交通事故

2015年7月 9日 (木)

体幹及び両下肢の機能全廃の既存障害と局部に神経症状を残す後遺障害とは、自賠法施行令2条2項にいう「同一部位」の後遺障害には該当しないとされた事例

さいたま地裁H27.3.20    

体幹及び両下肢の機能全廃の既存障害局部に神経症状を残す後遺障害とは、自賠法施行令2条2項にいう「同一部位」の後遺障害には該当しないとされた事例 
 
<事案>
Xは、Y1に対し、民法709条、自賠法3条に基づく損害賠償を求めるとともに、Y1との間で自賠責保険契約を締結していたY2保険会社に対し、自賠法16条1項に基づき75万円の支払を求めた。 
 
<規定>
自賠法 第3条(自動車損害賠償責任) 
自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によつて他人の生命又は身体を害したときは、これによつて生じた損害を賠償する責に任ずる。ただし、自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかつたこと、被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があつたこと並びに自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかつたことを証明したときは、この限りでない。

自賠法 第16条(保険会社に対する損害賠償額の請求)
第三条の規定による保有者の損害賠償の責任が発生したときは、被害者は、政令で定めるところにより、保険会社に対し、保険金額の限度において、損害賠償額の支払をなすべきことを請求することができる。

自賠法施行令2条
法第十三条第一項の保険金額は、死亡した者又は傷害を受けた者一人につき、次のとおりとする。

2 法第十三条第一項の保険金額は、既に後遺障害のある者が傷害を受けたことによつて同一部位について後遺障害の程度を加重した場合における当該後遺障害による損害については、当該後遺障害の該当する別表第一又は別表第二に定める等級に応ずるこれらの表に定める金額から、既にあつた後遺障害の該当するこれらの表に定める等級に応ずるこれらの表に定める金額を控除した金額とする。
 
<Y2の主張>
Xには、既存障害として精神機能の著しい1級1号に該当する障害(「本件既存障害」)を有するところ、本件既存障害と本件後遺障害とは同一系列の神経障害であり、自賠法施行令2条2項の「加重」に当たらない⇒Xに対する損害賠償義務はない。
 
<判断>
XのY1に対する本件請求を認容。
Y2に対する請求:
自賠法施行令2条2項にいう「同一部位」とは、損害として一体的に評価されるべき体の類型的な部位をいうと解すべき。

本件既存障害は、脊頸等中枢神経の障害であり、本件障害は、末梢神経の障害であって、異なる神経の支払い領域を有する
⇒侵害として一体的に評価されるべき身体の類型的な部位に当たると解することはできず、「同一部位」の障害であるということはできない。
⇒請求認容。
 
<解説>
実務では右「同一部位」とは「同一系列」の身体障害をいうものと取り扱われているところ、本判決は、実務と異なる見解を示した新しい判例。

判例時報2255

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2014年12月13日 (土)

緊急走行中のパトカーの追跡していた車両への追突と自賠法3条ただし書の免責(肯定)

東京地裁H26.2.4   

緊急走行中のパトカーが追跡していた車両に追突した交通事故について、パトカーに自賠法3条ただし書の免責が認められた事例 
 
<規定>
自賠法 第3条(自動車損害賠償責任) 
自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によつて他人の生命又は身体を害したときは、これによつて生じた損害を賠償する責に任ずる。ただし、自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかつたこと被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があつたこと並びに自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかつたことを証明したときは、この限りでない。

道交法 第40条(緊急自動車の優先)
交差点又はその附近において、緊急自動車が接近してきたときは、路面電車は交差点を避けて、車両(緊急自動車を除く。以下この条において同じ。)は交差点を避け、かつ、道路の左側(一方通行となつている道路においてその左側に寄ることが緊急自動車の通行を妨げることとなる場合にあつては、道路の右側。次項において同じ。)に寄つて一時停止しなければならない。
2 前項以外の場所において、緊急自動車が接近してきたときは、車両は、道路の左側に寄つて、これに進路を譲らなければならない。

道交法 第24条(急ブレーキの禁止)
車両等の運転者は、危険を防止するためやむを得ない場合を除き、その車両等を急に停止させ、又はその速度を急激に減ずることとなるような急ブレーキをかけてはならない。
 
<判断>   
自賠法3条ただし書について: 

●「被害者」「に故意又は過失があったこと」について:

(1)X車は・・・・道路の左端に寄って、これに進路を譲らなければならない注意義務(道交法40条2項)を負っていたにもかかわらず、これを怠った。

(2)危険を防止するためやむを得ない場合を除き、車両を急に停止させ、又はその速度を急激に減ずることとなるような急ブレーキをかけてはならない注意義務(同法24条)を負っていたにもかかわらず、これを怠り、X者に急ブレーキをかけてこれを急に停止させた。

X自身、やや乱暴な止まり方をしたと主張しているほか、警察官から取調べを受けた際、急ブレーキをかけた理由について、「言うならば、おちょくってやろうという感覚でした。でもまさか追突するとは思っていませんでした。」と供述。

Xには、危険を防止するためやむを得ない場合でないにもかかわらず、道交法24条に違反してX車に急ブレーキをかけたことについて、故意があったことが推認される。

●「運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかつたこと」について:

・・・パトカーを運転していたA巡査部長において、X車が速度を上げて逃走するかのような態度を示した直後に急停止の措置を講じるといった特異な事態が生じることを予見することは困難であったというべき。

・・・A巡査部長がこれに対応してパトカーを加速させたことは、職務の遂行上、やむを得ず、また、必要な行為でもあり、その結果として、その直後に一時的にパトカーとX車との車間距離が狭まるという事態が生じたことをもって、「運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかったこと」を否定するのは相当でない

A巡査部長は、Xにより故意にもたらされた特異な事態に対してさえ、一定の事故回避措置をとることができていたというべきである。

本件の具体的な状況の下においては、A巡査部長は、X車を追尾し、パトカーを緊急走行させるに当たり、X車との間に最低限の車間距離を保持し、また、X車に対する前方注視等の安全運転義務(道交法70条)を履行していたと評価するのが相当

自賠法3条ただし書の「運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかったこと」の要件が充足されているものと認められる。
 
<解説>
被追突者が道交法24条に違反して急ブレーキを掛けた場合の追突事故においては、追突車には前方注視等の安全運転義務車間保持義務が課され、被追突車には同条による急ブレーキの禁止義務が課されている。
⇒通常、これらの過失相互の内容・程度を勘案して、過失相殺の有無を判断。 

本判決は、当該事案の具体的状況を踏まえ、被追突車の同条違反の急ブレーキについて故意を認めたほか、追突車の安全運転義務や車間保持義務の履行を認めた。

判例時報2235

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2014年12月 7日 (日)

睡眠導入剤を使用した自動車運転中の自損事故について、保険会社の免責が認められた事例

名古屋高裁H25.7.25    

睡眠導入剤を使用した自動車運転中の自損事故について、保険会社の免責が認められた事例 
 
<一審>
本件事故は、Xがマイスリー又はソセゴンを使用した影響により正常な運転ができないおそれがある状態で自動車を運転している時に生じたものと認められる⇒Yの免責を認めて、Xの本訴請求を棄却。
   

Xの主張する免責条項の適用について立証されていないとして、Xが控訴。
 
<判断>
①Xは、出発後、Xにおいて正常な運転に困難な状態を生じ、当初予定した走行ルートを外れるか、かなり低速での走行を余儀なくされたことが強くうかがわれる。
②Xが、本件事故当時、睡眠導入剤を服用していたとすれば、出発後のXの走行態様等が通常でなかったことや本件事故前後の状況をXが記憶していないということを合理的に説明できる
⇒控訴棄却。
 
<解説>
麻薬等運転による免責は、運転者において、薬物を注射、経口または吸引したことを認識すれば足り、運転者が正常な運転ができない状態であったことの認識は不要であり、また、使用した薬物が麻薬等にあたることまでの認識も必要としないと解されている。

判例時報2234

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2014年9月28日 (日)

追突事故により負傷した被害者がうつ病と低髄液圧症候群に罹患した上、自殺した場合の損害賠償

福島地裁H24.4.16   

追突事故により負傷した被害者がうつ病と低髄液圧症候群に罹患した上、自殺した場合に、自殺に関しては10パーセントの寄与度が認められた事例 

<判断>
●うつ病の関係について:
Aに精神疾患の既往はなく、Aは、本件事故後から首から肩にかけての疼痛、頭痛、頭重感などの治療の過程でうつ病を発症したものであり、前記疼痛などのため休職を余儀なくされ、日常生活に支障をきたしたことや賠償問題が円滑に進まなかったことに対して精神的苦痛や不安を感じていた。

Aのうつ病は本件事故及びこれに伴う疼痛や精神的苦痛、不安を契機として発症して遷延化したが、それは本件事故により通常生ずべき損害といえる。
⇒本件事故との間の因果関係と認めた。

家族的要因がうつ病に寄与しているとする鑑定結果⇒本件事故のうつ病発症に伴う損害に対する寄与度を10パーセント

●低髄液圧症候群について: 
低髄液圧症候群については未解明な部分が存することを指摘しつつ、①Aの症状一般的な低髄液圧症候群の症状と整合し、②重要な判断資料であるMRI及びミエログラフィーの画像所見低髄液圧症候群の所見を示している

Aは、平成18年8月当時低髄液圧症候群の状態にあったと認定し、平成19年9月21日には症状が固定したと判断。

損害賠償請求を一部認容。

判例時報2226

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2014年8月15日 (金)

交通事故から20年以上経過しての訴え提起に民法724条後段の適用が否定された事例

水戸地裁下妻支H25.10.11   

交通事故から20年以上経過して訴えを提起されても、症状固定認定手続から訴えの提起までの経過は、損害賠償請求権を行使する一連一体の行為と捉え、民法724条後段の適用はないとされた事例

<事案>
X(平成2年生)は、平成4年12月29日、父の運転する乗用車に同乗して走行中、Y運転の乗用車に衝突され、脳挫傷等の傷害を負った。
⇒平成24年8月8日、整形外科医師により症状固定の診断を受け、同年9月26日、自動車損害賠償責任保険の事前認定手続により後遺障害について併合10級に該当する旨の認定
⇒平成25年2月23日、Yに対して損害賠償を求める本訴を提起。 

<規定>
民法 第724条(不法行為による損害賠償請求権の期間の制限)
不法行為による損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないときは、時効によって消滅する。不法行為の時から二十年を経過したときも、同様とする。

民法 第158条(未成年者又は成年被後見人と時効の停止)
時効の期間の満了前六箇月以内の間に未成年者又は成年被後見人に法定代理人がないときは、その未成年者若しくは成年被後見人が行為能力者となった時又は法定代理人が就職した時から六箇月を経過するまでの間は、その未成年者又は成年被後見人に対して、時効は、完成しない。
2 未成年者又は成年被後見人がその財産を管理する父、母又は後見人に対して権利を有するときは、その未成年者若しくは成年被後見人が行為能力者となった時又は後任の法定代理人が就職した時から六箇月を経過するまでの間は、その権利について、時効は、完成しない。

<判断>
本訴の提起は、事故の日である平成4年12月29日から20年以上が経過している。
but
①Xに対して事前認定の結果が出る前に訴えの提起を求めることは困難
②事実認定を受けても訴えを提起するには6か月間は通常必要

Xが事前認定の手続を勧めて本訴を提起するまでの経過は、Xが本件交通事故による損害賠償請求権を行使する一連一体の行為を捉えることができ、そうすると、本件では交通事故から20年の除斥期間内において権利行使がされたと見るのが相当であるから、これによって除斥期間の満了は阻止されたことに案る。

本件では民法724条後段の適用はないと判断し、Xの本訴請求を認容。

<解説>
民法724条後段の期間制限の性質:
最高裁H1.12.21は除斥期間説をとり、最高裁H10.6.12はこれを踏襲したが、民法158条の法意に照らし、同法724後段に規定する除斥期間経過後でも損害賠償請求権を行使することができる場合があることを認めた。


極めて例外的なものであり、その射程は、極めて狭いものとされてきたが、本判決は、右判例の趣旨を広く開始、個別具体的事情を考慮して除斥期間の適用を排除した極めて珍しい判断事例。

判例時報2222

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2014年5月29日 (木)

自動車のドアを開けて自転車に衝突させて傷害を負わせた場合と業務上過失傷害罪・道路交通法違反(不救護及び不報告)(肯定)

東京高裁H25.6.11   

自動車の運転者が降車するために運転席ドアを開ける行為は、自動車の運転に付随する行為であって、自動車運転業務の一環としてなされたものとみるのが相当であるとして、漫然と同ドアを開け、右後方から進行してきた自転車に同ドアを衝突させて被害者に傷害を負わせた点につき業務上過失傷害罪の成立が認められたほか、同人の救護及び警察官への報告をしなかった点につき道路交通法違反(不救護及び不報告)罪の成立が認められた事例 

<規定>
刑法 第211条(業務上過失致死傷等)
業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、五年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。重大な過失により人を死傷させた者も、同様とする。
2 自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、七年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。

道路交通法 第67条(危険防止の措置)
2 前項に定めるもののほか、警察官は、車両等の運転者が車両等の運転に関しこの法律(第六十四条第一項、第六十五条第一項、第六十六条、第七十一条の四第三項から第六項まで並びに第八十五条第五項及び第六項を除く。)若しくはこの法律に基づく命令の規定若しくはこの法律の規定に基づく処分に違反し、又は車両等の交通による人の死傷若しくは物の損壊(以下「交通事故」という。)を起こした場合において、当該車両等の運転者に引き続き当該車両等を運転させることができるかどうかを確認するため必要があると認めるときは、当該車両等の運転者に対し、第九十二条第一項の運転免許証又は第百七条の二の国際運転免許証若しくは外国運転免許証の提示を求めることができる。

道路交通法 第71条(運転者の遵守事項)
車両等の運転者は、次に掲げる事項を守らなければならない。
四の三 安全を確認しないで、ドアを開き、又は車両等から降りないようにし、及びその車両等に乗車している他の者がこれらの行為により交通の危険を生じさせないようにするため必要な措置を講ずること。

道路交通法 第72条(交通事故の場合の措置)
交通事故があつたときは、当該交通事故に係る車両等の運転者その他の乗務員(以下この節において「運転者等」という。)は、直ちに車両等の運転を停止して、負傷者を救護し、道路における危険を防止する等必要な措置を講じなければならない。この場合において、当該車両等の運転者(運転者が死亡し、又は負傷したためやむを得ないときは、その他の乗務員。以下次項において同じ。)は、警察官が現場にいるときは当該警察官に、警察官が現場にいないときは直ちに最寄りの警察署(派出所又は駐在所を含む。以下次項において同じ。)の警察官に当該交通事故が発生した日時及び場所、当該交通事故における死傷者の数及び負傷者の負傷の程度並びに損壊した物及びその損壊の程度、当該交通事故に係る車両等の積載物並びに当該交通事故について講じた措置を報告しなければならない。

道路交通法 第117条
車両等(軽車両を除く。以下この項において同じ。)の運転者が、当該車両等の交通による人の死傷があつた場合において、第七十二条(交通事故の場合の措置)第一項前段の規定に違反したときは、五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
2 前項の場合において、同項の人の死傷が当該運転者の運転に起因するものであるときは、十年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。

道路交通法 第119条
次の各号のいずれかに該当する者は、三月以下の懲役又は五万円以下の罰金に処する。
十 第七十二条(交通事故の場合の措置)第一項後段に規定する報告をしなかつた者

<主張>
①一般人による自動車のドア開閉行為時の不注意は、業務上の注意義務違反ではなく、一般的な注意義務違反行為⇒業務上過失傷害罪は成立しない。
②車両等の運転停止後に生じた事故は、道路交通法72条1項にいう「交通事故」には当たらず、そのことは、同項前段の規定に「直ちに車両等の運転を停止して」との文言が含まれていることも明らか。

<判断>
①について:
被告人は、刑法211条2項本文にいう「自動車の運転上必要な注意」を怠ったとはいえないものの、自動車運転業務の一環として、自ら降車するために運転席ドアを開けるに当たり、右後方から進行してくる車両の有無及びその安全を確認して同ドアを開けるべき業務上の注意義務があるのにこれを怠ったものというべき。

それによって被害者に傷害を負わせた被告人の行為につき業務上過失傷害罪の成立を認めた原判断は正当。

②について:
同法72条は、「交通事故」(同法67条2項参照)が発生した場合において、当該交通事故に係る運転者等をして負傷者の救護を行わせるとともに、交通秩序の回復のために必要な措置を講じさせ、もって、交通の安全と円滑を図ることを目的としている。

ここでいう交通事故とは、運転中の車両等の道路上における通行それ自体によって人の死傷等が生じた場合のみならず、本件事故のように、自動車の運転車が、道路上に車両を停止した後降車する際にそのドアを開ける行為によって人の支障等が生じた場合をも含むものと解するのが相当

同法72条1項前段の規定は、車両等の運転を停止した後に起きた事故がおよそ交通事故に当たらないことを前提としたものとまでは解されない。

救護義務違反(同法117条1項)及び報告義務違反(同法119条1項10号)を適用した原判断は正当。

<解説>
平成25年11月20日、「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」が成立し、同月27日公布。

同法は公布後6月いないに施行⇒同法施行後、自動車運転過失傷害等の適用については新法によることになる(附則1条、14条)。 

本件の類似の事例として、信号待ちのため停車中同乗者が後部左側ドアから降車しようとする場合における自動車運転者の注意義務について判示したものとして、最高裁H5.10.12、判例時報1479号)

判例時報2214

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2013年4月 7日 (日)

交通事故の被害者の損害賠償金の仮払仮処分命令事件

横浜地裁H24.10.11   

交通事故の被害者の損害賠償金の仮払仮処分命令申立事件について、請求できる損害賠償額以上の賠償金が支払済みであるとして、その申立てが却下された事例 

<事案>
Xは、Y1及びY2との間で保険契約を締結しているY2保険会社に対し、Xの損害賠償金として、仮処分により一時金として1661万円余の支払と平成24年6月から平成24年11月まで毎月末日限り65万円を支払うよう求めた。 

<判断>
XのY1に対する請求は1227万5100円の限度で法律上の根拠がありかつ保全の必要性が認められるが、Y1は、Xに対し損害賠償として1381万5893円を支払っている⇒Yの主張に理由がなく、本件仮処分申立てを却下。

<解説>
交通事故の被害者が生活の危機に瀕し、金銭の支払を求める必要がある場合には損害賠償金の仮払いを求める仮処分を求めることが少なくなく、裁判例では、6か月程度の仮払いを認めるものが多い。 

http://www.simpral.com/hanreijihou2013zenhan.html

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2013年2月18日 (月)

元請会社の運行供用者責任

横浜地裁H24.9.11   

孫請会社の従業員が起こした交通事故について、元請会社の運行供用者責任が認められた事例 

<規定>
自賠法 第3条(自動車損害賠償責任) 
自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によつて他人の生命又は身体を害したときは、これによつて生じた損害を賠償する責に任ずる。ただし、自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかつたこと、被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があつたこと並びに自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかつたことを証明したときは、この限りでない。

<判断>
YとC会社との間に直接の関係はないとしたが、
①YとAとの間には指揮監督関係があったこと、
②Aが運転する車両の運行ルートは、実質的にYが決定していたこと
③Yは、右工事に使用する車両の安全点検を行っていたこと
④AらはY及びその親会社のロゴがついたユニフォームを着用し、本件車両にはロゴマークのマグネット標識がつけられていたこと。

Yは、工事先までの本件車両の運行を支配し、その運行により経済的利益を得ていたと認められる。

Yの自賠法3条の運行供用者としての責任を認め、XらのYに対する本訴請求を一部認容。

<解説>
自賠法3条の「運行供用者」
伝統的には、自動車の「運用支配」と「運行利益」を有する者。

現在は、現実的・具体的な運用・利益ではなく、運行を全体的に観察して、客観的・外見的にその有無を判断する傾向(最高裁昭和48.7.1)。

下請・孫請人またはその被用者の事故について、元請人が運行供用者責任を負うか否かについて、判例は
直接間接に指揮監督関係が及んでいる場合(最高裁昭和37.12.14)
間接的に指揮監督していた場合(最高裁昭和46.12.7)
指揮監督関係にあるが専属的従属関係に立つものでない場合(最高裁昭和50.9.11)
などについては元請負人の運行供用者責任を肯定。

本判決は、右判例に沿うものであるが、「専属的関係」や「緊密な一体性」は、運行供用者を肯定する一事情にすぎないことを判示。

http://www.simpral.com/hanreijihou2013zenhan.html

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2013年2月 8日 (金)

自賠責の支払基準に裁判所は拘束されない

最高裁H24.10.11   

自動車損害賠償保障法15条所定の保険金の支払を請求する訴訟において裁判所が同法16条の3第1項が規定する支払基準によることなく保険金の額を算定して支払を命じることの可否

<事案>
交通事故の加害者に付保されていた自動車共済契約(いわゆる任意保険)の保険者であるXが、加害者側に代わって被害者側に賠償したことを理由に、自賠責保険会社であるYに対し、自動車損害賠償保障法15条に基づく自賠責保険金の支払を求めた事案。

<規定>
自賠法 第15条(保険金の請求)
被保険者は、被害者に対する損害賠償額について自己が支払をした限度においてのみ、保険会社に対して保険金の支払を請求することができる。

自賠法 第16条の2(休業による損害等に係る保険金等の限度)
保険会社が被保険者に対して支払うべき保険金又は前条第一項の規定により被害者に対して支払うべき損害賠償額(第二十八条の四第一項を除き、以下「保険金等」という。)のうち被害者が療養のため労働することができないことによる損害その他の政令で定める損害に係る部分は、政令で定める額を限度とする。

自賠法 第16条の3(支払基準)
保険会社は、保険金等を支払うときは、死亡、後遺障害及び傷害の別に国土交通大臣及び内閣総理大臣が定める支払基準(以下「支払基準」という。)に従つてこれを支払わなければならない。
2 国土交通大臣及び内閣総理大臣は、前項の規定により支払基準を定める場合には、公平かつ迅速な支払の確保の必要性を勘案して、これを定めなければならない。これを変更する場合も、同様とする。

<解説①>
支払基準と重過失減額制度
  自賠法16条の3第1項は、保険会社は支払基準に従って保険金等を支払わなければならない旨規定。

「保険金等」:
①保険会社が同法15条の規定により被保険者に対して支払うべき保険金
②同法16条1項の規定により被害者に対して支払うべき損害賠償額
の双方を指す。

保険会社は、
①被保険者が同法15条に基づき保険金の支払を請求した場合(いわゆる加害者請求)と、
②被害者が同法16条1項に基づき保険金の支払を請求した場合(いわゆる被害者請求)の双方において、支払基準に拘束される。

法16条の3第1項を受け、平成13年金融庁・国土交通省告示第1号として支払基準が規定。
総じて、いわゆる裁判基準と比較すると画一的で、被害者に不利な内容
他方で、重大な過失による減額の制度(「重過失減額制度」)で、被害者に有利となり得る制度が設けられている。

死亡ないし後遺障害事案⇒
被害者の過失割合が7割未満⇒減額なし
7割以上8割未満⇒2割
8割以上9割未満⇒3割
9割以上10割未満⇒5割
を保険金額(ただし積算した損害額が保険金額未満の場合には当該損害額)から減額。
ex.
1億円の損害を被った死亡被害者の過失割合が9割の場合:
裁判基準:1億円×(1-0.9)=1000万円の賠償
重過失減額制度:3000万円×(1-0.5)=1500万円が保険会社から支払われる
 
<一審>
Aの過失割合は9割とみるのが相当。
⇒Xの請求を棄却。 

<原審>
Aの損害額は7500万円。
Aの過失割合は8割。
支払基準によれば、Yは2100万円の自賠性保険金を支払う義務があるところ、1500万円しか支払っていない。
⇒Xの請求を600万円の限度で認容。 

<判断>
自賠法15条所定の保険金の支払を請求する訴訟において、裁判所は支払基準によることなく保険金の額を算定して支払を命じることができる

裁判所は、自ら相当と認定判断した損害額及び過失割合に従って保険金の額を算定して支払を命じなければならない。

原判決を破棄し、一審判決を結論において是認。 

<解説②>
自賠法16条の3第1項によれば、支払基準は保険会社が訴訟外で保険金等を支払う場合に保険会社を拘束するが、裁判所も拘束するか?
A:拘束説
B:非拘束説
C:下限拘束説

最高裁H18.3.30:
交通事故の被害者の相続人が、自賠責保険会社に対し、自賠法16条1項に基づき損害賠償金の支払を求めた事案において、同項に基づく訴訟においては、裁判所は支払基準によることなく損害賠償額を算定して支払を命じることができる(非拘束説)。
支払基準は、保険会社が訴訟外で保険金等を支払う場合に従うべき基準にすぎない
本判決は、自賠法15条所定の保険金の支払を請求する訴訟においても、同判決の理は異なるものではないとして、Aの損害額を7500万円、Aの過失割合を8割としながら、これらを前提とした過失相殺をしなかった原審の判断には違法があると判断。

非拘束説と、その射程は自賠法15条に基づく請求についても及ぶことを明らかにした。

http://www.simpral.com/hanreijihou2013zenhan.html

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2012年12月 7日 (金)

脳脊髄液減少症と損害賠償

横浜地裁H24.7.31   

<事案>

Y運転の自動車とX運転の自転車とが衝突した交通事故により、Xが脳脊髄液減少症を発症したとして、損害の賠償と遅延損害金を請求する事案。 

<解説・>

脳脊髄液減少症ないし低髄圧症候群:
硬膜から髄液が漏れ出し、頭蓋内圧が低下し、または脳組織が下方変位し、頭痛等が生じるという病態。 

診断基準として
①国際頭痛学会の基準
②日本脳神経外傷学会の基準
③脳脊髄液減少症研究会ガイドライン作成委員会の基準
④厚労省中間報告基準(平成23年10月頃)
④は、日本脳神経外傷学会を含め、複数の学会が了承・承認した基準。

<判断>

厚生省中間報告基準を重要な診断基準ととらえた上で、Xには厚生省中間報告基準の参考所見となるものが複数見られる
⇒Xが脳脊髄液減少症を発症したと確定的に認めることまではできないものの、その疑いが相当程度ある。 

Xの頭痛、後頸部痛及び背痛などの神経症状は、脳脊髄液減少症によるものである可能性が相当程度あり、
仮にそうでないとしても、Xの現在の神経症状が重いものであること、既往症があったとは認められないこと、本件事故の太陽はXが意識を失うようなものであったことなどを総合すると、Xの現在の神経症状は本件事故によるものと認めることができ、その程度については、自動車損害賠償保障法施行令別表第2第9級10号「神経系統の機能または精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの」に該当するとした。

<解説>

交通事故の被害者の症状が医学的にどの病態に該当するかは、後遺障害の程度や労働能力喪失率等の認定を合理的なものとする上で重要なものということができる。
but
それは、絶対的なものではなく、仮に、現在の医学で解明されていない病態であったとしても、証拠上その症状の認定することができ、かつ、事故との因果関係がある限り、その症状に応じた等級や労働能力喪失率等を認めてよいと考えられる。 

本判決は、Xに脳脊髄液減少症の疑いが相当程度あることを理由に、症状固定後のものも含め、脳脊髄液減少症の治療関係費を損害として認めている。

本件は、脳脊髄液減少症と確定的に認められなくても、その疑いが相当程度あるとして、9級10号の後遺障害などを認めた事例。

http://www.simpral.com/hanreijihou2012kouhan.html

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