現況調査を行った執行官の注意義務違反(否定)
東京地裁H25.4.24
不動産競売手続において建物、敷地が売却されたところ、車庫内の自動車から遺体が発見された場合、現況調査を行った執行官の注意義務違反が否定された事例
<規定>
民事執行法 第57条(現況調査)
執行裁判所は、執行官に対し、不動産の形状、占有関係その他の現況について調査を命じなければならない。
民事執行規則 第29条(現況調査報告書)
執行官は、不動産の現況調査をしたときは、次に掲げる事項を記載した現況調査報告書を所定の日までに執行裁判所に提出しなければならない。
一 事件の表示
二 不動産の表示
三 調査の日時、場所及び方法
四 調査の目的物が土地であるときは、次に掲げる事項
イ 土地の形状及び現況地目
ロ 占有者の表示及び占有の状況
ハ 占有者が債務者以外の者であるときは、その者の占有の開始時期、権原の有無及び権原の内容の細目についての関係人の陳述又は関係人の提示に係る文書の要旨及び執行官の意見
ニ 土地に建物が存するときは、その建物の種類、構造、床面積の概略及び所有者の表示
五 調査の目的物が建物であるときは、次に掲げる事項
イ 建物の種類、構造及び床面積の概略
ロ 前号ロ及びハに掲げる事項
ハ 敷地の所有者の表示
ニ 敷地の所有者が債務者以外の者であるときは、債務者の敷地に対する占有の権原の有無及び権原の内容の細目についての関係人の陳述又は関係人の提示に係る文書の要旨及び執行官の意見
六 当該不動産について、債務者の占有を解いて執行官に保管させる仮処分が執行されているときは、その旨及び執行官が保管を開始した年月日
七 その他執行裁判所が定めた事項
<判断>
現況調査において執行官が調査すべき事項は、不動産の形状、占有関係その他の現況(民執法57条1項)であり、具体的に調査すべき事項は民事執行規則29条1項所定の事項であるところ、調査の目的物が建物である場合に、建物内に自動車が置かれているときは、占有の態様としてこれを調査し、現況調査報告書に、建物の内部に自動車が存在していることを記載すべきであるが、自動車の内部が当然に調査の対象となるものではない。
執行官が本件自動車の内部を確認しなかったが、その内部の調査を必要とする特段の事情があったとは認められない
⇒本件自動車の内部を調査しなかったことが、通常の調査方法を逸脱するものとはいえない。
⇒
執行官の注意義務違反を否定し、Xの本訴請求を棄却。
<解説>
執行官は、執行裁判所の命により競売不動産の現況を調査しなければならないが(民執法57条1項)、その調査を実施するにあたっての注意義務について、
最高裁H9.7.15:
執行官がは、現況調査を行うに当たり、通常行うべき調査方法を採らず、あるいは、調査結果の十分な評価、検討を怠るなど、その調査及び判断の過程が合理性を欠き、その結果、現況調査報告書の記載内容と目的不動産の実際の状況との間に看過し難い相違が生じた場合には、目的不動産の現況をできる限り正確に調査すべき注意義務に違反したものというべき。
大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文)HP
真の再生のために(事業民事再生・個人再生・多重債務整理・自己破産)用HP(大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文))
| 固定リンク
| コメント (0)
| トラックバック (0)
最近のコメント