行政

2018年11月11日 (日)

政務調査費の支出が違法⇒不当利得として返還請求することを市長に求める住民訴訟(一部認容)

仙台高裁H30.2.8      
 
<事案>
仙台市議会の会派及び議員が同市から交付を受けた平成23年度(平成23年9月分から平成24年3月分まで)の政務調査費のうち一部(合計約1810万円)が条例等により定められた使途規準に反して違法に支出され、前記会派及び議員に不当利得が生じている⇒Xが、市長であるYに対し、前期会派及び議員に対して不当利得の返還を請求するよう求めた住民訴訟。
 
<論点>
①政務調査費の支出の適法・違法の判断枠組み
②主張立証責任の分配 
 
<解説>
①について:
条例等により定められた使途規準に合致するか否かを適法・違法の判断の基準とし、
具体的には、政務調査費の支出と議員の調査研究活動との間に合理的関連性がない場合を使途規準に合致しない場合として違法とする裁判例が多い。

②について:
いわゆる一般的・外形的な事実説(使途規準に合致した政務調査費の支出がなされなかったことを推認させる一般的・外形的な事実が立証されたときには、適切な反証がされない限り、当該支出が使途規準に合致しないものであることが事実上推認される)に立つ裁判例が多い。
 
<判断>
Xの請求の一部を認容した原判決を、大筋で支持。 
 
<解説> 
●政務調査費の支出対象となる経費が(インターネット利用料など)定額のサービス利用料である場合の使途規準適合性について:
仙台市議会においてこれを具体化する趣旨で作成された内規である「仙台市政務調査費の交付に関する要綱」があり、
その8条は「政務調査費に係る経費と政務調査費以外の経費を明確に区分し難い場合には、従事割合その他の合理的な方法により按分した額を支出額とすることができるものとし、当該方法により按分することが困難である場合には、按分の割合を2分の1を上限として計算した額を支出することができる」と規定。

原判決:
同要綱は、それ自体が法規範性を有するものではないが、このような取扱いをすることは政務調査費の支出について議員の調査研究活動のための必要性を要求する地自法及び条例等に沿うものとして合理性があると考えられる

政務調査費の支出対象となった経費の一部が調査研究活動対象以外の目的で支出されたといえる場合には、前記の定めに従って按分した額を超える支出は、結局、使途規準に合致しないものと判断されるべき。

本判決もこれを共通の前提としている。

政務調査費の支出対象となる経費が定額のサービス利用料である場合:

原判決:
調査研究活動以外の目的で利用されることがあったとしても、調査研究活動を主目的として利用するとすれば目的外利用の有無にかかわらず一定額の支払をしなければならない

前記一般論の例外として、定額の利用料については、按分をしないでその全額を政務調査費から支出しても使途規準に合致しないとはいえない。

本判決:
各会派及び議員は、定額の利用料に係る経費を政務調査費から全額支出するか一切支出しないかのいずれかを選択しなければならないものではなく、経費を按分してその一部を政務調査費から支出することができる。

定額制か従量制等かの違いだけで異なる取扱いをする合理的な理由はない
 
●経費の一部について按分により政務調査費から支出することを認める前記ののような要綱の定めを実質的に使途基準適合性の判断に取り込んで支出の違法性を判断することの当否
これを取り込んだ場合に定額の利用料をさらにその例外とすることの是非
について、さまざまな議論があり得る。

判例時報2380

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2018年11月 4日 (日)

大阪市長に対するメールの公開請求の事案

大阪高裁H29.9.22      
 
<事案>
大阪市情報公開条例2条2項:
同条例における「公文書」を、
「実施機関の職員が職務上作成し、又は取得した文書、図画及び電磁的記録であって、当該実施機関の職員が組織的に用いるものとして、当該実施機関が保有しているものという」と規定。 

Y(大阪市)は、
大阪市長が職員との間で、いわゆる庁内メールを利用して1対1で送信した電子メールについて、
①公用パーソナルコンピュータの共有フォルダで保有しているもの
②紙に出力したものを他の職員が保有しているもの
③当該1対1メールの内容を転送先の公用PCで保有しているもの
については、公開請求の対象となる公文書に該当し、
その余のものは公文書に該当しないとの取扱いをしている。

Xは、同条例に基づき、大阪市長に対し、同市長とYの職員との1対1メールのうち、Yにおい公文書として取り扱っていないものの公開を請求
⇒大阪市長は、公開しない旨の決定

 
<原審>
本件文書の中には、同条例2条2項所定の公文書に該当する文書が含まれている⇒本件非公開決定は違法。 

大阪市情報公開条例2条2項の解釈及び「組織的に用いるもの」に該当するか否かの判断基準について、情報公開法2条2項に関するものと同旨の解釈及び判断基準を採用
①大阪市長と職員との間で職務に関してやり取りされたものである以上、すべからく組織共用文書となると解するものではない
but
メールである以上、1対1メールであっても、その作成及び利用について大阪市長及びYの職員が送信者又は受信者として関与しており、一方当事者の廃棄の判断にゆだねられているとはいえず、組織として保有するものに該当することも十分あり得る
③大阪市長と職員との間の1対1メールが職務上の指示又は意見表明に利用される場合、組織において業務上必要なものとして利用又は保存されているということができる場合があり、
証拠に表れた前市長と職員との間のメールの利用の実態に鑑みれば、1対1メールがこのように利用されていないということはできず、本件文書の中に公文書に該当するものがあったということができる


本件非公開は違法
 
<判断>
原審判断を是認 
 
<争点>
本件文書が同条例2条2項の「組織的に用いるもの」に該当するか否か 
 
<解説> 
同条例の公文書に関する定義は、行政機関の保有する情報の公開に関する法律(「情報公開法」)2条2項における行政文書の定義と同旨。 

情報公開法 第2条(定義)
2 この法律において「行政文書」とは、行政機関の職員が職務上作成し、又は取得した文書、図画及び電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られた記録をいう。以下同じ。)であって、当該行政機関の職員が組織的に用いるものとして、当該行政機関が保有しているものをいう。ただし、次に掲げるものを除く。
一 官報、白書、新聞、雑誌、書籍その他不特定多数の者に販売することを目的として発行されるもの
二 公文書等の管理に関する法律(平成二十一年法律第六十六号)第二条第七項に規定する特定歴史公文書等
三 政令で定める研究所その他の施設において、政令で定めるところにより、歴史的若しくは文化的な資料又は学術研究用の資料として特別の管理がされているもの(前号に掲げるものを除く。)

同条項の立法過程においては、
①決裁、供覧等の文書管理規程上の手続要件で対象文書の範囲を画することは適切ではない
②職員の個人的メモなど、組織としての業務上の必要性に基づく保有しているとは言えないものまで含めることは、法の目的との関係では不可欠なものではなく、法の的確な運用に困難が生じたり、適切な事務処理を進める上で妨げとなるおそれもある

職務上作成・取得と組織共用・保有が要件となった。

組織共用・保有
作成又は取得に関与した職員個人の段階のものではなく、組織としての共用文書の実質を備えた状態、すなわち、当該行政機関の組織において業務上必要なものとして利用・保存されている状態のものをいう。

判例時報2379

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2018年11月 2日 (金)

地方公共団体に勧告の義務があることの確認を求める訴訟の確認の利益の有無(否定)

東京高裁H29.12.7      
 
<事案>
控訴人は、本件給食センターは本件地区計画において定められた地区整備計画に違反して建築が許されないものであるにもかかわらず、訴外会社からの建築の届出に対し、被控訴人が都計法58条の2第3項に基づく勧告をしなかったとして、
被控訴人をして同項に基づき必要な是正措置を執るよう勧告する義務があることの確認を求める訴えを公法上の当事者訴訟として提起。 

ここで求める勧告の内容は、
当初の時点では、給食センターの建築が未完成⇒「本件給食センターを建築しないよう勧告する義務」
平成29年8月に建築が完成⇒
控訴審段階では、
主位的に「本件給食センターの建物を除却するよう勧告する義務」があることの確認
予備的請求として「本件給食センターの操業に関し、排出させる油煙等の量等を常時計測し、従来維持されていた環境より栗木マイコン地区の環境が悪化するおそれが生じたときは工場の操業を一時停止するなどの措置を執るよう勧告する義務」のあることの確認。
 
<争点>
①行政指導にすぎない「勧告」義務があることの確認を求める本件訴え(公法上の当事者訴訟)に確認の利益があるといえるか
②控訴人の求める内容の勧告をする義務を被控訴人(川崎市)が負うといえるか(被控訴人に勧告をするか否か及び勧告内容について裁量があるか、あるとして本件で被控訴人に裁量権の逸脱濫用が認められるのか) 
 
<規定>
都市計画法 第58条の2(建築等の届出等)
3 市町村長は、第一項又は前項の規定による届出があつた場合において、その届出に係る行為が地区計画に適合しないと認めるときは、その届出をした者に対し、その届出に係る行為に関し設計の変更その他の必要な措置をとることを勧告することができる。
 
<一審>
●訴えを却下 
 
●傍論として、「被告(被控訴人)が訴外会社に対し、都計法58条の2第3項に基づき、本件給食センターの建築をしないよう勧告する義務を負っていると認められるか否か」
都市計画の決定の判断は、政策的・技術的な見地から行政庁の広汎な裁量に委ねられているところ、同項に基づく勧告をするか否かの判断も、同様に政策的・技術的な見地からの行政庁の広範な裁量に委ねられている

勧告の不行使が裁量権の行使として違法になるのは、法令の趣旨、目的や、その権限の性質等に照らし、具体的事情の下においてその不行使が許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠くと認められる場合に限定される。

行政指導としての勧告の性質
⇒勧告しないことが「許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠く」と認められるためには、「相手方が勧告に従うことについての高度の蓋然性がある場合であることが必要」
本件で勧告をしなかったことについての裁量権の逸脱濫用はない
 
<判断> 
●都計法上、同法58条の2第3項の規定による市町村長の勧告については、相手方に当該勧告に従うことを義務付ける規定はなく、勧告に従わないことに対する罰則や行政上の制裁措置は設けられていない
⇒当該勧告に法的効力はなく、当該勧告は行政指導としての性質を有するものと解することができる。 

勧告による指導の内容が実現されるか否かは当該勧告を受けた相手方の任意の協力が得られるか否かに委ねられる(行手法32条1項)行政庁が当該勧告をしたとしても、相手方がこれに従うことが確実とはいえず、本件給食センターの建築を防止するという控訴人の目的が直接的に達成されるわけではない。

①訴外会社と被控訴人との間には、本件給食センターの建築及びその後の給食事業の実施の委託につき契約関係があり、この契約関係は、本件敷地に本件給食センターを建築し、操業することが可能であること、及び、本件地区計画の存在により契約内容が左右されないことを前提として成立したもの
②都計法58条の2第3項の勧告は、訴外会社に対し、前記契約上の債務とは別に、本件地区計画への適合性を担保するための措置を求めるものであり、訴外会社が任意にこれに従う可能性の低いことは明らか
他方で
③本件給食センターの操業により控訴人が財産的被害を受けるというのであれば、当該被害又はその発生のおそれの存在につき主張立証した上で、不法行為等に基づき、訴外会社に対し本件給食センターの操業差止めを、又は被控訴人に対し、本件給食センターへの委託に係る給食事業の差止めを求める民事訴訟を提起する手段が存在し、これに勝訴すれば、直接的に控訴人の目的を達成することができる。
予備的請求についても、本件地区の環境が悪化するおそれが生じた場合に本件給食センターの操業を一時停止すること等を勧告の内容とするもの⇒訴外会社が当該勧告に従う見込みがあるとはいえない。

本件において、被控訴人に勧告義務があることの確認を求めることは、紛争の解決に有効適切であるとは認められない⇒本件訴えは、確認の利益を欠くとして、本件訴えを全部却下。
 

①本件給食センターが本件地区計画に適合しないという事態が生じたのは、被控訴人が、自らの事業の立地として、既存の被控訴人所有地から本件敷地を選択した結果であり、
②当該選択は、主として被控訴人自身の事情(財政面の制約等)によるもの

このような選択の結果、前記不適合を自ら惹起した被控訴人が、都計法58条の2第3項の勧告に関し広範な裁量を有するといえるかについては疑問の余地がある。 
 
<解説> 
●確認の利益一般
確認の訴えの利益は、一般的には、原告が提示した訴訟物たる権利関係について、確認判決をすることが、原告の権利又は法律関係に対する現実の不安・危険を除去するために、必要かつ適切な場合に認められる

①確認の訴えは、権利関係の存否を観念的に確定すること通じて紛争を解決すると同時に、将来の派生的紛争を予防しようとするもの。
⇒その性質上、権利の強制的実現の裏打ちがない
確認の訴えの対象は論理的には無限定

当該紛争について、権利の確認という紛争解決手段が有効適切に機能するかという実効性及び
解決を必要とする紛争が現実に存在するかという現実的必要性
の観点から、
確認の利益の存否を吟味・検討することによって、
紛争解決にとって無益な確認の訴えを排除して、制度効率を維持ないし高める必要がある。

その観点から、確認の利益を訴訟要件とされている。
 
●地区計画と都計法58条の2第3項の勧告
地区計画の地区整備計画においては、建築物の敷地、構造、建築設備、又は用途に関する事項が定められる(都計法12条の5第7項)が、
地区計画の区域内において建築行為を行おうとする場合の地区計画適合性を担保するため、
建築行為を行おうとする者は、当該行為に着手する日の30日前までに市町村長に届出を義務付け(都計法58条の2第1項)、
市町村長は、届出内容を審査した上で、それが地区計画に適合しないと認めるときは、その届出をした者に対し、その届出に係る行為に関し設計の変更その他の必要な措置をとることを勧告(同条3項)。

建築行為が都計法29条1項の開発許可を要する場合に当たるときは前記届出を不要とし(都計法58条の2第1項5号)、適合性は開発行為の許可の際に審査するもの(都計法33条1項5号)としているし、
市町村の条例において、地区計画の内容として定められた建築物の敷地、構造、建築設備又は用途に関する事項を取り込み、制限として定めた場合(建基法68条の2)には、地区計画適合性は建築確認の際に審査される(建基法6条)。

開発許可を要する場合や地区計画で定められた事項が条例で制限として定められた場合を除くと、
地区計画適合性は、地区計画に適合しない建築行為の届出に対し、市町村長が是正の勧告をするという形で担保していくというのが都計法の制度設計になっている。


この「勧告」は、行政指導の一種であり、勧告に従わない場合に氏名を公表するということも制度的には予定されていない。
市町村長は、それ以上の権限を有しない。
開発許可を要する場合や条例に取り込まれた場合を除くと、地区計画適合性は勧告という相手方の任意の協力がなければ実現しないやわらかい手段によって担保。
 

最高裁の判例には、行政指導の勧告を抗告訴訟の対象になる処分と捉え、抗告訴訟のルートに乗せたものもある(最高裁H17.7.15)。

行政指導は相手方の任意の協力を求めるものであるが、事実上それに従わせる力が働くことは公知の事実

最近の行手法の改正において
「違法な行政指導の中止の求め」(36条の2)
「行政指導の求め」(36条の3)

の制度が設けられた。
これを訴訟の場面でみると、
行政指導としての勧告は、原則として抗告訴訟の対象となる処分に当たらない

公法上の当事者訴訟としての確認の訴えを利用して、
行政指導に従う義務のないことの確認とか、行政指導をする義務のあることの確認という訴訟形式で争うとうことが考えられる。

行訴法の改正で同法4条の公法上の当事者訴訟に「確認の訴え」が明記された点も、この議論の1つの支えになり得る。

行政指導というのも、任意の協力を求めるという建前はともかく、事実上それに従わせる力がある
⇒その中止を義務付けたり、行政指導するように義務付けることは、紛争の解決方法として取り上げるに値する。
訴訟の場では、それは公法上の確認の訴えという形式になり、これが紛争解決の方法として有効適切と捉えられる余地もある

判例時報2379

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2018年10月19日 (金)

県立公園における朝鮮人労働者を追悼する追悼碑の設置期間の更新不許可処分が違法とされた事案

前橋地裁H30.2.14      
 
<事案>
県立公園群馬の森を管理するY(群馬県)の代表者である処分行政庁(群馬県知事)は、追悼碑の設置を知根氏した団体Aに対し、平成16年3月4日、「設置許可施設については、宗教的・政治的行事及び管理を行わないものとする。」との条件を付して、戦時中に労務動員され、群馬県内でなくなった朝鮮人労働者を追悼する追悼碑の設置を認可(設置期間10年)。
本件追悼碑に関する権利義務を承継したと主張するXは、前記設置許可の期間満了前である平成25年12月18日、処分行政庁に対し、都市公園法5条1項に基づき、本件追悼碑の設置期間の更新申請。
but
処分行政庁は、平成26年7月22日、本件追悼碑の前で本件許可条件に反する政治的行事が繰り返し行われた結果、本件追悼碑は、日韓、日朝の友好の促進という当初の目的から外れ、存在自体が論争となり、街宣活動、抗議活動などの紛争の原因になっており、都市公園の効用を全うする機能を喪失したとして、設置期間の更新不許可処分

Xは、本件更新不許可処分の取消しとともに、処分行政庁に対する本件更新申請の許可の義務付けを求めて本件訴えを提起
 
<規定>
法2条2項:
「公園施設」の定義について、「都市公園の効用を全うするため」当該都市公園に設けられる施設をいう旨規定。

法5条1項:
法の規定により都市公園を管理する者(「公園管理者」)以外の者が、都市公園に公園施設を設け、又は公園施設を管理しようとするときは、公園管理者の許可を受けなければならない。

同条2項:公園管理者が前記許可をすることができない条件を規定。 
 
<判断>
●Xが、本件許可条件所定の政治的行事を行ったか 
本件追悼碑の設置許可申請に至る団体名や碑文の変更に関する経緯⇒少なくとも、本件追悼碑に関して「強制連行」の文言を使用して、歴史認識に関する主義主張を訴えることを目的とする行事は、「政治的行為」に含まれ、かつ、そのことをXも認識していた
⇒そのような内容の発言が「政治的行事」に含まれ、Yが政治的発言に該当すると主張した各発言のうち、一部の発言は、いずれも政治的発言に該当する。

これらの一部の発言がなされた追悼式自体が政治性を帯びることは否定できない

平成17年及び平成18年開催の各追悼式は、いずれも「政治的行事」に該当し、Xは本件許可条件に違反。
 
●本件追悼が都市公園としての効用を全うする機能を喪失したか
①前記政治的発言がされた後、平成24年に至るまでは、Yに対しても本件追悼碑に関する抗議や意見が寄せられたことはなく、追悼式の開催、運営に支障や混乱が生じたと認めるに足りる証拠はない
②Y自身も、本件追悼碑が本件公園の効用を全うする機能を喪失したとは考えていなかった

本件更新不許可処分は、本件追悼碑が都市公園の効用を全うする機能を喪失していたとは考えていなかったと認めるべき事情がある

本件更新不許可処分は、本件追悼碑が都市公園の効用を全うする機能を喪失していたといえないにもかかわらずなされた処分であり、社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められ、裁量権を逸脱しtあ違法があるとして、Xの本件更新不許可処分の取消しの訴えを認容。
 
●処分行政庁が、本件更新申請に対する許可処分をしないことが、裁量権の逸脱又は濫用となるか 
公園管理者が、更新申請者に対し、具体的にいかなる期間の更新を許可すべきかは、公園管理者の合理的な裁量に委ねられていると解するのが相当

処分行政庁が10年間と期間を特定した本件更新申請を許可しないことが、その裁量権の範囲を超え若しくはその濫用となるということまではできない

Xの本件更新申請の許可の義務付けの訴えを棄却
 
<解説>
ある施設が「都市公園の効用を全うする」(法2条2項)か否かは、
個々の公園の特殊事情に応じて、具体的に決すべき問題であり、公園管理者の裁量が認められる。
but
公園管理者の判断に裁量権の逸脱又は濫用があると認められる場合には、違法となる。 

判例時報2377

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2018年10月18日 (木)

特例解散制度による解散する厚生年金基金における選択一時金の支給を停止する旨の規約変更の有効性

名古屋地裁H29.2.9      
 
<事案>
平成25年法律第63号による改正前の厚生年金保険法(「旧厚年法」)に基づき設立された厚生年金基金であるYの設立事務所であったA株式会社の従業員又は元従業員であるXらが、Yに対し、Y厚生年金基金規約(平成26年5月21日に厚生労働大臣により認可を受けて改正される前のもの。(「本件規約」))附則に基づく選択一時金の請求⇒Yから、Y代議員会の議決により選択一時金の支給を停止する旨の規約の変更がされたことを理由とする各不支給決定を受けた

本件規約変更はXらの権利を侵害する著しく不当な不利益変更である上、本件規約変更には手続上の瑕疵があるなどと主張して、本件各処分の各取消しを求めるとともに、
本件規約附則に基づき、処分等一覧表「選択一時金額」記載の各金員等の支払を求める事案。 
 
<経緯>
A社は、平成23年2月25日、Yに対し、本件規約に基づいて算出した脱退時特別掛金を納付し、同月28日にYを脱退。
Xらは、同日までYの加入員であったが、A社が同日、Yを脱退したため、同年3月1日、Yの加入資格を喪失。 

平成25年6月19日、保有する年金資産総額が老齢厚生年金の代行部分(基金が国に代わって給付を行う老齢厚生年金の報酬比例部分)の給付に必要な積立額(最低責任準備金)に満たない、いわゆる代行割れ基金の早期自主解散を促して基金制度を原則として廃止することを目的として、「公的年金制度の健全性及び信頼性の確保のための厚生年金保険法等の一部を改正する法律」が成立し、平成26年4月1日に施行。

Yは、平成26年2月18日開催の通常代議員会で、特別解散制度により解散する旨の解散方針の意思決定を議決し、年金資産保全のために本件規約附則に基づく選択一時金の支給を停止する旨の規約変更をする旨の議決をした。
Yは、同年3月7日、厚生労働大臣に対し、本件規約の一部変更の認可申請をし、同年5月21日、厚生労働大臣の認可を受けた。

Xらは1名(X31)を除き、Yに対し、本件規約附則に基づき、処分等一覧表「選択一時金額」欄記載の各金員を請求したが、Yは、Xらに対し、選択一時金を支給しない旨の本件各処分。
⇒C厚生局社会保険審査官に対し、各審査請求をしたが、C厚生局社会保険審査官は、本件Xらに対し、前記各審査請求をいずれも棄却する旨の各決定。
 
<規定>
行政事件訴訟法 第八条(処分の取消しの訴えと審査請求との関係)
処分の取消しの訴えは、当該処分につき法令の規定により審査請求をすることができる場合においても、直ちに提起することを妨げない。ただし、法律に当該処分についての審査請求に対する裁決を経た後でなければ処分の取消しの訴えを提起することができない旨の定めがあるときは、この限りでない

2前項ただし書の場合においても、次の各号の一に該当するときは、裁決を経ないで、処分の取消しの訴えを提起することができる。
一 審査請求があつた日から三箇月を経過しても裁決がないとき。
二 処分、処分の執行又は手続の続行により生ずる著しい損害を避けるため緊急の必要があるとき。
三 その他裁決を経ないことにつき正当な理由があるとき。
 
<判断> 
●X31の訴えの適法性:
Yがした本件規約に基づく選択一時金を支給しない旨の処分に不服がある者は、社会保険審査官に対して審査請求をし、その決定に不服がある者は、社会保険審査官に対して再審査請求をすることができる一方で、その取消訴訟は、再審さ請求に対する裁決を経た後でなければ提起することができない旨法定
but
X31は審査請求をしておらず、このため社会保険審査会の採決を経ていない

X31に係る処分の取消しを求める訴えは、適法な不服申立てを前置しておらず、行訴訟8条1項ただし書等に基づき、不適法。

X31について「裁決を経ないことにつき正当な理由」(行訴法8条2項3号)があるとはいえない。

X31の訴えを却下。
 
●年金等支給契約の成否 
旧厚年法が厚生労働大臣の認可を通じて基金の規約、設立及び解散を規制

基金、受給者及び事業主の権利・法律関係につき、基金の安定的運営、権利・堡塁津関係の画一的処理等の公益上の要請から、個別の契約ではなく、法令と基金の規約によって規律されるものと解すべき

基金がした裁定等の処分は、行訴法3条2項所定の行政庁の処分と同様の効力を有すると解される。

基金が減少設立事業所の事業主に対してした脱退時特別掛け金の告知や、同事業主による脱退時特別掛金の支払をもって、第三者のためにする契約が成立したとみる余地はなく、本件Xらの裁定を求める「請求」を受益の意思表示と観念する余地もない。

●本件規約変更の効力をXらに対して主張することの可否
①本件規約変更は、代議員会において議決され、厚生労働大臣による認可を受けて適法にされたものであり、Y厚生年金基金規約は、その適用日である平成26年2月18日から適用されるものと認められる。
Yの財政状況や2%の掛金の引き上げにも耐えられないような設立事務所の経営状況などに鑑みるとYの本件規約変更に際しての対応はやむを得ないものであり、信義則違反と評価できるような違法性があるとはいえない
③本件Xらは、平成23年4月15日頃には、選択一時金の請求をすることが可能であったため、その意味では選択一時金を請求する機会が全くなかったわけではない。
本件規約変更は特例解散に伴うものであり、財政状況が悪化している基金において旧厚年法改正法の施行に伴う特例解散を行うという極めて特殊な状況の下では、関係者に相応の負担が生じることを回避することは困難といわざるを得ない。
元加入員に対する手続保障がなければ規約変更の効力が否定されるわけではない

本件規約変更の効力を本件Xらに主張することが信義則違反にんるということはできない


本件Xらの請求を棄却。 
 
<解説>
東京高裁H21.3.25:は、通常の基金において規約変更により具体的に発生している年金受給者の給付額の切下げをした事案であるところ、
本件は、代行割れとなって特例解散をする基金において未発生の選択一時金の支給の停止をした事案
⇒本判決は、両者は事案を全く異にするとし、前掲東京高裁判決が判示した要件を用いることはできないとしている。 

判例時報2377

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2018年10月16日 (火)

県議会議長の県議会議員に対する発言の取消命令と司法審査

最高裁H30.4.26      
 
<事案>
愛知県の県議会議員であるXが、県議会議長から、地自法129条1項に基づき、県議会の一般質問における県知事に対する発言の一部を取り消すよう命じられたXは、前記発言は社会通念上相当な内容のものであるなどとして、Y(県)を相手に、本件命令の取消しを求めた
 
<規定>
地自法 第104条〔議長の権限〕
普通地方公共団体の議会の議長は、議場の秩序を保持し、議事を整理し、議会の事務を統理し、議会を代表する。

地自法 第129条〔議場の秩序保持〕 
普通地方公共団体の議会の会議中この法律又は会議規則に違反しその他議場の秩序を乱す議員があるときは、議長は、これを制止し、又は発言を取り消させ、その命令に従わないときは、その日の会議が終るまで発言を禁止し、又は議場の外に退去させることができる。

地自法 第120条〔会議規則〕
普通地方公共団体の議会は、会議規則を設けなければならない。

地自法 第123条〔会議録〕
議長は、事務局長又は書記長(書記長を置かない町村においては書記)に書面又は電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下この条及び第二百三十四条第五項において同じ。)により会議録を作成させ、並びに会議の次第及び出席議員の氏名を記載させ、又は記録させなければならない。
 
<判断>
最高裁昭和35.10.19を引用した上で、
地方議会の運営に関する事項については、議会の議事機関としての自主的かつ円滑な運営を確保すべく、その性質上、議会の自律的な権能が尊重されるべきものであり、
法は、議員の議事における発言に関しては、議長に当該発言の取消しを命ずるなどの権限を認め、もって議会が当該発言をめぐる議場における秩序の維持等に関する係争を自主的、自律的に解決することを前提としている。

議事を速記法によって速記し、配布用会議録を関係者等に配布する旨を定めた本件規則の規定は、配布用会議録には県議会議長が取消しを命じた発言を掲載しない旨の規定と併せて、法123条1項が定める議長による会議録の調整等について具体的な規定を定めたものにとどまると解するのが相当であり、
県議会議員に対して議事における発言が配布用会議録に記載される権利利益を付与したものということはできない。 

県議会議長により取消しを命じられた発言が配布用会議録に掲載されないことをもって、当該発言の取消命令の適否が一般市民法秩序と直接の関係を有するものと認めることはできず
その適否は県議会における内部的な問題としてその自主的、自律的な解決に委ねられるべきものというべき
 
<解説>
●裁判所法3条1項の法律上の争訟と司法権の限界

裁判所法 第3条(裁判所の権限)
裁判所は、日本国憲法に特別の定のある場合を除いて一切の法律上の争訟を裁判し、その他法律において特に定める権限を有する。

憲法 第76条〔司法権、裁判所、特別裁判所の禁止、裁判官の独立〕 
すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。

判例・通説:
憲法76条1項の司法権の範囲=裁判所法3条1項の法律上の争訟
と解しており、
判例は、法律上の争訟につき、
当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する紛争であって、かつ、それが法令適用によって終局的に解決することができるもの」と定義。
but
国会ないし各議院の自律権に属する行為や団体の内部事項に関する行為など、
法律上の係争ではあるが、事柄の性質上裁判所の審査に適しないものは、司法審査の対象外であると解されている。
 
●地方議会の内部事項と司法審査の範囲 

判例は、昭和35年最判が、
地方議会の議員に対する出席停止の懲罰決議について、
裁判所法3条の一切の法律上の争訟とはあらゆる法律上の争訟という意味ではなく
自律的な法規範を持つ社会ないし団体にあっては、当該規範の実現を内部規律の問題として自治的措置に任せ、必ずしも裁判に待つのと適当としないものがあるとし、議員の権利行使の一時的制限にすぎない出席停止の懲罰はこれに該当するとして司法審査の対象外であるとした(除名処分のような議員の身分の喪失に関する重大な事項は、単なる内部規律の問題にとどまらないとした。)。
これに対し、
議員の議場外の個人的行為又は私的紛争についての言動に関する地方議会の懲罰決議等の適否については、司法審査の対象としている。(最高裁昭和28.11.20、最高裁H6.6.21)

判例は、
議員の議場外の個人的行為又は私的紛争についての言動に関する地方議会の懲罰決議等の適否については、一般市民法秩序と直接の関係を有するものとして司法審査の対象としている
②議員としての行為につき、除名処分のような議員たる身分の得喪に関する処分については司法審査の対象とする一方、
議員の権利行使の一時的制限にすぎない懲罰決議等の適否については、内部規律の問題として自治的措置に任せるのを適当とし、司法審査の対象外としている。

団体の内部事項に関する行為に対する司法審査についての判断について、
その自律性、自主性を支える憲法上の根拠に応じて個別具体的に判断しているものと理解することが可能であり、地方議会については自律権が根拠となるものと考えられる。
 
●本件命令の適否と司法審査 

憲法 第94条〔地方公共団体の権能〕
地方公共団体は、その財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能を有し、法律の範囲内で条例を制定することができる。

地方公共団体は、地方公共団体が処理する事務を実施すに際して条例を制定することができ(憲法94条)、これは実質的な意味においては、形式的意味における条例のみならず各種規則も含まれるところ、
この条例制定権は「法律の範囲内」に限られること(同条)から、
法120条によりその制定が義務付けられる普通地方公共団体の会議規則も、このような法の規定の枠内で制定し得るものと解するのが相当。

県議会議長が取消しを命じた発言を掲載しない旨を規定した本件規則123条は、議長に議場における秩序の維持等の権限を認めた方104条及び法129条1項の規定を前提として定められたものと解するのが立法者の意思や(地方自治)法との自治体規則との関係に照らして合理的。

本件命令をXに対する制約と解しても、
①県議会議長による発言の取消命令に関しては、法129条1項により、その対象は当該発言部分に限られ、命令に従わないときも、その日の会議が終わるまでの発言を禁止すること等が具体的に規律されており、翌日以降にわたることは許されないと解されている⇒取消命令による効果は一時的な制約にとどまる
②本件規則123条の定める県議会議長による取消命令の対象となった発言が配布用会議録に掲載されない事態は、法104条及び129条1項により議長に議場における秩序の維持等の権限を与え、もって議会が自主的、自律的に解決することにしたことに伴って生じるものであり、議場の公開を促進するものとして議会の外部と接点があるとしても、県議会議員が議事においてした発言の一部が配布用会議録の掲載されないことは、取消命令の対象となった発言部分の公開が制限されるという部分的な制約にすぎず、一般市民法秩序と直接の関係を有しない内部的な問題にとどまる
 
●標準的な会議規則の定めとの関係 

総務省、議会関係者及び学識関係者による検討の結果作成された標準的な会議規則(標準都道府県議会会議規則、標準市議会会議規則)も、本件規則と同様の規定を設けている。

判例時報2377

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2018年10月15日 (月)

内閣官房報償費の支出に関する行政文書をめぐる情報公開訴訟

最高裁H30.1.9    

<事案>
Xが、平成25年1月1日から同年12月31日までの期間(第二次安倍内閣、菅官房長官)における同支出に関する行政文書のうち、
①政策推進費受払簿、②支払決定書、③出納管理簿、④報償費支払明細書、⑤領収書、請求書及び受領書の各文書(「本件文書」)に記載された情報が行政機関の保有する情報の公開に関する法律(「情報公開法」)5条3号及び6号所定の不開示情報(国の安全等に関する情報、事務又は事業に関する情報)に当たるとしてされた不開示決定の取消し及び本件各文書についての開示決定の義務付けを求める事案。
 
<解説>
内閣官房報償費:
内閣官房の行う事務を円滑かつ効果的に遂行するために、当面の任務と状況に応じて機動的に使用することを目的とした経費として、毎年予算措置が講じられているものであり、その取扱いについて定めた基本方針等によれば、
内閣官房報償費の執行は、
政策推進費(施策の円滑かつ効果的な推進のため、内閣官房長官としての高度な政策的判断により、機動的に使用することが必要な経費)
調査情報対策費(施策の円滑かつ効果的な推進のため、その時々の状況に応じた必要な情報を得るために必要とされる経費)
活動関係費(政策推進、情報収集等の活動が円滑に行われ、所期の目的が達成されるよう、これを支援するために必要な経費)
の3つの目的類型ごとに、それぞれの目的に照らして行うものとされている。
 
<規定>
情報公開法 第5条(行政文書の開示義務)
行政機関の長は、開示請求があったときは、開示請求に係る行政文書に次の各号に掲げる情報(以下「不開示情報」という。)のいずれかが記録されている場合を除き、開示請求者に対し、当該行政文書を開示しなければならない

三 公にすることにより、国の安全が害されるおそれ、他国若しくは国際機関との信頼関係が損なわれるおそれ又は他国若しくは国際機関との交渉上不利益を被るおそれがあると行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある情報

六 国の機関、独立行政法人等、地方公共団体又は地方独立行政法人が行う事務又は事業に関する情報であって、公にすることにより、次に掲げるおそれその他当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの
イ 監査、検査、取締り、試験又は租税の賦課若しくは徴収に係る事務に関し、正確な事実の把握を困難にするおそれ又は違法若しくは不当な行為を容易にし、若しくはその発見を困難にするおそれ
ロ 契約、交渉又は争訟に係る事務に関し、国、独立行政法人等、地方公共団体又は地方独立行政法人の財産上の利益又は当事者としての地位を不当に害するおそれ
ハ 調査研究に係る事務に関し、その公正かつ能率的な遂行を不当に阻害するおそれ
ニ 人事管理に係る事務に関し、公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれ
ホ 独立行政法人等、地方公共団体が経営する企業又は地方独立行政法人に係る事業に関し、その企業経営上の正当な利益を害するおそれ
 
<判断>
①政策推進費受払簿、③出納管理簿及び④報償費支払明細書に記録された情報のうち、調査情報対策費及び活動関係費の各支払年月日、支払金額等を示す情報は、情報公開法5条3号又は6号所定の不開示情報に当たる

政策推進費の繰り入れの時期及び金額、一定期間における政策推進費又は内閣官房報償費全体の支払合計額等を示す情報は、前記各号所定の不開示情報に当たらない

①政策推進費受払簿の全部並びに、
③出納官吏簿及び
④報償費支払明細書
のうちそれぞれ調査情報対策費と活動関係費の各支払決定に係る記録部分を除いた部分についての不開示決定を取り消すとともに、
これらについての開示決定を命じた。
 
<解説>
本件では、情報公開法5条3号及び6号所定の各不開示事由の有無が問題
but
それについて説示した最高裁判例はない。 

内閣官房報償費の支出の対象となる事柄の性質や、これらに関する情報が開示された場合の支障等について一般的な説示をした上で、
当該文書または部分に記録された情報から内閣官房報償費の支払相手方や具体的使途が明らかになり、あるいはこれらを相当程度の確実さをもって特定することが可能になる場合があるかどうかという観点から、
情報公開法5条3号又は6号所定の不開示情報該当性について判断
but
どこまでの情報が明らかになれば支払相手方等を相当程度の確実さをもって特定することが可能になる場合があるといえるかという点で、(下級審での)それぞれの見解に相違。

本判決の判断は、あくまでも本件各事件の対象となった本件各文書の記載の形式や内容、不開示決定がされた当時における社会の状況等の諸事情を前提としたものこれらの事情に変化があれば、同じ内閣官房報償費の支出に関する行政文書であっても、異なる判断となることがあり得る

判例時報2377

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2018年10月 9日 (火)

農業委員会の会長を解任した総会決議の効力等が問題となった事案

千葉地裁H29.12.19      
 
<事案>
農業委員会において、Xに対し、農業委員会等に関する法律(平成27年法律第63号による改正前のもの)5条7項に基づき会長の職を解任する決議。

Xは、会長の職を解任されたことについて、同解任に係る総会決議は無効であると主張して、
農業委員会の会長の地位にあることの確認を求めるほか、
違法な選任決議により名誉を侵害されたとして国賠法に基づく損害賠償等を求めた。
 
<本案前の争点>
①法5条7項により農業委員会が行った会長解任決議の効力に係る紛争が、裁判所法3条1項所定の「法律上の争訟」として司法審査の対象になるか?
②会長解任の要件である法5条7項の「農業委員会は、その所掌事務を行うにつき会長を不適当と認めるとき」の解釈 
 
<判断>   
当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する紛争で、法令の適用によって終局的に解決できるものは、原則として司法審査に服する
純粋な内部問題の場合は、団体の自治を尊重して司法審査を控える場合がある。 

農業委員会の会長という団体内部の地位の問題として司法審査を控えるべきかが問題。
but
①農地法、土地改良法等による権限等を有する農業委員会の事務処理の結果は、農業者の権利義務に大きな影響を及ぼし(農地法3条等)、農業者以外の国民の権利にも影響を及ぼす場合がある(同法5条2項等)
その農業委員会の代表者である会長の地位が争われている

市民法秩序と直接的な関連を持たず内部の問題にとどまるものとはいえず、司法審査の対象になる法律上の争訟に当たる
 
●農業委員会の会長の解任に関し法5条7号は
「農業委員会は、その所掌事務を行うにつき会長を不適当と認めるときは、その決議によりこれを解任することができる」とのみ定め、不適当と認められるべき具体的な解任事由を規定していない⇒その法解釈が争われた。

農業委員会における所掌事務の処理に不適当と認められるかについては、農業委員会の合議体としての裁量的判断を尊重し、農業委員会による会長を解任する旨の判断は、それが社会通念上著しく妥当性を欠いており、農業委員会に委ねられた裁量権を逸脱又は濫用したと認められる場合に限り、違法と評価するのが相当。

①Xは、農業委員会の農業委員15名の3分の1以上に当たる11名の者から、会長不信任案を付議するための臨時総会の招集を書面で要求された⇒この請求に応じて臨時総会の招集をすべき義務。
②Xが、臨時総会の招集に応じなかったことは、法21条の2項の規定に違反し、かつ、会長として適格性を疑わせる行為。
③Xの対応は他の委員らとの間に軋轢を生じさせるものであったから、Xが会長であることは合議体である農業委員会における所掌事務の遂行に支障を生じさせ、それを困難とするもの。

Xを会長から解任する旨の判断には裁量権の逸脱又は濫用は認められない⇒解任が無効であるとはいえない

判例時報2375、2376

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2018年10月 8日 (月)

DV加害者とされる者の代理人弁護士からの戸籍の附票の交付申出に対する拒否についての取消請求(否定)

大阪高裁H30.1.26      
 
<事案>
住民基本台帳事務処理要領によれば、市町村長は、ドメスティック・バイオレンス(「DV」)等の加害者が、戸籍の附票の写しの交付等の制度を不当に利用して被害者の住所を探索することを防止するため、支援措置を講ずる。
この場合、加害者とされる者から被害者に係る戸籍の附票の写しの交付等の申出がされた場合にはこれを拒否するものとされている。 

本件申出がされるまでに、Bから、AをDVの加害者とする支援措置の実施を求める申出を受け、その必要性を確認した上、Bにつき支援措置を開始
⇒本件申出に対し、Bに係る戸籍の附票の写しを交付しないとする本件処分
⇒Xは、Y(橋本市)を相手に、本件処分は裁量権の逸脱・濫用の違法があるとしてその取消しを求める本件訴訟を提起。
 
<原審>
裁量権の範囲の逸脱し、又はこれを濫用した違法なもの⇒Xの請求を認容。
 
<判断>
支援措置の運用に関して国が定めた事務処理要領によれば、DVの加害者とされている者からの被害者に係る戸籍の附票の写しの交付申出については、原則として住基法20条3項各号に掲げる者に該当しないとして、同法に基づきこれを拒むとされている。

住民のプライバシー保護に配慮するという住基法の目的に合致するとともに、国及び地方公共団体は、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律に基づきDV被害者の適切な保護を図る責務を果たすという観点からも合理性を有する
住基法の解釈を誤ったものとはいえない

市町村長は、DV被害者等の保護のための支援措置を講ずることとした場合には、被害者に係る戸籍の附票の写しの交付については、事務処理要領に従って運用し、裁量権を行使すべき。

事務処理要領によれば、
戸籍の附票の写しの交付については、加害者が判明しており、加害者から申出がなされた場合には、住基法20条3項各号に掲げる者に該当しないとして申出を拒否するとされ、
利用目的の厳格な審査の結果、特別の必要があると認められる場合にも、加害者に得交付しないで目的を達成することが望ましいとされている。

戸籍の附票の写しが交付されることで、被害者の住所等の情報が、加害者に知られるという事態を可及的に抑止しようとするものであり、合理性のあるもの。

加害者の代理人に被害者に係る戸籍の附票の写しを交付した場合、代理人を通じて被害者の住所が加害者に知られるおそれがあることは否定できない

加害者の代理人からの申出も、原則として加害者本人からの申出に準じた処理がされるのもやむをえない。

本件において、橋本市長は、本件申出がされるまでに、Bから、Aを加害者とし、B自信をDV被害者とする支援措置の実施を求める申出を受けその必要性について第三者機関(橋本警察署)から意見を聴取して確認した上、Bにつき支援措置を開始した。
本件申出は、加害者としてされているAの代理人(X)からの申出ではあるが、本件処分は、A本人からの申出があった場合に準じて、事務処理要領に定めるところに従い、Aが住基法20条3項各号に掲げる者に該当せず、かつ本件申出が相当なものとは認められないとして、これを拒否

裁量権の逸脱・濫用の違法があるとはいえない
 
<解説>
全国の市長村長は、支援措置の運用に関し、事務処理要領の定めに従って行っており、これと異なる取扱いをすることは基本的に想定されていない。 
支援措置の目的は、DVの加害者等が、戸籍の附票の写しの交付等の制度を不当に利用して被害者の住所を探索することを防止することにあり、被害者の生命・身体を保護するためには被害者の住所情報が加害者側に知られるという事態を可能な限り抑止しなければならない

本判決:
特に高い倫理性が要求される弁護士が代理人となって申出をした場合でも、加害者本人から申出があった場合に準じて事務処理要領の定めに従って裁量権を行使すべきであって、被害者に係る戸籍の附票の写しを交付しないとした本件処分には裁量権の逸脱・濫用の違法がないと判断。

判例時報2375、2376

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2018年10月 7日 (日)

地方自治法92条の2に該当する旨の決定⇒補欠選挙⇒決定取消判決but議員の地位は回復せず

最高裁H29.12.19       
 
<事案>
村議会は、地方自治法127条1項に基づき、Xが地方自治法92条の2に該当する旨の決定。

Xが、本件決定の取消しを求める訴えを提起した上、これを本案として、行訴法25条2項に基づき、本件決定の効力の停止を求めた。 
 
<事実>
村議会は、平成28年7月14日、本件決定をし、これによりXは議員の職を失ったものとされた。
Xは、同年11月16日、本件訴えを提起。 
Xが村議会の議員の職を失ったことに伴う補欠選挙について、平成29年3月21日、その選挙期日を同月26日とすることを告示。

Xは、これに先立つ同月3日、本件訴えを本案として、本件決定の効力を本案の判決の確定まで停止することを求める本件申立て
⇒札幌地裁は、本件補欠選挙の選挙期日の3日前である同月23日、本件決定の効力を本案の第1審判決の言渡し後30日を経過するまで停止する旨の決定(原々決定)。
but
本件補欠選挙は、同月26日にその投票及び開票が行われ、X以外の者が当選。
本件補欠選挙及び前記当選の効力に関し、公選法202条1項又は206条1項所定の各期間内に異議の申出はされなかった。
 
<規定>
地方自治法 第127条〔失職、資格決定〕
普通地方公共団体の議会の議員が被選挙権を有しない者であるとき又は第九十二条の二(第二百八十七条の二第七項において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)の規定に該当するときは、その職を失う。その被選挙権の有無又は第九十二条の二の規定に該当するかどうかは、議員が公職選挙法第十一条、第十一条の二若しくは第二百五十二条又は政治資金規正法(昭和二十三年法律第百九十四号)第二十八条の規定に該当するため被選挙権を有しない場合を除くほか、議会がこれを決定する。この場合においては、出席議員の三分の二以上の多数によりこれを決定しなければならない。

地方自治法 第92条の2〔関係諸企業への関与禁止〕
普通地方公共団体の議会の議員は、当該普通地方公共団体に対し請負をする者及びその支配人又は主として同一の行為をする法人の無限責任社員、取締役、執行役若しくは監査役若しくはこれらに準ずべき者、支配人及び清算人たることができない。
 
<Yの主張>
原々決定に対し、Y(村)が抗告:
本件補欠選挙について所定の期間内に公選法に基づく異議の申出がされなかった⇒Xの議員の地位は回復することができない状態にあり、本件訴えは訴えの利益を欠き却下されるべきであり、本案について理由がない
 
<原決定> :
Xは原々決定により本件補欠選挙の投開票がされる前に村議会議員の地位を暫定的に回復⇒同選挙について公選法に基づく異議申出期間が経過したからといって、その地位を喪失することはないとして、Yの抗告を棄却。
 
<判断>
公選法に定める選挙又は当選の効力は、同法所定の選挙争訟等の結果無効となる場合のほか、原則として当然無効となるものではない。
本件補欠選挙について所定の期間内に異議の申出がなされなかった⇒同選挙及びその当選の効力はもや争い得ない。

Xは、本件決定を取り消す旨の判決を得ることによって、本件決定時から議員の地位を回復することはできない

Xは、本件決定を取り消す旨の判決を得ることによって、本件決定時から議員の地位を回復できなかった時までの議員報酬を請求し得る
⇒本件訴えについては訴えの利益がなお認められる。
but
現時点においてもはや議員の地位を回復できない
本件決定の効力の停止を求める利益はない
⇒原決定を破棄し、原々決定を取り消した上、Xの本件申立てを却下。
 
<解説> 
●地方公共団体の議会の議員や長を失職させる行為(資格決定、除名処分、不信任議決等)(「失職処分」)が選出され、その選挙や当選の効力についての争訟手段が所定の期間内にとられなかった場合に、失職処分を受けた者はなおその地位を回復することができるのか? 

最高裁昭和31.10.23:
村長が議会の不信任議決により失職し、新村長の選挙が行われて他の者が当選した事案:
①公選法に定める選挙又は当選の効力は、同法に定める争訟の結果無効となる場合のほか、原則として当然無効となるものではない。
②新村長の選挙によりその就任が確定し、旧村長はその地位に復する余地はない
⇒旧村長が提起した不信任議決の無効確認を求める訴えは法律上の利益を失う。

最高裁H11.1.11:
町議会議員が議会から除名処分を受けて失職し、その4日後に繰上補充が行われた後に、旧議員が除名処分の取消訴訟を提起するとともに効力停止の申立てをした
「除名処分の効力停止決定がされることにより同処分の効力は将来に向かって存在しない状態に置かれ、議員としての地位が回復されることになり、これに伴って、除名による欠員が生じたことに基づく繰上補充による当選人の定めは、その根拠を失うことになる
町選挙管理委員会は、効力停止決定に拘束され、繰上補充による当選人の定めを撤回し、その当選を将来に向かって無効とすべき義務を負う。」
旨説示した原審の判断は、正当として是認できる。

選挙争訟等の結果によらず当選の効力を否定することを認めたもの。
 
●本件の事実経過に照らせば、本件補欠選挙について、原々決定により欠員が生じていないこととなったにもかかわらず行われた無効なものであることが異議の申出の事由となる。

裁判所の効力停止決定により選挙の実施要件が失われたにもかかわらず選挙が行われたという根本的な瑕疵がある場合には、選挙争訟等において選挙の無効事由として主張しうるとしたもの。

救済手段の確保の必要性という点で、本件は平成11年最決の事案とは状況を異にすることになり、このことも考慮して、選挙の法的安定性を重視する昭和31年最判に則った判断をした。

判例時報2375、2376

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