商事

2018年3月20日 (火)

会社が政治資金パーティーへの出席を予定しないことを認識しながらのパーティー券購入と政治資金規正法21条1項の「寄附」

東京高裁H28.7.19      
 
<事案>
A株式会社が国会議員の政治資金パーティーのパーティー券を購入していたことに関して、Aの株主であるXが、Aの取締役として政治対応等を業務の一部とする部署を担当し、その後Aの代表取締役を務めたYに対し、出席する予定がないのに購入したパーティー券の代金相当額を、損害賠償としてAに支払うよう求めた株主代表訴訟。 
 
<主張>
Xは、
主位的には、Aが政治資金パーティーのパーティー券を出席の予定がないのに購入したことが、政治敷規正法上の「寄附」に当たり、会社が正当及び政治資金団体以外の者に対して寄附をすることを禁じている同法21条1項に違反すると主張し、

予備的には、パーティー券の購入を所管する部署の担当取締役であったYには、確実に出席が見込める枚数の限度でのみパーティー券を購入すべき義務、あるいは、国会議員からの違法な便宜供与を受けるなど不当な目的でこれを購入してはならない義務があるのに、これに反してパーティー券を購入した善管注意義務違反がある
と主張。 
 
<判断>
●主位的主張について
本件の対象となったAが購入したパーティー券の中には、Aが当初から出席しないことを見越しながら購入したものが含まれていた。
パーティー券の購入代金の支払は、
その代金額が政治資金パーティーへの出席のための対価と認められるかぎり、政治資金規正ほうにいう「寄附」には当たらないが、
パーティー券の購入代金の支払実態、当該パーティー券に係る政治資金パーティーの実体、パーティー券の金額と開催される政治資金パーティーの規模、内容との釣り合い等に照らして、
社会通念上、それ自体が政治資金パーティー出席のための対価の支払とは評価できない場合にはその支払額全部が、また、支払額が対価と評価できる額を超過する場合にはその超過部分が「寄附」に当たる

but
①政治資金規正法21条1項に違反する「寄附」がされた場合、
寄付をすること及びこれを受けることのいずれも処罰の対象としている(同法26条1号、3号)
⇒同法はこの犯罪類型を刑法上の必要的共犯のうち対向犯として定めていると解される。
②賄賂罪において公務員が賄賂性を認識していなければ同罪が成立しないのと同様、政治資金パーティーへの出席を予定しないことを認識しながらそのパーティー券を購入したとしても、そのことを主催者が認識しておらず、購入されたパーティー券の数に見合った内容の態様で政治資金パーティーを開催した場合は、出席を予定しないパーティー券購入者が支払った代金についても、主催者においては「寄附」に当たるものということはできない
③政治資金規正法には賄賂申込罪に相当するような犯罪類型は定められていない

購入されたパーティー券に出席を予定しないものが含まれていることを主催者が個別的に把握し、その寄附性を認識していない限り、パーティー券購入者についても「寄附」に当たるものということはできない

本件においては、政治資金パーティーの主催者においてAが当該パーティー券につき従業員等を出席させない予定であることを認識しながら購入するものであることを認識していたと認めるに足りる証拠はない。

Aが出席を予定しない本件パーティー券の購入代金として主催者に支払った金額が「寄附」に当たるものと認めることはできない。

●予備的主張について
①Aの規模・社会的立場と購入したパーティー券の数量を踏まえるとAの購入したパーティー券の枚数や金額自体が不相応であるとは認められない
②パーティー券の購入は正式な社内手続を経て行われており、購入が不適正にならないよう配慮していた
③およそ購入枚数に見合うだけの人数の参加が想定できないようなパーティー券を購入しているものとは認められない
④主催者がAに出席の予定がないとの認識を抱く蓋然性を基礎づける事実を認めるに足りる証拠はなく、Aによる本件パーティー券購入が「寄附」に当たる相当のリスクを負う行為であったとまでは認められない

本件パーティー券の購入についてYにそれを差し控えるべき注意義務があるとまでは認められない。

国会議員からの違法な便宜供与を受けるなど不当な目的でこれを購入してはならない義務違反があるとの主張に対し、
本件パーティー券の購入が保険金支払問題等につき国会議員から便宜供与を受けることを目的としたものであったことを推認させる事実はこれを認めるに足りる証拠はない

判例時報2355

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2018年3月18日 (日)

会社法21条3項違反⇒差止請求・損害賠償請求(認容)

知財高裁H29.6.15      
 
<事案>
Xが、Yに対し、 Yからウェブサイトを利用した婦人用中古衣類の売買を目的とする事業を譲り受けたところ、
Yが、不正の競争の目的をもって、Xに譲渡した事業と同一の事業を行い、Xに損害を与えた

会社法21条3項に基づき、前記事業の差止めを求める。
不法行為による損害賠償請求として801万972円及びこれに対する不法行為の後の日である平成27年2月26日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案。
 
<規定>
会社法 第21条(譲渡会社の競業の禁止) 
事業を譲渡した会社(以下この章において「譲渡会社」という。)は、当事者の別段の意思表示がない限り、同一の市町村(東京都の特別区の存する区域及び地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十二条の十九第一項の指定都市にあっては、区。以下この項において同じ。)の区域内及びこれに隣接する市町村の区域内においては、その事業を譲渡した日から二十年間は、同一の事業を行ってはならない
2 譲渡会社が同一の事業を行わない旨の特約をした場合には、その特約は、その事業を譲渡した日から三十年の期間内に限り、その効力を有する。
3 前二項の規定にかかわらず、譲渡会社は、不正の競争の目的をもって同一の事業を行ってはならない。
 
<原審>
Yが、不正の競争の目的をもって、Xに対して譲渡した事業と同一の事業を行った⇒会社法21条3項に基づき、事業の差止請求を認容。
but
不法行為による損害賠償請求については、損害の発生が認められないとして棄却。 
 
<判断>
Yが、不正の競争の目的をもって、Xに対して譲渡した事業と同一の事業を行った⇒原審と同様に会社法21条3項に基づく事業の差止請求を認容。

損害賠償請求について
①Yは、本件譲渡契約の締結の前にYサイトのドメインを取得し、譲渡契約の締結と前後してYサイトにおいて、譲渡契約の対象となったサイトと同様の商品の売買を目的とする営業を開始
②本件サイトとYサイトの取扱商品は相当程度共通
③Xが営業を休止している間に100名程度の顧客にメールを送付して、運営主体の変更を告知することなく、Yサイトの開設を告知
④その結果、本件サイトとYサイトは姉妹ショップであると誤認する顧客が実際に出現している
本件サイトの売上実績は、Xが本件サイトの事業を開始した直後から大幅に減少

Yの違法行為の結果、本件サイトの顧客の一部が失われ、その結果、Xに損害が発生したものと認めるのが相当。

Yの不法行為と相当因果関係のある期間は、12か月であると認めるのが相当。
①損害額については、譲渡契約の前後の月額平均粗利の差額から月平均販売管理費を控除した額は49万6508円(12か月分に相当する金額は595万8096円)
②譲渡契約後の本件サイトの販売実績が同契約締結前より低下したことについては、Xの商品知識や経験の乏しさ、Xが本件ウェブページのデザインの変更をせず、ブログやツイッターを利用することもしなかったことなども相当程度影響した

民訴法248条により、損害額を、前記595万8096円の約3割に相当する178万7400円と認定し、弁護士費用相当額を加えた、合計196万7400円及びこれに対する遅延損害金の限度で認容。
 
<解説>
本判決の原審は、「不正の競争の目的」の意義を、「譲渡会社が譲受人の事実上の顧客を奪おうとするなど、事業譲渡の趣旨に反する目的で同一の事業をするような場合を指すものと解するのが相当である」と定め、Yには「不正の競争の目的」があったと判断。

判例時報2355

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2018年2月 7日 (水)

対象会社による公告後の譲受者による売買価格の決定の申立ての可否

最高裁H29.8.30      
 
<事案>
Aは、振替株式を発行しているB(「本件対象会社」)の株式を公開買付けにより取得⇒会社法179条1項の特別支配株主となり、
平成27年12月、
本件対象会社に対し、
同項の規定による株式売渡請求をしようとする旨、
株式売渡請求によりその有する株式を売り渡す株主(「売渡株主」)に対して、その株式(「売渡株式」)の対価として交付する金銭の額(「対価の額」)等、
法179条の2第1項各号に掲げる事項を通知。 

本件対象会社は、上記の通知に係る株式売渡請求を承認し、法179条の4第1項1号及び社債、株式等の振替に関する法律161条2項に基づき、上記の承認をした旨、対価の額等、法179条の4第1項1号に定める事項について公告をした。

抗告人は、本件公告後に、本件対象会社の売渡株式のうち3000株(「本件株式」)を譲り受けた。

Xが本件株式について法179条の8第1項に基づく売買価格の決定の申立てをすることができるか否かが争われた。
 
<判断>
法179条の4第1項1号の通知又は同号及び社債振替法161条2項の公告がされた後に法179条の2第1項2号に規定する売渡株式を譲り受けた者は、
法179条の8第1項の売買価格の決定の申立てをすることができない
。 
 
<解説> 
●問題の所在 
特別支配株主による株式等売渡請求の制度:
特別支配株主において、株式等売渡請求に係る株式を発行している対象会社の株主総会の決議を要することなくキャッシュ・アウトを行うことを可能とする制度。

株式等売渡請求⇒売渡株主等は、裁判所に対し、その有する売渡株式等について売買価格決定の申立てをすることができる(法179条の8第1項)。
but
本件のXように対象会社による売渡株主への通知又は公告後に売渡株式を譲り受けた者が上記の申立てをすることができるか?
 
●株式売渡請求の制度について
◎ 従前の実務:
キャッシュ・アウトの手法として全部取得条項付種類株式の取得(法171条1項)の方法
vs.
これによる場合は、常に対象会社の株主総会の特別決議を要する
⇒キャッシュ・アウトの完了までに長時間を要し、時間的・手続的コストが大きい。

機動的なキャッシュ・アウトを可能とするため、
平成26年改正において、
対象会社の総株主の議決権の10分の9以上を有する特別支配株主が、対象会社の株主総会決議を要することなく少数株主に対してその保有する対象会社の株式を売り渡すよう請求することができる、株式売渡請求の制度
 
◎株式売渡請求は、一種の形成権の行使。
対象会社の承認(法179条の3第1項)を経て、対象会社から少数株主(売渡株主)に対し、株式売渡請求に関する所定事項についての通知又は公告(法179条の4第1項1号、社債振替法161条2項)
特別支配株主から売渡株主に対して株式売渡請求がされたものとみなされ(法179条の4第3項)、これにより、売渡株主の個別の承諾を要することなく、特別支配株主と売渡株主との間に売渡株式についての売買契約が成立したと同様の法律関係が生じる。

特別支配株主が定めた取得日(法179条の2第1項5号)に、法律上当然に、売渡株主から特別支配株主への売渡株式の譲渡の効力が生じ、特別支配株主が売渡株式の全部を取得(法179条の9第1項)。 

株式売渡請求がされることにより、対象会社の少数株主は、その意思にかかわらず自らの有する対象会社の株式を売り渡すことになる。

売渡株主の利益を保護するため、
(1)株式売渡請求には対象会社の承認を要すること(法179条の3)等とされ、
(2)売渡株主がその利益を確保する方法として、
①売渡株式の取得の差止請求(法179条の7)
②売買価格決定の申立て及び
③売渡株式の取得の無効の訴え(法846条の2)
が規定。
 
対象会社による売渡株主への通知又は公告後に売渡株式を譲り受けた者が売買価格決定の申立てをすることの可否 

株式売渡請求の手続において基本的に保護の対象として想定されている株主は、対象会社の通知又は公告によって、自らの意思にかかわらず特別支配株主に株式を売り渡す立場に置かれることになる株主(=対象会社の通知又は公告の時点における株主)
②裁判所による価格決定の効力は申立てに係る売渡株式についてのみ生ずると解されている⇒売渡株式の売買価格の適正を一般的に図るために申立権をより広く認めるべきとの要請があるとは考え難い
③対象会社の通知又は公告によって株式売渡請求の事実や具体的な対価の額等が対外的にも明らかになった後にあえて売渡株式を譲り受けた者に、当該対価の額に関して不服をいう機会を与える必要はない。

売買価格決定の申立てをすることができる株主は、通知又は公告の時点における株主であるとするのが相当であり、通知又は公告後に売渡株式を譲り受けた者は、売買価格決定の申立てによる保護の対象として想定されておらず、同申立てをすることができないと解するのが相当。

判例時報2352

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2018年1月27日 (土)

AIJ投資顧問年金資産消失事件で社外取締役の監視義務違反と常勤監査役の監査義務違反(否定)

東京地裁H28.7.14      
 
<事案>
いわゆるAIJ投資顧問年金資産消失事件に関連して、年金基金等に外国投資信託の受益証券を販売していた証券会社Aの代表取締役であったBにおいて同受益証券の一口当たりの純資産の額を偽るなどしたため、同受益証券を購入した年金基金等に対して合計235億円強の損害賠償義務を負担するという損害を被った
⇒Aの破産管財人XがAの社外取締役であったY1及び常勤監査役であったY2に対して損害賠償を請求。 

Xは、Y1には代表取締役の職務執行に対する監視義務違反があると主張し、Y2には同職務執行に対する監査義務違反があるとし、会社法423条1項に基づき、連帯して前記損害の一部である1億円の支払を求めた。
 
<規定>
会社法 第423条(役員等の株式会社に対する損害賠償責任) 
取締役、会計参与、監査役、執行役又は会計監査人(以下この節において「役員等」という。)は、その任務を怠ったときは、株式会社に対し、これによって生じた損害を賠償する責任を負う
 
<Xの主張>
Yらには、
①平成21年3月17日の取締役会において本件ファンドの一口当たりの純資産額に関する客観的かつ合理的な調査を行うよう上程すべき義務違反、
②同年7月頃本件ファンドの一口当たり純資産額に関して外部の第三者に対し調査を行うべき義務違反
③平成23年8月9日の取締役会において本件ファンドが顧客から解約請求を受けた際に同請求に係る口数を別の顧客等に対して相対取引の形で売却していたことの継続に関する客観的かつ合理的な調査を行うよう上程すべき義務違反
が認められる。 
 
<判断>
本件において、Yらに監視義務ないし監査義務の違反があるというためには、
Yらが、
本件ファインドの販売活動においてBが虚偽の一口当たり純資産額を用いていることを認識していたか、
又は少なくともこれを発見することができ若しくはこれに疑いを抱かせる事情が存在し、
かつ、Yらが当該事情を知り得たことが必要。

本判決が認定した事実には
①平成19年度及び平成20年度は日本株の期間騰落率が大きくマイナスとなっていたにもかかわらず、本件ファンドが高い収益を上げていたこと
②ある新興ヘッジファンドが急激な下落相場の中で不自然なほとに安定したリターンを出し続けているとして金融庁等が強い関心を示しているという内容の業界紙記事が平成21年3月17日の取締役会に報告されていたこと
③本件ファンドについて同年7月に100億円の解約請求があり、Yらもこの事実を認識していたと認められること
④相手取引の過程で、ファンド設置会社が顧客から一時的に本件ファンドを買い取ることがあったが、そのような買取りによってファンド設定会社が保有するに至った本件ファンドの在庫額は平成21年7月時点で約190億円になっており、Yらはこの事実を認識していたと推認されること
⑤平成22年3月頃及び平成23年3月頃にAが受ける信託報酬が引き下げられたこと、
⑥同年6月24日、Aはファンド設定会社に8億円を無担保で貸し付け、同年7月21日の取締役会で貸付金の弁済を受けた事実が報告されたこと
が含まれる。
but
Xが主張する前記各時点のいずれにおいても、本件ファンドについて虚偽の内容の一口当たりの純資産額が用いられていることを発見することができる事情又はこれに疑いを抱かせる事情が存在したということはできない

Yらには、①②③のいずれについても、Xの主張するような義務があったとはいえない
⇒Xの請求をいずれも棄却。

判例時報2351

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2017年12月30日 (土)

会社法2条6号「大会社」となったにもかかわらず、会計に限定した非常勤監査役を選任していた場合の同監査役の責任等(和牛預託商法)

大阪高裁H29.4.20      
 
<事案>
原告らは、平成15年6月から平成23年7月までの間にオーナー契約を締結し、本件会社に投資した顧客。
投資総額4億2980万円の大半が焦げ付いた⇒違法な資金集めに関与したとする個人の賠償責任を追及する本件訴訟を提起。
本件被告とされたのは、有限会社時代の従業員(平)取締役であったY3とY1、株式会社移行後に選任された非常勤監査役Y2のほか、関連会社の役員であった多数の者。
 
<判断> 
●従業員(平)取締役Y3及びY1の責任 
◎原判決 
Y3について:
取締役退任から原告らの契約締結時期まで4年以上が経過⇒Y3の義務懈怠と原告らの損害との間に相当因果関係が認められない
⇒Y3に対する請求を棄却。

Y1について:
新たなオーナ―契約の募集を止めるよう代表取締役に進言するなどの措置を講じるべき義務があったのに、重過失によりその義務を懈怠
⇒Y1に対する請求を全部認容
 
◎判断 
①Y3・Y1が繁殖牛不足の事実を知ることが困難であった
②Y3・Y1が置かれていた状況に照らせば、違法なオーナー契約の勧誘を止めさせるための行動を起こすこと(職務上の義務を履行すること)が極めて困難であった

そうしなかったこと(職務上の義務懈怠)につき重大な過失は認められない
⇒Y3、Y1の第三者責任を否定。
 
●非常勤監査役Y2の責任 
◎事案 
Y2は、株式会社に移行した直後の平成21年9月(60歳時)、本件会社の非常勤監査役に就任。
本件会社の定款には、監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定めがあり、Y2と本件会社は監査の範囲を会計に限定して監査役就任契約を締結。
but
本件会社は、株式会社移行時、既に負債が200億円以上の大会社(会社法2条6号)⇒本来なら会計監査人と監査役の両方を置かなければならず(同法327条3項、328条2項、329条1項)、監査役の監査の範囲を会計に限定することができないはず(同法389条1項)。
Y2は、平成22年5月頃、同年3月期決算の打ち合わせにおいて初めて、本件会社が負債200億円以上の大会社であり、会計監査人を置く必要があると知り、本件会社の取締役会に対し、会計監査人導入に向けた行動計画を提案したが、本件会社は、そのような態勢を整えようとせず、平成23年8月に経営破綻。
 
◎原審
①平成21年4月の株式会社移行時既に大会社であった⇒本件会社は、それ以後、会計限定監査役を選任することが許されない⇒Y2は(監査役就任契約の内容とは関係なく)法律上当然に業務監査を行う職責を負う
②その職責を果たしていたなら平成22年6月以降のオーナー契約を食い止めることができた可能性がある

Y2は同時期以降に生じた原告らの損害について個人賠償責任を負う。
Y2に対する請求の一部(7062万円)を認容。
 
◎判断 
Y2には業務監査の職責まで負わせられる契約上の根拠がない
業務監査を行う適任者として選任されたのではないY2に業務監査の職責を負わせることは、会社にとって不足であるばかりでなく、Y2にとっても過酷
大会社の監査は、会計監査人と監査役が分業して行うべきなのに、株主が機関選任を懈怠している間、Y2一人に両方の職責を強いる解釈には無理がある
会社法336条4項3号が、通常監査役を置く必要が生じた場合、会計限定監査役の任期を終わらせることにしているのは、会計限定監査役に通常監査役の職責を果たすことを求めない法の姿勢の現れである

Y2の職責は会計に限定されると判断した上で、Y2に対する請求を棄却。
 
<解説>
ワンマン社長が経営を支配する会社の名目取締役について、経営監視義務懈怠を理由に対第三者責任を問うことが可能なのか?
最高裁昭和48.5.22は平取締役の経営監視義務を肯定
but
義務懈怠と第三者の損害の相当因果関係を否定し、あるいは、
義務懈怠についての重大な過失を否定し、
このような取締役の対第三者責任を否定した下級審判例は多い。

●「大会社」であるのに会計限定監査役が選任されている場合に関する監査役の責任の範囲
このような「監査役の権利義務は、業務監査権限を有する監査役としての権利義務であるため・・・その義務を免れることを望む場合には、裁判所に対し、仮監査役の選任の申立てをする必要がある」との学説
but
本判決は異なる見解。

会社法429条1項の責任を逃れたいなら、同法346条2項の仮監査役の選任申立てをしておくべきだったということは非現実的と考えた?

判例時報2348

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2017年10月19日 (木)

企業買収の業務を受託した会社のために作業を行った個人に商法512条により相当な報酬を認めた事案

東京地裁H28.5.13       
 
<事案>
企業買収を受託した事業者のために作業を行った場合における仲介報酬の請求の当否、根拠、報酬額が問題となった事案。 

Y1株式会社(代表者はY2)は、A株式会社から、Aが買い手となり、B投資事業有限責任組合らが売り手となるD株式会社の株式譲渡を行う方法による企業買収につき業務委託を受けた⇒Xは、Y2の指示等によって助言、打ち合わせへの出席、書面の作成等の作業を行った。
AとBらは、Dの株式譲渡契約を締結⇒本件案件が完了した後、Y1は、業務委託契約に基づきAから本件案件の報酬として5250万円を受領。

Xは、Y1、Y2に対し、いずれかから委託を受けて本件案件に関する事務を行ったと主張⇒契約に基づく約定の割合に従った報酬として、又は商法512条による相当な報酬として前記報酬の半額の支払を請求。
 
<争点>
①XがY1、Y2のいずれと業務委託契約を締結したか
②同契約上Y1の受け取る報酬の半額を報酬とする合意があったか
③合意がない場合における相当な報酬額はいくらか 
 
<規定>
商法 第512条(報酬請求権)
商人がその営業の範囲内において他人のために行為をしたときは、相当な報酬を請求することができる。
 
<判断>
①本件案件に関する取引の経過、②Y2とXのやり取り、③Xの作業等を認定し、本件案件がY1の業務であった

XがY1から本件案件の交渉、書面作成、検討、助言等の業務を委託したものと認め、Y1とXとの間の報酬に関する合意の成立を否定
but
商法512条を適用
Xの行った作業の内容を検討
Y1が取得した報酬金額の15%程度に当たる800万円が相当な報酬額であると認める等して、Y1に対する請求を一部認容

Y2に対する請求は棄却。

判例時報2340

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2017年10月12日 (木)

株式交換の効力発生日後に株式買取請求が撤回された場合

東京高裁H28.7.6       
 
<事案>
Y株式会社は、その親会社A株式会社との間で、Yを株式交換完全子会社とする株式交換を行った。
Yの株主であったX1ないしX3は、本件株式交換に反対して株式買取請求をしたが、買取価格の合意には至らず、本件株式交換の効力発生日から60日以内に価格決定の申立てもされなかった。
Xらは、その後、本件各株式買取請求を撤回

XらがYに対して、
①主位的に、Xらが株式交換完全親会社であるAの株式を取得していると主張⇒Aの株式をXらの指定する証券保管振替機構の口座へ振り返るよう指示すること及びAの配当金の支払を請求

予備的に
②XらがAの株式を取得していることが認められない場合、XらがYの株主であることの確認とYの株主名簿への記載及びYの配当金の支払(予備的請求1)
③主位的請求のうち口座振替指図が認められない場合、これに代わる金員の支払とAの配当金の支払(予備的請求2)
④予備的請求1のうちYの株式であることの確認・株主名簿への記載が認められない場合、これに代わる金員の返還とYの配当金の支払(予備的請求3)
を求めた。
 
<原審>
Xらによる株式買取請求の後、株式交換の効力発生日に買取の効力が生じ、Xらが有していたY株式は同効力発生日に完全子会社Yを経て完全親会社Aに移転
⇒Xらは完全子会社Yの株主にも完全親会社Aの株主にもなることはない。

Xらは完が株式買取請求を撤回したからといってYの株主の地位を回復するものではない

XらがA又はYの株主であることを前提とする上記①~③の各請求を棄却。

株式交換の効力発生日後に株式買取請求が撤回された場合には、完全子会社には原状回復義務として完全子会社の株式を返還する義務が生じる
but
②完全親会社が完全子会社の株式を取得している

当該義務は履行不能となり、結局、完全子会社は、株式買取請求に係る株式の価格相当額返還義務を負うことになる。

Xらの請求④のうちXらが有してたY株式の価格相当額の支払を求める請求の一部は理由がある。

その金額は、
株式買取請求を撤回した時点においてY株式の現物返還は履行不能であり、株主は金銭債権を取得することになる

撤回時を基準として、その時点におけるY株式の価格相当額を返還すべき。
 
<判断>
原判決のうち、
株式交換の効力発生日後に株式買取請求の撤回があった場合に完全子会社Yは買取請求に係るY株式の価格相当額の金銭を返還する義務を負うことについては支持。
but
YがXらに支払うべき金額は、株式の返還義務が履行不能となったとき、すなわち株式交換の効力発生日を基準として、その時点におけるY株式の価格相当額を返還すべきものと解するのが相当。

Xらによる株式買取請求の撤回時でではなく本件株式交換の効力発生日に最も近く市場取引最終日のY株式の終値にXらの各持株数を乗じた金額の支払をYに命じた

株式買取請求権の撤回時を基準(原審)
vs.
①株式交換に反対して株式買取請求をした者において、株式交換の効力が発生して完全親子会社の関係が生じた後、価格決定の申立てが可能な60日間の様子を見た上で、親会社の株価が上昇傾向を示した場合には価格決定の申立てをしないで買取請求を撤回し、一方、親会社の株価が下落傾向となった場合には価格決定の申立てをして株式買取請求日の評価による買取価額を得ようとするといった対応が可能になる
②これは、会社法が株式買取請求をした者に対して合意によるかあるいは裁判所による適正買取価格の決定に従わせようとしている趣旨に反し、恣意的に利益獲得を認めることにつながり、
③株式交換に反対してこの会社から撤退しようとした者に対し、完全親子関係の創設によって生じた利益を得させることにもつながる
もので相当でない。

判例時報2338

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2017年10月 2日 (月)

株式譲渡契約の価格調整条項に基づく減額・表明保証違反に基づく損害賠償責任

東京地裁H28.6.3      
 
<事案>
一般乗用・貸切旅客自動車運送事業等を営むX株式会社が、税理士Yから株式会社Aの発行済株式の全部を譲り受ける旨の契約を締結⇒株式譲渡の実行後に、その実行前におけるAの純資産の変動及び簿外債務の存在が判明⇒Yに対し、株式譲渡契約上の価格調整条項に基づく譲渡価格の減額及びYの表明保証違反に基づく損害賠償を求めた。 

<判断・解説> 
●株式譲渡契約上の価格調整条項:
基準貸借対照表における純資産額に変動が生じた場合に、それに応じて譲渡価格を増減し、事後的に清算する旨の価格調整条項
X:当該条項に基づき純資産額の減少に伴う譲渡価格の減額を主張
Y:Aの所有不動産の評価額の増加分を考慮すべきとして、純資産額の増加を主張
価格調査条項は、譲渡価格決定の基礎となる財産状況が資産された日(基準日)から実際の株式譲渡日までの間に対象会社の流動資産自体又はその評価に変動が生じる可能性があることを考慮してのもの。

不動産については、基準日から株式譲渡日までの間という比較的短期間(本件では約1ヶ月半)に評価額の変動が生じる可能性は低い⇒譲渡価格の調整に際して考慮すべき資産とはならない。

①Aの所有不動産の評価額が譲渡価格の決定に当たって当事者間で合意されていた。
②基準貸借対照表において、現金化可能な資産など評価額の変動が生じる可能性のある資産・負債の項目に徴が付されていた。

東京地裁H20.12.17:
譲渡価格の調整の基礎とされる株式譲渡実行時点の貸借対照表の確定手続が争われたものであるが、
価格調整において買収対象事業の再評価をすることは想定されていなかったこと等、当事者間の合意内容に関する詳細な事実認定
⇒基準貸借対照表における会計処理の原則を変更することは許容されない。
 
●簿外債務の存否
Yによる表明保証の内容として、基準貸借対照表が適正な会計基準に基づいて作成されており、そこに記載されていない簿外債務及び偶発債務等は存在しない旨規定。

Xは、
①Aの積立てていた事故対策費が従業員への返還義務を伴う預り金であること
②Aが基準貸借対照表に記載されていない借入債務を負っていたこと
を主張し、表明保証違反に基づく損害賠償を請求。

判決は、Xの主張を認め、簿外債務に相当する金額について、Yに損害賠償を命じた

①価格調整条項に基づく譲渡価格の減額と②表明保証違反に基づく補償請求は、実質的に重複することも少なくないところ、本判決は、そのような場合に価格調整条項による処理を行った例。

判例時報2337

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2017年9月 3日 (日)

上場企業の巨額損失隠しに関与した経営コンサルティング会社の代表取締役らの責任(肯定)

東京地裁H28.3.31      
 
<事案>
光学機器の製造販売等を業とする上場企業Xが、以前証券会社でXの営業担当を務め、その後経営コンサルティング等を主たる業務とするD社を設立してその代表取締役となったY1及びY1の元部下であり、Y1と共にD社を設立してその取締役に就任したY2が、Xの経理・財務部門等に所属していたZ1らと共謀の上、Xの金融資産に発生していた巨額のの運用損失を連結決算の対象とならない海外の投資ファンド(「簿外ファンド」)に移して当該損失を隠匿し、その後当該簿外損失を解消するため、Yらが設立するなどしたいわゆるベンチャー企業3社(「新事業3社」)の株式を不当に高い価格でXに買い取らせるなどし、Xにおいて架空ののれんの計上とその償却などを内容とする違法な会計処理を行わせた⇒Yらに対し不法行為に基づく損害賠償を請求

主位的に、新事業3社の株式の取得原価と購入価格の差額約572億円並びにXが有価証券報告書虚偽記載の罪により有罪判決を受けて支払った罰金7億円相当額及び虚偽記載のある四半期報告書を提出したことにより納付した課徴金1986万円相当額の合計額の一部請求として5億円の支払いを求め、

予備的に、右簿外ファンド管理手数料として支払われた費用等合計額約117億円並びに右罰金及び課徴金相当額の合計額の一部請求として5億円の支払いを求めた。
 
<事実関係>
X社においては、平成8年頃までに、金融資産の運用による含み損が約900億円にまで拡大。
Z1らは、海外に簿外ファンドを組成し、Xやその子会社が保有する特金等の資産の中から国債等を貸し付け、簿外ファンドにおいてこれを売却し、その資金をもってXの含み損を抱える金融資産を簿価で買い取らせた
その後、企業会計原則の見直しによる時価評価主義採用の動き⇒特金等の計画的解消が求められる状況に。
but
国債等を簿外ファンドに貸し付けたままの状態では特金等の残高を減らすことができず、また多額の含み損を抱えた金融資産の存在が露見してしまうおそれ。
Z1は、簿外ファンドに新たな資金を供給して国債等を買い戻す方法を模索

Z1らは、国債等買戻しのため
①平成10年3月、X及び子会社名義で外国銀行に口座を開き、口座内の資産に簿外ファンドを債務者とする根担保権を設定して、同口座内資産を担保に簿外ファンドが外国銀行から融資を受けるようにし、
②平成12年3月、新たにケイマン諸島に事業投資ファンドを組成してX等が出資し、同出資金の一部を債券購入代金として簿外ファンドに送金し、
③右外国銀行に新たなファンドを組成してもらってX及び子会社がこれに出資し、同月、同出資金の一部を、Z1らがケイマン諸島に新たに組成した複数のファンドを経由して、簿外ファンドに債券購入代金として送金するという、一連の操作を行った。

これらの操作を通じて簿外ファンドに流れた資金によって、簿外ファンドは特金等から借りていた国債等を買い戻してX及び子会社に返還し、これによってZ1らは特金等を解消して、Xの巨額の簿外損失の発覚を免れた。
右含み損を抱えたXの金融資産が簿外ファンドに付け替えられたままでは、簿外ファインドが債務超過の状態となり、将来Xの損失隠しが発覚しかねなかった上、簿外ファンドの維持費用もかさむ一方

平成16年4月から平成20年3月にかけて、簿外ファンドの新事業3社の株式を取得させ、X及びZ1らが組成した別のファンドがそれらの株式を本来の価値より高い金額で買い取り(ファンドが買い取った株式は、その後どうファンドの解散に伴いXが現物で取得した。)この売買によって簿外ファンドが代金として受領した多額の金を用いて簿外ファンドがXの金融資産を購入した際に行った借入を等を返済して債務超過状態を解消。

Xは、本来の価値に比べて極めて高い金額で購入した新事業3社の株式について、平成20年3月期の連結貸借対照表に約545億円ののれんを計上(これによりXの簿外損失が計数上解消されたことから、簿外ファンドは全て解散した)。
 
<判断>
以上の事実を認定した上で、
Z1らによる右一連の行為はXに対する不法行為に当たるところ

Yらは、前記①ないし③の一連の資金移動等の目的がXの損失隠匿することにあることを認識しながら、平成10年3月頃、前記外国銀行の東京駐在所長をZ1らに紹介したほか、ファンドの組成・運営や資金移動に関与し、また、新事業3社に対する投資の目的がXの簿外損失を解消することにあることを認識して、平成17年頃、Z1らに新事業3社を紹介し、新事業3社の株式取得等に関与


YらはZ1らの不法行為を幇助したというべきであるから、民法719条2項に基づき、共同行為者とみなし、Xに生じた損害を賠償すべき責任がある。

Yらは、共同行為者として、Xが支払った罰金7億円及び課徴金1986万円の全額について、Z1らと連帯して賠償責任を負う⇒Xの主位的請求(一部請求5億円)を認容。

主位的請求のうち新事業3社の株式の取得原価と購入価格の差額の賠償請求については、含み損を抱えていたXの金融資産を簿価で簿外ファンドに購入させて損失を移転していたものを、新事業3社の株式を実際の価値よりも高い代金で購入することによってふたたび含み損をXに戻した

実質的にはX内部の資金移動にすぎず、Xの損害には当たらない

判例時報2335

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2017年8月14日 (月)

取締役会設置会社である非公開会社における株主総会の決議によっても代表取締役を定めることができる旨の定款の効力(有効)

最高裁H29.2.21      
 
<事案>
取締役会設置会社である非公開会社において、取締役会の決議によるほか、株主総会の決議によっても代表取締役を定めることができる旨の定款の定めが有効かどうかが争われた事案。 

Y1(非公開会社で、取締役会を設置する旨の定款の定めを有する取締役会設置会社)の定款には、
代表取締役は取締役会の決議によって定めるものとするが、必要に応じ、株主総会の決議によって定めることができる旨の定めがされていた。

Xは、Y1の代表取締役であった者。
Y2は、平成27年9月30日に開催されたY1の株主総会において取締役に選任する旨の決議及び代表取締役に定める旨の決議がされた者。
Xは、Y1及びY2に対し、本件株主総会の前記各決議には法令違反があるとして、Y2の取締役兼代表取締役の職務執行及び職務代行者選任の仮処分命令の申立て。
 

<規定>
会社法 第二九五条(株主総会の権限)
株主総会は、この法律に規定する事項及び株式会社の組織、運営、管理その他株式会社に関する一切の事項について決議をすることができる。
2前項の規定にかかわらず、取締役会設置会社においては、株主総会は、この法律に規定する事項及び定款で定めた事項に限り、決議をすることができる。
3この法律の規定により株主総会の決議を必要とする事項について、取締役、執行役、取締役会その他の株主総会以外の機関が決定することができることを内容とする定款の定めは、その効力を有しない。
 
<原決定>
代表取締役の選任・解任権限を株主総会に認めたからといって、取締役会の監督権能が失われるものではなく、本件定めが無効であるとはいえない。
⇒Xの申立を却下。 
   
Xからの許可抗告の申立てを原審(東京高裁)は許可
 
<判断>
①会社法295条2項によれば、取締役会設置会社において、株主総会は、会社法に規定する事項及び定款定めた事項に限り、決議をすることができるところ、この定款で定める事項の内容を制限する明文の規定はない
取締役会設置会社である非公開会社において、取締役会決議によるほか株主総会の決議によっても代表取締役を定めることができるとしても代表取締役の選定及び解職に関する取締役会の権限が否定されるものではなく、取締役会の監督権限の実効性を失わせるものではない

本件定めを有効として、本件許可抗告を棄却すべき。
 
<解説>
会社法295条は、株主総会が決議することができる事項を、
1項で「この法律に規定する事項及び株式会社の組織、運営、管理その他株式会社に関する一切の事項」とし、
2項で取締役会設置会社においては、「この法律に規定する事項及び定款で定めた事項」に株主総会の決議事項を限定。

本決定は、
取締役会設置会社である非公開会社において、
取締役会の決議によるほか株主総会の決議によっても代表取締役を定めることができる旨の定款を有効であるとの法理を示したもの。

①公開会社について、株主総会にも代表取締役の選定権限を認める定款が有効かどうか
②取締役会設置会社において、株主総会のみに代表取締役の選定権限を認める定款が有効かどうか
などについては、判示するものではない。

判例時報2333

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