消費者

2017年8月19日 (土)

特定商取引に関する法律での法定書面における商品名の記載とクーリングオフ期間の進行

京都地裁H28.10.11      
 
<事案>
家庭教師の派遣及び学習用教材の販売等を目的とするA社と消費者Yとの間の受験用教材の売買契約に係る売買代金債権を譲り受けたXが、Yに対し、売買残代金とこれに対する遅延損害金の支払を求めて訴訟提起。

Yが、特定商取引に関する法律9条1項に基づく解除等を主張。
特商法9条1項は、本文で、訪問販売における購入者によるクーリングオフを認め、ただし書で、特商法5条所定の書面を受領した日から起算して8日を経過した場合には、これを制限している。
 
<判断>
特商法5条1項は、販売業者は、訪問販売契約等を締結したときは、遅滞なく、主務省令で定めるところにより、同法4条各号の事項についてその売買契約の内容を明らかにする書面(「法定書面」)を購入者等に交付しなければならない旨を定め、同法4条は、その6号として、同条1号ないし5号に掲げるもののほか、主務省令で定める事項を挙げ、これを受けて、特定商取引に関する法律施行規則3条は、特商法4条6号において、商品名および商品の商標又は製造者名を掲げている

このように、特商法施行規則3条4号が、法定書面に商品名等を記載することを要求したのは、訪問販売において、購入者等が契約内容を十分に吟味しないままに契約を締結して後日のトラブルが生じることを防止するとともに、クーリングオフの行使の機会を確保させるために、契約の目的である商品と実際の商品とが一致するかを客観的に確認できるようにすることにあると解される。

法定書面に該当する書面に記載すべき商品名については、実際の商品と客観的に一致しているかどうかの判断を可能とする程度の記載がされる必要がある。

A社からYに売買契約書及び概要書面が交付されているところ、各書面の記載内容が異なり、A社からYに交付された書面の商品名の記載を一義的に解することは困難
⇒同書面には、契約の目的である商品と実際の商品とが客観的に一致しているかどうかの判断を可能とする程度に具体的な記載がなされていなかったといわざるをえない。

Yが法定書面を受領したとはいえないとして、Yのクーリングオフを認めた

判例時報2333

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2017年8月 3日 (木)

不特定多数の消費者に向けられた働きかけと消費者契約法12条の「勧誘」(肯定)

最高裁H29.1.24       
 
<事案>
消費者契約法2条4項の適格消費者団体であるXが、健康食品の小売販売を営むYに対し、Yが自己の商品の原料の効用等を記載した新聞折込チラシを配布することが、消費者契約の締結について勧誘をするに際し、いわゆる不実告知(法4条1項1号)を行うことに当たると主張⇒法12条1項及び2項に基づき、新聞折込チラシに前記の記載をすることの差止め等を求めた事案。

<規定>
消費者契約法 第一二条(差止請求権)
適格消費者団体は、事業者、受託者等又は事業者の代理人若しくは受託者等の代理人(以下「事業者等」と総称する。)が、消費者契約の締結について勧誘をするに際し、不特定かつ多数の消費者に対して第四条第一項から第三項までに規定する行為(同条第二項に規定する行為にあっては、同項ただし書の場合に該当するものを除く。次項において同じ。)を現に行い又は行うおそれがあるときは、その事業者等に対し、当該行為の停止若しくは予防又は当該行為に供した物の廃棄若しくは除去その他の当該行為の停止若しくは予防に必要な措置をとることを請求することができる。ただし、民法及び商法以外の他の法律の規定によれば当該行為を理由として当該消費者契約を取り消すことができないときは、この限りでない。

2適格消費者団体は、次の各号に掲げる者が、消費者契約の締結について勧誘をするに際し、不特定かつ多数の消費者に対して第四条第一項から第三項までに規定する行為を現に行い又は行うおそれがあるときは、当該各号に定める者に対し、当該各号に掲げる者に対する是正の指示又は教唆の停止その他の当該行為の停止又は予防に必要な措置をとることを請求することができる。この場合においては、前項ただし書の規定を準用する。

消費者契約法 第四条(消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示の取消し)

消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、当該消費者に対して次の各号に掲げる行為をしたことにより当該各号に定める誤認をし、それによって当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる。

一 重要事項について事実と異なることを告げること。 当該告げられた内容が事実であるとの誤認

<争点>
本件チラシの配布が法12条1項及び2項にいう「勧誘」に当たるか否か?
 
<原審>
「勧誘」には不特定多数の消費者に向けて行う働きかけは含まれないところ、本件チラシの配布は新聞を購読する不特定多数の消費者に向けて行う働きかけ。
⇒前記の「勧誘」に当たるとは認められない。 
 
<判断>
事業者等による働きかけが不特定多数の消費者に向けられたものであったとしてもそのことから直ちに「勧誘」に当たらないということはできない
⇒原審の前記判断には法令の解釈適用を誤った違法がある。 
but
その事実関係からは、法12条1項及び2項にいう「現に行い又は行うおそれがある」とはいえない
⇒原審の判断は結論において是認することができる。
⇒原告の上告を棄却。
 
<解説>
そもそも、法は、消費者と事業者との間の情報の質及び量並びに交渉力の格差に鑑み、消費者の利益の擁護を図ること等を目的として(1条)、

事業者等が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、消費者の意思形成に不当な影響を与える一定の行為をしたことにより、消費者が誤認するなどして消費者契約の申込み又は承諾の意思表示をした場合には、当該消費者はこれを取り消すことができることとし(4条1項~3項、5条)
さらに、一定の要件の下で適格消費者団体が事業者等に対して前記行為の差止め等を求めることができることとするもの(12条1項及び2項)。

事業者が、その記載内容全体から判断して消費者が当該事業者の商品等の内容や取引条件その他これらの取引に関する事項を具体的に認識し得るような新聞広告により働きかけを行うときは、その働きかけが個別の消費者の意思形成に直接に影響を与え、これにより当該消費者が誤認するなどして消費者契約を締結することもあると考えられる

事業者等が不特定多数の消費者に向けて働きかけを行う場合を「勧誘」に当たらないとして法の適用対象から一律に除外することは、前記の法の趣旨目的に照らし相当とはいえない。

判例時報2332

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2015年2月18日 (水)

婚礼披露宴実施業者の利用する契約上のキャンセル料条項が消費者契約法9条1号により無効といえないとされた事例

京都地裁H26.8.7   

婚礼披露宴実施業者の利用する契約上のキャンセル料条項が消費者契約法9条1号により無効といえないとし、適格消費者団体の差止請求が棄却された事例 
 
<事案>
適格消費者団体が消費者契約法12条3項に基づき事業者に対してキャンセル料条項を内容とする意思表示の差止め、契約書用紙の破棄を請求し、キャンセル料条項が同法9条1号に違反するかが問題となった事案。 

Yは、消費者とのの間で、挙式披露宴の開催日の1年以上前から挙式披露宴実施契約を締結し、Yの作成に係る契約約款を締結。
消費者は、本件契約を締結すると、申込金10万円をYに支払い、消費者の都合により本件契約を解除する場合には、所定のキャンセル料(これから印刷物、納品済みの物品の実費、外注品等の解約料、手配が完了している別注品の料金を除く部分が本件キャンセル料)を支払う旨の本件キャンセル料条項を規定。
 
<規定>
消費者契約法 第9条(消費者が支払う損害賠償の額を予定する条項等の無効)
次の各号に掲げる消費者契約の条項は、当該各号に定める部分について、無効とする。
一 当該消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項であって、これらを合算した額が、当該条項において設定された解除の事由、時期等の区分に応じ当該消費者契約と同種の消費者契約の解除に伴い当該事業者に生ずべき平均的な損害の額を超えるもの 当該超える部分
 
<争点>
①本件キャンセル料条項のうち、申込金の全部又は一部を本件キャンセル料と定めた部分と消費者契約法9条1号の規制対象
②平均的な損害の額の超過の有無 
 
<判断>
●争点①について:
本件キャンセル料条項は全体が本件契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定めたものとみるのが自然であり、大学の入学金のような地位を取得する対価の性質を有しない
⇒消費者契約法9条1号の規制対象となる。

● 争点②について:
①事業者は契約の相手方である消費者に債務不履行があった場合には、民法416条所定の通常生ずべき損害の賠償を請求でき、この損害には逸失利益が含まれる
同法420条に基づき損害賠償の額を予定することが許容されていること
③消費者契約法9条1号の規定は、前記の債務不履行の損害賠償の場合と別異に解する理由がないこと
同法9条1号の平均的損害には逸失利益が含まれる

本件キャンセル料の各項目を検討し、本件契約の解除による逸失利益は、本件契約が解除されなかったとした場合の得べかりし利益であり、その算定は本件契約に係る粗利益率を乗じて行うのが合理的

解除された本件契約のうち再販売があったものの損益相殺を行い、本件キャンセル料が平均的損害の額を超えない
⇒本件キャンセル料条項は同法9条1号により無効とはいえない。
 
<解説>
平均的損害には事業者の逸失利益も含まれるとした上、本件のキャンセル料が平均的損害を超えないとし、適格消費者団体の差止め請求を棄却した事例。 

判例時報2242

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2013年2月10日 (日)

携帯電話の解除料条項と消費者契約法

京都地裁H24.11.20   

携帯電話の利用契約の解除料条項が消費者契約法9条1号、10条に違反しないとし、適格消費者団体の差止請求が棄却された事例 
 
<事案>
携帯電話の利用契約が利用者によって解除された場合における解除料に関する条項の差止めが問題になった事件 
携帯電話の利用契約を消費者と締結するに際し、2年間の定期契約とし、2年経過後は自動更新し、更新月の翌月及び翌々月の基本料金を無料とする。
契約期間中に契約を解除する場合には、解除料(9975円)を徴収するが、更新月に解約した場合には解除料の支払を要しない。

<規定>
消費者契約法 第9条(消費者が支払う損害賠償の額を予定する条項等の無効)
次の各号に掲げる消費者契約の条項は、当該各号に定める部分について、無効とする。
一 当該消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項であって、これらを合算した額が、当該条項において設定された解除の事由、時期等の区分に応じ、当該消費者契約と同種の消費者契約の解除に伴い当該事業者に生ずべき平均的な損害の額を超えるもの 当該超える部分
二 当該消費者契約に基づき支払うべき金銭の全部又は一部を消費者が支払期日(支払回数が二以上である場合には、それぞれの支払期日。以下この号において同じ。)までに支払わない場合における損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項であって、これらを合算した額が、支払期日の翌日からその支払をする日までの期間について、その日数に応じ、当該支払期日に支払うべき額から当該支払期日に支払うべき額のうち既に支払われた額を控除した額に年十四・六パーセントの割合を乗じて計算した額を超えるもの 当該超える部分

消費者契約法 第10条(消費者の利益を一方的に害する条項の無効)
民法、商法(明治三十二年法律第四十八号)その他の法律の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比し、消費者の権利を制限し、又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第一条第二項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする。
 
<争点>
消費者契約法9条1号、10条の該当性
①同法適用の可否
②本件解除料条項の同法9条1号の該当性
③本件解除料条項の同法10条前段、後段の該当性 

<判断>
本件解除料条項が契約の中心条項に当たらないとし、消費者契約法の適用を肯定。
同法9条1号所定の損害賠償の予定なしい違約罰に該当するとし、解除料が平均的損害を超えるかについては、民法上損害賠償の予定、違約罰を請求する際には逸失利益の考慮が許されるのが原則であり、本件につきこれを修正する法律の明文の規定はない
⇒逸失利益を考慮できる。

通信料等に関する収入と費用を除き、基本使用料、オプション料、保証料金等の固定的な費用を基礎に逸失利益を算定する等し、当初の解除料、更新料の解除料は平均的損害を超えない
⇒同法9条1号に反しない。

本件解除料条項が消費者契約法10条前段に該当すると認めたものの、同条後段については、最高裁H23.7.15の基準によりつつ、本件の諸般の事情を総合考慮し、当初の更新料、更新後の更新料に関する条項が信義則に反して消費者の利益を一方的に害する場合とはいえない
⇒同条後段の要件を満たさない。

http://www.simpral.com/hanreijihou2013zenhan.html 

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2012年12月25日 (火)

支払料金拡大防止のための通知等による注意喚起をする義務

京都地裁H24.1.12   

電気通信事業者が消費者と締結した携帯電話を利用する電気通信役務提供契約中のインターネット通信サービス利用料が予想外の高額となったことにつき、利用する消費者に対し、その支払料金拡大防止のための通知等による注意喚起をする義務を怠ったとして、消費者に対する債務不履行による損害賠償責任が認められた事例

<事案>
・・・アクセスインターネットの利用料金は、「パケットし放題」の対象となるサービスではなく、「パケットし放題」に加入している利用者についても月々の通信料金の上限額が定められていなかった。

Xは、右通信料金に関し、Yに対し、
①本件契約における通信料金を定める契約条項のうち一般消費者が前記サービスを利用する際に通信料金として通常予測する額である1万円を超える部分は、消費者契約法10条若しくは公序良俗に反し無効であると主張して、不当利得の返還を請求し、または、
②Yが、本件契約に関し、Xに対し、アクセスインターネットを利用する際の通信料金を具体的に説明する義務若しくはアクセスインターネットの利用により通信料金が高額化することを防止するための措置を採るべき義務の履行を怠ったと主張して、本件契約の債務不履行による損害賠償を請求。

<規定>
消費者契約法 第10条(消費者の利益を一方的に害する条項の無効)
民法、商法(明治三十二年法律第四十八号)その他の法律の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比し、消費者の権利を制限し、又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第一条第二項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする。

<判断>
①本件契約中の通信料金に関する条項は消費者契約法10条前段が定める要件には該当しない。
②公序良俗違反の主張も否定。
③Yは、本契約上の義務として、Xがアクセスインターネットを利用するに先立ち、同サービスを利用することにより高額な料金が発生する可能性があることにつき、情報提供をする義務を負う。
本件では、Yは本件契約に基づき要求される範囲の説明・情報提供をしたと認めるのが相当。

④Yは、本件契約条の付随義務として、Xの予想外の通信料金の発生拡大を防止するため、右パケット通信料金が発生した事実をメールその他の手段によりXに告知して注意喚起をする義務を負う。

Yは、遅くともXのアクセスインターネットの利用によるパケット通信料金が5万円を超過した平成20年3月30日午後8時の段階において、Xが誤解や不注意に基づきアクセスインターネットを利用し、通信料金が予想外に高額化したことを容易に認識したといえるから、Yは、遅くとも同月31日午後7時までには、Xに対し、パケット通信料金が5万円を超過していることをメールその他の方法により、Xに通信料金の高額化に関する注意喚起をする義務があった。

Yは右義務があるにもかかわらず、Xの累積パケット通信料金が10万円を超過した翌日である同年4月1日になって初めて、その旨の警告メールを原告に送信

Yには右義務違反があるとして、同年3月31日午後7時以降に発生した通信料金相当額(15万3055円)についてはYの債務不履行と相当因果関係にある損害として、その限りでXの請求を認容(過失相殺3割)。

<解説>
本件は、携帯電話の加入者が利用したサービスに関して高度の請求を受けた事案について、電気通信役務を提供する通信事業者が加入者に対する通信料金の高額化に関する注意喚起をする義務違反があったとして、加入者に対する損害賠償を認めた例。 
総務省及び消費者庁は、平成22年3月18日付けで「携帯電話の契約時のトラブルと消費者へのアドバイス」を公表しており、その中で、定額制プランに加入していても、パソコンに携帯電話をつないでインターネットに接続する場合は、定額制プランの対象外となる場合があることが指摘されている。

http://www.simpral.com/hanreijihou2012kouhan.html

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