破産

2017年7月26日 (水)

共同企業体の破産管財人に対する財団債権としての不当利得返還請求権が認められた事例

福岡高裁那覇支部H28.7.7      
 
<事案>
2社から構成される建物の建築工事の共同企業体が工事を施工し、発注者から請負代金を同企業体名義で振込受領する等した後、同企業体の代表者であった会社につき破産手続開始
請負代金が破産裁判所を介して、破産管財人に引き渡され、財団組入⇒同企業体の組合員である会社が破産管財人に対して取戻権、財団債権を行使。 

A㈱とB㈱は、平成25年5月、C市の発注に係る幼稚園新築工事の請負につきX共同企業体を結成。
Aは、平成25年7月、Xを代表し、Cとの間で、請負代金2億356万9537円で前記新築工事、同年10月、請負代金341万2500円で付随する防音工事の請負契約を締結。

Aの代表者Dは、平成26年4月9日、Aの破産を考え、E司法書士に破産申立書の作成を依頼するとともに、請負代金がF銀行のX名義の預金口座に入金されると相殺されるおそれがあり、G信用金庫のX名義の預金口座に入金先を変更し、Cは、GのX口座に請負代金残金7447万4037円を入金したほか、Dは、Xの財産を保全するため、Eに前記請負代金を預けることとし、同日、Eの預金口座に振込入金をした。(E口座①.当時、別事件の預り金1826万円余も預けられていた)。

Eは、その後、E口座①からXの債権者に対する支払等の入出金をしたが、同年5月7日、他の事件の預り金と区別して保管するため、本来は7440万5997円となるべきところ、誤ってXの請負代金残額として7408万281円をH銀行のE名義の預金口座(E口座②.当時、Aからの預り金31万円余も預けられていた)に振替送金。

Aは、Eの作成に係る申立書等の書類によって、同年10月8日、N地裁O支部に破産手続開始の申立て。

X(清算人はB)は、
主位的に、金銭6832万9457円(請負代金)の所有権を主張し、破産法62条の取戻権の行使として、同金銭の返還を請求
予備的に、債権としての請負代金につきEとの間の委任契約、あるいは信託契約に基づく受取物引渡義務を主張し、取戻権の行使としての返還
財団債権としての不当利得の返還を請求する訴訟をO支部に提起。
 
<規定>
破産法 第148条(財団債権となる請求権) 
次に掲げる請求権は、財団債権とする。
五 事務管理又は不当利得により破産手続開始後に破産財団に対して生じた請求権
 
<争点>
①請負代金についてのXの所有権の有無
②Xの取戻権の有無
③委任契約の成否
④信託契約の成否
⑤財団債権としての不当利得請求権の有無
等 
 
<判断>
●主位的請求は理由なし。

●予備的請求について:
Xの代表者Aの代表取締役Dは、Eとの間で、Xの請負代金の保全を目的とし、これを保管し管理する旨合意し、請負代金を預託

金銭の所有権はEに一旦帰属するものの、Eは、委任の趣旨に従って権利し、委任終了時に残金の返還義務を負い、Xは、委任契約上の預託金返還請求権を有するに至った。(Xの信託契約の主張については、同契約の成立は認め難いとした)。

①Eが裁判所に請負代金を含む7008万円余を予納したのは、とりあえず散逸防止のため予納させたと推認でき、Xに属すべき金銭であることが判明すれば、その時点で何らかの処理をするもの
②予納自体は対価性を有する行為でなく無償行為に属するものであり、請負代金がXが帰属すべき金銭である以上、裁判所が取得すべき法律上の原因は存しないし、Xに帰属すること判明すれば速やかに本来の権利者たるXに返還すべき義務を負う。
③裁判所は、前記7008万円余をYに支給し、Yが財団組入したが、支給決定自体は単に裁判所の保管金を破産管財人に交付するための内部手続にすぎず、何らかの法的原因や対価関係を伴うものではなく、破産管財人がこれを取得する法律上の原因たりえないし、損失と利得との間の直接の因果関係を否定するものでもなく、財団組入は破産手続開始決定時における法定財団と現有財団との間に不一致がある場合に、破産管財人の管理下になかった財産を回収し、現有財団に帰属させる行為にすぎず、第三者に帰属すべき財産を破産者ないし法定財団に帰属させる法律上の原因にならない

Yが請負代金を財団組入したことは、単に第三者であるXに帰属する財産を事実上破産財団としてYの管理下に置いたものXは、Yに対してこの時点で直接に不当利得返還請求権を取得し、Yは財団組入時に悪意であったとして、破産法148条1項5号所定の財団債権を肯定
 
<解説>
財団債権としての不当利得返還請求の有無について、
控訴審判決は、
請負代金が共同企業体の固有財産であることを前提とし、共同企業体の預金口座、司法書士の二口の預金口座、破産裁判所の保管金口座、破産管財人の預金口座のそれぞれの振込を経て、破産管財人が財団組入した場合に、予納、支給決定、財団組入のそれぞれの法的な性質を説示しながら、破産管財人が請負代金を財団組入したことは、法律上の原因がなく、不当利得の要件を満たすとし、
共同企業体が破産管財人に対して財団組入の時点で直接に不当利得返還請求権を取得したこと、
本件の破産管財人が悪意であるとしたこと、
破産法148条1項5号所定の財団債権に当たることを判示。

判例時報2231

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2016年9月 3日 (土)

破産管財人に対する優先的破産債権存在確認請求と破産法100条1項の権利行使該当性(肯定)

東京地裁H27.11.12      
 
<事案>
Xは、Aの親族が代表取締役の会社。
Aは、B株式会社の代表取締役。
Aは、平成21年4月21日、B社が破産手続開始決定を受けたことに伴い、債権者から破産手続開始申立てがされ、同年6月4日、破産手続開始決定を受けた。
Yは、Aの破産管財人に選任。

その後、Xは破産者Aに代わり同人が国に対して負担する租税債務を第三者弁済
⇒Xは、Aに対して求償権を取得するとともに、国がAに対して有する租税債権について、弁済による代位が生じたとして、同債権(破産法148条1項3号に当たる財団債権に係る部分を除く)について、破産管財人Yに対して、合計12億円余の優先的破産債権が存在することの確認を求めた。

代位取得した租税債権のうち、破産手続開始前の原因に基づいて生じた租税等の債権であって、破産手続開始当時、まだ納期限の到来していないもの又は納期限から1年を経過していないものに当たらない債権である合計12億円余は優先的破産債権であるというのがXの主張。
 
<規定>
破産法 第100条(破産債権の行使)
破産債権は、この法律に特別の定めがある場合を除き、破産手続によらなければ、行使することができない
 
<争点>
本案前の主張について
①破産法100条1項の権利行使該当性
②確認の利益の有無

本案の主張について、優先的破産債権の有無 
 
<判断>
破産法は、債権者その他関係人の利害、債務者・債権者間の権利関係を適切に調整し、債務者の財産などの適正・公平な清算を図るとともに、債務者について経済生活の再生の機会の確保を図ることを目的とするものであり(破産法1条)、破産法100条1項は、基準時である破産手続開始時の債務者の総資産と総負債を破産管財人により清算し、債務者の財産などの適正・公平な清算を図るという破産制度の目的を実現するため、破産債権者による個別的権利行使を抑止し、破産財団からの配当に権利の実現を委ねるべく、破産手続害での権利行使を禁止

破産債権の行使は、法律に特別な定めがある場合を除き、当該債権の満足を求めるすべての法律上及び事実上の行為は破産手続によらずにすることはできず、債務名義に基づく強制執行や保全執行のみならず、給付訴訟や積極的確認訴訟も破産債権の行使として許されない

本件確認の訴えは、破産手続によらなければ行使することができない破産債権の行使に当たる⇒破産法100条1項に反する不適法な訴え⇒却下。
 
<解説>
学説(通説):

破産手続の目的を実現するためには、破産債権者による個別的権利行使を抑止し、破産財団を基礎とした破産配当にその権利を委ねることが求められるところ、破産法100条1項はその趣旨を明らかにしたもの。積極的確認訴訟を提起することも破産債権の行使とみなされるので、受訴裁判所は、訴えを不適法却下すべき(伊藤眞)。

破産手続は集団的な財産清算のための手続であるから、破産債権は集団的に行使しなければならないという拘束を受けるところ、破産法100条1項は、こうした破産手続の本質的要請に基づいて個別的な権利行使を禁ずるもの(山本克己)。
 
本判決は、破産法100条1項の趣旨につき通説的な理解に依拠するもの。

Xの主張を排斥する理由付け

①破産手続における破産債権の確定に当たっては、他の債権者にとって別の債権者の破産債権の存否や額、種別が自らの配当の有無及び程度に大きく影響される⇒破産債権者には債権者間に適切な利害調整をさせるべく他の破産債権者の届出債権についても異議申立権
破産手続外で破産管財人のみを被告として破産債権の存在確認の訴えを提起し、既判力をもってその存在が確定されることは、他の債権者にかかる異議申立権を行使し、破産管財人の意向にかかわらず破産債権の存在を争うことができる機会を失わせ、債務者の財産等の適正かつ公平な清算を図る上で不可欠な債権者間の適切な利害調整機能が阻害される⇒法100条1項で禁止されている権利行使

②破産手続外で権利行使を禁止する理由は、必ずしも破産法が簡易、迅速な債権確定手続を設けているからとはいえない。

③本件確認の訴えは、YがAについて債権届出期間及び債権調査期間を定めるように対応せず、かかる状況が破産手続開始決定から長期間にわたり継続⇒Xが確実に消滅時効を中断する上で必要である旨の主張に対し、
裁判所は、破産財団をもって破産手続の費用を支弁するのに不足するおそれがあると認めるときは、破産手続開始の決定と同時に破産債権の届出をすべき期間を定めないこともでき(破産法31条1項、2項)、その場合には、破産債権の届出をすること自体は可能であり、その届出をしたときは消滅時効中断の効力を生じると解される⇒本件破産手続との関係において、Xが本件確認の訴えを提起することで消滅時効を中断する必要は乏しい

判例時報2298

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2016年7月15日 (金)

破産手続開始の申立代理人の財産散逸防止義務違反(否定)

青森地裁H27.1.23      

<事案>
X(破産管財人)が、 Y(申立代理人)において本件防止措置を講じなかったことがBについての破産手続開始の申立代理人が負ういわゆる財産散逸防止義務に違反する旨主張⇒Yに対し、不法行為に基づく損害賠償を請求。
 
<判断>
いわゆる自己破産の申立てを受任した弁護士は、破産制度の趣旨に照らし、債務者の財産が破産管財人に引き継がれるまでの間、その散逸を防止するための措置を講ずる法的義務(財産散逸防止義務)を負い、この義務に違反して破産財団を構成すべき財産を減少・消失させた場合には、不法行為を構成。
⇒破産管財人に対し、損害賠償責任を負うことがある。

破産財団が最終的には破産者の債権者に対する配当原資となるべきもの⇒自己破産の申立てを受任した弁護士の行為が財産散逸防止義務に違反するものであるか否かの判断に当たっては、当該行為が前記債権者に不利益を及ぼすものであるか否かを個別具体的な事案に即して検討する必要がある。

本件については、
①Bに対する破産債権がいずれもAに対する債権を主たる債権とする保証債務履行請求権であること等⇒Bに係る破産手続は、いわばAに係る再生手続きを中核とする一連の倒産事件の一部と評し得るものであり、このような事案の社会的実態からすれば、Bの債権者の利益は、当該債権者が前記のような一連の倒産事件を通じて得るべき利益(本件総利益)を通じて実現されるもの。
Yにおいて本件防止措置を講じなかったことがその財産散逸防止義務に違反するか否かは、当該行為によって本件総利益にどのような影響を及ぶことになるかとう観点から判断すべき。

企業再生を中核とする一連の倒産事件について、当該企業に係る再生事件の申立代理人とその経営者に係る破産事件の申立代理人を兼ねる弁護士の活動は、当該弁護士の専門家としての合理的な裁量に委ねられているものと解するのが相当。

本件防止措置を講じない旨のYの判断が前記のような専門家としての合理的な裁量に照らして不合理なものといえないのであれば、Yが本件防止措置を講じなかったことをもって財産散逸防止義務に違反するものということはできない

①本件労使交渉の経緯等の具体的な事実関係に照らせば、Yが本件防止措置を講ずると、Aの労働組合等の強い反発を招き、本件労使交渉の妥結が遅延し、労使合意に基づく人員削減の実施が遅れ、あるいは労使間で合意に至らないまま人員削減を実施しなければならなくなることが合理的に予見できたものというべき。
余剰人員に係る人件費の流出又はAの労働組合等の協力が得られないことによる売上高の減少のため、Aの再生手続が頓挫して破産手続に移行してしまう公算が高いとのYの判断が不合理とはいえない

②Aにおいて再生手続を通じてその経営を立て直すことにより相当の規模の配当原資の確保を見込むことが可能であったこと等
Aの再生手続が頓挫して破産手続に移行した場合の本件総利益は、再生手続によってAが再生した場合のそれと比べて大幅に減少するとのYの判断も不合理とは言えない

本件防止措置を講ずることを断念したYの判断が専門家としての合理的な裁量に照らして不合理なものということはできず、Yが本件防止措置を講じなかったことをもって財産散逸防止義務に違反するものということはできない
 
<解説>
近時、破産手続開始申立てを受任した弁護士の財産散逸防止義務違反を認めた裁判例が複数ある。 
本判決も、自己破産の申立を受任した弁護士が財産散逸防止義務を負うものであることを肯定。
他方、本件の事案は、破産債権がいずれも破産者を代表取締役とする会社に対する債権を主たる債権とする保証債務履行請求権である点で特殊。

Yの財産散逸防止義務違反の有無を、Yの行為によって本件総利益にどのような影響を及ぶことになるかという観点から判断すべき旨を判示

判例時報2291

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2016年1月24日 (日)

集合債権譲渡担保契約が破産法162条1項1号の否認の対象にならないとされた事例等

東京地裁H27.4.28   

1.集合債権譲渡担保契約が破産法162条1項1号の否認の対象にならないとされた事例
2.集合債権譲渡担保契約締結後に発生した将来債権に付された債権譲渡禁止特約には民法466条2項但書は適用されず、譲渡禁止特約に反してなされた債権譲渡について譲渡人の破産管財人には無効を主張する独自の利益はないとされた事例
 
<事案>
Aは訴外BとCから継続的に注文を受けて建物の内装工事を行い、その都度、B等に対してに対して請負代金債権を取得していたが、AとB等との協議により当該債権には債権譲渡禁止特約

AはX社から建材等を継続的に購入していたところ、XとAとの間で、XがAに対して現在及び将来取得する一切の債権を担保するために、AがB等に対して現在及び今後5年間に取得する売掛金その他一切の債権をXに譲渡する旨の集合債権譲渡担保契約(本件契約)が締結され、債権譲渡登記がなされた。

本件契約には、「債務者(A)は、債権者(X)が第三債務者(BとC)宛に通知するまでの間、第三債務者よりう譲渡債権について弁済を受領することができる」が、譲渡人Aが支払停止などの危機的状況に陥った時点で譲受人Xは「登記事項証明書を第三債務者宛てに交付して通知することにより第三債務者から当該譲渡債権を取り立てることができる」旨の契約条項(取立権限付与合意)

その後、A振出の約束手形が不渡りとなり、XはAのB等に対する請負代金債権等についてXが譲渡を受けた旨をB等に通知するとともに、登記事項証明書をB等に交付。

B等は真の債権者を確知できないことを供託原因として請負代金等について供託。
 
Aは破産手続開始決定を受け、YがAの破産管財人に選任された。
 
Xは本件供託金還付請求権を有することの確認を求めたが(甲事件)、これに対してYも本件供託金還付請求権を有することの確認を求めた(乙事件)
 
<争点>
①譲渡禁止特約に違反した債権譲渡について譲渡人の破産管財人が無効を主張できるか?
②集合債権譲渡担保契約は破産法162条1項1号による否認の対象となるか? 
 
<判断>
破産管財人による無効の主張を否定。
否認権の行使も認められない。
⇒Xの請求を認容し、Yの請求を棄却。 
 
<解説> 
●集合債権譲渡担保
集合債権譲渡担保:
既発生、未発生の多数債権の債権譲渡の法形式を用いて包括的に担保化する非典型担保。
①本件契約のように債権譲渡それ自体の形式を利用する本契約型のほか
②譲渡人の支払停止など一定事由の発生を停止条件として債権を譲渡させる停止条件型
③譲受人に債権譲渡の予約完結権を与える予約型
がある。 

集合債権譲渡担保権について第三者対抗要件を具備するには、
民法467条が定める債務者に対する通知もしくは債務者からの承諾による方法と
動産債権譲渡特例法4条1項に基づき債権譲渡登記をする方法がある。

②の場合でも、債権譲渡を債務者に対抗するためには登記事項証明書を債務者に交付して通知することが必要となる。

集合債権譲渡担保は、譲受人が譲渡人に対して有する被担保債権を回収するために設定されるために設定される担保⇒被担保債権の債務者である譲渡人が任意弁済をする限りにおいて譲受人が譲渡債権の取立てをする必要はない。⇒債権の移転を受けた譲受人から譲渡人に譲渡債権の取立権限が付与される。

本契約型の集合債権譲渡担保において民法467条により譲渡人から債務者に対して「取立権限付与合意」が記載された債権譲渡通知がなされた事案を対象として最高裁H13.11.22:
債権譲渡契約によって譲渡債権の帰属は確定的に譲受人に移転しており、譲受人に帰属する譲渡債権について譲受人から取立通知がなされるまで譲渡人に取立権限が付与されるにすぎないとして、「取立権限付与合意」が記載された債権譲渡通知でも第三者対抗要件としての効力を有する。

①債権の帰属②取立権限の所在を分けて考えている。
 
●集合債権譲渡担保と否認

破産法 第164条(権利変動の対抗要件の否認
支払の停止等があった後権利の設定、移転又は変更をもって第三者に対抗するために必要な行為(仮登記又は仮登録を含む。)をした場合において、その行為が権利の設定、移転又は変更があった日から十五日を経過した後支払の停止等のあったことを知ってしたものであるときは、破産手続開始後、破産財団のためにこれを否認することができる。ただし、当該仮登記又は仮登録以外の仮登記又は仮登録があった後にこれらに基づいて本登記又は本登録をした場合は、この限りでない。

破産法 第162条(特定の債権者に対する担保の供与等の否認
次に掲げる行為(既存の債務についてされた担保の供与又は債務の消滅に関する行為に限る。)は、破産手続開始後、破産財団のために否認することができる。
一 破産者が支払不能になった後又は破産手続開始の申立てがあった後にした行為。ただし、債権者が、その行為の当時、次のイ又はロに掲げる区分に応じ、それぞれ当該イ又はロに定める事実を知っていた場合に限る。
イ 当該行為が支払不能になった後にされたものである場合 支払不能であったこと又は支払の停止があったこと。
ロ 当該行為が破産手続開始の申立てがあった後にされたものである場合 破産手続開始の申立てがあったこと。

従来から主として、停止条件型や予約型において譲渡人からの授権に基づき譲受人から債務者になされた債権譲渡通知が対抗要件否認(破産法164条1項)の対象になるかが問題。

対抗要件否認を認めた裁判例。

本件では対抗要件否認ではなく、本件契約が偏頗行為否認の対象となるかが問題
破産法162条1項1号によると、破産者が支払不能になった後に既存の債務についてなされた担保供与行為で、債権者がその行為の当時、債務者が支払不能であったこと又は支払停止があったことを知っていた場合には、当該行為は否認の対象となる。
取立権限の移転が実質的な債権譲渡であると解すれば、本件契約は偏頗否認の対象となり得る

最高裁H16.7.16:
停止条件型の集合債権譲渡担保について、実質的には債務者(譲渡人)の支払停止等の危機時期が到来した後で行われた債権譲渡と同視すべき⇒破産法旧72条2号が定める危機否認の対象になる。

東京地裁H22.11.12:
予約型の事案において破産法162条1号の否認を認めている

本判決:
停止条件型についての最高裁H16.7.16とは事案が異なる
「契約締結時に確定的に債権を移転させる債権譲渡契約」であり、取立権限付与合意は「一定の譲渡担保権実行事由が発生するまでは、Aに譲渡債権についての受領権限を認めるというXとAとの間の内部的合意にすぎない」として、危機時機到来時における譲渡人から譲受人への取立権限の移転を実質的な債権譲渡とみる見解を否定し、本契約は破産法162条1項1号が定める否認の対象にならないとした。

債権の帰属と取立権限の所在を分けて捉える最高裁H13.11.22の基本的な考えを否認の問題にも拡張したもの。
 
●債権譲渡禁止特約に反した債権譲渡 
民法 第466条(債権の譲渡性) 
債権は、譲り渡すことができる。ただし、その性質がこれを許さないときは、この限りでない。
2 前項の規定は、当事者が反対の意思を表示した場合には、適用しない。ただし、その意思表示は、善意の第三者に対抗することができない。

債権者と債務者間の合意である譲渡禁止特約により債権の譲渡性(民法466条1項)は制限され(同条2項本文)、特約に反して債権者が債権を譲渡した場合、当該債権譲渡は無効(物権的効力説、最高裁H9.6.5)
2項但書において譲渡禁止特約は善意の譲渡人には対抗できない
判例により善意重過失者は悪意者と同視

本件では、
①民法466条2項但書が適用されるのか
②譲渡人の破産管財人が債権譲渡の無効を主張できるのか
が問題。

集合債権譲渡担保の対象に含まれる将来債権については、債権譲渡契約が締結された後に債権が発生して譲渡禁止特約が付される
債権譲渡担保契約が締結された時点において債権譲渡禁止特約が締結された時点において債権譲渡禁止特約が存在していない

本判決:
民法466条2項但書の「善意」とは現に債権譲渡禁止特約があるという事実を知らないことを意味する概念であり、債権譲渡禁止特約よりも前に債権譲渡契約が締結された場合には、譲渡時における債権譲渡禁止特約の有無についての「善意」の概念を入れる余地がない⇒民法466条2項但書の適用を否定

譲渡禁止特約に反してなされた債権譲渡の無効を主張できる者の範囲:
最高裁H21.3.27:
譲渡禁止特約は債務者の利益を保護するために付されるものであり、特約に反して債権を譲渡した債権者(譲渡人)は特約の存在を理由に譲渡の無効を主張する独自の利益を有しておらず、債務者(第三債務者)に譲渡の無効を主張する意思があることが明らかであるなどの特段の事情のない限り、譲渡人が無効を主張することは許されない

本判決:
最高裁H21.3.27を基本的に踏襲し、破産管財人の法的地位を差押債権者と同視し、譲渡人に対して債権を有する一般債権者は譲渡禁止債権を差し押さえても譲渡禁止特約の無効を主張する独自の利益を有していない
差押債権者と同視し得る破産管財人も債権譲渡の無効を主張できない

判例時報2275

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2016年1月22日 (金)

破産会社のメインバンクの弁済について、故意否認が認められた事例

高松高裁H26.5.23    

破産会社のメインバンクの弁済について、故意否認が認められた事例 
 
<事案>
平成21年8月12日破産手続開始決定を受けた破産会社のメインバンクであるYが、破産会社が支払不能であったことを知りながら、平成21年7月23日、同社から8億7000万円の弁済を受けた
⇒破産管財人Xが、破産法162条1項1号イに基づいて本件弁済を否認し、Yに対して、弁済金の返還を求めた。 
 
<規定>
破産法 第162条(特定の債権者に対する担保の供与等の否認)
次に掲げる行為(既存の債務についてされた担保の供与又は債務の消滅に関する行為に限る。)は、破産手続開始後、破産財団のために否認することができる。
一 破産者が支払不能になった後又は破産手続開始の申立てがあった後にした行為。ただし、債権者が、その行為の当時、次のイ又はロに掲げる区分に応じ、それぞれ当該イ又はロに定める事実を知っていた場合に限る。
イ 当該行為が支払不能になった後にされたものである場合 支払不能であったこと又は支払の停止があったこと。
 
<原審>
平成21年7月23日の時点では、同年7月15日の2億円の融資により、同日弁済期にあたった債務については支払が行われており、同日23日の本件弁済までに、弁済期にある債務の支払がなされていなかったとの事実は、なんら具体的に認められない⇒7月23日の時点では支払不能ということはできない。
⇒Xの請求を棄却。
 
<判断>
①破産会社においては、平成21年7月15日に弁済期が到来した債務については支払はしているものの、これは、本来は受けられなかったはずの融資を取り付けて資金調達したことによるものにすぎず、破産会社において無理算段をしたというほかない
客観的にみれば、破産会社が支払能力を欠いていたことは明らかであり、かつ、破産会社は、1年以上にわたって船別収支実績表の粉飾を継続して融資金を債務の弁済に充てるとの対応を繰り返して窮地をしのいできた

破産会社が、弁済期の到来した債務につき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態にあったことも疑いようのないところであり、破産会社は平成21年7月23日の時点においては支払不能の状態であった。

②Yは、破産会社が大幅な赤字状態にあって、追加融資をすることができない状況にあることを認識しており、これに基づいて追加融資は実行しない方針を内部的に固めていたものと認められ、Yは、破産会社がYを欺罔して融資を受けるなどの無理算段をして支払をしていたことを知っていたことなどからすれば、Yは、本旨弁済がなされた時点では、破産会社が支払不能であることを知っていたものと認めるのが相当。
⇒Yの本件弁済の否認を認め、原判決を取消し、Xの本件請求を認容。
 
<解説>
本旨弁済も故意否認の対象となる(判例)。
支払不能とは、弁済能力の欠乏のために債務者が弁済期の到来した債務を一般的かつ、継続的に弁済することができないと判断される客観的状態であると解されている。

第1に、弁済能力の欠乏は、財産、信用、あるいは労務による収入のいずれをとっても、債務を支払う能力がないことを意味する。

第2に、弁済能力の欠乏は、一般的、かつ、継続的でなければならないが、債務者が表面的には弁済能力を維持していると見える場合であっても、客観的弁済能力が欠けていれば、支払不能状態とみなされるし、また、将来多額の債務が支払えないことが予想されてもかまわないとされている。

判例時報2275

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2015年2月22日 (日)

申立て前日に否認対象行為となる支払をしたことが不法行為を構成するとされた事例

東京地裁H26.8.22   

債務者の破産申立てを受任した弁護士が、破産財団となるべき財産散逸防止義務に反して、申立て前日に否認対象行為となる支払をしたことが不法行為を構成するとされた事例 
 
<事案>
X(破産管財人)は、
①Yら(申立代理人弁護士)に対し、受任者としての注意義務を怠り、B社の取締役C・従業員Dに否認対象行為である支払を行い、2344万円余の回収ができなくなったとして、共同不法行為に基づく損害賠償請求を、
②Y1に対し、業務報酬としてB社から受領した1260万円のうち、少なくとも600万円は適正報酬額を超え、当該部分の支払行為を詐害行為又は無償行為として否認し、
同額の支払請求を行った。 
 
<争点>
①Yらのした①の支払が否認の対象となり、Yらに注意義務違反があり、損害が発生したか
②B社のY1に対する1260万円の報酬支払が、否認に基づき原状回復請求できるか 
 
<判断>

①Cに対し、労働者ではないのに基本退職金、解雇予告手当を、株主総会決議を経ることなく特別功労加算金を、稼働実体がないのに日割計算超過分の給与(報酬)を合理的根拠のない調整手当を
②Dに対し、株主総会決議を経ることなく特別功労加算金を、稼働実体がないのに日割り計算超過分の給与(報酬)を、合理的根拠のない調整手当を、
それぞれ支払ったことは、破産財団を毀損する行為


①債務者の破産申立てに関する委任契約を締結した弁護士は、破産財団となるべき破産会社の財産が破産管財人に引き継がれるまでの間、財産が散逸することのないよう必要な措置をとるべき義務を負うところ、Yらは、支払の適否が問題となる債務につき申立て前日に、他の債権者を害するような債務弁済を行ったことは注意義務違反があったというべきであり、その責任を免れるやむを得ない事情は見当たらない。
②Yらは、過失により、法的に誤った支払を行い、同額分の破産財団を毀損し、同額の損害を発生させた、。


本件委任契約中の破産会社の債務整理事務固有の報酬としては、760万円が相当であり、これを超える500万円については否認することができる。
 
<解説>
債務者の破産申立てを受任した弁護士が、破産財団となるべき財産散逸防止義務に反して、申立て前日に否認対象行為となる支払をしたことが不法行為を構成するとされたケース。
破産申立て前日には、破産管財人への財産引継ぎの準備が進んでいる⇒支払の適否が問題となる債務については、原則として弁済すべきでない
but
支払の適否が問題となる債務であっても、法的に評価して否認対象行為となる措置でなければ不法行為を構成することはなく、民事責任を負わない

判例時報2242

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2014年10月 1日 (水)

登記官が職権でした登記の更正は破産法164条の否認の対象とはならないとされた事例

福岡高裁H26.3.27    

登記官が職権でした登記の更正は破産法164条の否認の対象とはならないとされた事例 
 
<事案>
破産管財人Xが、破産者Aが所有する不動産上に抵当権を有するYに対して、当該抵当権に係る抵当権設定登記についてされた、債権額を「1710円」から「1710万円」に訂正した登記の更正が支払停止後の対抗要件具備行為に当たるのでは、破産法164条1項により否認する旨主張。
⇒本件更正登記の否認登記手続を求めた事案。

<規定>
破産法 第164条(権利変動の対抗要件の否認)
支払の停止等があった後権利の設定、移転又は変更をもって第三者に対抗するために必要な行為(仮登記又は仮登録を含む。)をした場合において、その行為が権利の設定、移転又は変更があった日から十五日を経過した後支払の停止等のあったことを知ってしたものであるときは、破産手続開始後、破産財団のためにこれを否認することができる。ただし、当該仮登記又は仮登録以外の仮登記又は仮登録があった後にこれらに基づいて本登記又は本登録をした場合は、この限りでない。

<一審>
登記の更正は、権利変動の原因となる法律行為を前提としてなされるものではなく、また、登記の更正の原因となる登記官の過誤による錯誤又は遺漏も否認の対象となり得るものとはいえない。

登記の更正は破産法164条1項の対抗要件否認の対象とならない。
⇒本訴請求を棄却。 

<判断>
破産法164条1項にいう「第三者に対抗するために必要な行為」は、破産者の行為又はこれと同視すべきものと解するのが相当であるところ、本件更生登記は、不動産登記法67条により、職権による登記の更正としてなされたものであり、権利変動の原因となる法律行為を前提としてされたものではないだけでなく、破産者の行為又はこれと同視すべきものではないことは明らか
⇒原判決は正当。
 
<解説>
破産法164条により否認し得る対抗要件充足行為は、破産者の行為又はこれと同視すべきものに限られる(最高裁H8.10.17)。 

判例時報2227

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2014年9月18日 (木)

非免責債権について、破産債権者表に対する執行文付与の訴えの可否(否定)

最高裁H26.4.24   

免責許可の決定の効力が及ばない破産債権であることを理由として当該破産債権が記載された破産債権者表につき執行文付与の訴えを提起することの可否 

<事案>
被上告人Yにつき破産手続が集結し免責許可決定が確定した後、Yに対し確定した破産債権を有していた上告人Xが、当該破産債権が破産法253条1項2号の「破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権」に該当すると主張して、Yに対し、当該破産債権が記載された破産債権者表について提起した執行文付与の訴え。 

<規定>
民執法 第33条(執行文付与の訴え)
第二十七条第一項又は第二項に規定する文書の提出をすることができないときは、債権者は、執行文(同条第三項の規定により付与されるものを除く。)の付与を求めるために、執行文付与の訴えを提起することができる。

民執法 第27条 
請求が債権者の証明すべき事実の到来に係る場合においては、執行文は、債権者がその事実の到来したことを証する文書を提出したときに限り、付与することができる。
2 債務名義に表示された当事者以外の者を債権者又は債務者とする執行文は、その者に対し、又はその者のために強制執行をすることができることが裁判所書記官若しくは公証人に明白であるとき、又は債権者がそのことを証する文書を提出したときに限り、付与することができる。

<一審・原審> 
X主張の債権が破産法253条1項各号に掲げる非免責債権に該当するか否かは、執行文付与の訴えの審理の対象とはならない⇒訴えは不適法⇒本件訴えを却下すべき。 

<判断>
免責許可の決定が確定した債務者に対し確定し破産債権を有する債権者が、当該破産債権が非免責債権に該当することを理由として、当該破産債権が記載された破産債権者表について執行文付与の訴えを提起することは許されない

執行文付与の訴えについて規定した民執法33条1項の文言に照らし、その審理の対象は、同法27条1項にいう債権者の証明すべき事実の到来の有無又は同条2項にいう債務名義に表示された当事者以外の者に対し、若しくはその者のために強制執行をすることの可否に限られ、破産債権者表に記載された確定した破産債権が非免責債権に該当するか否かを審理することは予定されていない。

民執法施行前のものであるが、執行文付与の訴えにおける審理の対象条件の成就又は承継の事実の存否のみに限られるとした上で、執行文付与の訴えにおいて請求異議事由を抗弁として主張することは許されないとした最高裁昭和52.11.24の考え方を踏襲。

破産債権者表に免責許可決定が確定した旨の記載がされている場合であっても、破産債権者表の記載内容等から記載された確定した破産債権が非免責債権に該当すると認められるときは、裁判所書記官において単純執行文を付与することができるから、債権者には不都合はない。

下記のC1説に立脚。

<解説>

裁判所書記官は、届出のあった破産債権について破産債権者表を作成し(破産法115条1項)、破産債権の調査の結果を破産債権者表に記載(同法124条2項)。 

異時廃止決定若しくは同意廃止決定が確定したとき、又は破産手続終結決定があったときは、破産手続において確定した破産債権については、破産者が破産手続中で異議を述べていない限り、破産債権者表の記載は、破産者に対し、確定判決と同一の効力⇒破産債権者は、確定した破産債権について、当該破産者に対し、破産債権者表の記載により強制執行を行うことができる(同法221条)。

破産債権者表が債務名義となり(民執法22条7号)、破産債権者は、執行分の付与を受けて、強制執行をすることもできる。


免責許可の申立てがされた場合、それについての裁判が確定するまでの間は、破産者の財産に対する破産債権に基づく強制執行をすることはできない(破産法249条1項)。 
免責許可決定が確定⇒
①当該破産債権が非免責債権に該当しない限り、破産者は、破産手続による配当を除き、当該破産債権についてその責任を免れる(破産法253条1項)。
②破産債権者表に免責許可決定が確定した旨が記載される(同条3項)。
破産債権者表の記載自体から、非免責債権を除く債権については、執行力が失われる。


A:免責許可決定の確定後はおよそ破産債権者表に基づく強制執行は許されず、執行文付与を求めることもできない。
B:強制執行でき、執行文の付与を求めることもできる。
C:免責許可決定の確定後も、非免責債権については破産債権者表に基づき強制執行をすることができる。
C1:通常の執行文付与の手続と同様、(非免責債権と判断されるものについて)裁判所書記官において単純執行文を付与することができる(中野)⇒免責の効力が及ぶか否かの最終判断は、破産者が提起する請求異議訴訟に委ねる
C2: 裁判所書記官の審査は困難⇒執行文付与の訴えによるべき(伊藤)。


本判決の立場:
Xは、破産事件の記録のある裁判所の裁判所書記官に対し、単純執行文の付与を申し立て、同書記官において破産債権者に記載された破産債権が非免責債権であることが認められれば、執行文が付与される。
執行文付与を拒絶⇒その処分に不服があれば、Xは、執行文付与拒絶に対する異議申立て。 
破産債権者表等の記載からその債権が非免責債権であるとは認められず、執行文の付与を受けられない場合、別途当該破産債権に基づく給付訴訟を提起し、当該債権が非免責債権であることを主張立証することができる。

判例時報2225

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2014年4月 7日 (月)

職権でなした登記の更正と破産法164条の対抗要件の否認(否定)

福岡地裁H25.10.28   

登記官が不動産登記法67条2項により職権でなした登記の更正は、破産法164条の権利変動の対抗要件の否認の対象とはならないとして、破産管財人の右否認請求が棄却された事例 

<事案>
Y(保証会社)はB銀行化からAにつき破産申立受任通知がされた旨の事故報告書を受領
⇒B銀行の調査で抵当権登記の被担保債権額が登記官の過誤により1710円となっていた
⇒ B銀行に当該法務局に本件抵当権登記の更正を求めるよう依頼し、登記官Cは法務局長の許可を得て、登記を更正。
⇒A破産で、X(破産管財人)は、破産法164条1項により本件更正登記を否認する旨を主張し本訴を提起。

<規定>
破産法 第164条(権利変動の対抗要件の否認)
支払の停止等があった後権利の設定、移転又は変更をもって第三者に対抗するために必要な行為(仮登記又は仮登録を含む。)をした場合において、その行為が権利の設定、移転又は変更があった日から十五日を経過した後支払の停止等のあったことを知ってしたものであるときは、破産手続開始後、破産財団のためにこれを否認することができる。ただし、当該仮登記又は仮登録以外の仮登記又は仮登録があった後にこれらに基づいて本登記又は本登録をした場合は、この限りでない。
2 前項の規定は、権利取得の効力を生ずる登録について準用する。

不動産登記法 第67条(登記の更正)
登記官は、権利に関する登記に錯誤又は遺漏があることを発見したときは、遅滞なく、その旨を登記権利者及び登記義務者(登記権利者及び登記義務者がない場合にあっては、登記名義人。第三項及び第七十一条第一項において同じ。)に通知しなければならない。ただし、登記権利者、登記義務者又は登記名義人がそれぞれ二人以上あるときは、その一人に対し通知すれば足りる。
2 登記官は、前項の場合において、登記の錯誤又は遺漏が登記官の過誤によるものであるときは、遅滞なく、当該登記官を監督する法務局又は地方法務局の長の許可を得て、登記の更正をしなければならない。ただし、登記上の利害関係を有する第三者(当該登記の更正につき利害関係を有する抵当証券の所持人又は裏書人を含む。以下この項において同じ。)がある場合にあっては、当該第三者の承諾があるときに限る。
・・・・

<判断>
破産法164条1項は、権利の変動についての対抗要件を充足する行為が、既に着手された権利の変動を完成するものであることに鑑み、権利変動の原因となる法律行為そのものに否認の理由がない限り、できるだけ対抗要件を具備させることによって当事者の目的を達成させることとする趣旨から、同項所定の要件を満たす場合にのみ、特にこれを否認し得ることとしたもの。

登記の更正は、権利に関する登記に登記官の過誤による錯誤又は遺漏がある場合に、①登記上利害関係を有する第三者の承諾があるとき又は②当該第三者がないときに限り登記官によって職権でなされるものであるから(不動産登記法67条2項、1項)、権利変動の原因となる法律行為を前提としてなされるものではなく、また、登記の更正の原因となる上記事情も否認の対象となり得るものではない。

登記の更正は、特段の事情がない限り、破産法164条1項の「権利の・・・変更をもって第三者に対抗するために必要な行為」に該当せず、同項の対抗要件否認の対象とはならない。
 
本件では、特段の事情があるとは認められない⇒本件登記の更正は、破産法164条1項により、これを否認することはできない。

判例時報2211

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2014年2月 6日 (木)

破産前に会社に助言した事業再建会社の破産管財人に対する債務不履行責任(肯定)

東京地裁H25.7.24   

破産会社が破産手続開始決定の申立て前、事業再建会社と事業譲渡等のアドバイザリー契約を締結し、助言を受けて事業を譲渡したが、破産後、破産管財人による否認権を行使された場合、事業再建会社の破産管財人に対する債務不履行責任が肯定された事例 

<事案>
A社は、取引先の流出を防止し、従業員の雇用を守ることを目的として、平成21年1月30日、Yとの間でアドバイザリー契約を締結し、Yは同年2月10日、A社に対し、
①C社に対し、本業に係る28億1811万1180円の資産を譲渡し、本業に係る従業員をC社が引き継ぐこと、
②C社は、A社の負債のうち本業に係る29億2818万4399円相当の債務を重畳的に債務引き受をすること
③事業譲渡資産の対価を100万円とすること
を内容とする事業譲渡契約の締結を助言し、A社とC社は、同月17日、前記譲渡契約を締結。

A社は、同月20日、手形不渡りを出し、同年12月25日、東京地裁に破産の申立てをし、破産決定。

破産管財人(X)は、破産法160条1項1号に基づいて、本件事業譲渡契約を否認する旨の請求を破産裁判所にし、同裁判所は、本件事業譲渡契約が否認権の対象との判断をした。

Xは、Yが前記アドバイザリー契約に基づき、
①A社に損害を生じさせない内容の助言等を行う義務又は、
②助言業務の提供に当たって法令を遵守すべき義務を負っていたにもかかわらず、
Yが提案した本件事業譲渡契約を実行した結果、A社において、事業譲渡の対象になった資産のうち担保が付けられていた部分を差し引いた残額17億9050万2824円相当の資産を喪失したとして、債務不履行又は不法行為に基づき、喪失した資産の時価相当額及び報酬相当額に係る損害の一部の賠償等を求める本訴を提起。

<規定>
破産法 第160条(破産債権者を害する行為の否認) 
次に掲げる行為(担保の供与又は債務の消滅に関する行為を除く。)は、破産手続開始後、破産財団のために否認することができる。
一 破産者が破産債権者を害することを知ってした行為。ただし、これによって利益を受けた者が、その行為の当時、破産債権者を害する事実を知らなかったときは、この限りでない。
 
<判断>
①の義務について、アドバイザリー契約の契約文言から、助言等を必要としている企業の具体的状況やどのような財務改善を目的として助言を求めているかにかかわらず、財務を現状から悪化させることなく、一切の損害を与えない内容の助言をすべき具体的義務を負っているとはいえない
②の義務について、Yが弁護士、公認会計士等を要する株式会社であり、職業倫理上の法令順守義務を負うのみならず、前記アドバイザリー契約にも法令順守義務の定めがある

一般的には、Yは前記アドバイザリー契約に基づき助言等を行うに当たり、法令を遵守し、適法かつ有効な行為を助言すべき義務を負い、前記アドバイザリー契約が企業再生を目的とするものであるから、助言等を行うに当たっては、少なくとも破産手続において否認権の行使を受けることがないようにすべき義務を負う。

本件事業譲渡が破産債権者を害することを知ってした行為であり、破産法160条1項1号所定の否認行使対象に該当するものと認められる。

前記アドバイザリー契約に責任制限合意があり、A社のYに対する損害賠償請求は業務委託報酬額である4387万4653円に限定される。

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