ゲーム理論

2013年9月26日 (木)

ケーススタディー④ ゲーム理論(35・完)

15.リア王の悩み

子供たちが孝行するか否かは、親に対する愛情や尊敬に加えて、遺産相続の可能性によっても左右される。
基準の回数を満たさなかった子供には、相続させない。
全員が基準以下⇒最も多く訪問した子供に全財産を与える

子供たちは多人数版囚人のジレンマの状態になり、訪問を減らす結託策はできなくなる。

1人子の両親にはうまい解決法がない。

16.アメリカ政府対アルコア

業界の大企業はがすでに過剰な設備を有していることを見せつけることほど有効な参入障壁はない⇒独禁法出有罪判決
現在の生産量に必要とされる以上の設備あり⇒生産量を迅速に、しかも小さいコストで拡大できる⇒価格競争に持ち込むという脅しの信憑性が高まる。

17.拳銃よさらば

絶対優位の戦略があるほうはそれを使い、ない方は敵の絶対優位の戦略に対して最善の対応策をとる。
ゲームが同時進行から交互行動に移行⇒強盗が絶対優位の戦略の選択をやめ、所持しないことを選択。
(←交互ゲームでは、自分の選択が相手の選択に影響を与える。)

18.ラスベガスのスロットマシン

オーナーとしては、少なくとも「出る」マシンと同じだけ「出ない」マシンが利用されるようにしないと儲からない。
出るマシン~ジャックポット(大当たり)により大部分を払い戻すようセット
出ないマシン~少額を高い確率で払い戻すようセット。

少なくとも、最も人気があるマシンが、最も「出る」マシンではない
(ラスベガスで、行列のできるスロットマシンに並ぶのはやめた方がいい。)

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ケーススタディー③ ゲーム理論(34)

10.必勝法があるのは誰だ

第1手で先手が作れない形を後手が作ることが不可能なゲーム
⇒仮に必勝法が存在するとすれば、それは先手をとること。

11.本当の価格を隠すベール

「全て込み」の値段⇒消費者がよほど丹念に検討しないと、この業者の料金(全て込みの料金)が他社より高く見えてしまう。
(キーボードの文字配列の例と同じように、悪しき均衡が成立している。)

企業は料金全体のごく一部しか宣伝せず、宣伝していない部分で高い料金を手にしている。
見えないところで利益を上げることを前提に、企業は見えやすい部分の価格を引き下げて、消費者を取り込もうと競い合う。
ex.
通話料で儲ける⇒携帯端末を格安価格で提供。
トナーで儲ける⇒プリンターを低価格で販売。

このような状況を改めようと思えば、平均的な利用者が支払う「すべて込み」の料金を提示するよう義務付ければいい。

12.ソロモン王の裁き・再び

「本当のことを言いなさい」と2人の女性に命じるだけでは、真実を引き出せない。
女性たちが戦略的に振る舞えば、自分の利益のために情報を操作する。
それを防ぐには、女性たちに金やその他の何か大事なものをかけさせる

本当の母親は偽の母親より子供に高い価値を認めている。
⇒(2人の財力が同等であれば)より高い金額を出す方を決めるゲーム。

道路や公園の掃除をさせることにしてもいい。

13.ベイブリッジⅡ 

14.1ドルの値段

オークション主催者が1ドル紙幣をせりにかける。
せり値は5セント単位で上がり、最も高値を付けた者が1ドルを得て、最高値の人と2番目の高値の人が自分のつけた値をオークション主催者に払う。

均衡点は1つ:最初の付け値が1ドルで、それ以上誰も値をつけない状態。
付け値が1ドル以下からスタート。

前提:2人の学生が参加し、2人とも財布には2.5ドルもっており、互いに財布の中身を知っている。競り値は10セント単位で上がっていく。

相手の付け値が1.5ドル以下なら、こちらは2.4ドルの付け値で勝てる。
相手がさらに1ドルを払って1ドルを得ても何のメリットもない

既についた値は既に失ったものと考えて、1ドルを得るために90セント値を吊り上げるのが合理的。所持金はそれぞれ、2.5ドル。最初に1.6ドルつけた側がオークションに勝つ。それにより2.5ドルまで値を引き上げる準備があるという実行の確約をしたことになる。

超大国の核競争も同じ。
何兆$という軍事費をつぎ込むより、平和的共存という名の共謀のほうがはるかに得策。

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2013年9月24日 (火)

ケーススタディー② ゲーム理論(33)

6.もっと安全な決闘

自分が撃って成功する確率と相手が撃って失敗する確率がイコールになったときに撃とうとする(この判断に拳銃の制度は関係しない)。
拳銃の精度が向上しても、拳銃を使った決闘の危険性は変わらない

7.三者決闘

第1ラウンド:ラリー、モー、カーリーの順に1発だけ撃てる。
第1ラウンド終了後、生き残った者は2発目を撃てるが、再びその順で撃つ。

ラリー:30% モー:80% カーリー:100%

逆戻り推量と逆の思考プロセスで手間が省ける。
ラリーの選択肢を検討。
ラリーにとって正解は、空に向けて撃つこと

小物がスターになるには、最初のチャンスを見送った方がよい場合もある
ライバルが多数⇒トップを走っている者は、二番手以降から集中攻撃を受け、潰されることがある。
~実力者が互いに潰しあうまで後方に控えておくほうが得

強い者が生き残るとは限らない

8.落札のリスク

ヴィックレー・オークション:自分の次に高い金額を入札した人物の額を支払う。

参加者としては、自分の評価額どおりに入札するのが、絶対優位の戦略。

価格が自分の評価額より安いときに必ず落札できる唯一の方法は、自分の評価額どおりに入札すること。
得をする程度が一定していなくても、得をするときは必ず落札できるように行動するのが最善の戦略。

9.祖国のために捧げる命

戦場で1人1人の兵士が命を危険にさらすことの損得を理性的に計算しはじめれば、その軍隊には勝ち目がない。

命令に疑問を持たないように訓練すれば、兵士は戦闘マシンになる。
1人1人の兵士に非合理的な行動をとらせることが、軍隊全体にとっては合理的な戦略

シェークスピアの戯曲「ヘンリー五世」
「おお戦いの神よ
私の兵士から心を奪いたまえ。
彼らから恐れを失わせたまえ。
今すぐ取り払いたまえ、
彼らから考える力を」

「この戦いに気の進まぬ者よ。
汝を帰そう。
旅券を用意し、帰国のための王貨を
汝の財布に入れよう。
われらは、われらとともに死ぬのを恐れる者を仲間としてともに死すことはない」

申出を受けることは、恥の意識が邪魔をする。
申出を断ることは、兵士たちにとって心理的に退路を断つことを意味する
⇒兵士たちは暗黙のうちに、死を躊躇しないという契約をお互いに交わした

兵士たちが死を恐れており、王が殺されることはないと思っている。
⇒この疑念を払拭する必要。

×「私が命を危険にさらしていないと思っている者がいるようだが、そんなことははない。信じてほしい」
〇「諸君は、私と一緒に命を賭けて戦ってくれるのか」と、逆に兵士たちに問いかけることにより、自分が兵士とともに命を賭けるのを当然のことと思っているという印象を作りだした。

人間の感情を深く理解するという点では、心理学者や、ましてや経済学者は偉大な文学者にかなわない。シェークスピアから学ぶ価値は十分にある。

アムンゼンの同じ戦略:
南極に較べれば安全は北極探検に向かうという触れ込みで探検隊のメンバーを募集し、引き返せるぎりぎりの場所まで来て本当の目的地を告げた。
「探検旅行を続けたくない人はここで帰ってかまわない。祖国への帰国旅費も支払う。」

隊を離れたメンバーは1人もいなかった。

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2013年9月23日 (月)

ケーススタディー① ゲーム理論(32)

1.となりの芝生は青い

賭けで勝つ人もいれば負ける人も必ずいる
賭けに乗る前に、相手の立場からもその勝負を分析してみることが大事
(相手が賭けをしたがっているのは、自分が勝てると思っているから。)

10ドル、20ドル、40ドル、80ドル、160ドルのいずれかで、片方の封筒には、もう片方の2倍の金額が入っている。
アリとババに1通ずつ渡し、自分の封筒の中身を確認した後、2人とも望めば封筒の交換可能。

自分の封筒に
アリに160ドル⇒交換なし
ババに80ドル⇒アリが160ドルなら交換しないはずで、アリが交換を望むなら40ドルのはず⇒(ババ)は交換しない
アリが40ドル⇒ババが80ドルなら交換しないはずだから、交換しようとするのは20ドルの時⇒アリは交換しない
ババが20ドル⇒アリが40ドルの時に交換しないはずだから、アリが交換を望めばアリは10ドル。

つまり、封筒の交換を望むのは、自分が5ドルの場合のみ。

2.野外ライブのベストポジション

ほかの人達を行動を考慮せずに、自分の座る場所を選んではいけない。
ホッケーのパックがいまある場所に向けて突進するのではなく、パックが来そうな場所に先回りすべきしっかりと先読みをする)。

3.赤と黒

今自分が勝っている⇒(ルーレットで)相手と同じ戦略をすれば、負けることはない。

ゲームによっては先手をとって行動することが常に特になるとは限らない。
こちらの作戦が明らかになると、相手に付け込まれてしまう場合もある⇒そういう時は後に行動する方が戦略上強い立場に立つ。

4.ポイズンピル

ポイズンピルの攻略法
①取締役の改選時期をずらす規則⇒誰かが株の100%を取得しても、取締役全員を一度の替えることはできず、任期が切れた者を替えられるにすぎない。
5人の取締役はそれぞれ5年の任期があるが、改選の時期は1年ずつずれている⇒外部の者は1年間に取締役の椅子を1つしか手に入れられない⇒取締役の過半数を得るには3年かかる。
②改選手続きの変更は取締役会での採決によってのみなされるとした。
③取締役のメンバーや改選手続きを変えようという提案を行って採決に破れると、その人は取締役の地位と持株を剥奪され、その持株は残りの取締役に均等に配られる。裁決に敗れた提案に賛成した人も地位と持株を失う。

自分以外の2人に賛成票を投じるインセンティブを与える必要。
シーシェルが51%を取得。
シーシェル以外の4人の取締役はそれぞれ12.25%の株をもっているものとする。

提案:
①提案が全会一致で採択⇒取締役の総入れ替えを行い、各取締役には少額の退職金が支払われる。
②提案が4対1で採択⇒反対した1人は取締役の地位を失い、退職金の支払いもない。
③提案が3対2で採択⇒持分51%すべてを賛成に投じた2人に均等に与える。反対票を投じた2人は退職金なしで地位を失う。

逆戻り推量:
最後の人の投票する時2対2でわかれているとする→
A:賛成⇒25.5%の株を取得。
B:反対⇒不成立⇒(51%+12.25%)/3=21.1%を取得。
⇒賛成する。

4番目に投票する人(賛成が1票(シーシェルのみ)の場合、2票の場合、3票の場合)
A:賛成が3票⇒提案はすでに成立⇒何も得られないより、多少得られる方がいい⇒賛成
B:賛成が2票⇒自分が反対票を入れても、最後の人が賛成するであろう⇒勝つ側についた方がいい⇒賛成
C:賛成が1票⇒得票を2対2に持ち込む⇒最後の人が賛成に回り、大きく得をする。

最初の2人は、たとえ自分たちが反対票を入れても、残り2人が賛成に回り、提案は成立すると予測⇒賛成

結局提案は全員一致で採択される。

5.乗っ取り屋の価格オファー

2段階オファー:
キャンポーが買収提案。
買収企業がターゲット企業の買収提示価格を時期により別々に設定する方法。
第2段階(90ドル)の価格は第1段階の提示価格(105ドル)より劣る。
第1段階の応募者が50%を越えた場合、買収株式数を105ドル相当の株式数と90ドル相当の株式数d絵加重平均した価格を第1段階の価格とする。

メーシーズ社が、株式の過半数を得た場合に限って102ドルで買い取るという提案。

2段階オファーに応募することが絶対優位の戦略。

3つに分けて考える
①2段階オファーへの応募が50%未満で買収が失敗に終わる場合⇒105ドルを得られ応募する方が得。
②2段階オファーへの応募が50%を超え、キャンボールの買収が成功する場合⇒応募しなければ90ドルしか得られず、応募すれば少なくとも97.5ドル得られるので応募する方が得。
③2段かオファーへの応募がちょうど50%で、自分が応募すれば買収が成功、応募しなければ失敗という場合⇒自分は応募して105ドルを手にした方がいい。

応募することが絶対優位の戦略⇒全株主が応募⇒加重平均価格は買収提案前の株価を下回る⇒乗っ取り屋や会社の本当の価値以下で買収ができる(株主が儲かるとは限らない)。

メーシーズの提案が無条件のものだとキャンポーの二段階オファーが成功するという均衡を崩せる。
二段階オファーが失敗すると予想し、買取に応募しなくなる。

キャンポーは買収に成功したが、その後事業は破綻した。

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2013年9月22日 (日)

仕事の動機付け戦略 誘因(インセンティブ)③ ゲーム理論(31)

6.ソフトウェアエンジニアの報酬

事業が成功すれば20万ドルの収入。失敗するとゼロ。
プログラマーが懸命の努力をすれば80%の確率で成功。
中程度の努力であれば成功確率は60%。

プログラマーには、成功すれば報酬が増え、失敗すれば少なくするようにする。
成功時の報酬と失敗時の報酬の差額は、懸命に努力することがプログラマー自身の得になるようなものでなくてはならない

罰金・報酬システムや株式共有契約⇒プログラマーにとってギャンブルをすることと同等のリスクを伴う。⇒リスクをとることに対する報酬をもらわなければならない。
リスクが大きくなるほど、報酬も大きくする必要がある。

7.出版社と著者の攻防戦

前払い印税:本の売上に関係なく著者に支払われる報酬の最低保証。
数回に分けて支払う⇒著者にインセンティブを与えられる。
前払い印税⇒リスクを出版社に移転する。

出版社はどの本についても「大いに期待しています」と口では言うが、たくさん売れる見通しのない本の著者に多額の前払い印税を支払うことはしない。

著者と出版社の主張が対立する可能性があるのは、本の定価。
著者⇒売上金額を多くしたい
出版者⇒利益を増やしたい⇒売上金額が最大になる価格より高く定価を設定したほうが得になる(定価を少し高めに設定すれば、売り上げ部数は多少減るだろうが、売上金額はほとんど変わらない。部数が減ればコストが減る⇒出版社の利益は増える。) 。

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仕事の動機付け戦略 誘因(インセンティブ)② ゲーム理論(30)

5.インセンティブ制度のさまざまな側面 

実際には、多数の仕事と多数の働き手が関わり、結果が完全にわかるまでに多くの時間がかかるのが普通。
インセンティブ制度を設計するうえでは、関連するあらゆる要素を念頭に入れなければならない。

(1)将来のキャリア

働き手は当座の金銭的報酬だけでなく、将来の昇進と昇給を期待して仕事に精をだすケースもある。
~その会社で働く未来が長い人ほど強く作用する。

インセンティブとして最も強く機能するのは、中・下級レベルのポストに就いている若い人。
大学の講師は、准教授、教授へと昇進し終身在職権を手にしたいと思う⇒熱心に研究や教育に取り組む。
その世界で生きている人間は誰でも、もっと大きな長期のゲームが存在することを知っている

(2)関係の継続

同種の仕事を何度も繰り返す場合は、全体を平均して考えれば偶然の要素の影響が弱まり、結果が努力の程度を反映しやすくなる。
(1回や2回だと運が悪かったという言い訳も可能。)
⇒成果を基準にしたインセンティブ制度の効力も強まる。

(3)効率賃金

過酷な仕事をすることによる精神的・肉体的コストは、年間8000ドル程度。

会社にとって必要なことの1つは、欲しい人材に就職を決意させるために十分な金額の給料を支払うこと。
神経を使わずにできる仕事をして年4万ドルもらえる職場が別にある⇒それを上回る給料を支払わなければ、優秀な人材は入社してくれない。

会社側の提案:
「よその会社よりいくらか多く給料を支払います。ただし、仕事をさぼったことが明るみにでれば、上乗せ分は支払いません。しかも、即刻解雇し、あなたの取った行動を知らせます。すると、年間4万ドル以上の給料を支払う会社はもうないでしょう。」

では、いくら給料を支払えば、社員は職を失わないためにまじめに働くのか?
少なくとも4万8000ドル以上でなければ、サボるつもりのない人は入社してこない。
問題は、そこにどれだけ上乗せするか?

その上乗せ金額=Xドル

効率賃金仮説:
社員がサボると仮定。
金利10%。毎年Xドルずつ失うリスクが25%。
(毎年Xドル上乗せして給料を受け取れる状況は、額面10Xドルを受け取れる債券(10Xドルの10%がXドルなので、利息として年間Xドルに相当)を所有しているのと同じ)
8000ドル<0.25×10Xドルなら、社員はさぼらない。
X>3200ドル

実際には車が故障がないのに、整備士が修理料金1000ドルの故障をでっち上げ。
⇒金利が10%だと、毎年100ドルの儲けが入ってくる。
インチキがばれて関係を打ち切られる危険が25%。
⇒関係を続けることにより毎年400ドル以上の利益が入ってくると期待できれば、正直に仕事をする。

(4)複数の業務の関係

会社の社員は複数の業務を行っている⇒それぞれの業務のインセンティブが相互に影響を及ぼし合うケースがある。

複数の業務が
排他的関係」(ある業務に割くエネルギーを増やすと、別の業務の生産性が下がる関係)⇒一方の業務について強力なインセンティブを設ければ、もう一方の業務の足を引っ張る。
なのか、
補完的関係」(ある業務に割くエネルギーを増やすと、別の業務の生産性も上がる関係)⇒一方の業務に関して強力なインセンティブを設ければ、もう一方の業務の成果も後押しできる。
なのか。

1人の社員や部署に複数の業務をまかせる場合は、互いに補完的関係にある業務を担当させるべき。
排他的関係にある業務は、別々の社員や部署に担当させる。

「補完的業務」をまとめて1つの組織にまかせ、
「排他的業務」を切り離して別々の組織に担当させる

⇒1つの空港内の業務は1つの組織に担当させ、空港同士を競わせるのが正しい選択。

(5)働き手同士の競争

同じ環境で同時並行で働く。
⇒成果の違いを見れば、その人がほかの人たちと比べてどの程度努力したか、どの程度のスキルをもっているかがわかりやすい。
ほかの働き手との成果の違いを基準にしたインセンティブ制度が効果的

ex.
一般的にファンドマネジャーの評価は、ほかのファンドマネジャーの運用成績との比較で判断される。
2人の学生に校正刷りをチェックさせる(一部のページを両方にチェックさせる)。
複数の納入業者や下請け業者に仕事を発注⇒業者が競い合うことで品質の基準が上がる。

(6)モチベーション

実際には、仕事自体に情熱を燃やしたり、会社や組織の成功を望んで仕事に取り組んだりする社員もいる
創造性や創意工夫が要求される職についている人もそういう側面が大きい。

やる気をかき立てるような仕事や世のため人のためになる仕事の場合は、物質的なインセンティブが比較的弱くても働き手がまじめに働く。
というより、この種の仕事では、金銭的なインセンティブを強めると、むしろやる気をそぎかねないことが心理学の研究によりわかっている。
←善行や達成感のためではなく、金のためにその仕事をしているような気持になってしまう。

失敗した場合に解雇や減俸などの制裁を課すことも逆効果になりかねない。
←挑戦しがいのある仕事や意義のある仕事に取り組むことの喜びが損なわれる恐れがある。

50問のIQテスト
グループA:報酬なし
グループB:正解1問ごとに3セント
グループC:正解1問ごとに30セント
グループD:正解1問ごとに90セント
C,D>A>B


金がからんでくると、金がモチベーションの最大の要因になってしまうので、3セントという少額ではモチベーションが高まらない。

ある程度の額の金銭的報酬を提示するか、そうでなければ金銭的報酬はまったく提示しないかのどちらかにすべき。
少しばかりの金額を提示することは逆効果。)

(7)ピラミッド型の組織

上司は自分自身の目標を達成してボーナスを受け取りたいと考えて、部下の仕事の質が悪くても合格にしてしまう可能性がある。
(自分が不利益を被る覚悟がなければ、上司は部下を厳しく査定できない。)

それに対応するには、たいていインセンティブの効力を弱めるしかない。
そうしないかぎり、インチキをすることにより得られる利益を減らすことが難しい。

(8)複数の「ボス」

複数の「ボス」の利害が一致しない場合や、真っ向から対立する場合が少なくない。
(それぞれの「ボス」はほかの「ボス」のインセンティブ制度の効力を弱めようとする可能性がある。)

全体的なインセンティブ効果は「ボス」の数に反比例する。
「誰も、2人の主人に仕えることはできない・・・あなたがたは、神と富とに使えることはできない」

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2013年9月21日 (土)

仕事の動機付け戦略 誘因(インセンティブ)① ゲーム理論(29)

社会主義経済の失敗は、労働者に十分な誘因(インセンティブ)がなかったから
良い仕事をしてもそれに見合った報酬を受け取れる制度がないこと。

市場経済には、もっとすぐれた自然のインセンティブ制度がある。
利益追求という動機づけ
but
会社の労働者は、市場の荒波に晒されているわけではない。
⇒経営者は会社内に動機付けの仕組みを設け、誰もがある程度の努力をするように工夫しなければならない。

2つの会社が共同でプロジェクト⇒両者にインセンティブが働くよう契約を結ぶ必要がある。

1.努力に対する報酬制度

学生の本の校正アルバイト:
著者には少しでもミスの少ない本にしたいというインセンティブ。
学生にはそこまでのインセンティブはない⇒学生に適切なインセンティブを与える必要。

情報の非対称性の問題:教授が情報量で不利な立場にある。
but
教授が知らない情報は学生の「意図」であって、学生の「資質」ではない。

提示されたインセンティブに対して最も得をするように対応するのは人間の性質として当然のこと。
仕事を怠けても許されるのであれば、サボるのが人情
⇒まじめに仕事をするよう後押しするインセンティブ制度をつくるしかない。

①学生の校正アルバイトに一定の金額の報酬を支払う vs.「誘因両立制約」に反する。
②見つけた誤植の数に完全に準拠して支払う vs.「参加制約」に反する。
⇒適切な支払い方法はこの中間。

①定額支払いと②出来高払いの二本立てにする

学生はある程度の金額の支払が約束される⇒安心して仕事を引き受けられる。
まじめに校正刷りに目を通そうと考えるだけのインセンティブもつくりだせる。

報酬の一部をプロジェクトの成果や会社の業績に連動させる方法。
会社の株式やストックオプション(自社株購入権)の支給形ととってもいい。
どのような仕組みにも悪用される可能性はあるが、インセンティブ制度が有用なものであることは間違いない。

2.インセンティブ契約のつくり方

モラルハザードの本質報酬を支払う側が働き手の努力の程度を測定できないことにある。
⇒仕事の成果や会社の業績など、数字で評価できる要素を基準に支払うしかない。

働き手の「目に見えない努力」と「目に見える成果」との間に完全な1対1の対応関係があれば、この方法で働き手の努力を正確に評価して、報酬に反映できる。
but実際はそう単純ではない。

プロジェクトの成果や会社の業績はさまざまな偶然の要因に左右される。
目に見える成果は、目に見えない努力を図るうえで完璧な基準ではない

ある程度の関連性がある⇒成果を基準にしたインセンティブ制度に努力をうながす効果があることは確かだが、成果を基準に報酬を決めると、運がいい人が得をして、運が悪い人が損をする

運に左右される面が大きい努力と報酬の関連性が弱くなり、インセンティブの効果が小さくなってしまう。
偶然の要素が小さい強力なインセンティブ制度が効果を発揮する。

3.成果比例型でないインセンティブ制度

成果比例型インセンティブ成果に純粋比例して報酬

状況の変化に柔軟に対応できるし、悪用されにくい。
but
重要な節目に到達しても特別に評価してやれない。

非成果比例型インセンティブ成果が一定の基準を突破した場合にボーナスを支払う
無理のないレベルに設定⇒まじめに働けば基準を突破できる可能性が高い⇒営業部員はセールスに励む。
基準を厳しく⇒達成不能なら営業部門は努力することをやめてしまう。
早々を達成⇒手を抜きたいと思う。

実際には①②を組み合わせる場合が多い

営業部門には、売上の一定割合をの報酬を支払い、そのうえで一定の基準を突破した場合に追加のボーナスも支払う方式を採用。
成果の達成目標を複数段階設けて、2段階目の基準を達成した場合にさらにボーナスを支払うケースも多い(2段目のボーナスの金額は最初の基準を達成した場合の1.5倍なり2倍なりに設定してもいい)。

非比例型の弊害をなくしつつ、比例型の利点を取り入れられる。

4.アメとムチ

インセンティブ制度をつくるうえで常に念頭におくべき要素は2つある。
①その制度のもとで働き手が得る報酬の平均的な水準
②成果の良し悪しによる報酬のばらつきの幅

報酬の幅が大きい⇒働き手の努力を促すインセンティブが強くなる
報酬の平均的水準が低すぎる仕事を引き受けようとしなくなる

報酬の幅が同じ場合:
報酬の平均が低い制度⇒成績の悪い人を罰するいわばムチ型の制度。
報酬の平均が高い制度⇒成績のいい人にご褒美を与えるアメ型の制度。

報酬の平均をどの程度に設定すべきかは、参加制約によって決まる
その人がほかの仕事をした場合にいくら儲けられるかが基準となる。

雇主としては働き手への支払をなるべく少なくして、自分の取り分を多くしたい⇒ほかに有利な選択肢のない人を雇おうとする⇒butそういう人は技能が低い可能性がある。

米国の大企業の経営者:
会社の業績がいい⇒巨額の報酬を受け取る
業績がまずまず⇒それほど報酬の金額はへらさない
業績が本当に悪い⇒莫大な「離職手当て」を受け取って会社を去る

アメリカの大企業の経営者は、経営者に支払われる平均的な報酬は、この種の職に就くために最低限納得できるレベルをはるかに超えている。
企業間で人材の争奪戦が起きているから(有能な人材に経営を任せたい企業は、高い報酬を提示せざるををえない。)

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2013年9月20日 (金)

選挙(どういう投票行動が得策か)② ゲーム理論(28)

4.中間層への投票

候補者も自分の取る立場を戦略的に決めている。
全投票平均値の位置の候補者が選挙に勝つ⇒候補者は有識者の平均に自分を近づける。
候補者の位置は、それぞれの方向に動く投票者の相対的な人数によって決まる。

人々は方向については本当のことを言うが、強さについては大げさに言いたいと考える(交渉で「両者の間を取る」とうい解決策が取られる場合に、どちらの側も初めはふっかけて極端な立場から交渉を始めるのと同じ。)。

平均のかわりに中央値をとる。
中央値候補者をリベラルの方向に動かそうと思う投票者と、保守の方向に動かそうと思う投票者が同じ数だけいる位置のこと。
~平均値と違い、中央値の位置は投票者の好みの強さに影響を受けない。
(好みの方向だけが問題となる。)

候補者は、左端の0から出発し、過半数の投票者が右への移動を指示する限り右へ動き続ければよい。
(中央値の位置まで来ると、そこを越えてさらに右に動かそうとする投票者と、逆に左に動かしたいと思う投票者の数がまったく同数になる。)

5.アメリカ合衆国憲法の知恵

選択基準が1つ⇒選挙の候補者の立場は、0~100の目盛がついた直線上の点とみなせる。
選択基準が2つ⇒2次元平面上の点。
選択基準が3つ⇒3次元の空間における1点。
すべての凸集合の中で現職に最も不利なのが三角形とその多面体。
(凸集合とは、2つの点とそれを結ぶ線が含まれる集合のこと。)

すべての凸集合において、現職がその重心の点にたてば・・・最低でも36%あまりの票を確保できる⇒現職を失職させるために必要とされる票が全体の64%と定められているときは、すべての有権者の平均的な立場に立てば現職は議席を守り通せる。

投票数の3分の2以上、つまり67%以上の賛成がなければ憲法の規定を変更できない
有権者の平均的な考え方と一致する規定(有権者の分布の重心に位置する規定)は揺るがない

憲法改正の手続きとして理想的なのは、人々の考え方の変化を反映できる柔軟性を確保しつつ、柔軟すぎて不安定にならない制度

単純過半数ルール⇒柔軟だが不安定になりすぎる。
全会一致ルール⇒不安定にならないが、現状を変更することが限りなく不可能になる。
3分の2ルール⇒目的を達成できる。

6.偉人たちの肖像

投票できる人数に限りがある⇒投票者は候補者の功績だけでなく候補者の当選可能性も考えてしまう。
(ある候補者が殿堂入りにふさわしいと思うかもしれないが、同時にその候補者が選ばれそうになれば票を入れるのをためらうだろう。)

賛成型投票:
気にいっている候補者全員に投票でき、投票できる候補者数は限られていない⇒勝ち目のなさそうな候補者に投票しても表の無駄遣いになる心配はない。
but
投票者の内心では、選挙ルールとは無関係に候補者は競い合っている。

合計得票数の上位2人が当選する。1位はディマジオが確実視⇒ディマジオは選ばれるに決まっているから、2票とも次に応援する選手に入れる⇒皆がそう考えるとディマジオが選ばれなくなる可能性。

7.汝の敵を愛せよ

最初に行動することにより、次順位のところにまで寄付金が回せることがおうおうにしてある(相手が最優先する団体には自分は拠出しない。相手に拠出させる。)。

規模の小さな財団がこの戦略をとると、規模の大きな財団や政府が最も優先順位の高い団体や事業に助成金を拠出する役回りを押し付けられる。

他人が後で助けてくれそうなときは、自分の本来の優先順位どおりに行動しないほうが得策の場合がある
自分の望んでいるものを危険な状態においても誰かがコストを払って救い出してくれるときは、あえて危険を取るのがいいのかもしれない。
マーシャル奨学金は、ローズ奨学金の受給者が決まるまで待って、自分の基金の受給者を最終的に決める。

8.ケーススタディー 同数の投票

アメリカ合衆国憲法が、副大統領の職務について記している規定は1つだけ
「合衆国副大統領は上院議長の職に就くが、採決が同数の場合を除いて投票権を持たない」(1条3項の4)
誰かの一票が結果に影響を与えるのは、その票により、賛否が同数となるか同数が破られるときだけ。
but
副大統領が決選投票を投じるのは、意見の割れている重要な問題である場合がほとんど。

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選挙(どういう投票行動が得策か)① ゲーム理論(27)

個々人の選好を全体の選好に誤謬なく総計する方法など存在しない。

候補者が2人⇒自分が好きな候補者に投票すればいい。

候補者が3人以上⇒
①自分が本当に好ましいと思う候補者に投票すべきか、
②戦略的に行動して、勝ち目のありそうな2番目、3番目に好ましい候補者に投票すべきか?

2000年米国大統領選で、ブッシュ、ゴア(リベラル派)、ネーダーが出馬。
消費者活動家のネーダーの出馬で票が割れ、勝利はブッシュの手に渡った。

2002年フランス大統領選。
シラクとジョスパンが1位と2位になって決選投票になると考えた⇒左派の多くは第1回投票では好みの左派系弱小候補に投票⇒ジョスパンがルペン(極右)に敗れる
⇒決選投票で左派の有権者は、最も嫌いなルペンの当選を阻止するため、大嫌いな保守のシラクに投票する羽目になった。

自分の投票が結果を左右しない⇒自分が好きな候補者に投票すればいい。
自分の票が均衡を破る決定票になる場合⇒戦略的に行動すべし

1.単純投票
フランスでは、すべての候補者が参加して投票を行い、過半数の票を得た候補者がいない場合は、得票数の上位2人で決選投票を行って当選者を決める。
ベストな候補者が勝てない⇒第1回投票でましな候補者に投票という戦略的行動

2.コンドルセの方法

コンドルセの提案:
全ての候補者が1対1で対戦する総当り方式の投票
その中で、反対票が最も少ない候補者が勝つ
vs.何度も投票する必要がある。

修正:
投票は1度。有権者は候補者に順位をつけて投票する。
(2位対5位⇒2位に投票。順位あり対順位なし⇒順位ありに投票。と考える)
~すべての組み合わせの1対1投票をすませたことになる。

エール大学経営大学院の「年間最優秀教員賞」の受賞者を決める投票でコンドルセ方式を用いている。

3.法廷での順番 米国の刑事司法:

①被告人はまず無罪か有罪かを決める。
②量刑は、被告人が有罪を宣告された後に初めて決められる。
大きな違いは、何を最初に決めるか。

現行式では、最初の多数決で無罪か有罪かを決める。
先読み推量を行い、有罪になれば、2対1の多数決で死刑になると予測。
~最初の決定は、無罪か死刑かを決めるのと同じ。
⇒死刑に反対の判示Bは無罪を選択し、2対1で無罪へ。

罪刑決定方式:
①初めに、罪に対する量刑を決定する。
②その上で、被告人が有罪にされるべきかどうか判断する。
あらかじめ定められた刑が終身刑⇒ABの賛成で被告人は有罪。
あらかじめ定められた形が死刑⇒B(死刑反対)Cの反対で被告人は無罪。

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交渉② ゲーム理論(26)

4.瀬戸際作戦とスト

交渉では待ちのコストが小さい方が有利
⇒双方とも自分の待ちのコストを小さく見せたい。
待ちのコストが小さいことを証明するためには、どうすればいいか?
実際にコストを発生させてそれに長く耐えられるところを示すか、コストを発生させる恐れのあるリスクを取って見せる。

交渉の結末について両者の見通しが異なるとき、ストが起きる。

瀬戸際戦略(小規模な脅しから初めて、段階を追ってそれを強化していく)
~交渉決裂による被害の小さいほうにとって武器となる戦略。

契約が切れてもストに入らず、従来の契約条件のまま業務を続けながら交渉
⇒経営側にとっては、交渉を空回りさせておいたほうが得。
ストになる可能性があるからこそ、経営側は脅威を感じる
⇒組合はストの可能性を排除しないことにより、経営側を妥協に向かわせる環境を作るべき。

瀬戸際作戦

対立が長引くにつれて損失が発生する確率が確実に増加していく。
この確率の増加に耐えられなくなった側が譲歩をする。
スト(もう1日、あと1週間働かない)は、大きい損失が小さい確率で発生するのではなく、小さな損失が大きい確率で発生する状況をつくりだす。
強い決意を示すためには、ストによる損失が膨らんでいくのを容認する必要がある。

相手のほうが強いとどちらかが理解したときに、弱い方が譲歩する。

瀬戸際作戦を用いると、交渉の性格がまったく変わってしまう。
瀬戸際作戦ではときどき実際に瀬戸際を越えてしまい、決裂やストが起きる可能性を排除できない。いったんそうなると、はずみがついて簡単には終わらない。

5.複数事項の同時交渉

労使間の交渉事項は賃金だけではなく、健康保険、年金、労働環境等多岐に及ぶ。
両者が認める価値の違いから換算後の金額に大きな差が生じる場合もある。
ex.労働者が個人で健康保険に加入すると1人2000ドルの保険料
会社がまとめて団体健康保険制度をつくれば1人当たり1000ドルで済む
⇒組合にとっては賃金の1500ドルアップより団体健康保険の創設が望ましい
会社にとっても賃金の1500ドルアップより団体健康保険のほうがよい。

すべての交渉事項を同じ土俵に上げ、相対的な価値の差を見つけ出して、皆にとってよりよい決着を図る
WTOは、幅広い品目をテーブルに載せることで、個別品目ごとの交渉より大きな成果を上げている。
複数の争点をまとめて議論する場合、1つの交渉のゲームを利用して、別のゲームで相手に脅しを与えることが可能になる。
米国が日本との市場開放の交渉で、軍事的な関係も含めて交渉を行い、北朝鮮や中国の脅威をちらつかせれば、日本の譲歩を引き出しやすい。日本側は、経済問題と軍事問題を別々に交渉することを主張。

6.バーチャル・ストライキ

交渉が決裂すれば、当事者以外に影響が及ぶ場合がある。
しかし、交渉当事者は、自分のBATNAの大きさをアピールし、相手から譲歩を引き出すために、しばしば交渉を打ち切ってしまう。
ストにより第三者に及ぶとばっちりが労使の争っている金額を軽く上回る場合も珍しくない。

ストやロックアウトによる第三者の損失をほぼなくし、しかもストやロックアウトを行う場合そのままの両者の交渉上の力関係をあぶり出して、同じ結果を生み出す賢明な方法。=バーチャル・ストライキ(バーチャル・ロックアウト)

バーチャル・ストライキ
従業員は無給で働き、会社は利益を放棄する。労使の放棄する報酬は、国庫に納めてもいいし、慈善団体などに寄付してもいい。商品やサービスを無料にしてもいい。

当事者以外にとばっちりは及ばない。

労働組合と経営者は痛みをこうむるので合意に達したいと考えるが、政府や慈善団体や顧客は得をする。
ファン離れを招いたNHLのロックアウトととは対照的に、イタリアの運輸労働組合のバーチャル・ストライキはブランドの評判を高める役に立った。
労働者は無給で働く
←経営者側に痛みを与えると同時に、自分たちにとって「待つ」コストが大きくないことをアピールする。
バーチャル・ストライキの間、労働者は普段より一層一生懸命働く。
←その期間の売上が増えれば増えるほど、経営者の痛みを大きくできる。

7.ケーススタディー:もらうよりやるほうがよい

毎日1回だけ経営者が条件提示を行い、組合側が受け入れるか拒否するかを決める。
組合側が提示を受け入れるか、シーズンが終わるまで、交渉は続く。
経営側のとるべき行動は、組合側が給与ゼロよりまだましとして受け入れる最低水準を見定めて、その額を提示すること。

たとえば、最後の段階で組合側が組合=200ドル、経営=800ドルという配分を何もないよりはましと受け入れるのであれば、経営側はこの1対4という比率を101日間にわたって固定し、全体利益の3分の2を得ればいい。
先読み推量をすることによって、半々でない配分がなぜ起こるかが説明できる。
とくに、一方が提示を行う場合には、提示は「もらうよりやるほうがよい」ことがわかる。

1回きりのゲームと繰り返し型のゲームは違う。
「受けるか拒むか」型のゲームを繰り返す場合、被提案者は、最初にあえて強気な態度を見せつけることを通じて、自分が先読み推量による合理的な判断をくだすわけではない(あるいは、半分ずつに分割すべきだと信じて疑わない)のだと提案者に思わせることに成功すれば、有利な提案を引き出せるかもしれない。

ゲームは2日間。
最初に67対33の分割を提案し、相手が突っぱねた。
最初にイエスといっておけば、相手は330×2=660ドル>500ドルを受け取れる。
相手にとっては、思惑どおりにことが運んでも、最初の提案を受け入れるより結果が悪い⇒相手が提案を拒んだのははったりではない可能性がある⇒最終ラウンドで50対50を提案した方がいいかもしれない。

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