民事

2019年1月19日 (土)

リードが離れ犬がランニング中の者の前に⇒犬を避けようとして転倒負傷⇒保険金支払い請求(一部認容)

大阪地裁H30.3.23       
 
<事案>
原告Xが、路上をランニング中、被告Y1が散歩させていた犬を避けようとして転倒した⇒
①前記犬の占有者であるY1に対し、民法718条に基づき、損害賠償として、
②Y1を被保険者とする、個人賠償責任補償特約等が付された自動車損害損害保険契約を締結した被告Y2会社に対し、同保険契約の約款に基づき、Y1に対する支払請求の判決の確定を条件として、
3940万円余の連帯支払を求めた事案

 
<規定>
民法 第718条(動物の占有者等の責任)
動物の占有者は、その動物が他人に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、動物の種類及び性質に従い相当の注意をもってその管理をしたときは、この限りでない。
2 占有者に代わって動物を管理する者も、前項の責任を負う。
 
<判断>
Y1が、特別な状況でもないにもかかわらず、突然、飼い犬が走り出したことにより手を放してしまい、飼い犬が単独で道路を進行したことにより事故が発生⇒事故の主たる原因は、Y1が飼い犬を係留しない状態にさせたことにある。 

ランニング中のXにおいて前方確認や進行速度を適切に調節することが不十分であり、これが自己の発生に影響したことも否定できない⇒1割の過失相殺

Yらに対し、1280万円余の支払を命じた。

判例時報2386

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2019年1月18日 (金)

ネットショップ用ホームページの制作に係る契約の勧誘における説明義務違反(肯定)

東京高裁H29.11.29      
 
<事案>
X:昭和47年生まれの女性であり、
Y1:ネットビジネスを展開する企業に対してホームページの企画、運営等のサポートを提供する事業を営む株式会社
Y2:クレジット業等を営む株式会社 
Xは、Y1との間で、ホームページ制作業務等の提供を受ける契約を締結し、
Y2との間で、その契約に基づき支払うべきウェブシステム構築費につき個別信用購入あっせん契約を締結。
 
<請求>
Xは、
Y1に対し、消費者契約法4条1項に基づく本件HP制作契約の申込みの意思表示の取消しによる不当利得返還請求権又は勧誘の適合性原則違反及び説明義務違反を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求権により、既払金相当額及びY2に対する未払金の支払を求めるとともに、
Y2に対し、割賦法または信義則に基づいて未払分割支払金の請求を拒絶することができる地位にあることの確認
を求めた。
 
<原審>
①ネットショップも小売業であるから、商品ラインナップの決定、販路の確保・拡大等は事業主体が自らの判断と責任で行うべきで、Xもそのことを認識してしかるべき
②自ら卸売業者等に対して商品の登録を申し込む必要があるところ、本件HP制作契約締結後に、X自身もこれを前提とした行動を取っている

本件HP制作契約の内容自体がXに適合しないものであるとはいえず、説明義務違反はない。 
 
<判断> 
Y1による説明義務違反を認め、原判決を変更し、XのY1に対する請求を一部認容。 

①ネットショップは、内職的な仕事を探している者に勧められる仕事ではなく、商流を有しない素人がホームページだけ先に制作しても月額の固定費用の支出負担がかかるだけ
②Y1が説明に用いたパンフレットには、ホームページ開設の時点で販売すべき商品が準備されていることを前提とする記載があり、他方で、実店舗を有しないか、又は商品の在庫もしくは仕入先を有しない場合についての記載は全くない⇒Y1は、提供するサービスがXに適合しないことを十分認識していたものと推認できる。

本件HP制作契約を積極的に勧誘することは相当でなく本件HP制作契約により負担すべき費用を上回る利益を上げられないリスクが無視できないことについて説明する義務を負っていた。

Aは、「月商10万円位ならすぐに稼げるようになります」などと断定的判断を提供⇒説明義務を果たしているとは認められない。
Y1の不法行為責任を肯定。
 
●Xはインターネットを利用して商品を販売する事業を営むことを目的として本件HP制作契約を締結⇒消費者契約上の「消費者」にあたらない。
同様の理由により、Y2に対する割賦法の適用を前提とする主張には理由がない
 
<解説>
契約締結の過程において、その判断に重要な影響を及ぼすべき情報を提供せず契約を締結して損害が発生情報を提供しなかった当事者は、信義則上の説明義務違反として不法行為による損害賠償責任が認められる(最高裁H23.4.22)。 

消費者と事業者の交渉力の格差に鑑み、平成30年法律第54号により、事業者の情報提供を明文化する消費者契約法3条1項2号が新設された。

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2019年1月17日 (木)

主位的予備的併合訴訟での予備的請求の認諾

東京高裁H30.2.14      
 
<事案>
株式会社Xは、株式会社Y1の代表取締役を務めるY2から勧誘を受けて、合同会社Aを営業者とする匿名組合が裁定取引システムにより外国為替売買で出資金を運用することを事業目的とする投資ファンドに合計6億700万円を出資。 

Xは、Y1及びY2に対し、
主位的に、完成していない裁定取引自動売買システムに関して虚偽の説明を受けた上、リスクの高いアルゴリズム取引が行われたために多額の損失が発生
⇒共同不法行為又は会社法350条に基づき、損害の一部として1億146万2401円の賠償を請求
予備的に、Aとの間で締結された本件ファンドに係る利益配分金の分配債務をもって消費貸借の目的とする準消費貸借契約につき、Y1及びY2との間で連帯保証することを内容とする連帯保証契約に基づき、同額の支払を求めた。
 
<主張> 
Yら:連帯保証契約に基づく請求を認諾する旨の陳述⇒本件訴訟は終了。 
 
<原審・判断> 
予備的請求のみに係る認諾は無効
Y2が本件ファンドに関する虚偽の事実を述べてXを勧誘して出資させ損害を被らせた⇒Yらの不法行為を認めてXの主位的請求を全部認容。 
 
<規定>
民訴法 第136条(請求の併合)
数個の請求は、同種の訴訟手続による場合に限り、一の訴えですることができる。
 
<解説> 
●併合請求(民訴法136条):
①単純併合
②選択的併合
③予備的併合

複数の請求が論理的に両立し得るもの⇒選択的併合
論理的に両立しない⇒予備的併合

予備的併合は、通常、論理的に両立しえない⇒原告による順位付けによって裁判所が拘束される。
論理的に両立し得る請求であっても、特に順位をつけて審判を求めている場合についても、不真正予備的請求の併合として、実務上認めている。
 
請求の認諾は無条件確定的になされる必要がある。 

判例時報2386

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2019年1月15日 (火)

債権差押命令の申立てにおいて、申立日の翌日以降の遅延損害金が取り立てた金員の充当の対象となるか

最高裁H29.10.10      
 
<事案>
税理士である債権者Xが、債務者Yに対して有する報酬等の元金及びこれに対する支払済みまでの遅延損害金の支払請求権を表示した債務名義による強制執行として、債権差押命令の申立てをした事案。 
本件債務名義による強制執行として既に発せられた債権差押命令(「前件差押命令」)に基づく差押債権の取立てに係る金員(「本件取立金」)が、前件差押命令の申立書に請求債権として記載されていなかった申立日の翌日以降の遅延損害金にも充当されるか否かが争われた。
 
<事実>
Xは、平成28年1月12日、東京地裁に、Yを債務者、荒川区を第三債務者とし、債権差押命令の申立てをし、同月20日、差押命令が発せられた。
①請求債権
②差押債権 
本件債務名義は、元金及びこれに対する支払済みまでの遅延損害金の支払を内容とするもの。
but
東京地裁では、第三債務者が遅延損害金の額を計算する負担を負うことのないように、債権差押命令の申立書には、請求債権中の遅延損害金につき、申立日までの確定金額を記載させる取扱い(「本件取扱い」)⇒請求債権中の遅延損害金を前記申立日までの確定金額とした。

Xは、平成28年2月22日から同年3月1日までの間に、荒川区から、前記差押命令に基づく差押債権の取立てとして4回にわたり、請求債権に相当する額の支払を受けた。

Xは、平成28年4月11日、原々審に対し、Yを債権者、荒川区を第三債務者とし、債権差押命令の申立て。
①請求債権:本件債務名義に表示された債権のうち、本件取立金が前件申立日の翌日から前記各支払日までの遅延損害金にも充当されたものとして計算された残元金、最終支払日の翌日以降の遅延損害金及び執行費用
 
<原審>
Xが本件取扱いに従って前件差押命令の申立書に請求債権として元金、前件申立日までの遅延損害金及び執行費用の各確定金額を記載
⇒前件申立日の翌日以降の遅延損害金は本件取立金の充当の対象とはならないものと解すべき⇒本件取立金が前件申立日の翌日以降の遅延損害金にも充当されたものとする本件申立ては許されない⇒本件申立てを却下すべき。
   
Xが抗告許可の申立て⇒原審が抗告を許可
 
<判断>
債権差押命令の申立書に請求債権中の遅延損害金につき申立日までの確定金額を記載させる執行裁判所の取扱いに従って債権差押命令に基づく差押債権の取立として第三債務者から金員の支払を受けた場合、申立日の翌日以降の遅延損害金も前記金員充当の対象となる

原決定を破棄し、本件申立てを却下した原々決定を取り消した上、本件を原々審に差し戻した。
 
<解説> 
●本件取扱いに従って債権差押命令の申立てをした債権者は、債務名義に表示された元金及びこれに対する支払済みまでの遅延損害金の支払を受けるため、取立金が取立日までの遅延損害金に充当されたものとして計算した残元金等を請求債権として再度の申立てをすることができるのか、それとも、申立ての際に本件取扱いに従った以上、債務名義に表示された債権の一部執行を申し立てたものとして請求債権の表示(民執規則133条1項、21条2号、4号)による制約を受けることになり、請求債権全額相当を取り立てた場合には取立金が申立日の翌日以降の遅延損害金に充当されず、元金が消滅し、残元金等を請求債権とする再度の申立てをすることは許されないのか?
 
配当手続の場面における関連判例:
最高裁H21.7.14:
本件取扱いに従って申立てをした債権者が、配当額の計算の基礎となる債権額に申立日の翌日から配当期日までの遅延損害金の額を加えて計算された額の配当を受けることができるか?

本件取扱いは、法令上の根拠に基づくものではないが、第三債務者に請求権中の遅延損害金の額を計算する負担を負わせないための配慮として合理性を有している。
本件取扱いに従った債権者は、第三債務者の負担への配慮をする限度で本件取扱いを受け入れたものであり、もはや前記配慮を要しない配当手続の場面では、特段の事情のない限り、債務名義に基づいて、肺と行き実までの遅延損害金の額を配当額の計算の基礎となる債権額に加えて計算された金額の配当を求める意思を有するとの意思解釈。
債権者は前記金額の配当を受けることができる

本決定:
取立金の充当の場面においても、もはや第三債務者への配慮を要しない
⇒前記最高裁H21.7.14が示すところの本件取扱いに従った債権者の通常の意思解釈⇒債権者債務名義に基づいて取立金が充当されるとの合理的期待を有している⇒申立日の翌日以降の遅延損害金も取立金の充当の対象となると判断。
 
<規定>
民執規則 第133条(差押命令の申立書の記載事項)
債権執行についての差押命令の申立書には、第二十一条各号に掲げる事項のほか、第三債務者の氏名又は名称及び住所を記載しなければならない。
民執規則 第21条(強制執行の申立書の記載事項及び添付書類)
強制執行の申立書には、次に掲げる事項を記載し、執行力のある債務名義の正本を添付しなければならない。
二 債務名義の表示
四 金銭の支払を命ずる債務名義に係る請求権の一部について強制執行を求めるときは、その旨及びその範囲
 
請求債権の表示に関する民執規則の規定自体は、最高裁判所の規則制定権(憲法77条1項)の性質及び範囲に鑑み、実体法上の充当関係まで規律するものとは解されない。 
 
●再度の申立てを認める本決定の考え方⇒申立日と取立日には必ずずれがある⇒本件取扱いがされる限りいつまでも元金は消滅しない⇒申立てが繰り返される可能性。
but
債務者が任意に債務を履行しない以上、やむを得ない。 

判例時報2386

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2019年1月 8日 (火)

信用取引が違法な過当取引に当たるとされた事案

東京高裁H29.10.25      
 
<事案>
個人投資家であるXが、証券会社Y1及びY1の担当者2名(Y2、Y3)に対し、Y1において行っていた信用取引(本件信用取引)に係る損害賠償を求めた事案。
Xは歯科医師として歯科医院を開業。
Y1の担当者による訪問営業⇒Y1に取引口座を開設、平成21年5月から約2年半の期間にわたり本件信用取引⇒1億3466万円余の差引損が発生

①適合性原則違反、②実質一任売買、又は③過当取引に当たる違法なもの⇒不法行為に基づく損害賠償請求。
 
<原審>
Xの請求を一部認容(過失相殺6割)
 
<判断>
●過失相殺の点を除き(過失相殺7割)、原審の判断を是認。 
 
●適合性原則違反 
最高裁H17.7.14を参照。
信用取引はリスクが高く、その仕組みも特有のものがある。
but
Xの社会的地位や判断能力、投資経験、投資意向、Yらによる説明の程度等

Xが信用取引の仕組みやリスクを理解できず、およそ信用取引を自己の責任で行う適性を欠き、取引市場から排除されるべき者であったということはできない。

同原則違反には当たらない。
 
●一任勘定 
本件信用取引において、Xが自らの意思と判断により積極的に取引を行ったことはなく、Y1の担当者の意見に従うことがほとんどであった
but
Y1の担当者によって個々の取引や取引方法がXに無断で決定されたというものではない点を重視
本件信用取引が一任売買や実質一任売買に該当する違法なものであったとはいえない。
 
●過当取引 
顧客の投資経験、証券取引の知識、投資意向、財務状態等に照らし、銘柄数、取引回数、取引金額、手数料等において、社会的相当性を著しく逸脱した過当な取引を行わせたときは、当該行為は不法行為法上違法となると解するのが相当
①本件信用取引のほとんどが、Y1の担当者の提案によって行われたこと、
②X自らの意思と判断により積極的に注文や決済を行ったことがないこと
③Y1の担当者の提案の合理性やリスクについて、Xが十分に理解し検討した上で、取引について承諾を与えていたともいい難いこと

本件信用取引は、全体を通じて、Y1の担当者が主導したものとして、Yらの行為の違法性を肯定。
 
●損害 
差引額から配当金を控除した金額を損害

原審の認定に加え、
①Xには、投資者として当然行うべきであったリスク管理を行わなかった点において落ち度があり、
Y1の担当者に強く損害回復を迫ることでハイリスク・ハイリターンの取引を誘発し、自ら損害の拡大を招いた面があること、
③Y1との取引を開始した直後こそ数百万円規模の取引であったものの、1年もしない間に預託金を1億8900万円まで増額させ、少なくとも本件信用取引を開始した時点では、積極的な投資意向を有していたこと等

7割の過失相殺
 
<解説>
過当取引の判断基準:
①取引の過当性
②口座支配(証券会社等の取引の主導性)
③悪意性
の3要件があげられていたが、
本件では①②につき認定し、③については特段の言及なし。

①②から③が推定されることも多い。 

判例時報2385

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2019年1月 7日 (月)

自動車の所有権留保で、債権者が売買代金残額を支払った保証会社の場合の別除権としての行使

最高裁H29.12.7      
 
<事案>
A自動車会社(「本件販売会社」)から自動車(「本件自動車」)を購入したBの売買代金債務を連帯保証した信販会社であるXが、保証債務の履行として本件販売会社に売買代金残額を支払い、本件販売会社に留保されていた本件自動車の所有権を法定代位により取得⇒前記支払後に破産手続開始の決定を受けた本件購入者の破産管財人であるYに対し、別除権の行使として本件自動車の引渡しを求めた。 
 
<原審>
前記破産手続開始の決定前に、本件販売会社が第三者に対向し得る本件留保所有権はXによる代位弁済によって法律上当然にXに移転しており、
本件購入者が本件自動車の交換価値を把握していないことの公示もされている

XはXを所有者とする登録なくして本件留保所有権をYに対抗し得るとして、別除権の行使を認め、Xの請求を認容。 
 
<判断>
自動車の購入者と販売会社との間で当該自動車の所有権が売買代金債権を担保するため販売会社に留保される旨の合意がされ、
売買代金債務の保証人が販売会社に対し保証債務の履行として売買代金残額を支払った後、
購入者の破産手続が開始されたj場合において、
その開始の時点で当該自動車につき販売会社を所有者とする登録がされているときは、
保証人は、前記合意に基づき留保された所有権を別除権として行使することができる。


上告を棄却。 
 
<規定>
民法 第500条(法定代位)
弁済をするについて正当な利益を有する者は、弁済によって当然に債権者に代位する。

民法 第501条(弁済による代位の効果)
前二条の規定により債権者に代位した者は、自己の権利に基づいて求償をすることができる範囲内において、債権の効力及び担保としてその債権者が有していた一切の権利を行使することができる。この場合においては、次の各号の定めるところに従わなければならない。
一 保証人は、あらかじめ先取特権、不動産質権又は抵当権の登記にその代位を付記しなければ、その先取特権、不動産質権又は抵当権の目的である不動産の第三取得者に対して債権者に代位することができない。
二 第三取得者は、保証人に対して債権者に代位しない。
三 第三取得者の一人は、各不動産の価格に応じて、他の第三取得者に対して債権者に代位する。
四 物上保証人の一人は、各財産の価格に応じて、他の物上保証人に対して債権者に代位する。
五 保証人と物上保証人との間においては、その数に応じて、債権者に代位する。ただし、物上保証人が数人あるときは、保証人の負担部分を除いた残額について、各財産の価格に応じて、債権者に代位する。
六 前号の場合において、その財産が不動産であるときは、第一号の規定を準用する。
 
<解説> 
弁済をするについて正当な利益を有する者が債権者のために弁済をし、当然に債権者に代位する法定代位の場合には、
任意代位の場合に求められる債権譲渡の対抗要件の具備が法律上求められていない上、
随伴性に基づく担保権の移転について独自の対抗要件を具備する必要はないと一般に解されている

保証人である信販会社は、保証債務の履行として販売会社に売買代金債務の弁済をした場合には、販売会社の売買代金債権及びこれを担保するための留保所有権を法定代位により取得し、求償権の範囲内でこれらを行使することができ(民法500条、501条)、
信販会社は販売会社の留保所有権の効力をそのまま第三者に取得することができるものと解される。 

前記取得後に購入者の破産手続が開始した場合には、信販会社は、破産手続上の第三者性を有するとされる破産管財人に対し、留意保所有権を別除権として行使することができる。

民法501条1号は、抵当権等の代位について、担保不動産の第三取得者を保護するため付記登記を求めている
but
破産管財人を同号にいう第三取得者とみるのは困難
自動車の移転登録には付記登記と異なり債務者の協力を要する

破産管財人、ひいては破産債権者を保護するため、付記登記に代えて信販会社を所有者とする登録を要するという考え方は採り難い
(同号は、平成29年法律第44号による民法(債権関係)改正による削除されている。)
 
●最高裁H22.6.4:
自動車の販売とほぼ同時に信販会社が販売会社に対し売買代金残額を立替払し、その後、信販会社に割賦払をしていた購入者の再生手続が開始されたが、その時点では自動車につき販売会社を所有者とする登録がされており、信販会社を所有者とする登録がされていなかった。

当事者の合理的意思解釈により、
信販会社は、残代金相当の立替金債権に加えて手数料債権を担保するため、販売会社から代位によらずに留保所有権の移転を受け、これを留保することを合意したものと解し、
民再法45条が一般債権者と別除権者との衡平を図るなどした趣旨をも考慮して、購入者の再生手続開始の時点で審判会社を所有者とする登録がされていても、信販会社が立替金債権及び手数料債権を担保するための留保所有権を別除権ととして行使されることは許されない。 

平成22年最判:
販売会社と信販会社の有する各留保所有権の被担保債権が異なった⇒留保所有権の移転につき代位によらないこととする合意がされたとの解釈
but
本件:
そのような解釈の余地が残らぬよう、留保所有権が法定代位により移転することを確認する合意がされており、法定代位による移転の妨げとなる事情はない。

事案が異なる。

本件の売買代金には、割賦販売の手数料が含まれているところ、
このような手数料は、いずれ販売j会社から信販会社に支払われるものであるとしても、三者間の合以上は販売会社が購入者から割賦払を受けるもので、支払が滞れば信販会社から販売会社に代位弁済されることになる
⇒手数料部分も残代金債権の一部として法定代位により移転すると解すべきことが前提とされている。
 
●平成22年最判以降、自動車割賦販売における三者間の合意において、同最判の事案におけるような立替払方式よりも保証委託方式が多く採用され、法定代位による留保所有権の移転を排除しない趣旨が明示される傾向。 

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2019年1月 6日 (日)

株券が発行されていない株式に対する強制執行手続で配当表記載の債権者の配当額に相当する金額が供託され、その支払委託がされる前に、債務者が破産手続開始決定を受けた場合

最高裁H30.4.18      
 
<事案>
執行裁判所が、株券が発行されていない株式に対する差押命令に係る強制執行の手続が破産法42条2項本文により破産財団に対してはその効力を失うことを前提として、職権により前記差押命令を取り消す旨の決定⇒前記強制執行手続に同項本分の適用があるか否かが争われた。

破産法42条2項本文による失効する強制執行手続等は、破産手続開始の決定時に係属中のもの(未だ終了していないもの)に限られる⇒前記強制執行手続が債務者に対する破産手続開始の決定時に既に終了しているものといえるか否かが問題。
 
<事実>
債権者であるXは、平成27年12月、債務承認及び弁済契約公正証書の執行力ある正本に基づき、債務者であるAに対する貸金返還債務履行請求権等を請求債権とする株式差押命令申立て
⇒A保有の株式(「本件株式」)に対する差押命令

Xのほかに3名の債権者(B、C、D)もそれぞれ本件株式に対する差押命令を得てろ、債権者Bに関しては、Bから請求債権を譲り受けたB’が債権者の地位を承継。 
売却命令による売却⇒平成28年11月、本件株式の売却代金(8315万円)について開かれた配当期日で、配当表に記載されたX及びB’の配当金につき、Cから異議の申出があり、所定の期間内にX及びB’に対する配当異議の訴えが提起

執行裁判所は、配当異議の申出のない部分につき配当を実施した上、X及びB’の配当額に相当する部分については、執行裁判所の裁判所書記官が前記配当額に相当する金額の供託(配当留保供託)をした。

Aは、前記供託の事由が消滅する前の平成29年1月11日、破産手続開始の決定⇒同月13日、その破産管財人が執行裁判所に本件差押命令の取消しを求める旨の上申書。
 
<規定>
破産法 第42条(他の手続の失効等)
破産手続開始の決定があった場合には、破産財団に属する財産に対する強制執行、仮差押え、仮処分、一般の先取特権の実行、企業担保権の実行又は外国租税滞納処分で、破産債権若しくは財団債権に基づくもの又は破産債権若しくは財団債権を被担保債権とするものは、することができない。
2 前項に規定する場合には、同項に規定する強制執行、仮差押え、仮処分、一般の先取特権の実行及び企業担保権の実行の手続並びに外国租税滞納処分で、破産財団に属する財産に対して既にされているものは、破産財団に対してはその効力を失う。ただし、同項に規定する強制執行又は一般の先取特権の実行(以下この条において「強制執行又は先取特権の実行」という。)の手続については、破産管財人において破産財団のためにその手続を続行することを妨げない。
 
<原々審>
平成29年1月16日、職権により本件差押命令の取消しを求める旨決定。 
   
Xが執行抗告
 
<原審>
本件差押命令に係る強制執行手続には破産法42条2項本文の適用がある
⇒執行裁判所は職権により本件差押命令を取り消すことができる
⇒執行抗告を棄却 
   
Xが許可抗告
 
<判断>
株券未発行株式に対する強制執行の手続において、当該株式につき売却命令による売却がされた後、配当表記載の債権者の配当額について配当異議の訴えが提起されたために前記配当額に相当する金銭の供託がされた場合において、
その供託の事由が消滅して供託金の支払委託がされるまでに債務者が破産手続開始の決定を受けたときは、当該強制執行の手続につき、破産法42条2項本文の適用がある。 
 
<解説> 
●破産法24条2項:
同条1項に規定する強制執行の手続で、破産財団に属する財産に対して既にされているものは、破産財団に対してはその効力を失う旨を規定。

破産債権者及び財団債権者間の公平・平等及び破産手続の円滑な進行を確保するという同条1項と同様の趣旨から、破産手続開始の決定があった場合における個別執行手続の失効を定めたもの。

同条2項本文により失効するのは、破産手続開始の決定時に係属中の個別執行手続に限られ、既に終了した個別執行手続に同項本文の適用はない。 

個別執行手続の失効後、破産管財人が形式的に残存する執行処分の取消しを求めることができるか:
近時の有力説と実務:
破産管財人の上申がある場合には、破産手続開始の決定がされたことを理由として執行処分(差押命令等)を取り消すことを認めている。
第三債務者が供託⇒執行裁判所の支払委託の方法により、破産管財人が供託金を受け取ることができる
 
●一般に、個々の強制執行手続は、その手続の最終段階に当たる所定の行為が完結した時点に終了すると解されている。
債権強制執行手続において売却命令に基づく債権の換価⇒配当手続が終了した時(民執法161条、166条1項2号)に終了。 
 
●株券未発行株式に対する強制執行手続(売却命令による換価が行われる場合):
①差押え⇒②差押えに係る株式の換価⇒③売却代金の配当等という各段階を順次経て進行する手続。
③の売却代金の配当等においては、配当の実施がされた時点が「開始された手続の最終段階に当たる所定の行為が完結した時点」。

民執法は、配当異議の申出がされた場合の配当手続について、
①配当異議の申出のない部分⇒その限度で配当を実施して終了させる(民執法89条2項)一方、
②配当異議の申出に係る部分⇒配当異議の訴えの提起を条件に、その配当等の額に相当する金銭を供託させ(配当留保供託。民執法91条1項)、その供託の事由が消滅する、すなわち配当異議の訴えの結論が出るのを待って当該金銭(供託金)の追加配当を実施(民執法92条1項)。

配当留保供託は、強制執行の1つの段階として、執行目的物の売却代金の管理と権利者への払渡しとを供託手続により行うもの(執行供託)。

最高裁H27.10..27:
担保不動産競売の手続で配当留保供託がされた後、配当表記載のとおりに追加配当が実施される場合における供託金の充当方法に関し、法定充当の時期を供託金の支払委託(民執規則173条1項、61条、供託規則30条)がされた時点を判示。

前記の場合における執行裁判所による配当手続が当該支払委託によって終了することを前提とするものであり、株券未発行株式に対する強制執行手続における配当手続に関しても同様に解することができる。 
 
●Xの主張:
株券未発行株式に対する強制執行手続が形式的には終了していないとしても、実質的には、換価財産が換価手続の完了時点で差押債務者の一般財産から分離されたとして、当該強制執行手続が差押債権者との関係では既に終了したとみるべき。

売却命令による売却がされた場合の配当等を受けるべき債権者が、売却命令により執行官が売得金の交付を受けた時までに差押え、仮差押えの執行又は配当要求をした債権者に限られており(民執法167条1項、165条3号)、
そのような定めが設けられた趣旨として、差押えの目的物が金銭に転化し、債務者の一般財産から分離して配当財産として特定される時点をもって配当要求の終期としたとの説明。
vs.
民執法は、いわゆる優先主義(執行手続が開始された場合に、申立竿権者に優先的権利を与える主義)を採用せず、債権者平等主義(執行手続が開始された場合には、申立債権者か否かを問わず、債権者を平等に取り扱おうとする主義)を基本としたものとされており、
民執法165条は、その文言等に照らし、配当手続において配当等を受けるべき債権者の範囲を画する基準を定めたにとどまり、実体法上、換価財産からは配当等を受けるべき債権者のみが優先的に弁済を受けられるとすることまでは予定していない
民執法165条のみを根拠として、差押えに係る財産の換価手続が完了した場合に、換価財産が配当財団として差押債務者の一般財産から分離され、当該配当等を受けるべき債権者に帰属したものと解することはできない。 

判例時報2385

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2018年12月28日 (金)

既に訴訟で損害賠償義務の履行を受けた者と水俣病の患者団体と水俣病を発生させた企業との間で締結された補償協定

大阪高裁H30.3.28      
 
<事案>
水俣病の認定を受けたA及びBの各相続人であるX1及びX2が、水俣病を発生させた企業であるY(チッソ株式会社)に対し、Yと水俣病患者東京本社交渉団との間で昭和48年7月9日に締結された水俣病補償協定(「本件協定」)に基づく補償を受けられるなどの協定上の権利を有する地位にあることの確認を求めた。 
 
<争点>
過去にYに対する損害賠償請求訴訟において請求を認容する判決が確定し、確定判決に基づいて履行を受けている場合に、A及びBがなお本件協定に基づいてYから補償を受けることができるか? 
 
<原審>
Xらの請求を認容 
 
<判断>
原判決を取り消し、Xらの請求を棄却 

東京交渉団は、Yに対し水俣病の原因者としての不法行為責任を追及し、Yは、東京交渉団の要求を受け、交渉の結果成立した本件協定⇒不法行為に基づく賠償責任の内容と方法について合意したものというべきであり、Yが不法行為に基づく賠償責任以外の債務を新たに負担する合意をしたものではない。

①本件協定は、患者が自主交渉や調停・訴訟等をする負担を負うことがないように、後日、認定された患者がYに対し水俣病による被害の補償を希望した場合は、Yに対し、因果関係のある損害について争わず、本件協定の内容に従った補償をすることにより、損害を賠償すべき義務を課す合意。
②あえてそのような手続を設けたとういことに加え、物価の変動、症状の変化があった場合における対応も予定。

本件協定は、協定に応じた者については、そもそも協定外の手続によって別途補償を行うことを予定していなかった(本件協定による補償と訴訟とは二者択一の手続として想定されていた)。

認定を受けた患者が水俣病にり患したことによる健康被害について、Yに対する損害賠償請求訴訟を提起して判決を受け、これにより確定された民事上の損害賠償義務の履行を既に受けている場合には、当該患者について本件協定に基づく補償を受けることはできないものと解することが相当。

仮に本件協定が不法行為に基づく損害賠償にとどまらず、水俣病患者に対する謝罪と十分な補償を行うことをYの債務として定めたものであるとしても、当該謝罪ないし補償の内容に照らせば、それは水俣病患者に対する一審専属的な債務⇒XらがAから相続するものとは解されない。
 
<解説>
大阪高裁H23.5.31:
水俣病り患という同じ原因により確定判決によってYに対する不法行為による損害賠償請求権が認定前に確定していたときは、この者については、水俣病による過去・現在・将来の損害についてのYとの間の不法行為による損害賠償請求に関する紛争が司法判断により解決
⇒本件協定によって紛争を解決する必要がなくなっており、水俣病患者とYとの間の補償ないし損害賠償をめぐる紛争解決を目的とする和解契約であるという本件協定の性質上当然に、「協定締結以降認定された患者」から除く趣旨で本件協定が締結されたと解するのが相当。 

判例時報2384

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2018年12月27日 (木)

放置自転車回収販売事業のフランチャイズ契約の勧誘が詐欺に当たるとされた事案

東京高裁H30.5.23      
 
<事案>
放置自転車回収得販売事業を営む株式会社であるY1及びその代表者であるY2並びに個人で同事業を営むY3らは、フランチャイズシステム(パートナー制度)を作って、放置自転車回収販売事業への参加者を募集。 

パートナー契約の内容:
参加者がYらに対して加盟時に加盟金300万円程度を即金で支払い、システム利用料を毎月3万円程度支払う代わりに、放置自転車回収販売事業のノウハウをYらが参加者に伝授。
参加者として加盟金300万円程度を支払ったX1~X3が、契約締結時にYらに不法行為があったと主張⇒加盟金等の返還を求めた。
 
<原審>
不法行為の内容を情報提供義務違反と評価し、
50%の過失相殺

⇒Xらの請求額の半分程度を認容。
 
<判断>
不法行為の内容を故意による詐欺と評価して、故意による詐欺については違法な手段で利得した利益を加害者に許容すべきではなく、過失相殺は極力避けるべき⇒過失相殺せず⇒Xらの請求を全部認容
 
<解説>
①Yらは、放置自転車回収販売事業に早期に参入して、大口の顧客を確保し、Yら自身は順調に経営を続けていた。
②放置自転車回収販売事業には、既に多数の業者が参入しており、利益の見込めるような大口回収先は既存業者に抑えられているのが普通であった。
③Yらは、自らの顧客の一部をパートナー契約の参加者に譲る意思は、持っていなかった
but
④Yらは、自らが出版した書籍において放置自転車回収販売事業はこれから新規参入してもリスク無く大きな利益が見込める事業であるかのような記述を行い、勧誘セミナーにおいても同様の説明を行った。
⑤具体的には、ライバル業者がいない未開拓市場であるとか、Yらの輸出業者を使って回収自転車をすぐ換金できるとか、既に加入した参加者の大半が売上月額数万円程度と苦しんでいることを殊更に隠して加盟金300万円を数年で回収できるくらい儲かるなどの虚偽の説明を故意に行った
⑥Xらは、Yらの虚偽説明を真実であると信じてしまい、パートナー契約を締結し、加盟金300万円ていどをYらに支払った

端的に詐欺と評価してもおかしくない内容。

過失相殺は、当事者間の公平を図り、損害を公平に分担するために、被害者側の過失を考慮する制度
加害者の行為が故意による不法行為である場合においては、被害者の落ち度を考慮しないことが適当な場合が多い

[判断]
「故意に違法な手段で取得した利益を許容する結果」は相当でない。

判例時報2384

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2018年12月26日 (水)

名誉毀損の被害者が名誉回復のために支出した社告及び意見広告の費用の賠償請求が否定された事例

東京高裁H29.11.22      
 
<事案>
Xは、総合スーパー事業を営む会社であり、Yは、書籍の発行等を主たる目的とする会社。 

Yは、Xによる食品偽装に関する記事(本件記事)を週刊誌に掲載し、新聞、社内中吊り及びウェブサイトに広告を掲載。

Xは、週刊誌の掲載記事に対応して新聞に社告(本件記事が読者に誤解を与えるものであること等)及び意見広告を掲載。
後に農林水産省等による立入検査が行われたが、安全性に問題がある米穀が食用に流用された事実は確認されていない。
 
<請求>
Xは、本件記事及び本件広告により名誉が毀損された⇒社告及び意見広告の掲載費用を含む損害賠償請求、謝罪広告の掲載及びウェブサイト広告(目次及び中吊り広告)中の一部記事の削除を求めた。 
 
<規定>
民法 第723条(名誉毀損における原状回復)
他人の名誉を毀損した者に対しては、裁判所は、被害者の請求により、損害賠償に代えて、又は損害賠償とともに、名誉を回復するのに適当な処分を命ずることができる。
 
<争点>
①Xによる社告及び意見広告の費用が名誉毀損による損害に含まれるか
②民法723条に基づく名誉回復措置としてどこまで認められるか
 
<判断>
本件記事の本文とその見出し及び本件広告の部分を分けて判断

●本件記事の本文:
納入業者に中国産を含む安価な原料に頼る傾向が生じ、食の安全にリスクが生じているのではないかという問題を提起するもの⇒違法性はない。

●本件記事の見出し及び本件広告の一部:
猛毒を現実に含有する中国産米を原料とする米加工品を現実に販売した事実はないのに、このような事実を摘示し、または、これが真実であると信じる相当な理由があったとは認められない⇒違法性を肯定。

●非財産的損害:
①本件記事の見出し及び本件広告が誤った印象を一般の消費者与え、そのためにXが受けた損害はわずかなものにとどまるとはいえない
but
誤った印象を受けたのは、見出し部分に目を奪われた者に限られる
本件記事の見出し及び本件広告から「猛毒」の2文字を削除した場合には、違法性は認められなかったであろうこと

100万円の限度で肯定。

●営業損害:
売上が有意に減少したと認定することは困難⇒斥ける。

Xが名誉回復のために社告及び意見広告をしたこと
以上の事実を踏まえれば、違法行為による通常生じる損害であるとはいえず、相当因果関係があるとは認められない

●謝罪広告:
本件広告等については社会的評価の低下の程度がそれほど重大であったとは認められず謝罪広告を命ずる必要性があるとまでは認められない
but
ウェブサイト広告(目次及び中吊り広告)については、「中国猛毒米」等のいついずれも「猛毒」の2文字の削除を命じた
 
<解説>
名誉毀損の成否の判断に当たっては、表現の自由の保障との関係から、慎重かつ緻密にされるべき(最高裁:北方ジャーナル事件)。
被害者自らが名誉回復措置として行った社告及び意見広告の掲載費用の賠償を認めることは、より一層表現行為を萎縮させる危険がある

名誉毀損による違法性の程度が高く、判決による名誉回復措置を待っていては被害者の社会的評価の回復が困難となるときには、被害者自身による名誉回復措置も考え得るが、それは、自救行為を認めることに帰し、安易に許されるものではない

本判決が対抗言論をもって解決すべきとしたのは、これを想定してのこと

判例時報2384

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