民事

2022年5月26日 (木)

申立人ら夫婦が申立人母の非嫡出子を養子にすることの許可を求めた事案で、父との関係でニュージーランド法を準拠法とされた事案

東京家裁R3.1.27

<事案>
申立人ら夫婦(ニュージーランド及びD国籍を有する申立人父と日本国籍を有する申立人母)が、申立人母とH国籍を有する実父との間の非嫡出子である未成年者(日本国籍及びH国籍)を申立人らの要しとすることの許可を求めた事案。

<判断>
申立人父との関係ではニュージーランド法を
申立人母との関係では日本法を
それぞれ準拠法として認定した上、
申立人らと未成年者との間でそれぞれ適用される法における養子縁組の要件(保護要件を含む。)について検討し、本件申立てを許可。

<規定>
法適用通則法 第三一条(養子縁組)
養子縁組は、縁組の当時における養親となるべき者の本国法による。この場合において、養子となるべき者の本国法によればその者若しくは第三者の承諾若しくは同意又は公的機関の許可その他の処分があることが養子縁組の成立の要件であるときは、その要件をも備えなければならない。
・・・
法適用通則法 第三四条(親族関係についての法律行為の方式)
第二十五条から前条までに規定する親族関係についての法律行為の方式は、当該法律行為の成立について適用すべき法による。
2前項の規定にかかわらず、行為地法に適合する方式は、有効とする。

法適用通則法 第三八条(本国法)
当事者が二以上の国籍を有する場合には、その国籍を有する国のうちに当事者が常居所を有する国があるときはその国の法を、その国籍を有する国のうちに当事者が常居所を有する国がないときは当事者に最も密接な関係がある国の法を当事者の本国法とする。ただし、その国籍のうちのいずれかが日本の国籍であるときは、日本法を当事者の本国法とする。
・・・

<解説>
●準拠法について
養子縁組における準拠法:
法適用通則法31条1項前段⇒縁組の当時における養親となるべき者の本国法による。
同項後段⇒養子となるべき者の本国法によればその者若しくは第三者の承諾若しくは同意又は公的機関の許可その他の処分があるときは、その要件(「保護要件」)をも備えなければならない。

渉外養子縁組の実質的成立要件は、
縁組当時の養親の本国法により、
保護要件については養子の本国法が併せて考慮される。
本件では、申立人父と未成年者が重国籍⇒同人らの本国法を確定する必要。
重国籍の場合の本国法:法適用通則法38条1項。

申立人父について、
ニュージーランド及びDのいずれも常居所があるとは認められない。
申立人父のD及びニュージーランドにおける居住歴、ニュージーランドへの定期的訪問といった事情⇒ニュージーランドとDのうち申立人父に最も密接な関係がある国はニュージーランド⇒本国法なニュージーランド法。
未成年者の本国法は日本(同条但書)。

●保護要件については、
成立する養子縁組が断絶型の養子縁組⇒特別養子縁組の保護要件
非断絶型の養子縁組⇒普通養子縁組の保護要件
が必要。
ニュージーランド法の養子縁組は、実親と養子との関係について断絶効があるとされている。
but
配偶者の一方の本国法上、断絶型の養子縁組の定めしかない場合であっても、地方配偶者の本国法上、非断絶型の養子縁組が認められるときは、当該夫婦は被断絶型の養子縁組をすることができると解されている。

本件:申立人母が、夫婦共同縁組で普通養子縁組の申立てをしている⇒申立人父との間でも被断絶型の養子縁組が成立すると解され、本件審判も、養父子関係について、普通養子縁組に即した日本法の保護要件を検討。

●ニュージーランド法の養子縁組の要件
①養子の年齢制限、②養親の年齢要件、③夫婦共同縁組、④試験養育、⑤実親等の同意、⑥裁判所の養子縁組命令

要件⑤について:
同意が要求される実親等について、非嫡出子の場合、母又は(母が死亡している場合は)生存している後見人若しくは死亡した母から任命された後見人。
かかる場合において必要であると裁判所が判断するときは、裁判所は父の同意を要件とすることができる旨を規定。

本審判:
実父の同意を要件とする必要性について、
断絶型の養子縁組が成立するニュージーランド法において、実父の同意は裁判所が必要と判断するときに限り、要件とされている。
本件において成立する養子縁組が申立人父との間においても非断絶型にとどまる。
⇒実父の同意は不要としている。
ニュージーランド法は、養子縁組命令を発するのにソーシャルワーカー(児童福祉司)の報告書の提出を要する旨を規定。

本審判:
同規定は手続規定⇒本件に適用を要しない。
but
家庭裁判所調査官の調査報告書によりソーシャルワーカーの報告書を代替することも可能。

試験養育を要件とする規定についても、手続規定⇒適用を要しないとも解されるが、その実質から同居期間の要件を定めていると解することもできるとの指摘。
ニュージーランド法は、養子縁組は裁判所のする養子縁組命令により成立。
本審判:この命令は、日本の家庭裁判所のする養子縁組許可の審判をもって代えることができる。
未成年者は申立人母の非嫡出子⇒申立人母については、縁組許可の審判は不要(民法798条ただし書)であり、届出によって縁組を成立させることとなる。
but
夫婦共同縁組を同時に成立させるため、申立人父については、いわゆる分解理論を用いて、養子縁組許可の審判をする必要。

分解理論:
養子縁組命令の裁判を、養子縁組の実質的成立要件に関わるものとして裁判所等公的機関の関与を必要とする部分と、
養子縁組を創設させる部分とに分解した上で、
実質的成立要件の審査部分については家庭裁判所の許可の審判という形で代行させ、
縁組の形式的成立要件については法適用通則法34条2項によって行為地法である日本法の方式(戸籍法上の届出)によることとするもの。
その場合、理論的には、主文は
「申立人父が申立人母とともに未成年者を養子とすることを許可する。」とすれば足りるとされるが、
本審判:「申立人らが未成年者を養子とすることを許可する。」

申立人母からも申立てがあり、夫婦共同縁組の申立ての形を採っている場合に、申立人母からの申立てを認容することも許容されるという解している。

判例時報2511

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2022年5月23日 (月)

キャバクラ店の従業員の私的交際違反の違約金が無効とされた事案

大阪地裁R2.10.19

<事案>
キャバクラ店を経営する特例有限会社である原告が、女性従業員である被告に対し、
被告が私的交際をせずこれに違反した場合は原告に対して違約金200万円を支払う旨を、原告・被告間で合意。
but
これに違反して被告が男性従業員と交際
⇒ 雇用契約の債務不履行に基づく違約金100万円(一部請求)の支払を求めるとともに、本件合意及びその後の誓約(前記交際のことを他言しない等)に違反したことが不法行為に当たるとして40万円の損害賠償を請求。

被告:本件合意は労基法16条に違反し(争点①)、かつ公序良俗にも反している(争点②)から無効。

<規定>
労基法 第一六条(賠償予定の禁止)
使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。

<判断・解説>
●争点①
本件合意が、使用者が労働契約の不履行について違約金を定めたり損害賠償額を予定する契約をしたりしてはならないと規定した労基法16条に違反し、無効。

労基法16条は、労働契約の不履行についての違約金等に関する規定
but
本件事案は、キャバクラ店での接客業務それ自体の不履行ではなく、それ以外の私生活に関する合意の不履行とも考えられる。
but
原告が雇用契約を締結する前提として被告を含む全従業員に本件合意を要求⇒原告は被告との雇用契約において、単なる接客でなく、交際相手のいない状態で接客を行うことを労働として求めていた⇒本件合意が労働契約の不履行についての違約金等に関する規定と認定したものと思われる。

なお、キャバクラ店等の風俗営業において、店舗経営者が接客担当者を個人事業者として扱い、雇用契約ではなく請負契約や業務委託契約を締結する形式がとられる場合⇒その実質が「事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者」(労基法9条)に当たるかどうかの判断が必要。

●争点②
人が交際するかどうかや誰と交際するかはその人の自由に決せられるべき事柄であって、その人の意思が最大限尊重されなければならない
本件合意は、禁止する交際について交際相手以外に限定する文言を置いておらず真摯な交際までも禁止対象に含んでいることや、その私的交際に対して200万円もの高額な違約金を定めている⇒被用者の自由な意思に対する介入が著しい⇒公序良俗に反し無効。

①本件合意について禁止する交際の対象が広範に及んでいることや②違約金が高額であることを理由に公序良俗に反すると認定しており、事例判断にとどまっている。
尚文献。

<解説>
交際禁止をめぐる紛争:
①芸能プロダクションである原告が、専属契約を手家kつして女性アイドルとして芸能活動をしていた被告に対し、被告が男性ファンとの交際を禁止した専属契約に違反したとして、債務不履行又は不法行為に基づく損害賠償を請求した事案において、交際禁止条項が有効であると認定して、請求を認容した事例。(東京地裁)
②①と同種の事案で、所属アイドルが異性と性的な関係を持ったことを理由に損害賠償を請求することは、自己決定権そのものである異性との合意に基づく交際を妨げられることのない自由を著しく制約するものであるとして、債務不履行及び不法行為の成立を認めず、請求を棄却した事例。(東京地裁)

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婚姻無効確認請求訴訟(肯定事例)

札幌高裁R3.3.10

<事案>
亡Aと妻の亡Bとの間の子であるXらが、Yに対し、平成30年1月22日に届けられたAとYとの間の婚姻について、Aの婚姻意思がないことを理由に、無効であることの確認を求めた。

<原審>
Yの供述、すなわち、平成29年12月24日に、Aの入居している介護付き老人ホームにおいて、本件施設の看護師であるCの同席の下、AとYとの間で本件婚姻に係る婚姻届を作成したとの供述及びこれに沿うCの陳述書
⇒本件婚姻は、Aの意思に基づくものであるとして、Xらの請求を棄却。

<判断>
①Aは、本件婚姻届けを提出した平成30年1月22日当時、入院生活が前提とされ、婚姻生活を送りうる健康状態ではなかった
②Cは陳述書を作成しているが、平成30年2月に、A、X1、Y、Cの4者での話し合いの席で、Aが「籍は入れていない」旨述べたのに対し、Cは「目の前でやってないから、わからないから。目の前で・・・」と述べ、これに対して、Yは「やりました、病院で」と述べている⇒Cの陳述書の記載内容には信用性に疑問がある。
③Yは、平成29年12月15日以降、Aの死後である平成30年8月15日まで、Aの年金口座から年金を振込当日にほぼ全額引き出していた。
④Yは、Aが危篤状態でICUに入った、翌日に車いすを使用するAが車いすのままでは乗車できない仕様の新車を570万円で注文しているなど不自然な行動。

Yには本件婚姻届を偽造する動機があり、
本件婚姻届にはAの印章によって顕出された印影はあっても、Aの意思に基づいて顕出されたとの推定は覆され、YがAの印章を冒用して押印したものと認めるのが相当

原判決を取り消し、本件婚姻は無効。

<解説>
家裁:Yの主張、供述に沿う本件施設の看護師Cの陳述書に記載された内容を重視
but
Cは平成30年10月に死亡⇒反対尋問に曝されていない。
Cは平成30年2月には陳述書に反する言動。

高裁は、Cの陳述書に依拠して事実を認定することはできないと判断。

婚姻の意思:
その時代の社会観念に従って婚姻とみられる関係を形成しようとする意思
いわゆる実質的意思説が通説、判例とされている。

裁判例:
婚姻無効を認めた事例
無断で提出した婚姻届についてその後追認があったとして婚姻無効を認めなかった事例

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2022年5月21日 (土)

組立保険契約の保険金の対象となる復旧費

福岡高裁宮崎支部R2.7.8

<事案>
太陽光発電事業を営むXが、 工事業者に発注した太陽光発電所設置工事(本件工事)について、Yとの間で組立保険契約(本件保険契約)を締結⇒河川の氾濫により本件工事の材料である太陽電池モジュール(本件太陽光モジュール)等が損傷する事故(本件事故)が発生⇒Yに対し、本件保険契約に基づき、保険金2億2335万9836円及びこれに対する遅延損害金の支払を求めた。

<損害>
本件事故により発生した損害:
本件太陽光モジュールの損傷の他、
ブロック積復旧費用等の損害8400万2385円
産業廃棄物63万4520円
問題は、コネクタのみ水没した本件太陽光モジュールの損害を幾らとみるのが相当かという点。

<原判決>
コネクタのみが水没した本件太陽光モジュールに生じた損害についての社会通念上損害発生直前の状態に復旧したということのできる程度の修理とは、「本件出力保証(本件太陽光モジュールの製造元が25年間で80%の出力を保証するもの)を維持することが可能な程度の修理等」であることを要する。
コネクタの交換による修理等を行った場合には本件出力保証が維持されない
⇒本件太陽光モジュールを全部交換する方法によるほかないとして1枚あたり3万3500円を認容。

<判断>
損害の生じた保険の対象を損害発生直前の状態に復旧するために直接要する修理費等(復旧費)について、
本件保険契約を含む組立保険契約は、基本的には、個々の動産についての各種損害保険を集合したもの⇒その損害額の算定に当たっては、動産損害保険における損害額の算定と異ならない。

コネクタのみ水没した本件太陽光モジュールの損害額は、保険の対象物である当該動産を保険事故発生前の正常な状態と物理的、機能的に同一の状態に復旧するための合理的費用をいい、
新品と交換する費用を損害額と認めることはできない。
本件では、電気工事専門業者が水没したコネクタを交換することにより、本件太陽光モジュールを保険事故発生前の正常な状態と物理的、機能的に同一の状態に復旧することができ、その費用は1枚あたり2000円と認めるのが相当。

<解説>
組立保険:
各種の工事を対象として、工事現場における材料等の搬入から工事完成後引渡しまでの過程において、免責事由に該当しない限り、あらゆる不測の事故等により工事物件に生じた損害をてん補することを目的とする保険であり、
工事現場に所在する工事の目的物や材料、工事の遂行に必要な仮設物や什器備品等を保険の対象物とするもの。

本件保険約款第5条では、保険金として支払うべき損害額について、
損害の生じた保険の対象を損害発生直前の状態に復旧するために直接要する修理費等(復旧費)と規定
組立保険の裁判例。

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ベーコンビッツの骨片の残存可能性についての警告表示がないことと製造物責任法の欠陥(否定)

東京高裁R2.1.15

<事案>
Yは、乙からベーコンビッツを仕入れて、それにレタス、トマト等を加えてハイローラーブレッドで巻いたものを輪切りにした惣菜を販売⇒Xが本件商品を購入して食べたところ、本件商品内に残存していた骨片により、歯冠破折の傷害

XはYに対し、
①本件商品に骨片が混入していたこと又は
②本件商品に骨片の残存可能性についての警告表示がなかったことにつき、
製造物責任法2条2項の「欠陥」にあたるなどと主張⇒治療費等の損害賠償を求めた。

<争点>
本件商品に指示・警告状の欠陥が認められるか

<判断>
①本件商品は目視によりベーコンビッツの分量や性状まで認識可能
②本件商品は、全体として比較的柔らかく、そしゃくしやすい食品として認識され、特に強い力で噛み切ろうとしたり嚙み砕こうとしたりすることが一般に想定されないもの
③食肉加工食品一般に骨片が残存する可能性があることは、一般消費者にもある程度知らされている
④比較的柔らかい食品をそれに即した通常の強さでそやくする限りにおいては、被害発生の蓋然性は低い
⑤カリエス(虫歯)等があって歯を傷つけやすい者にあってはそしゃくの強度を調整する自助努力も必要
⑥ベーコンビッツに残存する骨片により歯を傷める可能性があることは、食品の安全性に関する情報の中では、相対的に重要性はそれほど高くない
⑦警告表示を行うべき必要性は、それほど高くなく、その情報を必要とする購入者に対して適切に情報を伝える効果は限定的

本件商品にベーコンビッツの骨片の残存可能性についての警告表示がなかったことをもって、本件商品が通常有すべき安全性を欠いていたということはできない。

<解説>
製造物責任法2条について
「欠陥」当該製造物の特性、その通常予見される使用形態、その製造業者等が当該製造物を引き渡した時期その他の当該製造物に係る事情を考慮して、当該製造物が通常有すべき安全性を欠いていること
学説:「欠陥」には、
(1)製造上の欠陥、
(2)設計上の欠陥、
(3)指示・警告状の欠陥
の3類型が存在。
(3)は、使用法や危険性の表示に不備があること・

欠陥の判断基準:
A:消費者の期待を基準とするもの
B:製品の有する危険性と効用を比較衡量するもの
があるが、実務上、いずれかの基準に則っているわけではない。

最高裁H25.4.12(イレッサ薬害訴訟上告審):
医薬用医薬品の添付文書の記載について、
添付文書の記載が適切かどうかは、上記副作用の内容ないし程度(その発現頻度を含む。)当該医療用医薬品の効能又は効果から通常想定される処方者ないし使用者の知識及び能力、当該添付文書における副作用に係る記載の形式ないし体裁等の諸般の事情を総合考慮して判断する。

本判決:
微細な骨片を除去しきれないベーコンビッツの特性に言及するとともに、一般の消費者が当該事実を認識していることを前提として判示。

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2022年5月13日 (金)

民訴法142条の法意を類推して本訴が却下された事案

東京地裁R3.4.20

<主張>
X:
①Y1及びY2がXの顧客情報等の秘密をY3に漏えいして競合行為(債務不履行)を行った
②Yらが共謀してXの従業員を引き抜いてY3社に移籍させ
③Xの取引先にXの信用を毀損する虚偽の事実を告知するなどして、
Xの取引先を侵奪した(共同不法行為)

Xの取引先3社に係る逸失利益相当額の損害を求めた。
but
Xは、本件訴訟に先だって、Y1に対し、Xを退職後、Xの顧客に対してXの信用を害する虚偽の事実を告知し、競合会社の取締役に就任し、同社へのXの従業員を多数転職させ、Xの顧客情報を漏えいしてXの顧客である本件各取引先を侵奪したと主張して、債務不履行(退職後の競業避止及び秘密保持に関する契約の違反)又は不法行為に基づき、本件各取引先に係る逸失利益約7800万8244円の一部請求をし、請求額の一部を認容する一審判決がなされ、Y1は控訴。

<判断>
Xの訴えのうち、Y1に対する訴えを却下し、その余の請求を理由がないとして棄却。

Y1に対する本件訴訟と別訴とは、 当事者が同一であり、訴訟物も同一であり、別訴の第1審判決が言い渡されている現時点では、本件訴訟でXが主張する損害についても別訴で審理が尽くされているというほかなく、別訴における請求の拡張という方法があるにもかかわらず、あえて本件訴訟を提起したものであって、両者で判断内容が矛盾抵触する可能性を生じさせる
⇒民訴法142条の法意を類推して、Y1に対する本件訴訟を不適法な訴えとして却下すべき。

<規定>
民訴法 第一四二条(重複する訴えの提起の禁止)
裁判所に係属する事件については、当事者は、更に訴えを提起することができない。

<解説>
●重複訴訟禁止の趣旨
民訴法142条は、重複訴訟を禁止。

①「同一事件」につき審理・判決をすると、既判力が抵触
②二重の訴訟追行を強いられる後訴被告の応訴の煩わしさの排除
「同一事件」とは、「当事者の同一」と「訴訟物の同一」という二面から判断
but
最近では、訴訟物の同一に限らず、審理の重複と判断の矛盾を防止するという民訴法142条の趣旨を尊重して、同一事件の範囲を拡大して、後訴を却下する考え方が有力。

重複訴訟を禁止する趣旨:
①2つの訴訟が係属したとしても、先に確定した判決の既判力の積極的作用として、後訴裁判所は、その判決に従えば足りる⇒既判力の抵触が問題となるのは、2つの判決が同時に確定するという稀な場合に限られる。
②被告の応訴の煩わしさの防止という趣旨についても、前訴と後訴の被告が同一の場合に妥当。
貸金返還請求訴訟と貸付金不存在確認の後訴を提起する必要を直ちに否定することもできない。

●別訴と本件訴訟との関係
いずれもXが原告で、Y1が被告。

別訴の訴訟物:
Y1が競業会社の取締役に就任して、同社へXの従業員を転職させた⇒Y1に対する退職後の競業避止及び秘密保持に関する契約に違反した債務不履行又は不法行為に基づく損害賠償請求。

一部請求である本件訴訟:
どの期間に対応する逸失利益を請求するものか不明。

金銭請求について一部請求を許容する判例に従って、一部であることを明示した部分のみが訴訟物になるとしても、Y1に対する請求については、別訴と本件訴訟の訴訟物が同一となるか否か明らかといえない。
⇒訴訟物の同一性を要求する従来の考え方に従うと、Y1に対する本件訴訟は、別訴と重複訴訟になるとは直ちにはいえない。

●Y1に対する本件訴訟の取扱い
①本件訴訟は、別訴の当事者や請求原因が同一
⇒審理の重複と判断の矛盾を防止するという民訴法142条の目的からすると、同一の裁判所で審理するのが望ましい。
②Xは、別訴の控訴審において、Y1に対する損害賠償請求を拡張して、本件訴訟で却下された請求を請求することも可能

民訴法142条の目的である「判断の重複の防止」と「相手方当事者の応訴の負担軽減」に照らして、同条所定の「事件」を訴訟物よりは広く解して、既判力が及ぶ範囲に限らず、被告の利益の保護を目的とする「請求の基礎」(民訴法143条1項本文)が同じ本件訴訟(後訴)も、同一事件に当たると考えてもいいように思われる。

判例時報2510

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2022年5月12日 (木)

外国人技能実習の管理団体の不法行為が認められた事案

熊本地裁R3.1.29

<解説>
外国人技能実習制度:
わが国で培われた技能、技術又は知識の開発途上地域等への移転を図り、当該開発途上地域等への移転を図り、当該開発途上地域等の経済発展を担う人づくりに寄与することを目的として平成5年に創設⇒平成21年法律第79号により入管法等が改正され、新たな在留資格として「技能実習」が創設され、外国人技能実習生の法的保護及びその法的地位の安定化を図るための措置が講じられた。
but
入管法違反や労働関係法令の違反が発生。

平成28年11月28日、外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律により、
技能実習計画の認定制、実習実施者の届出制、管理団体(実習実施者と技能実習生との雇用契約のあっせん及び実習実施者に対する技能実習の実施に関する管理を行う法人)の許可制、技能実習生に対する人権侵害行為等についての禁止規定、違反に対する罰則、技能実習生に対する相談対応、情報提供、転籍の連絡調整等が規定され、
これらに関する事務を行うものとして外国人技能実習機構を認可法人として新設。

<事案>
フィリピン共和国国籍のとび職種の技能実習生であるXが、
管理団体であるY1に対し、
Y1が、
①実習実施者であるY2への指導・管理を怠ったこと
②Xを強制的に帰国させようとしたこと
③転籍に向けて他の実習実施者と管理団体等との連絡調整等の措置を怠ったことについて、
不法行為に基づく損害賠償請求として慰謝料等の支払を求め、

Y2に対し、
①とび作業の本件審査基準の要件附則、②労災隠し、③重機の運転をさせたこと、④退職を強要したことについて、不法行為に基づく損害賠償請求として慰謝料等の支払を求め、
⑤被告Y2との雇用契約に基づいて、時間外労働賃金等の支払を求め、⑥賃金からの不当な控除があったとして不当利得の返還を求めた。

<判断>
●Y1に対する請求
◎ とび作業の本件審査基準の要件充実性について:
X:要件を充実するためには必須作業として足場等の組立及び解体作業等を2分の1以上行うことが必要
vs.
本件審査基準の文言を文理解釈した上で、
足場等の組立及び解体作業等を行わなかったとしても、建築物の解体作業等が行われれば要件を充足している。

労災隠し:
Y2に労災申請するよう指導する義務に違反
but
最終的に労災申請をするに至り、身体的な治療を受けるとともに経済的な損失の補填も受けた
労災申請の遅れによって精神的な苦痛を被ったと認めることはできない。

賃金等の不払い等の是正措置義務違反:
経済的な損失はなく、精神的な苦痛を被ったとは認められない

重機の運転:
違法行為であると認めることはできない

◎ 強制帰国:
技能実習法が技能実習生の帰国の意思を書面により確認し、継続の希望を持っている場合には、転籍措置を講じ、帰国が決定した時点で機構に書面で届け出る義務があるにもかかわらず、それを遵守せず、
また、技能実習生の旅券及び在留カードを保管することが禁じられているにもかかわらず、それを出国まで預かって管理しようとした点等に不法行為が成立。
⇒慰謝料50万円及び弁護士費用5万円の限度で認容。

◎ 転籍措置義務違反は認められない。

● Y2に対する請求は、不法行為の成立、不当利得の存在を認めず。

<解説>
管理団体等の技能実習生に対する不法行為の成立を認めた裁判例等
いずれも管理団体等が負う義務を具体的に認定し、場合によっては、人格権の侵害等を理由として不法行為の成立を認めている。

判例時報2510

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2022年5月 8日 (日)

破産法162条2項2号の悪意の推定⇒会社法429条1項の悪意の認定

東京地裁R2.1.20

<事案>
破産者C1㈱の破産管財人Xが、Y1㈱の代表者Y2は、C1が支払不能であることを知りながらY1のC1に対する貸金債権につき弁済期前に弁済等を受けた⇒Y1に対し、破産法162条1項1号イによる不当利得返還請求権に基づく前記弁済等の額の支払いを求めるなどし、
Y2に対しては、破産法の規定に違反して弁済期前に弁済等を受けるなどしたことが代表取締役としての任務懈怠に当たる⇒それにより生じた前記弁済等の額に相当する額の損害賠償(会社法429条1項に基づく損害賠償))を求めた。

<規定>
破産法 第一六二条(特定の債権者に対する担保の供与等の否認)
次に掲げる行為(既存の債務についてされた担保の供与又は債務の消滅に関する行為に限る。)は、破産手続開始後、破産財団のために否認することができる。

一 破産者が支払不能になった後又は破産手続開始の申立てがあった後にした行為。ただし、債権者が、その行為の当時、次のイ又はロに掲げる区分に応じ、それぞれ当該イ又はロに定める事実を知っていた場合に限る。
・・・

2前項第一号の規定の適用については、次に掲げる場合には、債権者は、同号に掲げる行為の当時、同号イ又はロに掲げる場合の区分に応じ、それぞれ当該イ又はロに定める事実(同号イに掲げる場合にあっては、支払不能であったこと及び支払の停止があったこと)を知っていたものと推定する。

・・・
二 前項第一号に掲げる行為が破産者の義務に属せず、又はその方法若しくは時期が破産者の義務に属しないものである場合

<判断>
● Y1は、破産者C1が支払不能になった後、そのことを知りながら本件支払を受けたこととなる⇒Y1の支払った2800万円のうち本件貸金元本に相当する2760万円については、破産法162条1項1号イによる否認権行使の要件を満たす。
(当該支払は既存の債務の消滅に関する行為であってその時期が破産者の義務に属しないもの⇒Y1は破産者が支払い不能であったことを知っていたものと推定される(法162条2項2号)を前提)
本件支払のうち40万円については、利息制限法に違反する無効な弁済⇒不当利得として返還義務あり。

●Y2の会社法429条1項に基づく損害賠償責任
①否認権行使の対象となる行為をすることは、破産者の他の債権者との関係では、破産法の規律に違反する行為であるとの評価を否定することができないことに加え、否認権行使により不当利得として返還を求められることとなれば、訴訟などの対応のための費用を要するだけでなく、悪意の受益者として法定利息の支払をも余儀なくされるY1の取締役であるY2としては、Y1をして否認権行使の対象となる行為をさせないようにすべき善管注意義務を負っていた
利息制限法に違反する無効な弁済であり、不当利得として返還を余儀なくされることが明らかな支払についても、Y2としては、同様に、このような支払を受けないようにすべき法令遵守義務ないし善管注意義務を負っていた。
but
Y2はY1をして本件支払を受けさせた⇒利息制限法に違反する40万円の弁済額を除く2760万円についても、その後のXの否認権行使により効力を生じないものとされるに至った以上、支払を受けた2800万円全額について法令遵守義務ないし善管注意義務に違反し、任務懈怠があった。

会社法429条1項の悪意又は重過失の要件について:
本件では、Y2の本人尋問を行うことができなかった⇒Y2の内心は証拠上明らかでない。
but
Y2が悪意又は重過失により任務懈怠に及んだという場合の悪意又は重過失対象とは、本件支払のうち2760万円との関係では、Y1をして否認権行使の対象となる行為をさせたこと、すなわち本件支払が否認権行使の対象となることであり、その実質は、破産者が支払不能であったことの認識にかかっている
同項の悪意の対象は、破産法162条2項2号により推定された悪意の対象と実質的には同一

同号による悪意の推定の効力は、自由心証主義を背景とした事実上の効力として、会社法429条1項の悪意にも及ぶ。
40万円との関係でも、利息制限法違反を基礎づける事実関係についてはY2においても認識していた利息制限法に違反する内容の本件貸金契約を締結し、これに対する弁済として過払を受けた以上、40万円の弁済が無効となり得ることについてY2に悪意又は重過失があったことは明らか。

● X:Yらに対して、破産法の規定に違反して期限前弁済を受けるなどしたことが共同不法行為に当たる⇒不法行為による損害賠償請求もした。
vs.
債権者においてその権利を濫用し、他の債権者を害する意図でことさらに期限前弁済を受けたというような特段の事情がある場合を除けば、弁済を受けたこと自体が即座に不法行為を構成すると解することは相当ではない

XのY1に対する不当利得返還請求及びXのY2に対する会社法429条1項に基づく損害賠償請求を認容。
両請求は、その重なり合う限度で不真正連帯債務の関係に立つ。

<解説>
貸金の期限前弁済の事案について、破産者より弁済を受けた債権者(株式会社)が、破産法162条2項2号の推定規定が適用されることを前提に、破産管財人による否認権行使が同条1項1号イの要件を満たすとされた上に、
同債権者の代表取締役についても、その職務を行うについて悪意又は重過失があったとされ、破産管財人に対する損害賠償義務が認められた例。

判例時報2510

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石炭火力発電所の運転差し止めを求めた事案

仙台高裁R3.4.27

<事案>
仙台港に建設された石炭火力発電所・仙台パワーステーションの運転差し止めを周辺住民が求めた訴え。
周辺住民であるXら124名は、
①大気中に排出される有害物質により、呼吸系、循環器系、免疫系に悪影響を及ぼし、早期死亡リスクを増大させる等、深刻な健康被害が発生し、本件発電所の運転により生命・身体に重大な侵害が及ぶ危険性が生じる
②温室効果ガスにより促進される地球規模の気候変動によっても生命、健康及び身体が侵害される
③近くにある蒲生干潟の生態系に悪影響を及ぼし、生物多様性が損なわれる

本件発電所を建設・運転するYに対し、身体的人格的又は平穏生活に基づく妨害予防請求権を根拠として運転差止めを求めた。

Xらは、PM2.5の濃度には閾値がなく低濃度でも健康被害が発生し、PM2.5や二酸化窒素の濃度が上昇することにより、仙台市及び近隣地域において脳卒中、肺がん、心疾患、呼吸器疾患等により、年間9.7人の早期死亡者、年間1人の低出生体重児を発生させるとするシミュレーション結果を示した論文を援用。

<一審>
現時点において本件発電所の運転による環境汚染の態様や程度が特別顕著なものとは認められず本件発電所の運転により環境を汚染する行為は、社会的に容認された行為としての相当性を欠くということはできず平穏生活権を侵害するものとして違法となると認めることはできない。
⇒請求棄却。

<判断>
本件発電所から排出される大気汚染物質により受ける健康被害の危険性は、社会生活上受忍すべき限度を超える具体的な健康被害の危険性とはいえない
⇒本件発電所の運転は、身体的人格権又は平穏生活権に対する違法な侵害行為とはいえない
⇒控訴棄却

健康被害の危険性については・・・抽象的な危険は否定しがたい
but
相応の環境対策を講じ、現実に排出される大気汚染物質は周辺の地方公共団体との公害防止協定で定めた排出基準を大幅に下回り、周辺地域におけるPM2.5、二酸化窒素などの測定値が営業運転開始後も環境基準を下回る状態で推移し、本件発電所の運転により大気汚染状態が悪化したことを具体的に裏付ける事情が認められない
PM2.5には健康被害発生の閾値がないことを前提としても、本件発電所の運転により健康被害が発生する具体的な危険性は認められない。

温室効果ガスの排出による地球規模の気候変動や生態系への悪影響という面でも、具体的な危険は認められない
・・・・国民生活のインフラとして相当程度の社会的有用性ないし公共性を有する。

<解説>
環境被害の違法性は、被侵害利益の種類・性質と侵害行為の態様との相関関係から社会生活上の受忍限度を判断する考え方が一般的。

判例時報2510

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2022年5月 4日 (水)

不在者に対する債権者となる可能性があるにとどまる者は失踪宣告の申立てができるか?

東京高裁R2.11.30

<事案>
Cは、不在者の子。
Cは、令和2根に死亡したが、法定相続人は不在者のみ。
Xは、弁護士で、C死亡の前日に、Cとの間で死後事務委任契約及び家屋管理契約(「本件各契約」)を締結。
Xは、本件各契約を締結したことにより、不在者の失踪宣告に関する申立権を有するとして、失踪宣告の申立てをした。

<判断>
不在者の財産管理については、請求権者として利害関係人のほか検察官が規定されている(民法25条1項)のに対し、失踪宣告については、請求権者は利害関係に限られ検察官は含まれない(民法30条1項)

不在者の財産管理は、不在者本人の財産保護のための制度であって、公益的観点から国家の関与が容認されているのに対し、
失踪宣告は、不在者について死亡したものとみなし、婚姻を解消させ、相続を開始させるという重大な効力を生じさせるものであるところ、
遺族が不在者の帰来を待っているのに国家が死亡の効果を強要することは穏当でない。

民法30条1項に規定する利害関係人については、不在者財産管理人の請求権者より制限的に解すべきであって、失踪宣告をすることについて法律上の利害関係を有する者と解すべき。
②仮に本件各契約が有効であるとしても、Xは、Cに対する債権者であって、不在者がCを相続したことを前提として不在者に対する債権者となる可能性があるにとどまる⇒不在者につき失踪宣告をすることについて法律上の利害関係を有するとはいえない。
③XがCに対する債権者であるとして、Cの相続人である不在者に対して弁済を求める必要があるのであれば、不在者財産管理人の選任を申し立て、不在者財産管理人との間で権利義務の調整を図れば足りる。

Xの抗告を棄却。

<解説>
債権者・債務者など、不在者との債権債務関係の相手方にある者については、不在者財産管理人を選任した上、同人との間で債務の弁済や債権の取りたて等の債権債務関係の清算をすることができる⇒利害関係はないとされている。

尚、損害賠償請求訴訟において、交通事故の加害者が被害者の相続人が生死分明でないとして失踪宣告の申立をした事案において、
相続人が有する損賠賠償請求権は相続人固有のそれであることを前提にして、加害者は単なる一般の金銭債務の債務者であるにとどまらず、法律上の義務の存することが、その義務の発生した時点において不在者が生存したことによってみ肯定されるような法律関係に立っている場合には、交通事故の加害者も失踪宣告の申立てをするについて民法30条の利害関係に当たる

● 本件Xも、不在者と債権債務関係の相手方にある者⇒不在者管理人の選任を求めて、同人との間で債権債務関係の清算をすれば足り、民法30条1項にいう利害関係人には該当しない。

● X:失踪宣告をするためだけに不在者財産管理人選任の申立てをしなければならないとするのは迂回
本決定:「不在者財産管理人は、抗告人との権利義務の調整のために必要がある場合には、不在者につき失踪宣告を請求することもできる」としており、不在者財産管理人であれば当然に失踪宣告の申立てできるとは解していない

不在者財産管理人の職務は、不在者の財産を適切に管理することであって、当然に不在者について失踪宣告の申立てができると解すべきではないし、遺族が不在者の帰来を待っているのに、不在者財産管理人が失踪宣告の申立てをすることは穏当を欠く。

判例時報2510

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