民事執行

2015年6月 3日 (水)

執行官が無効な入札をした者を最高価買受申出人と定めたとして売却不許可決定がされ、これが確定した場合に、当初の入札までの手続を前提に再度の開札期日を開くこととした執行裁判所の判断(肯定)

最高裁H26.11.4   

不動産強制競売事件の期間入札において、執行官が無効な入札をした者を最高価買受申出人と定めたとして売却不許可決定がされ、これが確定した場合に、当初の入札までの手続を前提に再度の開札期日を開くこととした執行裁判所の判断に違法がないとされた事例 
 
<事案>
不動産強制競売事件の期間入札において、最高買受申出人と定められた者の入札が無効であるとして売却不許可決定がされ、これが確定した後、改めて入札を実施することなく、当初の入札までの手続を前提に再度の開札期日を開くこととした執行裁判所の判断に違法があるとして、再度の開札期日において最高価買受申出人と定められた者が受けた売却許可決定に対し、債務者が執行抗告をした事案。 
 
<規定>
民執法 第69条(売却決定期日)
執行裁判所は、売却決定期日を開き、売却の許可又は不許可を言い渡さなければならない。
 
民執法 第71条(売却不許可事由)
執行裁判所は、次に掲げる事由があると認めるときは、売却不許可決定をしなければならない。
七 売却の手続に重大な誤りがあること
 
<原審>
本件競売事件において、当初の入札までの手続を前提に再度の開札期日を開くこととした執行裁判所の判断が不合理で違法なものということはできない
⇒執行抗告を棄却 
   
Xが、原審の判断は、再度の入札において本件不動産がより高額で売却されることに対するXの利益を一方的に侵害するもので違法であるなどとして、抗告許可の申立て⇒原審はこれを許可
 
<判断>
不動産強制競売事件の期間入札において、最高の価額で買受けの申出をしたAの入札が無効であるのに、執行官がこれを誤って有効と判断しAを最高価買受申出人と定めたため、執行裁判所がAに対する売却不許可決定をし、これが確定した場合に、
上記期間入札において入札をしたのはAとBのみであった、
Bは、上記売却不許可決定の確定後、なお買受けを希望し、既に返還を受けた買受の申出の保証につき執行裁判所の定める期間内に再度提供する旨を明らかにしていた、
③他にBの入札を無効とすべき事情があったとはうかがわれない

など判示の事情の下においては、当初の入札までの手続を前提に再度の開札期日を開くこととした執行裁判所の判断に違法はない

Xの抗告を棄却。
 
<解説>
不動産競売事件の期間入札において、執行官が特定の入札の有効無効についての判断を誤った結果、正当な最高価買受申出人でない者を最高価買受申出人と定めてしまった場合:
①執行官が、最高の価格での入札が無効であるのにこれを誤って有効と判断した結果、その入札人を最高価買受申出人と定めた場合(低額入札人型
最高の価格で入札が有効であるのにこれを誤って無効と判断した結果、他の入札人を最高価買受申出人とさだめた場合(高額入札人型

いずれの場合でも、執行裁判所は、最高価買受申出人に対する売却を不許可とすることとなる(民執法69条、71条7号)。
but
売却不許可決定が確定した後の売却の手続については、これを直接定める規定がない。
 
最高裁H22.8.25:
高額入札人型の場合について、執行裁判所は、誤って最高価買受申出人と定められた者に対する売却を不許可とした上で、当初の入札までの手続を前提に改めて開札期日等を定め、執行官が再び開札期日を開いて最高価買受申出人を定め直すべきであるとした。

執行裁判所は、改めて開札期日を定めるに当たり、期限を定めて買受けの申出の保証を提供させれば足りるとして、いわば明文規定の欠缺を解釈で補ったもの。

特定の入札の有効無効に関する執行官の判断の誤りにより売却の手続全体が瑕疵を帯びるわけではなく、その瑕疵が治癒されれば当初の売却の手続を続行するのに何ら支障はない
最高価買受申出人と定められ売却許可決定を受けられるはずであった入札人の保護

but
低額入札人型における売却不許可決定確定後の売却の手続については、なお残された課題とされていた。

本件では、最高裁において、本決定に先立ち、XにおいてBのために1億円を供託したときは、本件について終局の裁判があるまで原々決定(売却許可決定)の効力を停止する旨の決定(民訴法337条4項、336条3項、334条2項)。

①平成22年決定で残された種々の法律問題を含むもの
売却許可決定は原決定の告知により直ちに確定し、その効力が生じているため、許可抗告事件の審理中であっても代金納付によりBに所有権が移転してしまう

判例時報2253

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2014年2月 6日 (木)

現況調査を行った執行官の注意義務違反(否定)

東京地裁H25.4.24   

不動産競売手続において建物、敷地が売却されたところ、車庫内の自動車から遺体が発見された場合、現況調査を行った執行官の注意義務違反が否定された事例 

<規定>
民事執行法 第57条(現況調査)
執行裁判所は、執行官に対し、不動産の形状、占有関係その他の現況について調査を命じなければならない。

民事執行規則 第29条(現況調査報告書)
執行官は、不動産の現況調査をしたときは、次に掲げる事項を記載した現況調査報告書を所定の日までに執行裁判所に提出しなければならない。
一 事件の表示
二 不動産の表示
三 調査の日時、場所及び方法
四 調査の目的物が土地であるときは、次に掲げる事項
イ 土地の形状及び現況地目
ロ 占有者の表示及び占有の状況
ハ 占有者が債務者以外の者であるときは、その者の占有の開始時期、権原の有無及び権原の内容の細目についての関係人の陳述又は関係人の提示に係る文書の要旨及び執行官の意見
ニ 土地に建物が存するときは、その建物の種類、構造、床面積の概略及び所有者の表示
五 調査の目的物が建物であるときは、次に掲げる事項
イ 建物の種類、構造及び床面積の概略
ロ 前号ロ及びハに掲げる事項
ハ 敷地の所有者の表示
ニ 敷地の所有者が債務者以外の者であるときは、債務者の敷地に対する占有の権原の有無及び権原の内容の細目についての関係人の陳述又は関係人の提示に係る文書の要旨及び執行官の意見
六 当該不動産について、債務者の占有を解いて執行官に保管させる仮処分が執行されているときは、その旨及び執行官が保管を開始した年月日
七 その他執行裁判所が定めた事項
 
<判断>
現況調査において執行官が調査すべき事項は、不動産の形状、占有関係その他の現況(民執法57条1項)であり、具体的に調査すべき事項は民事執行規則29条1項所定の事項であるところ、調査の目的物が建物である場合に、建物内に自動車が置かれているときは、占有の態様としてこれを調査し、現況調査報告書に、建物の内部に自動車が存在していることを記載すべきであるが、自動車の内部が当然に調査の対象となるものではない

執行官が本件自動車の内部を確認しなかったが、その内部の調査を必要とする特段の事情があったとは認められない
⇒本件自動車の内部を調査しなかったことが、通常の調査方法を逸脱するものとはいえない。

執行官の注意義務違反を否定し、Xの本訴請求を棄却。

<解説>
執行官は、執行裁判所の命により競売不動産の現況を調査しなければならないが(民執法57条1項)、その調査を実施するにあたっての注意義務について、

最高裁H9.7.15:
執行官がは、現況調査を行うに当たり、通常行うべき調査方法を採らず、あるいは、調査結果の十分な評価、検討を怠るなど、その調査及び判断の過程が合理性を欠き、その結果、現況調査報告書の記載内容と目的不動産の実際の状況との間に看過し難い相違が生じた場合には、目的不動産の現況をできる限り正確に調査すべき注意義務に違反したものというべき。 

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2013年3月14日 (木)

買受けの申出時に所有権が移転していた場合の民執法75条1項の類推の可否

東京高裁H24.9.28   

借地権付き建物の競売において、敷地所有者が物件明細書で国(財務省)と記載されていたが、買受けの申出時においては他の者に所有権が移転していた場合の民事執行法75条1項の類推適用の可否

<事案>
借地権付き建物の競売において、最高買受人となったAが、物件明細書には敷地所有者が国(財務省)とされていたにもかかわらず、買受けの申出時においてはその所有権が建物の所有者であるBに移転していたとして、民事執行法75条1項に基づき、売買の不許可の申出をした。 

①Aは民執法75条1項に基づき、売却の不許可の申出⇒原審裁判所は、本件売却許可決定⇒②Aは同法71条5号の事由があると主張して、執行抗告⇒原審裁判所は、右抗告手続において、再度の考案をし、本件売却許可決定を取り消した上、売却を不許可する旨の決定(原決定)⇒③本件競売の申立人である抗告人が、再度の考案に基づく右原決定を不服として執行抗告

<規定>
民事執行法 第75条(不動産が損傷した場合の売却の不許可の申出等)
最高価買受申出人又は買受人は、買受けの申出をした後天災その他自己の責めに帰することができない事由により不動産が損傷した場合には、執行裁判所に対し、売却許可決定前にあつては売却の不許可の申出をし、売却許可決定後にあつては代金を納付する時までにその決定の取消しの申立てをすることができる。ただし、不動産の損傷が軽微であるときは、この限りでない。

民事執行法 第71条(売却不許可事由)
執行裁判所は、次に掲げる事由があると認めるときは、売却不許可決定をしなければならない。
五 第七十五条第一項の規定による売却の不許可の申出があること。

<判断>
①Aの法的地位は敷地所有者が国であろうとBであろうと変わりはない
②本件建物の評価にも影響はない
③敷地所有者が誰であるかは物件明細書の法定記載事項ではなく、買受人の自己責任の範囲

敷地所有者が物件明細書では国(財務省)と記載されていたが、買受けの申出時においては他の者に所有権が移転してたことは、民執法75条1項の事由に該当せず、同項を類推適用することはできない

http://www.simpral.com/hanreijihou2013zenhan.html

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2012年12月 6日 (木)

建物の区分所有等に関する法律59条所定の競売を命じる判決に基づく競売と民執法63条

東京高裁H16.5.20

建物の区分所有等に関する法律59条所定の競売を命じる判決に基づく競売につき、消除説を前提としつつも、
①競売請求を認容した確定判決が存在する以上、この判決に基づく競売においては、売却を実施して、当該区分所有者からの区分所有権を剥奪する目的を実施する必要がある
②区分所有者は、競売請求を受ける可能性を内在した権利というべきであり、区分所有権を目的とする担保権は、このような内在的制約を受けた権利を目的にするにすぎない

手続費用を弁済することすらできないと認められる場合でない限り民執法63条は準用されない

執行実務は、区分所有法59条に基づく競売については、消除説を前提としつつも民執法63条(無剰余取消し)を準用しない取扱い

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共有物分割のための不動産競売と民執法63条(無剰余取消し)

最高裁H24.2.7

本決定は、共有物分割のための不動産競売について、「民事執行法59条が準用されることを前提として同法63条が準用されるものとして原審の判断は、正当として是認することができる」として、共有物分割のための不動産競売の手続に、同法59条及び63条が準用されることを明示的に判示して、現在の実務の一般的な取扱を是認したもの。

条文解釈上の無理が少なく、また、買受人の地位を安定させることができる消除説を採用し、これを前提とする以上、担保権者の換価時期の選択の利益を保護する必要があるから、民執法63条を準用することとしたものと推測される。

<解説>

共有物分割のための不動産競売の手続において、無剰余取消しに関する民執法63条が準用されるか?

その前提として、目的不動産上に存する抵当権等の負担は売却により消滅すると定めた民執法59条(売却に伴う権利の消滅)が準用されるか? 

A:引受説(従来の通説・実務)
形式的競売全般につき同法59条の準用を否定し、目的不動産に設定された権利関係を買受人が引き受ける

形式的競売は、債権者の満足を目的とする手続ではない
vs.
①売却後も複雑な権利関係が残り、買受人の地位が不安定となるため、売却を促進できない。
②現行法上、担保権の負担内容を明らかにするための職権での調査方法がない

○B:消除説(現在の実務)
形式的競売全般に民執法59条を準用し、権利関係は消滅する。

C:二分説(中野)
形式的競売を、当該財産から弁済を受け得る各債権者に対して一括して弁済することを目的とする清算型と、それ以外の換価型とに分類
清算型については消除説
後者については、担保権を消滅させる必然性がないのに担保権のみならずこれに劣後する用益権を消滅させるのは行き過ぎ

共有物分割のための不動産競売は引受説による。

民執法63条(無剰余取消し)の適用
消除説⇒担保権者を害さないため同条準用

引受説⇒担保権者を害することにはならないとしても、手続費用も賄えない無益執行を防止するため同条準用

http://www.simpral.com/hanreijihou2012kouhan.html

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形式的競売の手続き

形式的競売の手続につき、民執法195条は、「担保権の実行としての競売の例による」と規定するのみ。
形式的競売については、その競売の実体権ないしその目的が多種多様⇒具体的にどのような手続によって競売を実施するかは、当該競売手続の趣旨・目的・性質等に応じた個別的な解釈にゆだねられている。

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