民事

2018年7月12日 (木)

歯科医師が歯科医師法違反の容疑で逮捕された旨の記事⇒検索事業者に対する検察結果削除請求(否定)

横浜地裁H29.9.1      
 
<事案>
Xは、自ら診療を行う診療所において、歯科医師資格を有しない者に問診やエックス線照射等の心療行為をさせた歯科医師法違反の被疑事実で逮捕され、新聞報道された(処分は罰金50万円の略式命令)。 

XがYに対し、
Yの提供する検索サービスを利用してXの氏名に「歯科」との語を加えた条件で検索すると前記逮捕事実が書き込まれたウェブサイトのURL,表題及び抜粋(URL等情報)が表示。
人格権に基づき検索結果の削除を求める
 
<判断>
プライバシーに属する事実を含む記事等が掲載されたウェブサイトのURL等情報について検索結果からの削除を求めるための要件を示した最高裁H29.1.31の規範に基づいて検討。

①本件逮捕等の事実が歯科医師の資格に関わる重大な事柄であり、②Xが今もなお現役の歯科医師
Xの歯科医師としての資質に関する社会の正当な関心事であると評価できる。(●事実の性質及び内容)

前記検索条件との関係⇒事実が伝達される範囲がXの歯科医師たる資質に正当な関心を抱く者に限られる(●事実が伝達される範囲)

Xの主張する職業上、私生活上の被害は、仮に存在するとしても本件検索結果の表示との間に因果関係を認め難いものであるか、正当な関心事としてXにおいて甘受すべき性質のもの(●具体的被害の程度)

削除を求める記事等がXの逮捕等を客観的に報道する正当な目的に基づくもの(●記事等の目的や意識、記事等において当該事実を記載する必要性)


本件検索結果を表示する意義及び必要性がなお少なからず存在しており、
事実の公表されないXの法的利益の優越が明らかとはえいない

判例時報2367

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2018年7月11日 (水)

面会交流審判⇒禁止に変更。

名古屋高裁H29.3.17      
 
<事案>
調停離婚により未成年者の親権者と定められ、未成年者を監護するX(母)が相手方Y(父)に対し、面会交流審判事件に係る前審判で定める面会を、新たな協議が成立する等までの間、禁止することを求めたもの。 
 
<原審>
未成年者のYに対する面会を拒否する感情は強固
but
XもYとの面会に賛成していることなど、Yを未成年者の父親として尊重するなどの態度を示せば、未成年者のYに対する消極的感情を和らげることを期待できる。

前審判の定める面会を認めるのが相当であるととしたが、Xの立会いを認める期間については平成30年までと変更。 
 
<判断>
①未成年者が当初からYを頑なに拒否し続けていることは明らか
②現実の問題として、従前から通算して10回にわたる試行面会を経ても、未成年者のYに対する拒否的態度は一層強固なものとなっており、
遅くとも平成28年12月に一部実施した面会交流において、未成年者とYとの面会交流をこれ以上実施させることの心理的、医学的弊害が明らかとなったものと認められ、それが子の福祉に反することが明白になった

同月以降の直接的面会交流をさせるべきでないことが明らかになったということができる。

Yは、未成年者との面会交流につき、Xとの間でこれを許す新たな協議が成立するか、これを許す審判が確定し又は調停が成立するまでの間、未成年者と面会交流してはならない。

判例時報2367

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2018年7月 5日 (木)

郵便局員の警察官への情報提供と通信の秘密等の侵害(肯定)

大阪地裁H29.11.29      
 
<事案>   
 
<判断>   
Y(A郵便局の局長)が、警察官の求めに応じて、
差押許可状の提示前に郵便局の保管状況や差出人、発信局等の情報を警察官に提供したこと、
差押許可状の対象外である郵便物を交付したこと
を認定。 
 
●郵便物の情報提供について 
通信の秘密及び信書の秘密の保護範囲が、通信の内容のみならず通信の存在自体にも及び、信書の差出人及び受取人の氏名や住所等も保障される

公権力がそれらの情報を取得するには強制捜査によらなければならず、警察官が強制捜査によらずにYに当該情報の提供を求めたことは国賠法上違法
郵便の業務に従事する者が、強制捜査によらない情報提供の求めに応じることも、守秘義務の存在に鑑みれば、不法行為に当たる

Yが、令状の呈示前に、警察官に対し、郵便物の存在、差出人及び発信局等の情報を提供したことは通信の秘密を侵害。

郵便法50条5項に基づく損害賠償責任の免責、同法56条に基づく除斥期間の経過等の主張:

①同法50条は郵便局の役務を安価であまねく公平に提供するという趣旨に基づく規定と解される
②捜査機関に郵便物の情報を提供することは郵便の役務を提供する過程に通常含まれるものではない
⇒本件のような場合まで同条で免責されるとは解されない。
同法56条の適用範囲も同様に限定される。
 
●郵便物の差押えについて 
郵便物の捜索は刑訴法上許容されていないと解される。
but
①捜査機関が捜索を行うことなく郵便物を差し押さえることは現実的でない
②郵便の業務に従事する者が守秘義務を負う

捜査機関は、郵便の業務に従事する者の協力を得て、郵便物を差し押さえることが予定されている。
郵便の業務に従事する者は、みだりに郵便物の通信の秘密等が侵害されることのないよう、令状の記載に照らして押収されるべき物を選別する義務を負う。

が、警察官に対し、令状に記載された郵便物と発信局が異なり、差押目的物に該当しない郵便物を提供し、差押えさせたことは違法

警察官については、令状記載の差押目的物と異なる郵便物を差し押さえたことが違法
 
<解説>
通信の秘密及び信書の秘密の保護範囲が、通信の内容のみならず通信の存在に関する事柄まで及ぶ。
(通説・裁判例) 

判例時報2366

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2018年7月 3日 (火)

親権者の再婚と非親権者が負うべき生活保持義務の内容

福岡高裁H29.9.20      
 
<事案>
離婚時に子の親権者と定められた実親と再婚した者が子との間で養子縁組をした場合に、非親権者である実親が子に対して負うべき生活保持義務の具体的内容が問題となった事案。 

X(元夫・医師)とY(元妻)は、元夫婦であるが、両者間の子らの親権者をYと定めるとともに、XがYに養育費として子1人当たり月額10万円を支払うことなどを合意した訴訟上の和解合意に基づき協議離婚。
その後Yが再婚、その再婚相手と子らが養子縁組。
Xは、前記養子縁組の事実を知り、前記和解において合意された子らの養育費の免除ないし相当額の減額を求め、調停申立て⇒調停不成立。
 
<原審>
養親らの養子に対する扶養義務は、生活保持義務
親権者とならなかった実親の扶養義務は、養親らが負う生活保持義務に後れる特殊な生活保持義務に過ぎないのであり、その意味では生活扶助義務に近く、

養親らの資力が十分でなく、養親らだけでは養子の健康で文化的な最低限度の生活を維持できなくなったときに、養子は親権者とならなかった実親に対して扶養請求することができる


子らの生活保護制度による最低生活費を算定し、養親らの基礎収入額と比較するなどして、Xの支払うべき養育費を、子らの生活費の不足分である1任当たり月額7734円に変更。
 
<判断>
親権者である実親が再婚し、再婚相手が子らと養子縁組したことは、養育費をみ直すべき事情に該当し、
養親らだけでは子らについて十分に扶養義務を履行することができないときは、非親権者である実親は、その不足分を補う養育費を支払う義務を負う。

その額は、生活保護法による保護の基準が一つの目安となるが、それだけではなく、子の需要、非親権者の意思等諸般の事情を総合的に勘案すべき。

まずは、生活保護制度の保護の基準に照らし、養親らにおいて未成年者に対し十分に扶養の義務を履行することができないか検討。

養親の扶養義務の根拠の1つが養子縁組の当事者の意思にある

養親らだけでは十分に子らへの扶養の義務を履行することができないかを判断するにあたっては、非親権者である実親について合理的に推認される意思をも参酌すべき。

生活保護制度の保護の基準では、学校外活動費は教育扶助の対象となっていないが、相手方の学歴、、職業、収入等に照らし、相手方には、未成年者らに人並みの学校外教育等を施すことができる程度の水準の生活をさせる意思はあるものと推認することができる。

その他、これまでの未成年者らの生活水準との連続性など、諸般の事情を考慮。

相手方の支払うべき養育費は、未成年者1人当たり月額3万円とするのが相当。
Yの育児休業期間中は子1人当たり4万円とするのが相当。
 
<解説> 
●離婚時に子の親権者と定められた実親と再婚した者が、子との間で養子縁組

養子は、
①養親の嫡出子としての身分を取得するとともに
②非親権者である実親と養子との法律関係(実親子関係)も存続。

親権者の再婚相手は子の養親としての扶養義務を負い、
非親権者は、実親としての扶養義務を負う。 

親権者である一方の実親が再婚し、その再婚相手と子が養子縁組をそたことは、扶養に関する協議又は審判の変更又は取消をする要件である「事情に変更を生じたとき」(民法880条)に該当。

養親と実親の扶養の程度は異なる。
養子縁組における合意ないし当事者の意思(子の養育についての扶養を含めて全面的に引き受けるという合意ないし意思)、又は、
未成年者養子制度の本質等


第一次的な扶養義務を負うのは養親であり、
養親らの資力の点から養親において十分に扶養の義務を履行できない場合に限って、実親が二次的な扶養義務を負う

 
●何をもって、養親らにおいて十分に扶養の義務を履行できないとするか? 

A(原審):養親らの資力が十分ではなく、養親らだけでは養子の健康で文化的な最低限度の生活を維持できなくなったときであって、子の最低生活費にも不足する場合

B:特段の事情がない限り、養育費支払義務を免れる

C:個別具体的に判断

本決定は、Cの見解を採用し、
生活保護義務を基本としてながらも、相手方の学歴、職業、収入、これまでの未成年者らの生活水準との連続性など、
諸般の事情を考慮して、実親の負う養育費の支払額を定めたもの。

判例時報2366

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2018年7月 2日 (月)

非開示決定は違法、損害賠償請求(国賠請求)認容

大阪高裁H29.9.1      
 
<事案>
Xが、大阪市情報公開条例に基づき、大阪市教育委員会に対し、ピースおおさか展示リニューアル監修委員会における配布資料等の公開請求⇒本件文書に記録されている情報が本件条例7条2号、4号、5号所定の非公開情報に該当することを理由とする非公開決定⇒Y(大阪市)に対し、国賠法1条1項に基づき、慰謝料の支払を求めた。 
 
<判断>
①本件文書は、リニューアル後に予定された公開展示の内容であり、それまでに展示リニューアル基本設計、同実施設計が公表
それ自体秘密性を有するものとはいえないし、本件条例7条所定の非公開情報に該当しない
②本件文書を公開することにより、本件センター職員が、ピースおおさかのリニューアルオープンに向けて必要な準備を行うことにつきある程度の影響が出ることは否定できないとしても、リニューアルオープンが困難となるおそれがあったとは認めがたい
③本件決定が本件センターの裁量の範囲内であって正当であるとは認められない
④本件決定には合理的根拠があった旨のYの主張は採用できず、担当公務員に過失があったことも明らか

Yの国賠責任を肯定し、5万円の支払を求める限度で、Xの請求を認容。 
 
<解説>
本件条例7条では「公にすることにより、・・・正当な利益を害するおそれがあるもの」が非公開情報とされているところ、
「利益を害するおそれ」の有無の判断に当たっては、

文書を公開することによって生じる支障、弊害のみでなく、
文書を非公開とすることによって生ずるおそれのある弊害や、公開することによって当該事務の公正かつ適切な執行に資するときにはそのような有用性、公益性をも総合考慮して決せられるべきであるとされ(最判解説)

正当な利益を害するおそれの有無ないし程度については、
行政機関の保有する情報につき原則開示との立場を採る以上、
具体的かつ客観的な利益侵害発生の可能性が要求されることになるとされている。

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2018年7月 1日 (日)

集団懲戒事案での損害評価についての裁判例

橋下弁護士のテレビでの発言で、600件以上の懲戒請求を受けた弁護士が、橋下弁護士に損害賠償請求を行った事案。

◆広島高裁(平成21年7月2日)

不法行為を認めた上で、懲戒請求を受けた弁護士が被った損害について

「(1) 本件各発言が被控訴人らに対する名誉毀損にあたるとはいえないこと,発言ウからオを持ってした懲戒請求の呼びかけが不法行為を構成することは上記のとおりである。
(2) 上記呼びかけにより,被控訴人らは多数の懲戒請求を受け,そのため,これに対応せざるを得なかったことは容易に推認できるから,その対応にかかる時間的,肉体的,精神的負担をもって損害とすべきことになる。
 そこで検討すると,被控訴人らはそれぞれ約600件の懲戒請求を受けたが,その相当部分は,インターネットで流布された懲戒事由まで記載された書式に懲戒請求人の住所氏名を記入したものであり,数種類の書式の内容も大同小異である上,被控訴人らの属する広島弁護士会においては,綱紀委員会において同種の案件としてまとめて審理をし,懲戒委員会への付議にまでは至らなかったことが認められ(甲2,20の1ないし13,弁論の全趣旨),これらによれば,被控訴人らが,上記懲戒請求に対する調査や反論等に相応の心身両面の負担を要したであろうことは想定できるが,それが本来の弁護士業務に多大な影響を及ぼすほどのものであったとは認めるに足りない。一方,弁護士として,懲戒請求を受けること自体基本的には不名誉なことである上,本件刑事事件の弁護に精力的に取り組んでいた被控訴人らにとって,理由のない一斉懲戒請求が相当な精神的負担をもたらしたであろうことは容易に推認されるところである(甲13,弁論の全趣旨)。
 以上のほか,本件に顕れた一切の事情を総合すると,被控訴人らの受けた精神的苦痛に対する慰謝料としては一人あたり80万円と認めるのが相当である。」

◆上記事案の最高裁の判断(平成23年7月15日)

橋下弁護士のテレビでの発言の不法行為を否定。

「(3) しかしながら,本件呼び掛け行為は,懲戒請求そのものではなく,視聴者による懲戒請求を勧奨するものであって,前記認定事実によれば娯楽性の高いテレビのトーク番組における出演者同士のやり取りの中でされた表現行為の一環といえる。その趣旨とするところも,報道されている本件弁護活動の内容は問題であるという自己の考えや懲戒請求は広く何人にも認められるとされていること(弁護士法58条1項)を踏まえて,本件番組の視聴者においても同様に本件弁護活動が許せないと思うのであれば,懲戒請求をしてもらいたいとして,視聴者自身の判断に基づく行動を促すものである。その態様も,視聴者の主体的な判断を妨げて懲戒請求をさせ,強引に懲戒処分を勝ち取るという運動を唱導するようなものとはいえない。他方,第1審原告らは,社会の耳目を集める本件刑事事件の弁護人であって,その弁護活動が,重要性を有することからすると,社会的な注目を浴び,その当否につき国民による様々な批判を受けることはやむを得ないものといえる。そして,第1審原告らについてそれぞれ600件を超える多数の懲戒請求がされたについては,多くの視聴者等が第1審被告の発言に共感したことや,第1審被告の関与なくしてインターネット上のウェブサイトに掲載された本件書式を使用して容易に懲戒請求をすることができたことが大きく寄与しているとみることができる。のみならず,本件懲戒請求は,本件書式にあらかじめ記載されたほぼ同一の事実を懲戒事由とするもので,広島弁護士会綱紀委員会による事案の調査も一括して行われたというのであって,第1審原告らも,これに一括して反論をすることが可能であったことや,本件懲戒請求については,同弁護士会懲戒委員会における事案の審査は行われなかったことからすると,本件懲戒請求がされたことにより,第1審原告らに反論準備等のために一定の負担が生じたことは否定することができないとしても,その弁護士業務に多大な支障が生じたとまでいうことはできない。
(4)これまで説示したところによれば,第1審被告の本件呼び掛け行為は,弁護士としての品位を失うべき非行に当たるとして,弁護士会における自律的処理の対象として検討されるのは格別,その態様,発言の趣旨,第1審原告らの弁護人としての社会的立場,本件呼び掛け行為により負うこととなった第1審原告らの負担の程度等を総合考慮すると,本件呼び掛け行為により第1審原告らの被った精神的苦痛が社会通念上受忍すべき限度を超えるとまではいい難く,これを不法行為法上違法なものであるということはできない。

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2018年6月22日 (金)

面会交流の事案

東京高裁H29.11.24      
 
<事案>
XとYは平成21年に婚姻の届出をし、
同22年に長男Aを、同25年に二男Bをもうけた。
Yは、同26年12月に未成年者らと共にXの住所から出てYの住所に別居をした。
Xは会社を経営し、Yは薬剤師として稼働。
 
<原審>
非監護親と子との面会交流を実施することは、一般的には、子の福祉の観点から有用であり、子が精神的な健康を保ち、心理的・社会的な適応をするために重要な意義がある。
もっとも、面会交流を実施することがかえって子の福祉を害するという特段の事情があるときは、面会交流は禁止・制限されなければならない」
として、いわゆる原則実施論に立脚。 
 
<判断>
●父母が別居し、一方の親が子を監護するようになった場合においても、子にとっては他方の親(「非監護親」)も親であることに変わりはなく、別居等に伴う非監護親との離別が否定的な感情体験となることからすると、子が非監護親との交流を継続することは、非監護親からの愛情を感ずる機会となり、精神的な健康を保ち、心理的・社会的な適応の維持・改善を図り、もってその健全な成長に資するものとして意義があるということができる

他方、面会交流は、子の福祉の観点から考えるべきものであり、父母が別居に至った経緯、子と非監護親との関係等の諸般の事情から見て、子と非監護親との面会交流を実施sることが子の福祉に反する場合がある。

面会交流を実施することがかえって子の福祉を害することがないよう、事案における諸般の事情に応じて面会交流を否定したり、その実施要領の策定に必要な配慮をしたりするのが相当である。

◎Xによる未成年者に対する暴行行為、虐待行為があったとは認められず、
他方長男も試行的面会交流を重ねるに従いXとの親和度を増していて、未成年者らはXに一定程度の親和性を有していることが認められる。
⇒未成年者らとXとの直接的面会交流を禁止すべきとはいえない。

◎Xには、Y及び未成年者らとの同居中から、同人らの心身の状態、立場、心情等に対する理解・配慮を欠く点があり、
その行動・態度は自己中心的で、
自制心をもって面会交流のルールを行うことが順守できるか懸念がないとはいえない。

YはXの言動によって精神的負荷を受け、Xに対し信頼感を持てなくなっており、Yが安心して未成年者らを面会交流に送り出すことができる環境を整えることが必要

①直接面会交流を認めるのが相当。
②未成年者らは平成26年12月の別居後、これまで3回の試行的面会交流をしたのみ⇒短時間の面会交流から始めて段階的に実施時間を増やす。
頻度は、1か月に1回、面会時間は半年間1時間、半年後から2時間。
1年6カ月(18回分)の間は第三者の支援(面会立会い)を認めるのが相当。
 
<解説>
裁判官の中にも、
「面会交流実施論とそれに対する批判がありますが、
原則として面会交流お実施すべきであるとか、原則として実施すべきでないというような、原則はどちらかという問題ではなく、
あくまでも子の利益になるかという観点から、個別の判断をすべきである。
とするもの。 

従来の家裁の実務:
面会交流の許否等につきいわゆる比較基準論に従って双方の諸事情を丁寧に審理判断。

平成20年前後頃からいわゆる原則実施論が台頭

その見直し

判例時報2365

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2018年6月21日 (木)

仲裁人が「自己の公正性又は独立性に疑いを生じさせるおそれのある」事実の開示義務の違反となる場合

最高裁H29.12.12      
 
<事案>
● 一般社団法人商事仲裁協会(JCAA)における、米国法人X1、X2と日本法人Y1、シンガポール法人Y2との間の仲裁事件(「本件仲裁事件」)において、3人の仲裁人の合議体である仲裁廷がした仲裁判断につき、Xらが、仲裁法44条1項6号所定の取消事由があるなどと主張して、その取消しの申立てをした。 
● 本件仲裁事件の仲裁人として、平成23年9月20日までに、本件仲裁人(D法律事務所シンガポールオフィスに所属する弁護士)ほか2名が選任された。

本件仲裁人は、同日付で、
「D法律事務所の弁護士は、将来、本件仲裁事件に関係性はないけれどもクライアントの利益が本件仲裁事件の当事者及び/又はその関連会社と利益相反する案件において、当該クライアントに助言し又はクライアントを代理する可能性があります。また、D法律事務所の弁護士は、将来、本件仲裁事件に関係しない案件において、本件仲裁事件の当事者及び/又はその関連会社に助言し又はそれらを代理する可能性があります。」との記載のある表明書を作成し、これをJCAAに提出。

弁護士Eは、本件仲裁人が本件仲裁事件の仲裁人に選任された時点ではD法律事務所に所属していなかったが、遅くとも平成25年2月以降、D法律事務所サンフランシスコオフィスに所属。

本件仲裁人は、本件仲裁判断がされるまでに、本件仲裁事件の当事者であるXら及びYらに対し、Y1と同じくC社を完全親会社とする米国法人F社を被告として米国カリフォルニア州北部地区連邦地方裁判所に係属する訴訟においてD法律事務所に所属するEがF社の訴訟代理人を務めている事実を開示しなかった。
 
<規定>
仲裁法 第18条(忌避の原因等)
4 仲裁人は、仲裁手続の進行中、当事者に対し、自己の公正性又は独立性に疑いを生じさせるおそれのある事実(既に開示したものを除く。)の全部を遅滞なく開示しなければならない。
 
<原決定>
本件事実が法18条4項の事実に当たるとした上で、
①本件仲裁人は、本件表明書において、将来、利益相反関係が生ずる可能性があることを抽象的に表明したにすぎない⇒本件事実を開示したことにならない。
②仲裁人は手間をかけずに知るとことができる事実について開示のための調査義務を負うべきであり、本件事実については本件仲裁人が所属するD法律事務所でコンフリクト・チェック(利益相反関係の有無を確認する手続)を行うことにより特段の支障なく調査することが可能であったといえるところ、これが実施されなかったために本件事実が開示されなかったとしても、本件仲裁人はその開示義務に違反し、このことは法44条1項6号所定の仲裁判断の取消事由に当たり、かつ、この開示義務違反は重大な手続上の瑕疵
⇒Xらの本件申立てを裁量により棄却すべきはないと判断し、認容。
 
<判断>
仲裁人が当事者に対して法18条4項の事実が生ずる可能性があることを抽象的に述べたことは、法18条4項にいう「既に開示した」ことに当たらない
⇒原決定①の判断は是認できる。

仲裁人が、当事者に対してい法18条4項の事実を開示しなかったことについて、
法18条4項所定の開示義務に違反したというための要件として、
仲裁手続が終了するまでの間に、仲裁人が当該事実を認識していたか、仲裁人が合理的な範囲の調査を行うことによって当該事実が通常判明し得たことが必要

この要件の有無につき確定することなく、本件仲裁人が本件事実の開示義務に違反したことを認めた原判決の②の判断は是認できない
⇒原決定を破棄し、更に審理を尽くさせるため、本件を原審に差し戻した。
 
<規定>
仲裁法 第44条
当事者は、次に掲げる事由があるときは、裁判所に対し、仲裁判断の取消しの申立てをすることができる。

六 仲裁廷の構成又は仲裁手続が、日本の法令(その法令の公の秩序に関しない規定に関する事項について当事者間に合意があるときは、当該合意)に違反するものであったこと。

・・・

6 裁判所は、第一項の申立てがあった場合において、同項各号に掲げる事由のいずれかがあると認めるとき(同項第一号から第六号までに掲げる事由にあっては、申立人が当該事由の存在を証明した場合に限る。)は、仲裁判断を取り消すことができる

仲裁法 第18条(忌避の原因等)
当事者は、仲裁人に次に掲げる事由があるときは、当該仲裁人を忌避することができる。
二 仲裁人の公正性又は独立性を疑うに足りる相当な理由があるとき。
 
<解説>   
●法18条4項を事実である本件事実を本件仲裁人が開示しなかったことを理由として本件仲裁判断を取り消すためには、
①前記の不開示が法18条4項所定の開示義務に違反するものであり、かつ
②この開示義務違反が法44条1項所定の仲裁判断の取消事由のいずれかに該当することが必要。
仲裁判断の取消事由があると認められる場合であっても、事情によっては、仲裁判断の取消しの申立てを裁量により棄却することがあり得る(法44条6項)。
 
●仲裁人に「公正性又は独立性を疑うに足りる相当な理由があるとき」は、仲裁人を忌避できる(法18条1項2号)。

「公正性又は独立性を疑うに足りる相当な理由があるとき」とは、
一般論としては、
①仲裁人が事件又は当事者と一定の関係があるために公正な仲裁判断が期待できないこと、
②具体的な仲裁人の行動が仲裁人の公正性又は独立性についての合理的な疑いを生じさせること
を意味すると解されている。

法18条4項所定の開示義務(=自己の公正性又は独立性に疑いを生じさせるおそれのある事実(既に開示したものを除く。)の全部)との関係で主として問題となるのは、前記①。

「仲裁人が当事者又はこれを同視すべき者である場合」のみならず、
「仲裁人が、現在、当事者と密接な関係にある場合」
も前記①に当たるとされている。

具体例として、
仲裁人が当事者の顧問として日常的に助言等をしている顧問弁護士であるという場合のみならず、
仲裁人が当事者の顧問弁護士と同じ法律事務所に所属し、協力関係が確立されている場合も挙げられている。

判例時報2365

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2018年6月20日 (水)

親権に基づく妨害排除請求として子の引渡しを求めたのが権利の濫用とされた事例

最高裁H29.12.5      
 
<事案>
離婚した父母のうちその長男の親権者と定められた父Xが、法律上監護権を有しない母Yを債務者とし、親権に基づく妨害排除請求権を被保全権利として、長男Aの引渡しを求める仮処分命令の申立てをした。 
 
<原審>
本件申立ての本案は、家事事件である子の監護に関する処分の審判事件であり、民事訴訟の手続によることができない⇒本案申立ては不適法。 
   
Xが抗告許可申立て⇒原審がこれを許可。
 
<判断>
離婚後の父母のうち親権者と定められた一方が、民事訴訟の手続により、法律上監護権を有しない他方に対し、親権に基づく妨害排除請求として子の引渡しを求めることができる
but
判示の事情
①子が7歳であり、母は、父と別居してから4年以上、単独で子の監護に当たってきたものであって、母による前記監護が子の利益の観点から相当なものではないことの疎明がない
②母は、父を相手方として子の親権者の変更を求める調停を申し立てている
③父が、子の監護に関する処分としてではなく、親権に基づく妨害排除請求として子の引渡しを求める合理的な理由を有することはうかがわれない

XがYに対し親権に基づく妨害排除請求としてAの引渡しを求めることは権利の濫用に当たる
 
<解説>
●親権者が民事訴訟の手続により法律上監護権を有しない監護者に対し親権に基づく妨害排除請求として子の引渡しを求めることができる(最高裁昭和35.3.15)。
前記監護者が離婚後の父母のうち一方であっても同様(最高裁昭和45.5.22)。 

A:離婚後の父母間いおいては、親権者は民事訴訟の手続により親権に基づく妨害排除請求として子の引渡しを求めないとする見解

離婚後の父母であれば、親権者が、非親権者を相手方とし、監護者指定とは独立した子の監護に関する処分として子の引渡しを求める申立てをすることができ、民事訴訟の手続による子の引渡請求を認める必要がない。
vs.
①民事訴訟の手続により子の引渡請求をすることができるか否かと、子の監護に関する処分として子の引渡しを求める申立てをすることができるか否かとは、既存の権利の発見と権利・義務の形成というように、次元が異なるもので、
同じ当事者間において同様の結果を得られる形成裁判を求めることができることを理由として、当該当事者間で給付訴訟をすることができないことにはならない。
②親権については、平成23年法律第61号による民法改正において、820条に「子の利益のために」との文言が入り、834条の2に親権停止の規定が新設されたものの、823条の懲戒権が削除されなかったなど権利性が維持

現時点において、前掲最高裁判例を変更し、離婚後の父母間における親権に基づく妨害排除請求権を否定するのは、時期尚早。

親権は子の利益のために行使されなければならず(民法820条)親権の行使が困難又は不適当であることにより子の利益を害するときは、家庭裁判所は申立てにより当該親権者について親権停止の審判をすることができる(民法834条の2)

子の利益を害する不適当な親権の行使が権利の濫用に当たることは明らか。 

●離婚後の父母のうち親権者と定められた一方は、法律上監護権を有しない他方を相手方として、独立の子の監護に関する処分として子の引渡しを求めることもできると解される。
子の監護に関する処分としてAの引渡しを求める申立てであれば、家事手続法に基づき審理することになる。

子の意思を把握し審判をするに当たりこれを考慮しなければならない旨を定める同法65条が適用されるなど子の福祉に対する配慮が図られ、Aの引渡しが繰り返されることを回避しやすい。

家事事件手続法 第65条
家庭裁判所は、親子、親権又は未成年後見に関する家事審判その他未成年者である子(未成年被後見人を含む。以下この条において同じ。)がその結果により影響を受ける家事審判の手続においては、子の陳述の聴取、家庭裁判所調査官による調査その他の適切な方法により、子の意思を把握するように努め、審判をするに当たり、子の年齢及び発達の程度に応じて、その意思を考慮しなければならない。
but
Xはあえて前記申立てをせず、民事訴訟の手続により親権に基づく妨害排除請求としてAの引渡しを求めている。
そして、そのことについて合理的な理由を有することがうかがわれない。
(親権者変更の蓋然性がほとんどないとか、明らかに子の奪取方法が違法であるなど子の福祉に対する配慮を特段しなくても適切な結論を得られる場合には、合理的な理由があるといってよいと考えられる。)

判例時報2365

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2018年6月13日 (水)

NHK受信料訴訟大法廷判決

最高裁H29.12.6      
 
<事案>
X(日本放送協会)が、Xの放送を受信することのできる受信設備を設置していながらXとの間でその放送の受信についての契約を締結していないYに対し、受信料の支払等を求めた事案。 
 
<規定>
放送法64条1項:
「協会(X)の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない。」と規定 

Xは、日本放送協会放送受信規約を策定し、
同条3項に従い総務大臣の認可を受けて、これを受信契約の条項として用いている。

放送受信規約には、受信契約を締結した者は受信設備の設置の月から定められた受信料を支払わなければならないことなどが規定
 
<争点>
①放送法64条1項は、受信設備設置者に対し受信契約の締結を強制する規定か
②同項が受信契約の締結を強制する規定である場合
(ア)受信契約はどのような態様で強制的に成立するのか
(Xが受信設備設置者に対し申込みの意思表示をすることのみによって成立するのか、
受信設置者に対し承諾の意思表示を命ずる判決が確定して初めて成立するのか)
(イ)同項は憲法に違反するか
(ウ)強制的に成立した受信契約によってどの範囲で受信料債権が発生するか(受信契約成立時以降の分か、受信設備設置の月以降の分か)
(エ)前記(ウ) で受信設備設置の月以降の分の受信料債権が発生する場合、その受信料債権の消滅時効はいつから進行するか
 
<主張>
(ア)主位的請求:
Xの受信契約の申込みがYに到達した時点で受信契約が成立⇒受信設備設置の月の翌月である平成18年4月分から平成26年1月分までの合計21万円余の受信料の支払

(イ)予備的請求①:
受信契約の締結義務の履行遅滞に基づき前記同額の損害賠償を求める

(ウ)予備的請求②:
受信契約の承諾の意思表示をするよう求めるとともに、これにより成立する受信契約に基づき前記同額の受信料の支払を求める

(エ)予備的請求③:
不当利得返還請求として前記同額の支払を求める
 
<判断>
放送法64条1項は、同法に定められた日本放送協会の目的にかなう適正・公平な受信料徴収のために必要な内容の、日本放送協会の放送の受信についての契約の締結を強制する旨を定めた規定
⇒日本放送協会からの前記契約の申込みに対して前記の者が承諾をしない場合には、日本放送協会がその者に対して承諾の意思表示を命ずる判決を求め、その判決の確定によって前記契約が成立する。

放送法64条1項は、同法に定められた日本放送協会の目的にかなう適正・公平な受信料徴収のために必要な内容の、日本放送協会の放送の受信についての契約の締結を強制する旨を定めたものとして、憲法13条、21条、29条に違反しない

日本放送協会の放送の受信についての契約を締結した者は
受信設備の設置の月から定められた受信料を支払わなければならない旨の条項を含む前記契約の申込みに対する承諾の意思表示を命ずる判決の確定により同契約が成立した場合、
同契約に基づき、受信設備の設置の月以降の分の受信料債権が発生

日本放送協会の放送の受信についての契約に基づき発生する、受信設備の設置の月以降の分の受信料債権(前記契約成立後に履行期が到来するものを除く)の消滅時効は、前記契約成立時から進行する。

判例時報2365

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