独禁法

2016年10月30日 (日)

外国法人であるXが、他の事業者と共同して、日本法人である5社が日本国外に所在する当該事業者の現地製造子会社等に購入させるテレビ用ブラウン管の現地製造子会社等向け販売価格の各社が遵守すべき最低目標価格等を設定する旨を合意⇒独禁法違反(肯定)。

東京高裁H28.1.29      

<事案>
公正取引委員会は、外国法人であるXが、他の10社と共同して、日本法人である5社が日本国外に所在する当該事業者の現地製造子会社等に購入させるテレビ用ブラウン管(「本件ブラウン管」)の現地製造子会社等向け販売価格の各社が遵守すべき最低目標価格等を設定する旨を合意すること(「本件合意」)により、、公共の利益に反して、本件ブラウン管の販売分野における競争を実質的に制限⇒独禁法2条6項に規定する不当な取引制限に該当し、同法3条の規定に違反するもので、かつ、同法7条の2第1項1号に規定する商品の対価に係るもの⇒Xに対して、13億7362万円の課徴金の納付を命じた(「本件課徴金納付命令」)

Xは、本件課徴金納付命令に関する手続が違法である上、本件については我が国の独禁法が適用されないなどと主張⇒本件課徴金納付命令の取消しを求めて審判請求⇒公正取引委員会は、これを棄却する旨の審決(「本件審決」)
⇒Xが、①本件課徴金納付命令に関する手続が違法であるし、②本件合意は日本国外で行われたものであり、本件ブラウン管の取引も日本国外でされたのであるから、独禁法が適用されるべきではないとして、本件審決の取消しを求めた。
 
<規定>
独禁法 第3条〔私的独占又は不当な取引制限の禁止〕 
事業者は、私的独占又は不当な取引制限をしてはならない。

独禁法 第7条の2〔私的独占・不当な取引制限に係る課徴金〕
事業者が、不当な取引制限又は不当な取引制限に該当する事項を内容とする国際的協定若しくは国際的契約で次の各号のいずれかに該当するものをしたときは、公正取引委員会は、第八章第二節に規定する手続に従い、当該事業者に対し、当該行為の実行としての事業活動を行つた日から当該行為の実行としての事業活動がなくなる日までの期間(当該期間が三年を超えるときは、当該行為の実行としての事業活動がなくなる日からさかのぼつて三年間とする。以下「実行期間」という。)における当該商品又は役務の政令で定める方法により算定した売上額(当該行為が商品又は役務の供給を受けることに係るものである場合は、当該商品又は役務の政令で定める方法により算定した購入額)に百分の十(小売業については百分の三、卸売業については百分の二とする。)を乗じて得た額に相当する額の課徴金を国庫に納付することを命じなければならない。ただし、その額が百万円未満であるときは、その納付を命ずることができない。
 
<争点>
①本件課徴金納付命令に関する手続の適法性
②本件に独占禁止法3条後段を適用することができるか否か
③本件ブラウン管の売上額は独禁法7条の2第1項の「当該商品の売上額」に該当し、課徴金の計算の基礎となるか 
 
<判断>
課徴金納付命令に関する手続は適法。
本件合意は、本件ブラウン管の購入先及び本件ブラウン管の購入価格、購入数量等の重要な取引条件について実質的決定をする我が国ブラウン管テレビ製造販売業者を対象にするものであり、本件合意に基づいて、我が国に所在する我が国ブラウン管テレビ製造販売業者との間で行われる本件交渉における自由競争を制限するという実行行為が行われた

これに対して我が国の独禁法を適用することができることは明らか
本件ブラウン管は独禁法7条の2第1項にいう「当該商品」に当たる
⇒独禁法施行令5条に基づき算定された本件ブラウン管の売上額が課徴金の計算の基礎となる。
 
<解説>
本件は、公正取引委員会が、日本法人の海外子会社が購入する部品について、日本国外において独禁法2条6項に規定する行為(本件合意)がされたケースについて、日本の独禁法を適用して摘発した初めてのケース。 

判例時報2303

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2015年4月30日 (木)

タクシー待機場所での他のタクシー妨害行為が独禁法19条に違反するとして妨害の差止請求が認容された事例

大阪高裁H26.10.31   

個人タクシー事業者の駅前タクシー待機場所において、他の事業者がタクシーの前に立ちはだかったり、座り込ませるなどして利用者をタクシーに乗せて発進することを妨害することは、独禁法19条に違反するとして、その妨害の差止請求が認容された事例 
 
<事案>
神戸市北区を営業区域としてタクシー事業を営むYが、従業員その他の者をして、Xらの運転する自動車の前に立ちはだからせ、タクシーに割り込ませ、Xらのタクシーを利用者が利用することを妨害。
⇒独禁法24条又は営業権に基づき、Yに対して、妨害行為の差止めと損害賠償を請求。 

<規定>
独禁法 第24条〔差止請求〕 
第八条第五号又は第十九条の規定に違反する行為によつてその利益を侵害され、又は侵害されるおそれがある者は、これにより著しい損害を生じ、又は生ずるおそれがあるときは、その利益を侵害する事業者若しくは事業者団体又は侵害するおそれがある事業者若しくは事業者団体に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。

独禁法 第19条〔不公正な取引方法の禁止〕 
事業者は、不公正な取引方法を用いてはならない。
 
<原審>
Xらの差止請求を棄却、損害賠償請求を一部認容
 
<判断> 
①Xらが、本件各タクシー待機場所で乗客を得ようとすることは、Xらの通常の事業活動の範囲内において、当該事業活動の施設又は態様に重要な変更を加えることなく同一の需要者にYの供給する役務と同種の役務を供給しようとするもの

XらとYとの間には「競争関係」がある

②Yの従業員らの行為は、物理的実力を用いてXらと利用者との運送契約の締結を妨害するもの
「不当な取引妨害」に当たる

③Yの妨害行為、Xの被る損害の内容・程度等を総合勘案するとXらがYの独禁法19条違反の行為によって利益を侵害され、侵害されるおそれがあることによって生じる損害は著しいものというべき
⇒Xらの独禁法24条に基づく差止請求を認容。

営業権に基づく差止請求については、優先権はないとして棄却。
 
<解説>
独禁法19条は、事業者の不公正な取引方法を禁止。

公正取引委員会の告示15号:競争関係にある他の事業者と相手方の取引を不当に妨害することは不公正な取引方法

独禁法24条:同法19条に違反する行為により利益を侵害され、又は侵害されるおそれがある者は、その利益を侵害する事業者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。

判例時報2249

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2015年3月11日 (水)

コンビニエンスストアのフランチャイジーに対する値引き販売を禁止するような言動はフランチャイジーの価格決定権を侵害し、不法行為に該当

福岡高裁H26.11.7   

コンビニエンスストアのフランチャイジーに対する値引き販売を禁止するような言動はフランチャイジーの価格決定権を侵害し、不法行為に当たるとされた事例 
 
<事案>
コンビニエンスストアのフランチャイズ・チェーンを経営するYとの間で、その加盟店となる契約をそれぞれ締結してコンビニエンスストアを経営してきたXらが、Yが、短期の販売期限が設定された商品(デイリー商品)の値下げ販売を制限・禁止したため、商品を廃棄処分せざるを得ず、これによって損害を被ったとし、Yに対して、不法行為又は債務不履行に基づいて損害賠償を請求した事案。
 
<判断>
(1)加盟店に対し、値下げ販売を制限・禁止するようなYの言動については、その運営方針に基づく助言・指導を超える言動について、価格決定権の債務不履行・不法行為を問うべきことになる。
(2)Xらのうち1名がデイリー商品の値下げ販売をしたことから、YがそのXに対し、デイリー商品の値下げ販売は加盟店契約上できないと述べたが、加盟店契約上、加盟店オーナーに価格決定権があることが定められている
右発言は誤っており、運営方針に基づく助言・指導とはいえないことは明らかであり、同Xの価格決定権を侵害する行為

右1名の本訴請求を認容。
but
他のXらについて価格決定の侵害は認められないとしてその請求を棄却。
 
<解説>
フランチャイズ契約においては、フランチャイジーに、フランチャイザーの決定した価格決定を遵守する義務が課されることも多い
but
公正取引委員会の平成14年4月のガイドライン「フランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方について」によれば、フランチャイザーが「希望価格」を提示すること自体は違法ではないが、フランチャイジーに対して、直接、販売価格を拘束することは、原則として違法。 

判例時報2244

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2014年11月19日 (水)

独禁法24条に基づく作為を求める訴え(適法)、電気通信事業法との関係

東京地裁H26.6.19    

1.独禁法24条に基づき作為を求める訴えが適法であるとされた事例
2.戸建て向けFTTHサービスに係る第1種指定電気通信設備である加入者光回線設備に1分岐端末回線単位での方式による接続をしようとする電気通信事業者は、総務大臣による当該接続に係る接続約款の認可又は当該接続に関する協定の認可がなければ、独禁法24条に基づき、当該設備を設置する他の電気通信事業者に対し、当該接続を請求することができないとされた事例 
 
<事案>
戸建向けFTTHサービス(光ファイバによる家庭向けデータ通信サービス)を提供するためにYらの設置する第一種指定電気通信設備(加入者光回線設備)に接続しようとするXらが、Yらに対し、Xらが希望する方法での接続(1分岐端末回線単位での接続)をさせないのは電気通信事業法に基づく接続義務に違反するものであり、不当にXらとの取引を拒絶し、又はYらの優越的地位を濫用するものであるから、独禁法19条に違反する等と主張して、同法24条に基づき、Xらが希望する方法での接続(主位的請求)及びYらが当該接続を行う義務を負うことの確認(予備的請求)を求めた事案。 
 
<規定>
独占禁止法 第24条〔差止請求〕 
第八条第五号又は第十九条の規定に違反する行為によつてその利益を侵害され、又は侵害されるおそれがある者は、これにより著しい損害を生じ、又は生ずるおそれがあるときは、その利益を侵害する事業者若しくは事業者団体又は侵害するおそれがある事業者若しくは事業者団体に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。
 
<争点>
①主位的請求に係る作為命令が独禁法24条の対象となるか
②主位的請求と接続約款及び電気通信設備32条との関係 
 
<判断>
争点①について:
不公正な取引方法に係る規制に違反する行為が不作為による場合もあり得る⇒差止請求の対象である「その侵害の停止又は予防」には、不作為による損害を停止または予防するための作為を含むと解するのが相当。 

争点②について:
主位的請求と接続約款及び電気通信事業法32錠との関係について、被告らの現行の本件接続約款には1分岐単位での接続に係る接続料及び接続条件の定めはないとの事実関係を前提に、
Yらは、電気通信事業法33条2項の接続約款の認可又は同条10項の接続に関する協定の認可を受けていない以上、1分岐単位での接続に関する協定を締結するなどして、このような接続をさせることは出来ないと判示。

電気通信事業法による規制は、独占禁止法による規制を排除するものではなく、電気通信事業法に基づき総務大臣が認可した接続約款による接続が、具体的な事案において、独占禁止法違反の要件を満たす場合に、独禁法に基づく規制に服することが有り得ることは否定できない。
but
Yらは、1分岐単位での接続に関する接続約款等についての総務大臣の認可がない以上、電気通信事業法上、このような接続に応じてはならない義務を課されている状況にある。
にもかかわらず独禁法により、このような接続をしなければならない義務をYらに課すことは、Yらに相互に矛盾する法的義務を課すことにほかならない。

独禁法24条に基づき、Yらに対してこのような接続を請求することはできない。

電気通信事業法32条に基づく接続請求については、この規定は接続という行為義務自体を定めたものではなく、接続に関する協定を締結しこれを維持しなければならないことを定めたものであり、協定は総務大臣が認可した接続約款等によらなければ当事者間に法的効力が生じない
 
<解説>

独禁法24条の「侵害の停止又は予防」に作為命令が含まれるか? 

学説では、道場に基づき作為を命じることもできるとする見解が多数。
本判決も、不作為による損害を停止又は予防するための作為を含む。
 

電気通信事業法を含む事業法と独禁法との適用関係

事業法の規制を受ける行為であっても、適用除外について法の明文の規定がなければ、独禁法が適用されるという見解(相互補完説)

相互補完説⇒電気通信事業法に適合しているからといって、直ちに独禁法にも適合しているとはいえない⇒独禁法に違反するかは別途検討する必要
but
電気通信事業法と独禁法で相反する義務を事業者が負うような事態は避けなければならない。

本件においては、Yの接続約款には1分岐単位での接続をするためには、総務大臣の認可を受けて接続協定を締結する必要がある。
総務大臣の認可がない以上、電気通信事業法上、被告らが1分岐単位での接続に応じることは、同法の罰則規定の対象となり得る。
⇒このような接続に応じてはならない義務。
 

総務大臣の認可がない場合において、Xらが、Yらに対し、接続に関する協定の内容についての承諾の意思表示を求めることができるか?

意思表示に係る協定の内容が具体的に定まっていない⇒そのような請求は理由がない。
協定の具体的な内容について当事者間に協議が調わない場合の総務大臣の裁定の手続を経ないで、一方の当事者が協定の具体的内容を定め相手方に対してその承諾の意思表示を求めることは、電気通信事業法32条の想定するところではない。

判例時報2232

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2013年3月 4日 (月)

販売シェア配分と供給量制限カルテル

東京高裁H23.10.28   

鋳鉄鋼管直管を製造・販売する三会社がその販売シェアを重量ベースで配分して各社の販売量の調整をしていたことが供給量制限カルテルに当たり、需給関係による価格メカニズムが機能しない市場である等の特段の事情が認められないから対価に影響するものとして、平成17年改正前の独禁法7条の2第1項に当たるとして課徴金納付命令審決が是認された事例

<手続>
課徴金納付命令⇒審決手続の開始請求⇒審決⇒その取消を求めて本訴提起 

<審決>
課徴金納付命令と同様の審決。 

①独禁法7条の2第1項にいう「供給量」とは、需要量と供給量の関係で価格が決まってくるという機能における意味であり、生産や流通の段階で在庫として保有されているものを含めて市場に供される商品等の量をいう。

②それを「制限する」とは、人為的な介入により供給量に対して何らかの限界・範囲を設定して、価格の変化を通じて需給が調整され、供給量が決定されるという機能の発揮を阻害すること。

③供給量を制限することを内容とする合意又はそれを直接企図したカルテルに限られず、その効果として市場全体の供給量を制限する結果をもたらすカルテルがあればそれが対価に影響を与えることは経済上の経験則であるから、当該市場がかかる需給関係が機能しない市場であるなどの特段の事情がない限り、価格に影響を及ぼすことになる。

④シェア配分カルテルは、特段の事情のない限り、全体の供給量を制限、抑制する効果を持つ一般的性質を有し、その結果として対価影響性を有する。

⑤本件カルテルは、年度配分シェアの決定により、直需分野及び間需分野とも受注調整によって本件商品の供給量制限をするものであり、その効果によって本件商品の対価に影響を与えていたもの。

<原告主張>
①間需分野では、第二次販売業者からの価格競争に晒されていた⇒活発な価格競争が行われており、在庫量の調整も難しく、実質的に商品等の供給量を制限して価格を引き上げる効果が生じた具体的事実も実質的証拠も欠く。

②シェア配分カルテルがあっても原告3社のシェアが増減するのみで全体として供給量が減ることはなく、地方公共団体等の水道事業予算などから需要調査を行いそれに応ずる見込みの生産・在庫・供給をしていた⇒一定の価格維持を前提にした目に見える具体的な供給量制限行為が伴っていないし、それについての実質的証拠もない。

③シェアのみを協定したシェア配分カルテルは独禁法7条の2第1項にいう「実質的に商品等の供給量を制限することによりその価格に影響があるもの」に含まれず、課徴金の賦課対象でないという法解釈が公正取引委員会から示されてきた。
・・・ 
 
<判断>
本件審決に不合理な点や経験則違背があったとはいえず、実証拠がないとはいえない。
⇒本件審決の取消請求をいずれも棄却。

①本件カルテルは、原告らの販売数量が合意した受注予定数量の範囲内に収まることにより、総需要見込数量に近似する販売総量が実現され、原告らの合意した年度配分シェアが維持されるという仕組みを有する実効性の高いカルテルであり、総需要見込数量に年度配分シェアを乗じて算出される受注予定数量は、これを超えては生産及び販売をしないという上限を画し、その「範囲内に原告らの供給量を制限するものであり、原告らの供給量の和である市場全体の供給量も、その範囲内に制限されることとなる。

②本年の年度配分シェアが本件商品の生産計画や利益計画を立てる前提になっていた。

③本件カルテルは供給量を制限するものであるから、本件市場が需給関係による価格メカニズムが機能しない市場である等の特段の事情がない限り、価格に影響を与えるもの。

④間需分野においても基本配分シェアに応じた販売ルートは構築されていたから、本件カルテルによる価格影響性が生じていた。

⑤本件カルテルは、間需分野・直需部を問わず、本件市場全体について年度配分シェアを達成するための受注調整に使われているので、両分野を課徴金の対象とすべき。
 
<解説>
平成21年および平成17年の改正前の独禁法7条の2によって課徴金の対象となるカルテルは、同法2条6項の「不当な取引制限」又は同法6条1項のうちの「不当な取引制限医該当する事項を内容とする国際的協定又は国際的契約」に当たる行為で、
①商品または役務の対価に関わるもの、いわゆる価格カルテル(対価カルテルともいわれる)及び
②実質的に商品又は役務の供給量を制限することによりその対価に影響のあるいわゆる供給量制限カルテル(数量カルテルともいわれる)の類型がある。

供給に関するカルテルには、生産制限に関係するカルテル類型のものと販売制限に関するカルテル類型のものがあるが、実質的に供給量制限につながるカルテルのみが前記法条に当たるものとなる⇒その類型の実体の分析・検討が必要。

同法7条の2は、対価に影響があるものであることを要件としているが、現実に対価に影響があるものであることを要件としているものではない。
 
共同行為の態様としては、生産量や販売量の直接的制限だけでなく、生産設備の増設・運転の制限、取引先の割当や市場のシェアの分割による制限、顧客に対する納入比率の割当などもあり得るが、それらの行為は、消費財商品などのように需要と供給との間に相関関係があり、それによって通常取引価格が決定されるような市場の成立している一般消費財商品などの場合には、取引価格にも影響を与えるものであることは経験則上肯定し得る。
⇒そのような市場の場合、それらの行為があっても、取引価格に影響を与える可能性がなかったなどの特段の事情があることの反証責任は、行為事業者が立証責任を負うと解される。

商品需要が法的規制や公共的予算執行状況など市場外の社会的事情の影響を受ける特定商品の場合、その取引価格は需要と供給との相関関係による自由な競争による市場取引価格形成が必ずあるとはいえない
⇒公正取引委員会が、供給シェア配分や供給テリトリー配分が供給量制限として市場価格を操作することを意図して行われているかもしくは市場価格形成に必然的に影響する結果を生じ、かつ、それを可能ならしめる共同行為であることを立証する責任を負う。

供給量シェア配分がなされれば経験則上原則として価格に影響するといえるだけの論拠は経済学的に確立されているとはいい難い⇒市場分析に詳しいエコノミストなどの鑑定意見に基づいて認定する必要がある場合もある。


本件で問題となったのは、複数の事業者が共同して本件商品市場全体における一定期間の実際の総販売数量に占める各事業者の販売数量の割合をあらかじめ決定し、その実行をする旨の合意をしたというシェア配分カルテルであり、その行為が供給量制限効果及び価格形成に対する影響効果を有していたか否か。

本判決が、本件市場が価格の低下に伴い需給が増加する可能性を有しない市場であると認められないというのは、水道事業という公共的インフラ事業のための本件商品に関して疑問がなくもない。

本件シェア配分カルテルの下における需要量は、自由競争下における需要量より抑えられたとみられるものであるから、そのように抑えられた需要量に応じて供給を行ってきたとしても、それは何ら供給量を制限しなかったことの証左になるものではないというのも、企業の経営上合理的な生産調整を問題視して、自由競争のために過剰生産・供給もすべきという趣旨であるなら、その考え方には独禁法解釈・運用上疑問が残るし、それを価格に影響する行為とみなして課徴金賦課の対象となるのも疑問という見解もあり得る。

本商品はもともと原告X3社が技術特許や生産ノウハウを保有していた者で、本来的に排他的権益を有していたもの、自由競争市場が成立していなかったもの。
原告X3社が同X1社及びX2社にその特許技術の使用を許諾し、生産ノウハウの一部も提供したものであるため、商品の品質により競争はなく、特許使用許諾等による生産量や価格上の制約が自ずと生じやすい事情もあった。

もし供給量シェア配分に関する情報交換等が過剰生産や過剰在庫の生ずる損失リスクを回避する意図のみで行われていたとするなら、供給量制限が卸価格に影響するものと推認して、課徴金の賦課対象行為とすることは問題もある。

http://www.simpral.com/hanreijihou2013zenhan.html

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2012年10月12日 (金)

入札談合と独禁法

「不当な取引制限」:
事業者が、契約、協定その他何らの名義をもつてするかを問わず、他の事業者と共同して対価を決定し、維持し、若しくは引き上げ、又は数量、技術、製品、設備若しくは取引の相手方を制限する等相互にその事業活動を拘束し、又は遂行することにより、公共の利益に反して、一定の取引分野における競争を実質的に制限することをいう。
(独禁法2条6項)

入札談合は、基本合意とこれに基づく個別調整とから構成され、そのうち「不当な取引制限」を構成するのは基本合意であって、「不当な取引制限」の成立要件は全て基本合意によって見たされる必要がある。

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