行政

2017年11月29日 (水)

語学学校の外国人講師と厚生年金保険の被保険者の資格

東京地裁H28.6.17      
 
<事案>
語学学校を運営するA社との間で雇用契約を締結し、英語講師として就労していたX(カナダ国籍)が、平成21年11月9日、港社会保険事務所長に対し、厚生年金保険の被保険者の資格の取得の確認請求⇒同年12月4日付けで、却下する旨の処分⇒本件却下処分の取消しを求めて訴えを提起。

港社会保険事務所は同月31日に廃止され、本件却下処分は厚生労働大臣等がした処分とみなされ、同処分に係る権限の受任者はY(日本年金機構)となった。

Xは、平成18年8月1日に厚生年金保険の被保険者の資格を取得したが、
Aは、平成21年8月1日付けでXについて被保険者の資格喪失の届出をし、港社会保険事務所長は、同年9月3日付けで、Aに対し、Xについて同年8月1日付けで被保険者の資格喪失が確認された旨の通知。

Aから同通知内容を知らされたXは、本件確認請求⇒請求に係る事実がないものと認めたとして本件却下処分(なお、Xについては、その後平成22年12月1日付けで、被保険者資格の取得が確認された。)。
 
<争点>
被保険者資格の喪失が確認された平成21年8月においてXが厚生年金保険の被保険者であったと認められるか否か。 
 
<判断>
厚年法が、標準報酬月額を基礎として年金額や保険料を算定する制度を採用し、標準報酬月額の最低額が9万8000円とされていること
報酬月額算定に当たり報酬支払の基礎となる日数が17日未満の月の報酬を除外するものとしていること等

同法は、労働力の対価として得た賃金を生計の基礎として生計を支えるといい得る程度の労働時間を有する労働者を被保険者とすることを想定
そのような労働者といえない短時間の労働者は、同法9条にいう「適用事業所に使用される70歳未満の者」に含まれないものと解するのが相当。 

短時間の労働者を判断する具体的な基準についての法令の定めがない
⇒被保険者とされるかどうかについては、前記の趣旨に照らして、個々の事例ごとに、労働日数、労働時間、就労形態、職務内容等を総合的に勘案して判断すべき

Xの具体的な労働日数、労働時間、就労形態、職務内容等
⇒同年7月までの間において被保険者の資格を喪失するには至らなかったじことになるとともに、同年8月において被保険者の資格を取得することができたと認定。

その他、
①Xの労働日数は常勤講師のものと変わりがなかったこと、
②報酬の額も前記標準報酬月額の最低額を大きく上回っており、十分に生計を支えることができる額であったこと
③事業主との雇用関係も安定していると評価することができること

Xは、本来、同月の前後を通じて被保険者の資格を有していたとみるべきであって、本件確認請求の趣旨に沿って検討した場合には、同月1日付けで被保険者の資格を喪失したものとされ、その旨の確認がされているものの、同日において被保険者の資格を再取得したものと認めることができる

Xは、同日において「適用事業所に使用される70歳未満の者」に該当するというべきであり、これを否定した本件却下処分は違法なものであるとして、Xの請求を認容
 
<解説>
厚年法9条は、「適用事業所に使用される70歳未満の者」は被保険者とする旨を定め、
例外として、同法12条(平成24年改正前のもの)は、臨時に使用される者であって日々雇い入れられる者等同条各号のいずれかに該当する者は被保険者としない旨を定めている。
同条各号のほかには適用事業所に使用される者について被保険者に該当しない旨を具体的に定めた明文規定はない。

本件は、厚生年金保険の被保険者資格の判断に当たり、厚年法の趣旨より、明文の適用除外事由に該当しない場合でも、いわゆる短時間の労働者は被保険者とはならないとの解釈を基本としつつ、
当時の短時間就労者(いわゆるパートタイマー)に係る被保険者資格の取扱いに関する、昭和55年6月6日付け厚生省保険局保健課長等による都道府県民生主管部(局)保険課(部)長宛ての文書(「内かん」)や平成17年5月19日付け社会保険庁運営部医療保険課長による地方社会保険事務局長宛ての文書(「語学学校に雇用される外国人講師に係る健康保険・厚生年金保険の適用について」)に示されている内容も踏まえつつ、
Xの労働時間のほか、労働日数、就労形態、職務内容等を個別かつ総合的に勘案して、
本件のXについては短時間の労働者ではなく厚生年金保険の被保険者の資格があるとした事例


平成24年8月10日成立の「公的年金制度の財務基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律」により、従前の厚生年金保険法12条各号の適用除外対象者に加え、一定の短時間の労働時間を有するにすぎない者(短時間労働者)を適用除外対象者として具体的に定める規定が設けられた。

判例時報2346

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2017年11月22日 (水)

国籍留保制度の期間規定に関する「責めに帰することができない事由」

最高裁H29.5.17      
 
<事案>
戸籍法104条1項所定の日本国籍を留保する旨の届出について、その届出期間の例外を定めた同条3項の適用が問題となった事案。 
 
<規定>
戸籍法 第104条〔国籍留保の意思表示〕
国籍法第十二条に規定する国籍の留保の意思の表示は、出生の届出をすることができる者(第五十二条第三項の規定によつて届出をすべき者を除く。)が、出生の日から三箇月以内に、日本の国籍を留保する旨を届け出ることによつて、これをしなければならない。
②前項の届出は、出生の届出とともにこれをしなければならない。
天災その他第一項に規定する者の責めに帰することができない事由によつて同項の期間内に届出をすることができないときは、その期間は、届出をすることができるに至つた時から十四日とする。
 
<解説>
国籍法12条の規定する国籍留保制度:
出生により外国の国籍を取得した日本国民で国外で生まれたものについて、戸籍法の定めるところにより日本国籍を留保する意思表示をしなければ、出生の時に遡って日本国籍を失う。
この制度は、昭和59年法律第45号(「本件改正法」)の施行前は、中華人民共和国等で出生した者を対象としていなかった。 

戸籍法104条:
出生届をすることができる者が、出生の日から3ヶ月以内に、出生届と共に、国籍留保の届出によってしなければならない(同条1項、2項)。
天災その他前記の者の責めに帰することができない事由によって前記の期間内に届出をすることができないときは、その届出期間は、届出をするに至った時から14日(同条3項)。

父母が本籍を有しない場合でも、その子の出生届をすることに障害はない。
 
<原審>
本件各届出の時点で、X1~X4に本籍及び戸籍上の氏名がなかったところ、このような場合でも戸籍法上は本件子らの出生届をすることは不可能ではない。
but
国籍留保の届出をしなければ日本国籍を喪失するという重大な結果を生ずる

出生届について父母の本籍及び戸籍上の氏名を記載した原則的な届出を提出できない場合は、戸籍法104条3項にいう「責めに帰することができない事由」があると解すべき
⇒本件届出を受理すべき。 
 
<判断>
国籍留保の届出が戸籍法104条1項の期間内にされなかった場合において、出生により外国の国籍を取得した日本国民で国外で生まれたものの父母について、戸籍に記載されておらず、本籍及び戸籍上の氏名がないという事情のみをもって、同条3項にいう「責めに帰することができない事由」があるとした原審の判断には、違法がある
⇒原決定を破棄し、Xらの申立てを却下した原々審判に対するXらの抗告を棄却。 
 
<解説> 
●国籍は国家の構成員の資格であり、何人が自国の国籍を有する国民であるかを決定することは国家の固有の権限に属するものであって、憲法10条は国籍の得喪に関する要件を法律に委ねている(最高裁H20.6.4)。

最高裁H27.3.10は、
国籍留保制度を定めた国籍法12条について、
子の出生時に父又は母が日本国籍を有することをもってわが国との密接な結びつきがあるものとして日本国籍を付与するという父母両系血統主義の原則の下で、国外で出生して重国籍となる子について、前記のような結びつきがあるとはいえない場合に、形骸化した日本国籍の発生を防止し、重国籍の発生をできる限り回避することを目的とするもの
憲法14条1項に違反するものではない
 
●国籍留保制度:
①大正時代、アメリカ合衆国など自国の領土内で出生した子に国籍を付与する生地主義の国への日本からの移民について、不留保による日本国籍の喪失によって移民先国への同化定着を促進する目的で創設。
②本件改正法は、従前の不系血統主義を改め、父母両系血統主義を採用することに伴い、血統の相違により父母の両国籍を取得して二重国籍となる者にも国籍留保制度を適用することとし、その対象を中国など血統主義の国で出生した子に拡大。
国政留保の意思表示がされずに日本国籍を喪失した者で20歳未満の者について、日本に住所を有するときは(日本人の子として出生した者には、出入国管理及び難民認定法上、在留資格が認められている。)、法務大臣への届出によって日本国籍を再取得できる旨の制度が設けられた(国籍法17条)。
④20歳に達した者は、前記制度の対象とならないが、国籍留保の意思表示がなされずに日本国籍を喪失した者は、簡易帰化(国籍法8条3号)の対象となるものと解されている。
 
戸籍法104条1項

①子の法的地位の安定のために、生来的な国籍をできる限り子の出生時に確定すること
②父母等による国籍留保の意思表示をもって我が国との密接な結びつきの徴表とみることができる。

● 本決定は、
①戸籍法104条3項が同条1項の届出期間の例外を定めたもの⇒その要件は、前記のような国籍留保制度や同条1項の趣旨及び目的を踏まえて判断されるべき
②同条3項が「天災」という客観的な事情を挙げている

同項にいう「責めに帰することができない事由」の存否は、客観的にみて国籍留保の届出をすることの障害となる事情の有無やその程度を勘案して判断するのが相当
③X1~X4について本籍及び戸籍上の氏名がないという事情だけでは客観的にみて本件各国籍留保の届出の障害とならないことは明らか

判例時報2345

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2017年11月14日 (火)

市立記念館条例を廃止する条例の制定行為の「処分性」を否定した事例

青森地裁H29.1.27      
 
<事案>
本件は、Y(十和田市)が、地方自治法244条1項所定の公の施設として十和田市立新渡戸記念館(本件記念館)を設け、十和田市立新渡戸記念館条例(本件記念館条例)において、その設置及び管理に関する事項を定めていたが、その後、十和田市立新渡戸記念館条例を廃止する条例(本件廃止条例)を制定

Xが、Yに対し、本件廃止条例制定行為が行政事件訴訟法3条2項所定の処分すなわち「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為(同条3項に規定する裁決、決定その他の行為を除く。)」に当たることを前提として、本件廃止条例制定行為の取消しを求めた。 
 
<争点>
本案前の争点:本件廃止条例制定行為の処分性
本案の争点:本件廃止条例制定行為が違法なものであるか否か 
 
<判断> 
本件廃止条例制定行為に処分性を認めることはできない⇒訴えを却下 
 
●条例制定行為の処分性の認否の判断枠組み 
条例の制定行為は、普通地方公共団体の議会が行う一般的・抽象的な法規範を定める立法作用に属し、一般的には処分に当たるものではない。
but
他に行政庁の法令の執行行為と処分を待つことなく、その施行により特定の個人の権利義務や法的地位に直接影響を及ぼし、行政庁の処分と実質的に同視し得ることができるような例外的な場合には、処分に含まれるものと解するのを相当とすることもあり得る。
 
●本件廃止条例制定行為の処分性の認否 
①地方自治法、本件記念館条例、文化財保護法及び十和田市文化財保護条例の関係法令の内容に照らすと、本件記念館の設置、あるいは、本件記念館において本件資料の保存等がされることに関して、Xが、Yに対して、本件各契約等に基づく契約上の地位等を離れて法的保護の対象となる権利ないし利益を有するものとは認められない
②本件保管覚書合意を基礎として本件廃止条例制定行為の処分性を認めることはできず、本件廃止条例の施行により本件各契約等に基づくXの権利ないし法的地位に直接影響が及ぶものということもできない
③実質的に考えても、法的救済を求める手段としては、民事訴訟によるのが最適というべきであって、取消訴訟において本件廃止条例制定行為の法的効力を争い得るものとすることに十分な合理性は見出し難い

本件廃止条例の制定行為の処分性を認めることはできない。
 
<解説>
横浜市保健所廃止条例事件(最高裁H21.11.26)は、条例制定行為の処分性を最高裁判例として初めて肯定。
←①法的効果とその直接性、②対象の特定性、③救済方法としての合理性
が認められる。
本件廃止条例制定行為については、①③が認められないとして、処分性を否定。

判例時報2343

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2017年11月13日 (月)

情報公開条例に基づく公開請求で、訴訟事件の事件番号が非開示とされた事例

東京地裁H28.11.29      
 
<事案>
東京都の都民であるXが、東京都情報公開条例6条1項に基づき、東京都知事Yに対し、原告をA社、被告を東京都及び新宿区とする損害賠償事件の第1審及び控訴審の訴訟関連文書として、文書開示請求⇒意見の各文書を非開示の対象とした上で、そのうち特定の個人の氏名など特定の個人を識別する記載、事件番号の記載並びに訴訟当事者、訴訟代理人及び裁判所書記官等の印影の各部分を非開示とし、その余の部分を開示する旨の一部開示決定。

Xは処分行政庁であるYに対し、本件一部開示決定のうち、別件訴訟の第一審及び控訴審の各事件番号を非開示とした部分の取消しを求める訴えを提起
 
<条例>
本件条例7条2号は
本文において、「個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)で特定の個人を識別することができるもの(他の情報を照合することにより、特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)又は特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するもの」を非開示情報として定めた上で、
ただし書において、「法令等の規定により又は慣行として公にされ、又は公にすることが予定されている情報」(同号イ)等を本文に定める非開示情報から除く旨を規定。 
 
<判断>
①本件一部開示決定において、別件訴訟の第1審及び控訴審の係属する各裁判所名は明らかにされている⇒不開示とされた本件各事件番号と併せてみることにより、当該事件が特定されることとなる。
何人も、裁判所書記官に対し、訴訟記録の閲覧を請求することができる

特定される別件訴訟の訴訟記録を閲覧することにより、何人も、別件訴訟の訴訟記録に記載された当該事件に関与する個人の氏名、住所、生年月日等を知ることができ、特定の個人を識別することができることとなる。
本件各事件番号は、個人識別情報に該当

「法令の規定」とは、何人に対しても等しく情報を公開することを定めている法令のことをいい、
「慣行」とは、事実上の慣習をいい、
「公にされている情報」とは、現に何人も容易に入手することができる状態におかれている情報をいう

本件各事件番号は、「法令等の規定により又は慣行として公にされ、又は公にすることが予定されている情報」に該当するとは認められない。
⇒請求を棄却。
 
<解説>
情報公開条例との関係で、「個人に関する情報」に該当するか否かが問題となった裁判例:
①法人その他の団体(国及び地方公共団体を除く。)の代表者に準じる地位にある者以外の従業員の職務遂行に関する情報は、その者の権限に基づく当該法人等のための契約の締結等に関する情報を除き、「個人に関する情報」に当たるとした最高裁H15.11.11
②県の職員の出勤簿に記録された職員が停職処分により特定の日に出勤しなかったことを示す情報は「個人に関する情報」に該当するとした最高裁H15.11.21

東京都情報公開条例を巡って、非開示としたものを取り消した裁判例:
③警視庁における制服購入契約締結文書の起案者(東京地裁H18.5.26)
④警視庁の非管理職職員の氏名、印影が含まれる情報(東京地裁H18.7.28)

非開示を相当とした裁判例:
⑤建築審査会裁決案の評議の議事録に記載された情報
⑥警視庁K署内の道路標示塗装委託単価契約書の法人の契約代表者の氏名

判例時報2343

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2017年11月 1日 (水)

子の名に用いられ得る戸籍法50条1項、2項にいう常用平易な文字

さいたま家裁川越支部H28.4.21      
 
<事案>
申立人が、子の名に「舸」の字を用いた出生届を提出⇒市長によって「舸」の字が戸籍法施行規則60条に定める文字でないことを理由に不受理処分⇒家庭裁判所に対し、市長に対して前記出生届を受理することを命じることを求めた(戸籍法121条)
 
<規定>
戸籍法 第50条〔子の名の文字〕
子の名には、常用平易な文字を用いなければならない
常用平易な文字の範囲は、法務省令でこれを定める
 
戸籍法 第121条〔不服の申立て〕
戸籍事件(第百二十四条に規定する請求に係るものを除く。)について、市町村長の処分を不当とする者は、家庭裁判所に不服の申立てをすることができる。
 
<判例>
最高裁H15.12.25:
家庭裁判所は、審判手続に提出された資料、公知の事実等に照らし、当該文字が社会通念上明らかに常用平易な文字と認められるときは、当該市町村長に対し、当該出生届の受理を命じることができる

①法50条1項が子の名には常用平易な文字を用いなければならないとしているのは、従来、子の名に用いられる漢字には極めて複雑かつ難解なものが多く、そのため命名された本人や関係者に、社会生活において多大の不便や支障を生じさせたことから、子の名に用いるべき文字を常用平易な文字に制限し、これを簡明ならしめることを目的とするものと解される
同条2項にいう委任の趣旨は、当該文字が常用平易な文字であるか否かは、社会通念に基づいて判断されるべきものであるが、その範囲は、必ずしも一義的に明らかではなく、時代の推移、国民意識の変化等の事情によっても変わり得るものであり、専門的な観点からの検討を必要とする上、前記事情の変化に適切に対応する必要があることなどから、その範囲の確定を法務省令に委ねたものであり、施行規則60条は、法50条2項の常用平易な文字を限定列挙したものと解される
法50条2項は、同条1項による制限の具体化を施行規則60条に委任したものであるから、同条が、社会通念上、常用平易であることが明らかな文字を子の名に用いることができる文字として定めなかった場合には、法50条1項が許容していない文字使用の範囲の制限を加えたことになり、その限りにおいて、施行規則60条は、法による委任の趣旨を逸脱するものとして違法、無効と解すべき
④法50条1項は、単に、子の名に用いることのできる文字を常用平易な文字に限定することにとどまらず、常用平易な文字は子の名に用いることができる旨を定めたものである
「曽」の時について、社会通念上明らかに常用平易な文字であるとした原審の判断を相当であると判断。

①当該文字が古くから用いられており、平仮名の「そ」や片仮名の「ソ」は、いずれも「曽」の字から生まれたもの
②「曽」の字を構成要素とする常用漢字が5字もあり、いずれも常用平易な文字として施行規則60条に定められている
③「曽」の字を使う氏や地名が多く、国民に広く知られていることなどの諸点
 
<判断>
「舸」の字は、社会通念に照らし明らかな常用平易な文字とはいえない⇒本件申立てを却下

①「舸」の字が字源となる平仮名又は片仮名が認められない
②「舸」の字を構成要素とする常用漢字が存在せず、「舸」の字を使用した熟語も数点あるのみ
③「舸」の字を含み、新聞・テレビ等で日常的に接する報道や書物によって、広く国民に知られているといえるような氏は認められない
④日本国内に「舸」の字を含む地名はわずかである

判例時報2342

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駐車場が地方税法の併用住宅の敷地の用に供されている土地に該当するかどうか(肯定事例)

東京地裁H28.11.30      
 
<事案>
Xが、東京都知事の委任を受けた東京都練馬都税事務所長から、その所有する各土地のうち駐車場として使用されている各部分については地方税法349条の3の2及び702条の3に規定する固定資産税及び都市計画税の課税標準の特例の適用を受ける住宅用地に該当せず、その余の部分に限り前記の住宅用地に該当するものとして、固定資産税及び都市計画税の各賦課決定を受けた

本件各駐車場も前記の住宅用地に該当する旨を主張して、前記各決定の一部の取消しを求めた。 

<規定>
住宅用地とは、専ら人の居住の用に供する家屋(「専用住宅」)又はその一部を他人の居住の用に供する家屋で政令で定めるもの(「併用住宅」)の敷地の用に供されているj土地で政令で定められるものをいう(地方税法349条の3の2台1項)。

前記の併用住宅
とは、その一部を人の居住の用に供する家屋のうち人の居住の用に供する部分(「居住部分」という、その余の部分を「非居住部分」という。)の床面積の当該家屋の床面積に対する割合(「居住部分の割合」)が4分の1以下である家屋をおう(地税法施行令52条の11第1項)
 
<問題点>
本件家屋が併用住宅に該当すること、本件各駐車場以外のX所有の前記の各土地がその敷地の用に供されている土地で政令に定めるもの(住宅用地)に該当することに争いはない。
本件各駐車場も併用住宅の敷地の用に供されている土地に該当し、ひいては住宅用地に該当するのかが争われた。
 
<主張>
X:
本件各駐車場はX所有の各土地の他の部分と共に、併用住宅である本件家屋を維持し又はその効用を果たすために使用されている一画地の土地⇒住宅用地に該当する。 

Y(東京都):
駐車場が本来的に家屋を維持し又はその効用を果たすために使用されている土地ではないが、附属的な家屋については本来の家屋と効用上一体として利用される状態にある場合には、一個の家屋に含めるものとされ、附属的な家屋には車庫も含まれると解される⇒車庫以外の駐車場についても、住宅に附属する施設として判断できる場合には、住宅用地として認定し得るとして、通達に言及。
but
本件各駐車場については、専ら当該住宅の居住者のための施設であること、ひいては居住者自らが利用する施設であるとは評価できない⇒住宅用地に該当しない。
 
<判断>
駐車場が併用住宅の敷地の用に供されている土地に該当するといえるためには、併用住宅の駐車場との間の関係に着目し、その形状や利用状況等を踏まえ、社会通念に従い、居住部分と非居住部分とから成る併用住宅を維持し又はその効用を果たすために使用されている駐車場であるか否かで判断されるべき。 

併用住宅と全く関わりのない者が利用している駐車場については、社会通念上、これを併用住宅を維持し又はその効用を果たすために使用されている駐車場と評価する余地はない。
but
併用住宅の非居住部分の利用者が利用している駐車場であるからといって、直ちに併用住宅の敷地の用に供されている土地に該当しないものではない。
Yが主張するにように、もっぱら当該住宅の居住者のための施設であることや専ら居住者自らが利用する施設であることまでは要しない

本件各駐車場は併用住宅である本件家屋の敷地の用に供されている土地に該当し、ひいては住宅用地に該当する
⇒Xの請求を認容。

判例時報2342

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2017年10月31日 (火)

C国籍の男性Xが、日本国内の総領事館でC国法の方式で婚姻⇒婚姻届不受理の違法性(否定)

大阪高裁H28.9.16      
 
<事案>
日本に在住するC国籍の男性Xが、C国籍の女性と、日本国内の総領事館において、C国法の方式により婚姻し、その後、C国政府作成の婚姻関係証明書を添付して、居住地のB区長に対して婚姻届出⇒不受理⇒戸籍法121条に基づいて神戸家裁に対して不服を申立て、本件婚姻届出を受理するようにB区長に命ずることを求めた。 
 
<原審>
戸籍法上本件婚姻届出は義務付けられていないものであって、市区町村長において受理しなければならないものではなく、B区長が本件婚姻届出を受理しないことが戸籍法上違法、不当であるとは言えない
⇒Xの申立てを却下 
 
<判断> 
Xの抗告を棄却 
 
<解説> 
●市町村長の処分に対する不服申立ての制度 
戸籍法121条には、戸籍事件(第124条に規定する請求に係るものを除く。)について、市町村長の処分を不当とする者は、家庭裁判所に不服の申立てをすることができると規定。

戸籍事件に関する市区町村長の処分は行政処分であり、違法な行政処分についての取消し・変更を求める場合、行政訴訟を提起するのが一般的。
but
戸籍事件については、行政訴訟の方法による救済よりも、「家庭に関する事件」を管轄し、戸籍事件に常時関与している家庭裁判所において処理することが適切
不服申立ての対象となる戸籍事務から、戸籍法124条に規定する請求(戸籍謄本等の交付請求、届出書等の閲覧・記載事項証明書の請求等)に係るものが除かれている。

平成19年改正において、戸籍の公開制度の見直しに伴って除外され、市役所、区役所又は地方法務局の長に審査請求をすることができるようにされた。

①戸籍事件には、戸籍の記載に影響が及ぶ「登録」に関するものと、戸籍謄本等の交付等の「公証」に関するものがあり、後者の戸籍事件の判断については、「家庭に関する事件」を管轄する家庭裁判所の専門的知見が不可欠のものであるとは必ずしもいえない
②類似の処分である住民基本台帳法上の住民票及び戸籍の附票の写しの交付に関する処分等は、いずれも行政不服審査法上の行政不服申立手続及び行政事件訴訟法上の取消訴訟手続によることとされており、これとの平仄を考慮する必要がある。
市区町村の処分に対する不服申立ては、家事審判事項とされ(家事事件手続法39条、別表第1の125項)、家庭裁判所の審判手続において判断されることとなっている。
 
●抗告人は、本件婚姻届出を受理することを求め、その上で、婚姻の事実の証明を市区町村長に求めようとしていることがうかがわれるが、そのことに関して、本決定は、「そもそも外国人同士が日本法以外の方式によって婚姻をしたとしても、日本の行政機関である市区町村長はこれを公証すべき立場にはなく、抗告人の主張は採用できない。」と説示。 

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2017年10月28日 (土)

第二次普天間基地騒音公害訴訟第一審判決

那覇地裁沖縄支部H28.11.17
 
<事案>
駐日米軍の普天間飛行場(本件飛行場)の周辺住民ら3417名が、米軍航空機の騒音及び低周波音等によって各種の被害を受けていると主張
⇒日本国に対し、騒音の差止めや損害賠償等を求める。 
 
<判断・解説> 
●騒音の差止請求を棄却
国は、日米安保条約及び日米地位協定上、本件飛行場における米軍の航空機の運航等を規制し、制限することのできる立場にはない
⇒本件差止請求は、被告に対してその支配の及ばない第三者の行為の差止めを請求するものであるとして、国に対する航空機騒音をの差止請求を棄却。

厚木基地騒音訴訟上告審判決の判断を踏襲
 
●憲法に基づく確認請求がされ、これについて裁判所が判断 
原告ら:
国に米軍の航空機の規制権限がないことを理由に、実体的な利益衡量をせずに国に対する差止請求を棄却するのは、基本権の実効的救済権としての裁判を受ける権利を侵害するもの

主位的に、米軍本件飛行場を提供する日本国と米国との間の協定の違憲無効確認を、
予備的に、国が原告らに騒音が到達している状態を放置していることの違憲確認を請求。

主位的請求について:
当該飛行場提供協定は、国と米国との間で日米安保条約及び日米地位協定に基づき本件飛行場を提供する旨を合意した協定
それ自体は、原告らの法律関係を規定するものではない
その違憲無効確認請求は、原告らと国との間の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する紛争とはいえず、これに係る訴えは、法律上の争訟に該当しない
⇒却下。

予備的請求について:
①原告らは、国が米国に対して本件飛行場を提供し、原告らに人格権侵害を生じさせていると同時に、その救済手段を設けていない点を問題視し、その違憲性を問うことで、差止請求を基礎付けようとしている。
②このような主張は、差止請求の攻撃防御方法として主張、判断されるべきものというべきものであって、これとは別に、原告らが求める確認判決をすることが原告らの権利又は法的地位に生じている不安を除去する方法として適切とはいえない

予備的請求に係る訴えについては確認の利益を欠く
 
口頭弁論終結の日の翌日以降の将来分の損害の賠償請求に係る訴えを却下 
大阪国際空港訴訟上告審判決に依拠して、本件の将来分の損害の賠償請求に、将来の給付の訴えを提起することのできる請求権としての適格を認めず、却下。
 
●過去分の損害賠償請求 
受忍限度論を採用した上、生活環境法において区域指定に用いられるW値(うるさ値)で75以上の区域に居住している期間について、原告らが社会生活上受忍すべき限度を超える違法な権利侵害ないし法益侵害をこうむっている

原告らのいわゆる民特法に基づく損害賠償請求を一部認容。
本判決は、裁判例の中で最高の金額を基本とする慰謝料額とした。

本件飛行場における航空機の運航等から生じる騒音及び低周波音によって周辺住民らに受忍限度を超える違法は被害が生じていることを認定し、国に損害賠償を命じた第一次訴訟の判決が確定した平成23年10月から既に4年以上が経過しているものの、米国又は国による被害防止対策に特段の変化は見られず、周辺住民に生じている違法な被害が漫然と放置されていると評価されてもやむを得ない。

判例時報2341

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2017年10月23日 (月)

公立学校の卒業式の国歌斉唱の際の起立斉唱等の職務命令に従わず⇒減給処分(適法とされた事例)

大阪高裁H28.10.24      
 
<事案>
大阪府立特別支援学校の教員であるXは、平成24年度の同校高等部の卒業式において、同校の校長かは国歌斉唱時には式場内にいる全ての教職員が起立斉唱すること及びその日配布された役割分担表に従い職務に専念するようにとの職務命令を、准校長からは式場外での受付業務をするようにとの職務命令をそれぞれ受けていた(「本件職務命令」)にもかかわらず、同受付病無を無断で放棄した上、式場内に勝手に立ち入って国歌斉唱時に起立しなかったことを理由として、大阪府教育委員会から減給1か月(給料と地域手当の合計額の10分の1)の懲戒処分
⇒Xが、本件減給処分が違法であると主張して、その取消しを求めるとともに、Y(大阪府)に対し、国賠法1条1項に基づき、慰謝料200万円の支払を求める事案。 

大阪府は、大阪府内の公立学校の行事において行われる国歌の斉唱に当たり、教職員は原則として起立斉唱を行うものとすることなどを内容とする府国旗国歌条例を規定。
府教委教育長は、府立学校の教職員宛てに、平成24年1月17日付けで、国歌斉唱が行われる学校行事において、式場内の全ての教職員は国歌を起立斉唱することなどを内容とする「入学式及び卒業式等における国旗掲揚及び国歌斉唱について(通達)」(「本件通達」)を発出。
 
<争点>
本件通達及び本件職務命令の憲法違反(19条、20条、26条、14条)
本件減給処分の違法ないし裁量権の逸脱又は濫用等 
 
<判断>
●本件通達及び本件職務命令の憲法適合性
憲法19条違反について、最高裁H23.5.30等を参照の上、
本件通達及び本件職務命令にはXの思想・良心の自由の間接的な制約を許容し得る程度の必要性及び合理性が認められ、これらの根拠となった府国旗国歌条例についても、違憲・違法であるということはできない。
⇒憲法19条(思想・両親の自由)に違反するとはいえない。
憲法20条(信教の自由)、26条(教育を受ける権利等)及び14条にも違反しない。
 
●本件不起立等を理由とする懲戒処分の適法性
①准校長の職務命令に違反し、受付業務が勝手に終わったと判断して卒業式開始前に会場内に入ったこと、
②受付業務に戻るようにとの教頭らの指導に従わなかったこと
③本件不起立
のいずれもが職務命令反行為であり、
これらは地方公務員法32条が規定する上司の職務上の命令に忠実に従う義務に違反する法令違反行為。

Xが平成23年度卒業式に関して戒告処分を受けながら、1年後に同様の行為を繰り返した。
本件においては前記③のみならず前記①②という二重に上司の職務上の命令に従う義務に違反した行為。

前記の行為①ないし③は、いずれも法令違反及び全体の奉仕者たるにふさわしくいない非行に該当するものと認められ、これらを理由として懲戒処分を行うことは適法
 
●本件減給処分に係る裁量権の範囲の逸脱又は濫用の有無 
最高裁H24.1.16等を参照の上、
本件減給処分の理由となったXの非違行為は、
①卒業式における国歌斉唱時の起立斉唱を命じた本件通達及び校長の職務命令にに違反するだけでなく、准校長の職務命令にも違反
②その内容をみても、勝手に式場内に入って無関係の席に居座り不起立に及ぶなど、卒業式という重要な学校行事の秩序や雰囲気を損なうような行為に積極的に及んだものと評価できる、
③これらの本件不起立前後におけるXの態度等の諸事情

本件減給処分による不利益の内容を踏まえてもなお、学校の規律や秩序の保持等の必要性の観点から、減給処分が重きに失するものということはできず
本件減給処分が裁量権の範囲の逸脱又は濫用に当たると解することはできない

判例時報2341

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2017年10月22日 (日)

死亡した職員の夫について、当該職員の死亡の当時一定の年齢に達していることを遺族補償年金の受給の要件としている⇒憲法14条1項違反(否定)

最高裁H29.3.21      
 
<事案>
Xは、地方公務員災害補償基金大阪支部長(「行政処分庁」)に対し、地方公務員であったXの妻が公務上の災害により死亡したとして、地方公務委員災害補償法31条に基づく遺族補償年金の支給を請求するとともに、地方公災法47条1項2号及び地方公務員災害補償法施行規則38条1項に基づく遺族特別支給金(この3つをあわせて「遺族特別支給金等」)の支給を請求。
処分行政庁は、平成23年1月15日付けで、遺族補償年金及び遺族特別支給金等をいずれも不支給とする旨の決定
XがYに対し、本件各不支給決定の取消しを求める。 
 
<判断>
地公災法の定める遺族補償年金制度は、憲法25条の趣旨を実現するために設けられた社会保障の性格を有する制度であるとした上で、
男女間における労働力率の違い、平均的な賃金額の格差及び一般的な雇用形態の違い等からうかがえる妻の置かれている社会的状況

妻について一定の年齢に達していることを受給の要件としないことは合理的な理由を欠くものということはできない

本件各規定のうち、死亡した職員の夫について、当該職員の死亡の当時一定の年齢に達していることを受給の要件としている部分が憲法14条1項に違反するということはできない。
⇒上告棄却。 
 
<解説> 
地公災法に基づく遺族補償年金を受けることができる遺族は、公務上の災害により死亡した職員の配偶者、子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹であって、職員の死亡の当時その収入によって生計を維持していたものとされている。
死亡した職員の妻以外の遺族にあっては、職員の死亡の当時、18歳未満又は55歳以上とその年齢要件又は総務省令で定める障害の状態にあることとの障害要件を満たすことが受給要件

遺族補償年金職員の死亡によって扶養者を喪失した遺族で稼働能力を欠く者に必要な期間支給するもの

遺族の範囲は職員の死亡の当時その収入によって生計を維持していた者に限定し、さらに、妻以外の遺族であって年齢要件を満たさない者については、一定の障害の状態にない限り、自活可能であるものとし、
他方で、妻については、一般的には就労が困難であることが多いこと等を考慮し、特に年齢制限を行っていない。

国家公務員災害補償法及び労働者災害補償保険法に基づく遺族補償年金等についても、地公災法と同様に、妻以外の遺族については年齢要件又は障害要件を満たすことが受給資格要件とされている。
 

本件では、Xは、本件各規定が憲法14条1項に違反する旨を主張。
but
本件各不支給処分の適法性との関係で問題となるのは、本件各規定のうち、死亡した職員の夫について、当該職員の死亡の当時55歳以上であることを遺族補償年金の受給資格要件としている部分が憲法14条1項に違反するかどうか。 

最高裁判例:
憲法14条1項は国民に対して絶対的な平等を保障したものではなく、事柄の性質に応じた合理的な根拠に基づいて異なる取扱いをすうることは同項に反するものではない

合理的な根拠の有無を判断するに当たりどの程度厳格に審査するか
については、権利の性質や区別の利用により類型化した上で類型ごとに異なる審査基準を適用するという手法は用いておらず、区別の理由が憲法14条1項の列挙事由に当たるか否かにかかわらず、個別の事案に応じ、立法府等の有する裁量権の広狭、区別の対象となる権利の性質及び区別の理由を総合的に考慮している。

最高裁H20.6.4:
国籍法の定める国籍取得要件における区別が合理的な根拠に基づくものといえるかどうかを判断するに当たり、
国籍の得喪に関する要件をどのように定めるかは、立法府の裁量判断に委ねられていることを指摘しつつ、
国籍が重要な法的地位であること、父母の婚姻により嫡出子たる身分を取得するか否かということは子にとって自らの意思や努力によって変えることのできない父母の身分行為に当たる事柄であること

このような事柄を持って日本国籍取得の要件に関して区別を生じさせることに合理的な理由があるか否かについては、慎重に検討する必要
当該区別を設けることの合理性を裏付ける立法事実の有無を詳しく検討し、合憲性を判断

最高裁H27.12.16:
再婚禁止期間を定める規定の憲法14条適合性につき、婚姻をするについての自由は、憲法24条1項の規定の趣旨に照らし、十分尊重に値するもの解することができる。
婚姻制度に関わる立法として、婚姻に対する直接的な制約を課すことが内容となっている本件規定については、その合理的な根拠の有無について以上のような事柄の性質を十分考慮に入れた上で検討することが必要」であるとし、
比較的詳細に区別の合理性を裏付ける立法事実の有無を審査。
 

労働災害補償保険法の遺族補償年金制度が、災害により死亡した職員の遺族の生活保障を図ることを目的とするものであって、憲法25条の趣旨を実現するために設けられた社会保障の性格をも有する制度で、地公災補償制度も同様。 

社会保障制度に係る立法の裁量について、いわゆる堀木訴訟判決(最高裁昭和57.7.7)が、
障害福祉年金と児童扶養手当との併合を禁止する児童扶養手当法の合憲性につき、憲法25条にいう健康的で文化的な最低限度の生活なるものを立法として具体化するに当たっては、国の財政事情を無視することができず、しかも高度の専門技術的な考察とそれに基づいた政策的判断を必要とするもの

具体的にどのような立法措置を講ずるかの選択決定は立法府に広い裁量権が認められる。
その上で、何らかの合理的理由のない不当な差別的取扱いに当たるか否かという緩やかな基準により憲法14条1項適合性を判断

本判決は、
地公災法の定める遺族補償年金制度が社会保障の性格を有する制度であることを指摘しつつも、
男女間における労働力率の違い、平均的な賃金額の格差及び一般的な雇用形態の違いなどの立法事実を踏まえて、妻について一定の年齢に達していることを受給の要件としないことは合理的な理由を欠くものということはできない

区別の合理的な根拠の有無を立法事実に照らして具体的に検討。
原判決が摘示する男女間における労働力率の違い、平均的な賃金額の格差及び一般的な雇用形態の違い等に鑑みれば、立法事実に照らして検討しても、妻の置かれている社会的状況が依然として不利益な状況であることは否定し難く、合理的な理由を欠くものとはいえない
⇒本判決は、審査の厳格さについて論ずることなく、本件各規定が憲法14条1項に違反するものではない旨を判示したのではないかと推察。
 

一審判決は、本件各規定が憲法14条1項に違反し違憲・無効であるとする。

遺族補償年金の受給資格要件を定める地公災法の規定のうち、妻以外の遺族に年齢要件を課している部分を無効とするもの。
but
仮に遺族補償年金の受給要件を定める地公災法の規定全体が無効となるのではなく、その一部が無効となるのかは検討を要する上、
仮にその一部が無効となるとしても、違憲とされる格差を是正する方法としては、
本件各規定を無効とすることのほかに、
妻に年齢要件又は障害要件を課していない部分を無効とすることも考えられる。
(←一審判決の意見とする理由が、女性の社会進出が進んだ結果、男女間の格差が縮小したことなどを理由とするもの。)

判例時報2341

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