が所得税法2条1項7号及び法人税法2条4号に定める外国法人に該当するか否かを判断するための枠組み

当該組織体に係る設立根拠法令の規定の文言や法制の仕組みから、当該組織体が当該外国の法令において日本法上の法人に相当する法的地位を付与されていること又は付与されていないことが疑義のない程度に明白であるか否かを検討
これができない場合には、

当該組織体が権利義務の帰属主体であると認められるか否かを検討して判断すべきものであり、具体的には、当該組織体の設立根拠法令の規定の内容や趣旨等から、当該組織体が自ら法律行為の当事者となることができ、かつ、その法律効果が当該組織体に帰属すると認められるか否かという点を検討することとなる。

州LPS法の定めの内容等を検討した上で、本件各LPSが自ら法律行為の当事者となることができ、かつ、その法律効果が本件各LPSに帰属するものということができる。
権利義務の帰属主体であると認められる。
本件各LPSは、所得税法2条1項7号に定める外国法人に該当するものというべき。
⇒本件出資者らは、本件各LPSが行う不動産賃貸事業による所得の計算上生じた損失の金額を各自の所得の金額から控除することはできない
 
<解説>
外国法人について「内国法人以外の法人をいう。」とのみ定義しており(所得税法2条1項7号、法人税法2条4号)、

内国法人は「国内に本店又は主たる事業所を有する法人をいう。」と定義(所得税法2条1項6号、法人税法2条3号)。
「法人」についての定義はない

外国事業体が所得税法等にいう法人に該当するか否かに係る判断方法は解釈により決するほかない。

A:外国私法基準説:外国事業体の設立準拠国(地域)の法令により、当該事業体に法人格を付与されているか否かを検討すべき

B:内国私法基準説我が国の私法において法人がいかなる属性を有するとされているかを検討した上で、当該外国事業体がそのような属性を有するかにより法人該当性を判断すべき。

本判決は、Bを基本。

判例時報2279

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2016年1月 1日 (金)

匿名組合契約に基づき匿名組合員が受ける利益の分配と所得区分の判断・国税通則法65条4項にいう「正当な理由」(最高裁)

最高裁H27.6.12    

1.匿名組合契約に基づき匿名組合員が受ける利益の分配と所得区分の判断
2.匿名組合契約に基づき航空機のリース事業に出資をした匿名組合員が、当該契約に基づく損失の分配を不動産所得に係るものとして所得税の申告をしたことにつき、国税通則法65条4項にいう「正当な理由」があるとされた事例
 
<事案>
匿名組合契約に基づき航空機リース事業に出資をした匿名組合員であるAが、当該事業につき生じた損失のうち当該契約に基づく同人への損失の分配として計上された金額を所得税法26条1項に定める不動産所得に係る損失に該当するものとして所得税の各確定申告(3年分)
⇒所轄税務署長から、上記の金額は不動産所得に係る損失に該当せず同法69条に定める損益通算の対象とならないとして、各年分の所得税につき更正及び過少申告加算税の賦課決定
⇒Aの訴訟承継人であるXらが、国を相手に、上記の各更正及び各賦課決定の取消しを求めた事案。 

<規定>
所得税法 第26条(不動産所得)
不動産所得とは、不動産、不動産の上に存する権利、船舶又は航空機(以下この項において「不動産等」という。)の貸付け(地上権又は永小作権の設定その他他人に不動産等を使用させることを含む。)による所得(事業所得又は譲渡所得に該当するものを除く。)をいう。
2 不動産所得の金額は、その年中の不動産所得に係る総収入金額から必要経費を控除した金額とする。

匿名組合契約に基づき匿名組合員が営業者から受ける利益の分配に係る所得区分については、所得税法基本通達36・37共ー21が発出(「旧通達」)されているところ、同通達は平成17年12月26日付けで改正(「新通達」)されている。

旧通達:原則として、営業者の営む事業の内容に従い事業所得又はその他の各種所得に該当するものとされ、例外として、営業の利益の有無にかかわらず一定額又は一定割合により分配を受けるものは、貸金の利子と同視し得るものとして事業所得又は雑所得に該当するものとされていた。

新通達:原則として、雑所得に該当するものとされ、例外として、匿名組合員が当該契約に基づいて営業者の営む事業に係る重要な業務執行の決定を行っているなど当該事業を営業者と共に営んでいると認められる場合には、当該事業の内容に従い事業所得又はその他の各種所得に該当するものとされている。

国税通則法 第65条(過少申告加算税)
4 第一項又は第二項に規定する納付すべき税額の計算の基礎となつた事実のうちにその修正申告又は更正前の税額(還付金の額に相当する税額を含む。)の計算の基礎とされていなかつたことについて正当な理由があると認められるものがある場合には、これらの項に規定する納付すべき税額からその正当な理由があると認められる事実に基づく税額として政令で定めるところにより計算した金額を控除して、これらの項の規定を適用する。
 
<原審>
①本件匿名組合契約に基づくAへの損失の分配として計上された金額は所得税法26条1項に定める不動産所得に係る損失に該当しない
②新通達をもって従前の行政解釈が変更されたものと評価することはできず、Aの本件各申告に国税通則法65条4項にいう「正当な理由」があるとはいえない

Xらの取消請求を棄却
   
Xらが上告受理の申立
 
<判断>
原審の判断のうち所得区分に関する部分(上記①)は是認することができるが、「正当な理由」の有無に関する部分(上記②)は是認することができない。

本件各賦課決定のうち平成15年及び同16年分に係る部分を破棄し、同部分につき一審判決(請求棄却)を取り消して、これらに係る取消請求を認容。
 
<説明>
●匿名組合契約は、昭和20年代に不正金融の規制を回避して資金を集めるための手段として利用⇒昭和26年に発出された所得税基本通達では、匿名組合員が受ける利益の分配が貸金の利子と同視し得る場合には、所得区分を貸金の場合と同様に解されるものとされた。

昭和50年代後半から、航空機リース事業における資金調達の手段として民法上の組合契約や匿名組合契約が利用されるようになったが、これが租税回避の手段として用いられるているとして問題視⇒更正等の処分を巡る訴訟で、処分の取消請求を認容する下級審裁判例
⇒平成17年税制改正により民法上の組合契約について損益通算に関する特例規定(租税特別措置法41条の4の2)が設けられ、匿名組合契約についても平成17年通達改正という形で所得区分に関する解釈の見直し

●匿名組合契約に基づく利益の分配に係る所得区分の判断
A:匿名組合契約に共同事業者組織としての経済的機能がある⇒旧通達を支持する見解
vs.
①匿名組合契約について定める商法の各規定には、匿名組合院が共同事業者であることを示す定めはなく、匿名組合員は、営業者の営む事業に対する出資者としての地位を有するにとどまる⇒匿名組合契約に基づき匿名組合員が受ける利益の分配は、基本的に、営業者の営む事業への投資に対する一種の配当としての性質を有するものと解される。
②契約当事者間の合意により匿名組合員の地位等につき別段の定めをすることは可能であるところ、当該契約において、匿名組合員に営業者の営む事業に係る重要な意思決定に関与するなどの権限が付与されており、匿名組合員がそのような権限の行使を通じて実質的に営業者と共同してその事業を営む者としての地位を有するものと認められる場合には、匿名組合員が受ける利益の分配は、実質的に営業者と匿名組合員との共同事業によって生じた利益の分配としての性質を有する。

本判決:
匿名組合員が受ける利益の分配の性質に関する上記のような理解の下、
①当該契約において匿名組合員が実質的な共同事業者としての地位を有するものと認められる場合には、当該事業の内容に従い、事業所得又はその他の各種所得に該当
それ以外の場合には、当該事業の内容にかかわらず雑所得に該当(ただし、出資が匿名組合員自身の事業として行われる場合には、事業所得)
と判断。

新通達と同様の判断。

●「正当な理由」の有無 
国税通則法65条4項は、過少申告があっても「正当な理由があると認められる」場合には、例外的に過少申告加算税が課されないことを定めるところ、上記の場合に該当するのは、真に納税者の責めに帰することのできない客観的な事情があり、過少申告加算税の趣旨に照らしてもなお納税者に過少申告加算税を賦課することが不当又は酷になる場合をいう(最高裁H18.4.20)。

租税法規の解釈に関して確定申告の当時に表示されていた税務官庁の公的見解が変更されたために、修正申告や更正を余儀なくされた場合には、「真に納税者の責めに帰することのできない客観的な事情があり、・・・納税者に過少申告加算税を賦課することが不当又は酷になる場合」に当たるものとして「正当な理由」があると解するのが通説的見解。

本判決:
旧通達と新通達とは取扱いの原則を異にするものである上、本件を含む具体的な適用場面(匿名組合員に当該事業に関する意思決定への関与等の権限が付与されていない場合)についての帰結も異にする
⇒平成17年通達改正によって課税庁の公的見解は変更されたものというべき
平成17年通達改正前に旧通達に従ってされた平成15年分及び平成16年分の各申告には「正当な理由」が認められるとしたもの。

判例時報2273

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2015年10月26日 (月)

同族会社が、100%子会社に当該子会社の株式を譲渡し、みなし配当額を譲渡対価額から控除して計算した譲渡損失額を損金の額に算入したことにつき、税務署長が法人税法132条1項に基づき否認した更正処分を違法と判断した事例

東京高裁H27.3.25
   
同族会社が、100%子会社に当該子会社の株式を譲渡し、みなし配当額を譲渡対価額から控除して計算した譲渡損失額を損金の額に算入したことにつき、税務署長が法人税法132条1項に基づき否認した更正処分を違法と判断した事例 
 
<事案> 
省略

処分行政庁が、法人税法132条1項を適用し、本件各譲渡に係る譲渡損失額を本件各譲渡事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入することを否認する旨の本件各譲渡事業年度更正処分を含む本件各更正処分等をした。
 
Xが、本件各譲渡事業年度更正処分は法人税法132条1項の要件を満たさない違法なもの⇒本件各更正処分等の取消しを求めた事案。 
 
<原審>
Yが主張した法人税法132条1項の「不当」性の評価根拠事実が認定できない⇒Xの請求を認容。
 
<判断>
法人税法132条1項の「不当」性は、同族会社の行為等が経済的合理性を欠くか否かという基準で判断される。
経済合理性を欠く場合には、独立当事者間の通常の取引と異なっている場合を含む

当該行為等が異常ないし変則的であり、かつ、租税回避以外に正当な理由ないし事業目的が存在しないと認められることを要するとするXの主張を排斥。

本件一連の行為のうち、Xの中間持ち株会社化までの行為(BによるXの持分取得、本件増資、本件融資及び本件株式購入)は、Aグループが負担する日本の源泉所得税額の圧縮(本件税額圧縮)の実現のために一体的に行われたと認められるが、本件各譲渡は、本件税額圧縮の実現のために上記の各行為と一体的に行われたとは認められない

本件各譲渡が経済的合理性を欠くか否かは、本件各譲渡自体により判断されるべき。

1株当たりの取得科学と同一の譲渡価額でCによる自己株式の取得に応じた本件各譲渡それ自体は、独立当事者間の通常の取引とことなるとは認められない
⇒Yの控訴を棄却。
 
<解説>
●法人税法132条1項の否認の対象となる同族会社の行為等

最高裁昭和53.4.21:
専ら経済的、実質的見地において当該行為計算が純粋経済人の行為として不合理、不自然なものと認められるか否かを基準として判断すべきとした原審の判示を前提に、同項は、「原審が判示するような客観的、合理的基準に従って同族会社の行為計算を否認すべき権限を税務署長に与え」たものと判断。

通説:
上記最判と同様に、行為又は計算が経済的合理性を欠いている場合に否認が認められる。
経済合理性を欠いている場合とは、それが異常ないし変則的で租税回避以外に正当な理由ないし事業目的が存在しないと認められる場合のみでなく、独立・対等で相互に特殊関係のない当事者間で通常行われている取引とは異なっている場合を含み、租税回避の意図ないし税負担を減少させる意図が存在することは必要でない。(金子)
 
●所得税法の同族会社の行為計算否認規定である同法157条の適用が問題となったいわゆる平和事件(東京地裁H9.4.25):
個人が大半の出資持分を有する同族会社に多額の金員を無利息、無期限、無担保で貸し付けた行為は、独立かつ対等で相互に特殊関係のない当事者間では通常行われない不合理、不自然な経済的活動であり、当該個人の得べかりし利益相当分の収入の発生が抑制されて所得税の負担を不当に減少させるとして、同条の適用を肯定。控訴審でも維持。 

金子:行為計算が経済的合理性を欠いている場合とは、それが異常ないし変則的で租税回避以外に正当な理由ないし事業目的が存在しないと認められる場合のことであり、独立・対等で相互に特殊関係のない当事者間で行われる取引と異なっている取引の中にはそれに当たると解すべき場合が少なくないであろう。

判例時報2267

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