刑事

2018年11月14日 (水)

恵庭OL殺人事件第二次再審第一審決定

札幌地裁H30.3.20      
 
<事案>
著名再審請求事件の1つである恵庭OL殺人事件の第二次再審請求に対する地裁の棄却決定。 
弁護人が提出した科学的証拠を中心とする新証拠が、いずれも確定判決の根拠となった間接事実等の認定や評価に影響を及ぼすものではない⇒新旧全証拠の総合評価段階に至ることなく、請求を退けた
 
<判断等>
●確定判決等が請求人を犯人と認定した判断構造 
本件の犯人として想定可能な人物を絞り込んでいく間接事実が少なからず存在し、これらを総合的に検討して、犯人を請求人と推認、特定。
その旨の推認を妨げる事情の有無等を弁護人の主張等に即する形で検討してこれを否定、排斥。
⇒有罪の判断。
 
●弁護人の主張 
①法医学の専門家の意見書等
⇒被害者の死因は頚部圧迫による窒息とはいえず、確定判決等が依拠した司法解剖医作成の鑑定書が、死因をそのようにいうのは根拠不十分。
被害者は、性犯罪の被害にあって薬物投与により急死した疑い⇒そのような薬物を所持していなかった請求人は犯人ではない。

②燃焼学者等の専門家らの意見書等
⇒被害者の死体は、まずうつ伏せの状態で燃焼され、しばらく後に仰向けに反転させられ、再び燃料を掛けられて燃損されたと認められるが、そうであれば、請求人にはアリバイが成立する。

③確定判決控訴審判決では、灯油10リットルを掛ければ被害者の死体のように相当部分が炭化状態となるまで燃焼することが不可能とはいえないと判断。
but
燃焼学の専門家の意見書等⇒灯油10リットルを掛けて燃焼しても、被害者の死体のように体重が9キロも減少することはなく、第一次再審請求審における即時抗告棄却決定が指摘するように、灯油の燃焼終了後脂肪が独立燃焼を継続することもない。
⇒灯油10リットル以外に燃料を所持していなかった請求人は犯人ではない。
 
●判断
弁護人提出証拠の証拠価値を否定し、ひいては、いずれも刑訴法435条6号にいう明白性を否定。
①・・・・頸部圧迫による窒息の所見が少なからず認められる⇒死因をそのように認定した確定判決等の判断は左右されない
当時科捜研において所要の薬物検査が実施され、被害者の死体からは薬毒物が検出されなかった⇒薬物を使用した性犯罪に伴う急死等の可能性は除外される。

②死体の焼損状況⇒当初から仰向けの状態で焼損されたものとみても説明がつく
まずうつ伏せの状態で焼損され、次いで仰向けの状態にされて焼損されたとすると、臀部など焼損を免れた部位や現場の痕跡など客観的状況の説明がつかない。

燃焼学の専門家等の意見書等は、被害者の死体に掛けられた灯油の燃焼の仕方、死体への熱の伝わり方、燃焼した灯油の分量といった燃焼の条件が実際より過度に単純化され、過小なものとなっている
 
<規定> 
刑訴法 第435条〔再審請求の理由〕 
再審の請求は、左の場合において、有罪の言渡をした確定判決に対して、その言渡を受けた者の利益のために、これをすることができる。
六 有罪の言渡を受けた者に対して無罪若しくは免訴を言い渡し、刑の言渡を受けた者に対して刑の免除を言い渡し、又は原判決において認めた罪より軽い罪を認めるべき明らかな証拠をあらたに発見したとき。
 
<解説> 
刑訴法435条6号の「無罪を言い渡すべき明らかな証拠」(明白性)とは、
確定判決における事実認定につき合理的な疑いを抱かせるものであり、
その判断方法としては、新証拠が確定判決を下した裁判所の審理中に提出されていたら、その確定判決においてなされたような事実認定に到達したかどうかという観点から、新旧証拠を総合的に評価して行うべきものとされている(総合評価説)。

この総合評価:
一般論として、
確定判決が有罪認定の根拠とした旧証拠の構造等を分析した上、新証拠の立証命題や旧証拠の構造の中での位置付けを踏まえ、新証拠がいかなる旧証拠にいかなる影響を及ぼすのかを、そのために必要な範囲の旧証拠に分析を加えながら検討

新証拠が旧証拠に与える影響の度合いを検討するには、その前提として、新証拠それ自体に十分な証拠価値のあることが前提
but
本決定は、弁護人提出証拠の証拠価値をいずれも否定
⇒新証拠への影響の度合いを論じる前提を欠いている。

判例時報2280

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2018年10月25日 (木)

一審:心神耗弱(弁護人争わず)⇒控訴審:心神喪失で無罪

東京高裁H28.5.11    
 
<事案>
被告人(当時31歳)が、弟(当時28歳)及び祖母(当時89歳)に対し、それぞれ、頚部、腹部等を果物ナイフで多数回突き刺すなどして殺害したという殺人2件の事案。 

<一審>
裁判員裁判で、被告人の責任能力に対し、心身耗弱であったことについて検察官と弁護人との間に争いがなく、量刑のみが争点。

検察官:懲役10年を求刑
弁護人:刑の執行猶予の意見
弁護人の主張に対する判断を示すことなく、被告人の精神症状を簡潔に説示した上、被告人は、本件当時、「広汎性発達障害と妄想型統合失調症が複雑に絡みつつ発展した精神障害により心神耗弱の状態にあった」と判示して、法律上の軽減を行った上で、懲役8年。
   
被告人が控訴。

控訴人の弁護人:
被告人は本件当時心神喪失であったから原判決には事実誤認がある。
量刑不当。
を主張。
 
<判断>
第1審判決について
悪魔に関する妄想の圧倒的な影響をうかがわせる、犯行態様の執拗性、過剰性、異常性に関する事情及び犯行に至る経緯における事情が多数認められるにもかかわらず、これらを適切に考慮することなく、また、・・合理的とはいえない起訴前の精神鑑定に依拠して心神耗弱の認定

論理則、経験則等に照らして不合理な認定をしたものと言わざるを得ず、事実誤認がある。

第1審判決を破棄し、心神喪失であることについて合理的な疑いがある⇒無罪。
 
<解説>
●心神喪失・心神耗弱の認定
◎ 心神喪失と心神耗弱とは、いずれも精神障害の態様に属するものであるが、その程度を異にする。

心神喪失:
精神の障害により事物の理非善悪を弁識する能力がなく又はこの弁識に従って行動する能力がないことを指称

心神耗弱:
精神の障害がいまだ前記の能力を欠如する程度に達していないが、その能力が著しく減退した状態を指称。

(大判昭和6.12.3)
心神喪失又は心神耗弱に該当するかどうかは、法律判断
⇒専ら裁判所にゆだねられるべき問題。

その前提となる生物学的、心理学的要素についても、法律判断との関係で究極的には裁判所の評価に委ねられるべき問題。(最高裁昭和58.9.13)

生物学的要素である精神障害の有無及び程度並びにこれが心理学的要素に与えた影響の有無及び程度:
その診断が臨床精神医学の本分
⇒専門家たる精神医学者の意見が鑑定等として証拠となっている場合には、鑑定人の公正さや能力に疑いが生じたり、鑑定の前提条件に問題があったりするなど、これを採用し得ない合理的な事情が認められるのでない限り、その意見を十分に尊重して認定すべき。(最高裁H20.4.25)
but
鑑定の前提条件に問題があるなど、合理的な事情が認められれば、裁判所はその意見を採用せずに、責任能力の有無・程度について、被告人の犯行当時の病状、犯行前の生活状態、犯行の動機・態様等を総合して判断することができ、
特定の精神鑑定の一部を採用した場合においても、当該意見の他の部分に事実上拘束されることなく、前記事情を総合して判定することができる。(最高裁H21.12.8)

文献。
 
●本判決の位置付け 
①犯行に至る経緯や犯行状況は、悪魔に関する妄想の圧倒的な影響が強く疑われることを指摘。
②D1意思やD2医師の証人尋問等の事実調べを行い、
③被告人の成育歴、家庭環境等を検討。

本件犯行の態様や犯行動機の異常性について妄想型統合失調症に起因する「一時的妄想」の影響を重視し、
本件犯行が広汎性発達障害によるもので、妄想も「二次的妄想」による影響が大きいとしたD1医師の鑑定の推論過程等を合理的でないとした。

検察官の主張(動機は了解可能である、犯行態様は合目的的である、被告人の統合失調症の症状は重症化していない、犯行当時の妄想の確信度は低く、事後的に妄想追想によって体系化されて確信度が高まった)を踏まえて検討しても、被告人は、保険当時、心神喪失であった合理的な疑いがある。

心神喪失・心神耗弱の認定は、究極的には、裁判所に委ねられるべき問題

裁判所は、たとえ、心神耗弱であることについて、検察官と弁護人の間に争いはなく、公判前整理手続において心神喪失や心神耗弱の問題が積極的に争点とされなかったとしても、後半審理における証拠調べに基づき、鑑定に対する評価を含め、慎重に判断することが求められる

判例時報2377

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2018年10月12日 (金)

道交法上の救護義務違反・報告義務違反が成立するための要件

東京高裁H29.4.12      
 
<事案>
被告人が、
①赤色信号を殊更に無視し、時速約80kmで進行して歩行者に衝突して負傷させ死亡た事実(危険運転致死)と、
②自己の運転に起因して他人を負傷させたのに、直ちに車両の運転を停止して救護等の措置を講じず、自己について警察官に報告しなかった事実(道交法違反)で起訴 
 
<規定>
自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律

第二条(危険運転致死傷)
次に掲げる行為を行い、よって、人を負傷させた者は十五年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は一年以上の有期懲役に処する。

五 赤色信号又はこれに相当する信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為

道交法 第72条(交通事故の場合の措置)
交通事故があつたときは、当該交通事故に係る車両等の運転者その他の乗務員(以下この節において「運転者等」という。)は、直ちに車両等の運転を停止して、負傷者を救護し、道路における危険を防止する等必要な措置を講じなければならない。この場合において、当該車両等の運転者(運転者が死亡し、又は負傷したためやむを得ないときは、その他の乗務員。以下次項において同じ。)は、警察官が現場にいるときは当該警察官に、警察官が現場にいないときは直ちに最寄りの警察署(派出所又は駐在所を含む。以下次項において同じ。)の警察官に当該交通事故が発生した日時及び場所、当該交通事故における死傷者の数及び負傷者の負傷の程度並びに損壊した物及びその損壊の程度、当該交通事故に係る車両等の積載物並びに当該交通事故について講じた措置を報告しなければならない
 
<判断・解説>
●他車に追跡されていると感じた者の危険運転 
原判決:
他の車両のドライブレコーダーの映像の解析等⇒被告人車の事故交差点の通過時の速度は時速80kmであったと認定。
事故交差点に至る前も終始かなりの高速度で走行していたと推認。
信号表示を意に介することなく、赤信号であってもこれを無視する意思で進行したと推認
「被告人が誰かに追われていると思っていたとしても、信号表示を守って運転しているつもりであった」との供述は信用できない。

控訴審:
①W1交差点出口から事故交差点までの320mを長くとも約14秒で走行⇒平均速度を時速約80kmと推認
②信号機が赤信号を表示している交差点を連続して通過した点を指摘

被告人は、赤色信号を認識しながらあえて通過したか、
およそ信号表示に従う意思がなく信号表示を見なかった
ものとして、
原判決を支持。
 
●交通事故があったとき、当該事故に係る車両の運転者が救護及び報告の義務を負うのは、事故の発生を認識したことが前提。 

原判決:
被告人が2人組の男に暴行を受けた

救護及び報告の義務の履行が可能であった期間を事故発生時点からY地点に停止させる時点までの間に限定し、
被告人が事故発生を認識したのはどの時点かを検討。

事故発生時に直ちに人身事故であると認識したとは認められない
but
①事故時に衝撃があり、衝突音が発生したこと
②フロントガラスに大きな破損が生じたこと
⇒遅くともX2交差点手前で停止した時点までには人身事故を起こしたことを認識したと推認できる

本判決も同様の推認。

運転者が交通事故の発生と同時又は直後にこれを認識することができないまま走行を続けた裁判例もある。
 
●時間経過後の事故発生を認識した運転者のとるべき行動 
◎ 原判決:
被告には被害者に衝突した後もそれを認識しないまま走行を続け、X2交差点に至って自己の発生を認識。

人身事故を起こしたことを認識した運転者は、停車可能な場所にすぐさま自車を停止させ、救護及び報告の義務を履行すべき。
but
①走行中に事故発生を認識した場合に内心が動揺・混乱することがあり、瞬時に履行の決意をすることは容易ではなく、決意をしてもその時の信号表示や車の流れに従って一旦走行してしまうことや、適切な停車場所をうかがううちに数十秒が経過してしまうことがあり得る。
②被告人が人身事故を起こしたことを認識した時点からY地点で停止し2人組の男に追い付かれる時点までの時間は数十秒程度
③被告人が数十秒程度車両を走行させ、Y地点で停止したことをもって直ちに自車の運転を停止しなかったとすることには疑問が残る。
④被告人はY地点で自らの意思で停車した後、必要な連絡をとるために携帯電話機を探しており、二人組の男に襲われて義務の履行が困難になるまでにわずかな時間しかなかった可能性がある。

直ちに自車の運転を停止して救護義務及び報告義務を履行しなかったとは認められない。

◎ 控訴審:
被告人は、X2交差点で停止した時点までに、人身事故を起こしたことひいては救護及び報告の義務があることを認識したにもかかわらず、自車を再発進したのは、義務の履行と相容れない行動
but
事故交差点から約300mのY地点に自らの意思で停車し、その後連絡がとれるようにして交差点に戻ろうと思って携帯電話機を探していた

Y地点から事故交差点に引き返して救護義務及び報告義務を果たそうとしていた可能性は否定できない。

検察官:
原判決が運転者の内心の動揺や混乱を救護義務及び報告義務の履行遅滞の正当理由として認めるかのような解釈をしたのは、「直ちに車両等の運転を停止して」の解釈を誤ったもの。
vs.
本判決:
人身事故を起こした運転者が救護義務及び報告義務の履行と相容れない行動をとれば、直ちにこれらの義務に違反する不作為があったとまではいえず、一定の時間的場所的解離を生じさせて、これらの義務の履行と相容れない状態にまで至ったことを要する
⇒原判決に法令解釈の誤りはない。


①本件の被告人は、事故現場から2つ目の交差点まで走行してようやく事故発生を認識した後、再発進して現場から遠ざかる方向へ更に約150m走行し、停車した後、連絡をとろうとして携帯電話機を探しているうちに、二人組の男に襲われたために、自己交差点に戻って救護及び報告を行うことができなくなってしまった。
②再発進して現場から遠ざかる方向へ走行したのは、直ちに停車して救護と報告を行うべき義務の履行と相容れない行動であるということはできる
but
事故発生を認識した後の運転者の心理状態やそのときの道路交通の状況等の事情によればそのようなこともあり得るのであり、これだけをとらえて救護義務・報告義務の違反とするのは相当ではない。

事故現場から遠ざかる方向に走行したとしても、救護義務・報告義務の違反が成立するためには、事故発生時から相当の時間が経過し、事故現場から相当の距離が生じて、それらの義務の履行を相容れない状態に陥ることを要する
とした点に、本判決の意義がある。

大津地裁H6.4.6:
仮眠状態に陥って追突事故を起こした運転者が、頭部を打った衝撃等により事態を認識できない状態となり、そのまま運転を続けた。
その後意識を取り戻すまでの間については救護義務違反を問うことはできず、意識を取り戻した後も、事故現場の所在を認識していない運転者が現場に戻って負傷者を救護することは不可能⇒救護義務違反は成立しない
降車した際自車が大破している⇒何らかの交通事故の発生を認識したものと考えられ、その時点で警察官に報告する義務があった

名古屋高裁金沢支部昭和39.7.21:
運転者の負傷等のため事故直後から他人を介しても報告することが不可能である事態が続く限り、法はその者に自己報告を期待しない。
その後報告の可能状態が生じた直後に報告すれば、それが事故と時間的に隔たっていても直ちに報告したものというとができる

判例時報2375、2376

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2018年9月30日 (日)

危険運転致死傷罪の共同正犯と救護・報告義務

札幌高裁H29.4.14      
 
<訴因>
①Aの酒気帯び運転
②A・Bにつき被害者5名それぞれに対する危険運転致死傷の共同正犯(予備的にAの過失運転致死傷、Bの過失運転致死)、
③Bの救護・報告義務違反 

<主張>
被告人両名:
①赤信号を見落としただけで殊更に無視していない
②信号無視高速運転の共謀はない

被告人B:
③Aと共謀していない⇒B車が轢跨したV3以外の被害者に対する交通事故については救護・報告の義務を負わない
④V3に対する交通事故については、V3を轢跨し引きずった認識がなかった⇒救護・報告義務違反の故意を欠く
 
<解説>
●危険運転致死傷罪の共犯に関する裁判例 
危険運転致死傷罪:
構成要件として、
正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為や重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為等を行い、
よって人を死傷させたことを規定

その「運転する行為」を行う者として想定されるのは「運転席に位置して運転操作をする者」
最高裁H25.4.15:
①運転者と被告人両名(先輩)との関係
②運転者が被告人両名に車両発進につき了解を求めるに至った経緯及び状況
③これに対する被告人両名の応答態度等

運転者が車両を運転するについては、先輩であり、同乗している被告人両名の意向を確認し、了解を得られたことが重要な契機となっている一方、
被告人両名は、運転者がアルコールの影響により正常な運転が困難な状態であることを認識しながら、車両発進に了解を与え、その運転者の運転を制止することなくそのまま車両に同乗してこれを黙認し続けた

上記の被告人両名の了解とこれに続く黙認という行為が、運転者の運転の意思をより強固なものにすることにより、運転者の危険運転致死傷罪を容易にしたこと明らか

危険運転致死傷幇助罪の成立を肯定
 
●複数の車両で走行した場合の共同正犯 
◎ 本件:信号無視高速運転類型の事案であり、共同正犯として起訴されたのは競い合うように高速度で走行した2台の運転者
 
<原審>
①AとBがそれぞれ相手の車が高速度で走行する状況を認識した上で、一方が速度を上げれば他方も速度を上げるなど、速度を競うように高速度で走行しており、事故交差点に接近する際も、相手方停止しようとしない走行状況を認識していた
②AとBの双方が、相手が赤色侵害に従わずに高速度のままで交差点を通過しようとする意思を有していることを認識し、自らも一緒に赤色信号に従わずにそれまでの走行と同様に競うように高速度のまま交差点を通過しようとする意思を有していた

交差点に侵入する時点において、赤色信号に従わずに高速度のままで交差点を通過する意思を相通じていた

共謀の成立を認めた

 
<判断>
AとBとが、交差点に至るに先立ち、殊更に赤色信号を無視する意思で、両車両が交差点に進入することを認識し合い、
そのような意思を暗黙に相通じて共謀を遂げた上、
各自がそのままの高速度による走行を継続して交差点に進入し、危険運転行為に及んだ
ことが肯認できる

原判決を支持 
 
◎運転者AがA車を運転して赤色信号を無視して高速度で交差点に進入した行為がA車による危険運転致死傷罪の実行行為。

B車の運転者であるBは、実行行為を分担したのではなく、共謀により加担した者と位置づけられる。
B車による危険運転致死罪の実行行為に対するAの関与も同様。

観念的には、
Bと共謀してAが実行行為に及んだA車による危険運転致死傷(V1~V5)の共同正犯と、
Aと共謀してBが実行行為に及んだB車による危険運転致死(V3)の共同正犯とが並立

控訴審判決でも、AとBが共謀を遂げた上で各自が危険運転の実行行為に及んだとして、この点が明確に。

本件のような類型の危険運転致死傷罪の共同正犯は、
運転者の信号無視高速運転について意思を連絡した者すべてに共謀共同正犯が成立するのか、限定的な範囲で成立するとすべきなのかは、
今後の検討課題。
ex.
A社の同乗者がAの危険運転行為を提案し、積極的に賛同した場合。
AとBが信号無視高速運転の意思を共有して交差点に接近したが、A車のみが交差点に進入して交通事故を起こし、B車は交差点に進入しなかった場合。
 
●救護・報告義務を負う運転者 
 
<規定>
道交法 第七二条(交通事故の場合の措置)
 交通事故があつたときは、当該交通事故に係る車両等の運転者その他の乗務員(以下この節において「運転者等」という。)は、直ちに車両等の運転を停止して、負傷者を救護し、道路における危険を防止する等必要な措置を講じなければならない。この場合において、当該車両等の運転者(運転者が死亡し、又は負傷したためやむを得ないときは、その他の乗務員。以下次項において同じ。)は、警察官が現場にいるときは当該警察官に、警察官が現場にいないときは直ちに最寄りの警察署(派出所又は駐在所を含む。以下次項において同じ。)の警察官に当該交通事故が発生した日時及び場所、当該交通事故における死傷者の数及び負傷者の負傷の程度並びに損壊した物及びその損壊の程度、当該交通事故に係る車両等の積載物並びに当該交通事故について講じた措置を報告しなければならない。

道交法 第一一七条
車両等(軽車両を除く。以下この項において同じ。)の運転者が、当該車両等の交通による人の死傷があつた場合において、第七十二条(交通事故の場合の措置)第一項前段の規定に違反したときは、五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
2前項の場合において、同項の人の死傷が当該運転者の運転に起因するものであるときは、十年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
 
道交法72条の義務は、当該交通事故に関与した車両の運転者に課せられたもの
名古屋地裁H22.1.7:
危険運転致死傷に基づく運転者の不救護・不申告について、同乗者が共謀共同正犯又は幇助犯として起訴されたが、いずれも成立しないとされた。
 
◎ 本件の事案:
Bだけでなく、V車と衝突したAも現場から走り去ったとした場合、危険運転致死傷罪の共同正犯たるAとBに救護・報告義務違反の共同正犯が成立するのか、それぞれが単独犯になるのか?
本件では、A車がV車と衝突してV1~V5を負傷させた事故(A車事故)と、B車がV3を轢跨して負傷させた事故(B事故)が連続して発生。

運転者の救護・報告義務を検討するに当たり、両方の事故を包括して考えるのか、個別に考えるのか?

被告人Bは、A車事故については救護・報告義務を負わない、B事故について認識がないと主張。
but
原審は、B車事故についての救護・報告義務違反について検討するまでもなく、A社事故についての救護・報告義務があったとし
Bは、Aとの間で危険運転致死傷罪の共謀が成立する⇒A車がV車に衝突したことについてもBは責任を負う関係にある。すなわち、A車がV車に衝突して被害者らを負傷させた交通事故も、Bの運転に起因する。

罪となるべき事実として
「Bが、B車を運転中、V1及びV3らに傷害を負わせる交通事故を起こし、もって自己の運転に起因して人に傷害を負わせたのに、B車の運転を停止して同人らを救護する等必要な措置を講じず、事故発生の日時等を警察官に報告しなかった」との事実を認定。
 
車両や歩行者との衝突・ 轢過など車体が直接接触することがなくても、車両の交通により人が死傷し、これとの相当因果関係が認められることもあり得る(最高裁昭和38.1.24)。
控訴審も、BがAとの間で危険運転行為の共謀を遂げたことを理由として、BにA車事故に基づく救護・報告義務の違反が成立するとした判断を支持

判例時報2373

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2018年9月22日 (土)

てんかんの発作で意識障害に陥ったことによる交通事故⇒危険運転致死傷罪の故意が争われた事例

神戸地裁H29.3.29    
 
<事案>
てんかんの発作で意識障害に陥ったことによる交通事故。 
 
<解説>
●てんかん:脳の神経細胞の一部が過剰な電気活動を起こすことによって全身のけいれんや意識消失などの発作症状を繰り返し発症する病気。
抗てんかん薬の服用⇒神経細胞の過剰な活動を抑え、発作を起こりにくくする
 
てんかん発生時に意識障害が発症⇒一時的に見当識を失い、もうろう状態になる⇒その時点での運転が過失行為として起訴された事案について、心神喪失時の行為とされた裁判例。 
 
運転開始時点における過失行為が基礎された事案
運転を差し控えるべき注意義務とその違反が認定。
but
その注意義務の前提となる事情は事案によって異なる。 

事例①:
てんかん性発作により事故を起こしたことあがり、投与治療を受けて、運転を差し控えるよう注意されていた⇒運転を差し控える義務があった。

事例②:
突然意識に障害を来たしてもうろう状態に陥るてんかん発作の持病がある者は、将来、突発的に同じような発作が起こるかもしれないことを予見すべき⇒運転を差し控える義務があった。

事例③~事例⑧
 
●自動車死傷法3条2項による規制 

<規定>   
第三条
 アルコール又は薬物の影響により、その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、自動車を運転し、よって、そのアルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態に陥り、人を負傷させた者は十二年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は十五年以下の懲役に処する。

2自動車の運転に支障を及ぼすおそれがある病気として政令で定めるものの影響により、その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、自動車を運転し、よって、その病気の影響により正常な運転が困難な状態に陥り、人を死傷させた者も、前項と同様とする。
自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律施行令〔平二六政一六六〕第三条(自動車の運転に支障を及ぼすおそれがある病気) 

法第三条第二項の政令で定める病気は、次に掲げるものとする。

一 自動車の安全な運転に必要な認知、予測、判断又は操作のいずれかに係る能力を欠くこととなるおそれがある症状を呈する統合失調症

二 意識障害又は運動障害をもたらす発作が再発するおそれがあるてんかん(発作が睡眠中に限り再発するものを除く。)

三 再発性の失神(脳全体の虚血により一過性の意識障害をもたらす病気であって、発作が再発するおそれがあるものをいう。)

四 自動車の安全な運転に必要な認知、予測、判断又は操作のいずれかに係る能力を欠くこととなるおそれがある症状を呈する低血糖症

五 自動車の安全な運転に必要な認知、予測、判断又は操作のいずれかに係る能力を欠くこととなるおそれがある症状を呈するそう鬱病(そう病及び鬱病を含む。)

六 重度の眠気の症状を呈する睡眠障害

自動車死傷法3条は、運転開始時点において、運転開始後の走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態になっていた場合に、そのことを認識した上で運転を開始し、走行中に正常な運転が困難な状態に陥ったことにより事故を起こして人を死傷させる行為を処罰することとしたもの。

同条1項:アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態に陥るおそれがある状態を規定。
同条2項:病気の影響により走行中に症状が発現して、正常な運転が困難な状態に陥るおそれがある状態を規定。

同項は、その病気を政令に委任しているところ、同法施行令3条2号は、「意識障害又は運動障害をもたらす発作が再発するおそれがあるてんかん(発作が睡眠中に限り再発するものを除く。)」と規定。
 
<判断>
本罪の故意があるというためには、自動車死傷法施行令3条各号に規定された病名の認識を必要とするものではなく、規定された病気の特徴の認識、すなわち、本件でいえば、意識障害又は運動障害をもたらす発作が再発するおそれを有する何らかの病気により正常な運転に支障が生じるおそれがあるとの認識があれば足りる。
被告人は
①5年前に意識障害に陥ったことで、自分にはてんかんに見られるような意識消失発作を起こすおそれがあることを認識した
②過去に交通事故を起こした際、相手方等のやりとりから自分が意識を喪失して自己を起こしたことを理解しており、運転を繰り返せば同様の意識喪失の状態に陥るおそれがあることを認識した

被告人は、本件当時、少なくとも意識障害をもたらす発作が再発するおそれを有する何らかの病気により、正常な運転に支障が生じるおそれがあることを認識していた

本罪の故意がある

本件に至るまでの間で医療機関でてんかんの疑いを持たれ、検査を経たものの、てんかんの診断を受けてなかった

意識障害の発作が再発するおそれのある何らかの病気の影響で運転中に意識喪失の状態に陥るおそれがあることについての認識の程度は必ずしも高いとはいえないと評価しており、
社会内更生の機会を与える際に考慮すべき事情とした。
 
<裁判例>
大阪地裁H29.2.7:
主位的に、運転開始時における実行行為と故意の存在を主張:
①最後の発作から10年が経過
②当時、発作のリスクが高まっていたとはいえない
⇒運転開始は本罪の実行行為とはいえず、その時点で正常な運転に支障が生ずるおそれを認識していたとは認められないとして故意を否定。

予備的主張に関し、
前兆を感じてから体が動かなくなるまでの数十メートルの間に道路端に停車し、再発進しないことが可能であたっとした上で、
前兆を感じた時点以降、正常な運転に支障が生ずるおそれを認識していた
⇒故意を認定。 

東京地裁H29.6.27:
治療歴などから、抗てんかん薬を処方通り飲んでいても、疲労などの要因から複雑部分発作が起きうることを認識しており、
事故直前に前兆を感じていたにもかかわらず運転を開始した

発進時、走行中の意識障害を伴う複雑部分発作を起こす具体的危険性を認識していたとして故意を認定。

宮崎地裁H30.1.19:
車を歩道に侵入させて6名を死傷させた事案において、
てんかん発作により意識レベルの変動があったのではなく、被告人の認知機能の低下により事故が引き起こされた可能性があると判断。

判例時報2372

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2018年9月18日 (火)

高齢者の万引きで責任能力が争われた事例・精神鑑定の必要性

高松高裁H28.6.21①
高知地裁H29.8.7②      
 
<事案>
②事件は①事件の差戻審。
 
被告人(女性、犯行当時69歳)は、平成27年8月、青果店で食料品4点を万引き。
被告人は、平成21年以降、万引窃盗により罰金刑、執行猶予付き懲役刑、保護観察付きの執行猶予付き懲役刑に各回処せられ、本件各判決当時は最終刑の執行猶予期間中。 
 
<差戻前1審>
弁護人は、心神喪失又は上津役を主張して精神鑑定を請求。
その必要性を明らかにするため、精神科医師A作成のA意見書2通を提出⇒取調べ。 

A意見書
2回の問診、脳画像検査(SPECT)、心理検査、親族からの聴取を踏まえて、被告人は前頭側頭型認知症にり患。
被告人の異常な窃盗行為は、脳の前方連合野から大脳基底核への抑制が外れた結果として発生する前頭葉の機能が障害された結果、社会的対人行動の障害、自己行動の統制障害等につながり、状況の判断ができず、同じ行動を繰り返す傾向のため、窃盗行為という形で病的に行動を継続してしまう
として、同認知症が本件犯行及び弁識制御能力に与えた影響を説明し、正式な精神鑑定の必要があると述べていた。

前記精神鑑定請求を却下

被告人が前頭側頭型認知症にり患していたことは否定しなかったものの、
①一部を購入し一部を窃取した、
②夫等と一緒のときは万引きをしていない、
③窃取品は食料品という無用でない物であり、その一部を警察署まで隠匿
④同認知症が表れたとされrかなり前から万引きをしていた

完全責任能力を認めた
 
<控訴審>
(①)
①A医師の精神医学に関する専門家としての能力や公正さに疑問を抱かせる事情はうかがわれず、
A意見書は、正式鑑定ではないことから十分とへいえないものの、前提条件についての重要な誤りがあるとはいえない
原審証拠には、A意見書に示された前頭側頭型認知症の診断及び同認知症の診断及び同認知症が弁識制御能力に与えた影響を否定できるだけの証拠はない
本件当日の被告人が責任能力に疑問を抱かせるような無軌道な行動をとっている

原審裁判所は、より十分な資料と精神医学の専門的知見を得て、被告人の精神障害、具体的には発症時期を含めた前頭側頭型認知症り患の有無及び程度並びにその弁識制御能力への影響を明らかにする必要があった

訴訟手続の法令違反により原判決を破棄
 
<差戻審>
(②) B医師による精神鑑定(B鑑定):
①前頭側頭型認知症を否定し、
被告人は平成23年頃からアルツハイマー型認知症にり患しており、鑑定時は軽度で、本件当時は軽度ないしごく軽度
②被告人は、窃盗が悪いことであると答える能力はあるが、記憶障害や判断力の障害などから行動を制御する能力は著しく落ちており、そのことが本件犯行に大きく影響
B鑑定のうち
①被告人がアルツハイマー型認知症にり患し、鑑定時において軽度であるとする点
②同認知症により、自分の身を守り、捕まらないようにするという判断応力や、このような行動をしたら、自分の身にどのような影響を与えるかという社会的動物としての予見性、判断力が低下していたとする部分
を採用。

同認知症の犯行に対する影響は大きいとする部分については、
重症度の判定につき具体的な根拠が乏しいこと
影響が大きいとした根拠である記憶障害や、当日、自分がどこに行って、どこで盗んだかも分かっていなかったという点は、取調べDVDにおける被告人の供述状況(当日の4回の万引きにつき客観的事実と概ね一致)と整合しない

採用できない。

①犯行態様から被告人の違法性の意識は明らかで、その行動は万引きの目的に照らし合理的であること、
②夫等といるときは万引きをしていないこと
などを総合
完全責任能力を肯定

量刑判断:
①被告人の判断能力はアルツハイマー型認知症によって大きく低下していた疑いがあり、これが犯行に相当程度影響を与えたことは責任を相当程度減じるもの
②保釈後の治療の継続や再犯防止の措置
罰金刑を選択
 
<解説> 
●常習的な万引き事案において、窃盗症(クレプトマニア)又は摂食障害を伴う窃盗症を理由とする心神喪失又は耗弱が主張され、あるいは、これらを理由とする責任の減少や治療の必要性・有効性が減刑事由として主張されることが少なくない。 

大阪高裁昭和59.3.27は、摂食障害を理由に心神喪失を認めた。
その後は、大阪地裁岸和田支部H28.4.25のみ:
広汎性発達障害の影響下で摂食障害、盗癖にり患し、食料品の溜め込みと万引きへの欲求は制御し得ない程度であったという精神鑑定
⇒制御能力の著しい減退による心神耗弱をみとめたもの(罰金)。

量刑判断において、
責任能力(多くの事例が制御脳能力)の減少による責任の減少や、
窃盗症等の治療の開始による再犯防止の見込み

(再度の)執行猶予付き懲役刑や罰金刑に処した事例も相当数存在
 
●65歳以上の高齢者の窃盗による起訴人員の増大。 
認知症による責任能力の減退や責任減少が問題となる事例。
精神鑑定に基づき、認知症のために行動制御能力が著しく減退⇒心神耗弱を認めた例。
被告人を診察した医師の証言・意見書により、前頭側頭型認知症のために衝動制御が困難⇒再度の執行猶予。
but
前頭側頭型認知症にり患しているとの医師の見解を排斥して責任の減免を否定した例も。

認知症による心神耗弱又は責任の減少が認められた事例では、弁識能力はあるが、認知症のために衝動制御が困難だ得るとして、制御能力の低下をいう鑑定意見等が出されている。
 
証拠の採否は、それが裁判所の合理的裁量の範囲内にある限り違法とされることはない
精神鑑定請求についても、裁判所が、既出の証拠から被告人の精神状態に異常がないとの心証を形成し、鑑定を命じても心証が覆らないと判断⇒却下しても差し支えない。

本件差戻し前第一審:
①心理学的要素に関する諸事実と
②前頭側頭型認知症のエピソードの出現前に被告人が万引きを始めていたこと
⇒完全責任能力を肯定。
but
控訴審は、精神医学の専門家であるA医師から相応の資料と根拠に基づく問題提起⇒原判決が指摘する事情では、精神鑑定を不必要とする判断に合理性がないとしたもの。

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2018年9月15日 (土)

花火大会での歩道橋での事故で業務上過失致死傷罪の共同正犯の成否が問われた事例

最高裁H28.7.12      
 
<事案>
平成13年7月、兵庫県明石市の公園において花火大会等が行われた際、公園と最寄り駅とを結ぶ歩道橋上で発生した雑踏事故に関して、当時の明石警察署副署長であった被告人が、検察審査会の強制起訴制度により業務上過失致死傷罪で起訴された事案。
被告人は、自己による最終の死傷結果の時点から計算すれば既に公訴時効期間が経過していた平成22年4月20日に起訴。
but
明石警察署のB地域官がこれ以前の平成14年に業務上過失致死傷罪で起訴され、平成22年に有罪判決が確定。

B地域官に対する起訴により、共犯の1人に対する起訴が他の共犯についても時効を停止させる旨規定した刑訴法254条2項に基づいて被告人に対しても公訴時効停止の効果が生じるかが問題。

被告人とB地域官に業務上過失致死傷罪の共同正犯が成立するか否かが争点。
 
<規定>
刑訴法 第254条〔時効の停止〕
時効は、当該事件についてした公訴の提起によつてその進行を停止し、管轄違又は公訴棄却の裁判が確定した時からその進行を始める。
共犯の一人に対してした公訴の提起による時効の停止は、他の共犯に対してその効力を有する。この場合において、停止した時効は、当該事件についてした裁判が確定した時からその進行を始める
 
<解説>
過失犯の共同正犯:

最高裁昭和28.1.23:
共同して飲食店を経営していた2名の被告人が、過失によりメタノール含有飲食物を販売したという事案において、被告人両名について共同正犯の成立を認め、過失犯の共同正犯が成立し得ることを示した。
but
事例判例。

東京地裁H4.1.23(世田谷ケーブル火災事件):
共同の注意義務を負う共同作業者間において、その注意義務を行った共同の行為があると認められる場合には、その共同作業員全員に対し過失犯の共同正犯が成立する。
 
<判断>
業務上過失致死傷罪の共同正犯が成立するためには、共同の業務上の注意義務に共同して違反したことが必要。 

B地域官、被告人等の職制や、準備段階及び事故当日における職務執行状況等に関する詳細な事実認定を前提に、
B地域官及び被告人がそれぞれ分担する役割は基本的に異なっていた
本件事故発生の防止のために要求され得る行為についても、
B地域官にについては、
事故当日において、配下警察官を指揮するとともに、
C署長を介し又は自ら直接機動隊の出動を要請して、本件歩道橋内への流入規制等を実施すること、
準備段階において、自ら又は配下警察官を指揮して本件警備計画を適切に策定することであったのに対し、
被告人については、
各時点を通じて、
基本的にはC署長に進言することなどにより、B地域官らに対する指揮監督が適切に行われるよう補佐することであった

本件事故を回避するために両者が負うべき具体的注意義務が共同のものであったということはできない

被告人とB地域官の間に業務上過失致死傷罪の共同正犯が成立する余地はないとして、上告を棄却。
 
<解説>
本決定は、本件のように組織的な過失が問題となる事案においても、問われているのは各行為者個人の刑事責任であることを踏まえ、各行為者の役割及び各行為者に事故発生防止のために要求され得る行為を特定し、
これらの同質性の程度や相互の関連性を総合的に考慮し、
各行為者が負う注意義務を具体的に想定して、
これらが共同の注意義務と言い得るものなのかを事案に即してきめ細かく判断
するべきであるという考えを前提にし、
本件の結論を導き出すに当たっても、
前記のようなB地域官及び被告人の役割の違い(それぞれの活動場面が異なることが指摘できる。)や、それぞれが要求され得る行為の内容(B地域間及び被告人それぞれに対して要求され得る行為の中で、互いに相手方は直接の働きかけの対象とはなっていないなど、協働する場面が想定し難い内容になっているという点等が指摘できる。)等を総合的に考慮したものと推定される。 

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2018年8月17日 (金)

犯人性が争われ、強盗殺人の訴因に対して1審有罪(殺人・窃盗)2審無罪

広島高裁松江支部H29.3.27    
 
第1審
●強盗殺人の訴因に対して、
被告人を、
①平成21年9月29日午後9時34分頃に米子市内のいわゆるラブホテルにおいて同ホテル支配人を殺害した殺人罪と
②その際に現金約26万8000円を窃取した窃盗罪
で有罪を認定。
 
●証拠構造 
◎第1次的間接事実 
被告人の自白はなく、状況証拠のみによって有罪と認定

①本件はホテルの内部構造と施錠状況を知った者の犯行であるところ被告人は本店長としてそれを知っていた
②被告人は盗まれた千円札とほぼ同枚数の千円札230枚を犯行の翌日所持していた
③被告人に動機がある
④被告人は事後の逃走等犯行を疑わせる行動がある
⑤被告人以外に犯人性のある人物がいない
 
◎第2次的間接事実 
前記の第1次間接事実を推認させる第2次間接事実

①(内部犯行=被告人)については、
(a)犯行場所であるホテルの事務室の場所は外部の者にはわからないこと、
(b)ホテル事務室への侵入経路は被告人しか辿れないこと

②(「盗品」の近接所持)については、
(a)窃盗の被害額は26万円であり、そのすべてが千円札
(b)犯行日の翌日に被告人は230枚の千円札を自分の口座に入金
(c)230枚の千円札の入手経路に関する被告人の弁解が信用できない

  ◎ ◎第3次的間接事実 
①(内部犯人性)の侵入経路を推認させる第3次間接事実として、
(a)犯人は午後9時30分に106号室の客室ドア2回開閉した(この事実はホテルの電磁記録から疑いない)
(b)犯人は午後9時34分に310号室の2階客室の扉を開けた(この事実はホテルの電磁記録から疑いない)
(c)前記(a)と(b)の時間関係からみて、
310号室の2階客室ドアは逃走時ではなく侵入時に開けられたものであり、
侵入経路は310号室1階駐車場⇒310号室(2階)⇒2階従業員用通路⇒ホテル事務室以外に考えられない
(d)前記の3つの事実から、外部の者が侵入可能な他の経路はすべて否定される。
 
<判断>
●内部犯人性に関する間接事実1について
原判決:犯行場所である事務室の所在は外部からは判別できない
vs.
事務室のある部屋の窓(ガラス戸)は他の客室の窓(板状の戸)とは明らかに異なっている⇒外部の者でも事務室の所在を推認できる。
⇒この点に関する原判決の認定は論理則、経験則に照らして不合理
 
●内部犯人性に関する間接事実2について
原判決:106号室の客室ドアを2階開閉したのは偏見の犯人であると認定しそれを根拠に侵入経路を特定
vs.
犯人以外の者がその開閉をする可能性があり、かつ犯人が内部事情に詳しい者であれば106号室の客室ドアを開閉するというような迂遠な行動はとならない
⇒この点に関する原判決の認定は論理則、経験則に照らして不合理
⇒原判決認定以外の侵入・逃走経路も否定できない。

被告人が230枚の千円札を所持する必要性と可能性及び事件後にこれを手放す(口座に入金する)理由の存在を根拠に、原判決の認定を不合理であると判断。 
 
<解説>
●判断準則
情況証拠のみによって有罪認定する場合の立証程度について、最高裁H19.10.16が、
さらにその場合情況証拠によって認められる間接事実中に一定の事実関係が含まれていることを要するとした最高裁H22.4.27.
刑訴法382条によって控訴審が第1審判決に事実誤認があるとする場合の判断方法について、最高裁H24.2.13
 
●盗品近接所持の法理:
盗品の被害発生の時点と近接した時点において盗品を所持していた者については、右物品の入手状況につき合理的な弁明をなし得ない限り、右物品を窃取したと認定してよいとする理論
but
本件では、被告人が所持していた230枚の千円札が盗品の千円札であるという証拠は存在しない

この点に関する被告人の弁解の信用性判断は、盗品そのものの所持に関する弁解の信用性判断とは異なる。 
 
●弁護人の訴訟手続の法令違反の主張につき原審裁判所の訴訟指揮は不適切であったと判示。
公判前整理手続において争点とされたの:
「被告人が金品物色中に事務所に戻ってきた被害者に発見されて殺害行為に及んだ」(=訴因は強盗殺人)というものであったところ、

原判決:
「窃盗の目的で侵入した事務所に予期に反して被害者がいて一度は窃盗を諦めたが、何らかのやり取りの後のいさかいから殺害行為に及んだ」
と認定した際、これを争点として顕在化させる手続をとらなかった
原判決が、被害者の行動と犯行態様をずらしたのは、近接所持からくる被告人犯人説に合うように侵入経路と犯行時間をずらした結果であると推認される。

裁判員裁判という時間的制約のもとでの有罪の評議結果と認定事実の整合性について、難しい対応を迫られる一事例。

判例時報2370

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2018年8月16日 (木)

原判決での死刑を量刑不当で破棄し、無期懲役とした事例

大阪高裁H29.3.9      
 
<事案>
白昼の繁華街において、無差別に通行人男女2名を包丁で殺害した事案。
 
●責任能力について
検察官は、本件の起訴前にD1医師(公判前整理手続段階で死亡)によるD1鑑定を行ったが、
公判前整理手続において新たに裁判員法50条による鑑定を請求し、D2医師によるD3鑑定が行われた。
原審公判では、D3医師に対する鑑定人尋問と弁護人請求のD2医師(D1鑑定の鑑定補助者)の証人尋問が行われ、弁護人請求のD1医師作成の精神鑑定書も取り調べられた。

D1、D2鑑定及びD2証言:
被告人は、犯行時、覚せい剤中毒後遺症ないし覚せい剤精神病の遷延・持続型(「本件精神障害」)にり患しており、それによる「刺しちゃえ」等の幻聴が犯行に影響したことを認める。

D3鑑定:幻聴の影響被告人自身が決めた行為を後押しし又は強化する程度にすぎず、覚せい剤の長期使用による大きな人格変化もないとしたのに対し、

D1鑑定とD2証言:犯行は幻聴に強く影響されており、被告人は覚せい剤の長期使用によって攻撃性等が強まりやすくなっていて、犯行前にそれらが著しく強まっていたとした。
 
<原審>
D3鑑定には合理性を欠くところがないが、
D1鑑定・D2証言には、前提とした幻聴内容等の事実関係又は前提事実からの推論過程に問題がある⇒D3鑑定を尊重すべき。 

犯行前の生活状況に異常がない
②自暴自棄になって幻聴に従って刺すことしたという犯行動機は了解可能
犯行に向けて合目的的に行動している
犯行直後に反省の弁を述べている
人格との異質性がない
弁識制御能力が若干低下していた可能性はあるが、完全責任能力が認められる
 
<判断>
原判断は正当。 

①被告人が供述する幻聴の存在は否定できないが、
D3鑑定は、当時の被告人の状況や前後の言動等を踏まえて、変遷の著しい被告人供述を批判的に検討した上で、幻聴の影響を合理的に説明
D1鑑定のうち幻聴が犯行に強く影響したとする点は、被告人供述のとおりの事実を前提としていることから疑問
幻聴が人格全体を巻き込んで深く影響したとはいえないというD1鑑定の結論部分は、D3鑑定と大きな隔たりがない
②被告人には葛藤に対する耐性が低く、攻撃性の発散に対する閾値が低いという人格の偏りがあり(D1、D3両鑑定)、そのような被告人が、将来への不安・失望からくる死にたい気持ち、親族に対する憤りなどの複合的な葛藤状態に置かれ、自暴自棄となって本件犯行を決意したと認められる。
覚せい剤使用による人格変化については、もともと被告人には著しい人格の偏り(攻撃性等)があり、D1鑑定及びD2医師が検討していない覚せい剤使用前からの暴力的な傾向をみると、人格の具体的変化は認められず、反抗への影響も大きくはない
D1鑑定もこれと大きくは異ならず、人格変化を重視するD2証言は具体的根拠を欠く。

D3鑑定が合理的。

D3鑑定によれば、本件犯行は、前記人格の偏りのある被告人が葛藤状態の下、自らの意思で決めた行動であって、幻聴は被告人自身が決めた行為を後押しし又は強化する程度にとどまり、本件犯行が本件精神障害に支配され又は著しく影響を受けていたとは認められない

動機の了解可能性、反道徳性の意識、行動の合理性、人格異質性(消極)については、原判決説示のとおり。

完全責任能力を認めた原判決は正当。
 
<解説>
最高裁H20.4.25:
生物学的要素である精神障害の有無及び程度並びにこれが心理学的要素に与えた影響の有無及び程度については、専門家たる精神医学者の意見が鑑定等として証拠となっている場合には、鑑定人の公正さや能力に疑いが生じたり、鑑定の前提条件に問題があったりするなど、これを採用し得ない合理的な事情が認められるのでない限り、裁判所は、その意見を十分に尊重して認定すべき。 

最高裁H21.12.8:
控訴審判決が、本件は妄想性障害による病的体験に直接支配された犯行であり、被告人は弁識制御能力を喪失していたとする精神鑑定を、前提資料や結論を導く推論過程に疑問があるとして採用せず、病的体験と犯行との関連性等を検討して心神耗弱を認めたことについて、その判断手法に誤りはなく、結論も相当であるとした。

最高裁H27.5.25(加古川7人殺害事件):
控訴審判決が、精神鑑定に基づいて妄想性障害を認めながら、同鑑定のうち同障害によって判断能力に著しい障害を受けていたとする部分を採用せず、完全責任能力を認めたことにつき、同鑑定部うbンは妄想の影響の程度に関する前提を異にしているとして、これを是認。

本判決の責任能力の判定場面における説示は、
まず鑑定意見に基づいて、精神障害が犯行に与えた影響の機序及び程度と、健常な精神機能(人格の偏りを含む)が作用した部分をできる限り明らかにして、その上で、精神障害の影響が弁識制御能力の喪失ないし著しい低下をもたらしたかについて、動機の了解可能性等を検討して、これを否定したもの。

鑑定結果が重大事件の帰趨を決することもある⇒請求者が的確な疑問を提起しているのであれば、50条鑑定の採用を躊躇してはならない。
 
●量刑不当について 
判断 原判決の量刑理由のうち、
①罪質の悪質さ、②強固な殺意に基づく態様の残虐さ、③結果の重大性、④社会的影響の大きさは正当。
⇒無期懲役よりも軽い刑は相当ではない。
but
⑤計画性が低いことを特に重視すべきでないとする点は是認できない、
⑥動機原因につき、反抗の決意に影響した幻聴は、覚せい剤の長期使用によって自ら招いた本件精神障害によるものであるから、幻聴の影響は特に有利に考慮できないとする点も是認できない、
⑦動機が身勝手かつ自己中心的であるとする点は相当だが、動機原因に酌むべき点が全くないとは言い切れない。

原判決の量刑判断は重要な犯情事実に関する誤った評価を前提とするもの。
計画性が低い上に精神障害の影響が否定できない。
殺害された2名以外に人的被害がない。


究極の刑罰であって公平性の確保の観点も考慮して真にやむを得ない場合に適用されるべき死刑につき、その選択がやむを得ないものとはいえない

量刑不当により原判決を破棄し、無期懲役に
 
<解説> 
●殺害の計画性は永山基準が挙げる因子ではない。
but
最高裁H27.2.3:
早い段階から被害者の死亡を意欲して殺害を計画し、これに沿って準備を整えて実行した場合には、生命侵害の危険性がより高いとともに生命軽視の度合いがより大きく、行為に対する非難が高まる
かかる計画性があったといえなければ、これらの観点からの非難が一定程度弱まる

●従来の裁判例では、
覚せい剤の長期使用による精神障害の影響につき、犯行に影響した精神症状が、犯行に近接した摂取ではなく覚せい剤中毒後遺症による場合であっても、それは自己が招いた結果であるとして、量刑上被告人に有利に考慮しないことが多かった

本判決の判断:
幻聴の影響は、被告人が自己の意思で決めた本件犯行(の遂行)を後押し又は強化した程度ではあるが、
それは、残虐な無差別通り魔殺人における被告人の生命軽視の態度を減じる要素として、また、遂行過程を含む犯行に向けた被告人の意思決定を一定程度左右した要素として考慮され、責任非難の度合いが軽減される。

薬物依存を自己の意思のみで断ち切ることは困難であるし、
刑の一部執行猶予の導入にも触れて、違法薬物の長期使用がもたらした幻聴の影響を量刑上考慮すべきであるとした。

薬物等の摂取による一時的精神障害につき、コモン・ローは精神障害の免責抗弁を認めていないが、
薬物等の長期使用によって持続的な物質誘発性精神疾患のような不治の精神障害になった場合には、この免責の抗弁を主張できるのが、
アメリカにおける一般的ルール。
 
●量刑事実(量刑判断の対象となる事実)、特に行為責任の大きさに関わる重要な事実について原判決の認定・評価に誤りがあり、原判決の量刑がこれらを正しく認定・評価した場合の量刑の枠を逸脱している場合には、量刑不当と判断。
事後審である控訴審は、量刑判断の不合理性を具体的に示す必要。

H27.2.3最高裁:
死刑の科刑が是認されるためには、死刑の選択をやむを得ないと認めた裁判体の判断の具体的、説得的な根拠が示される必要であり、
控訴審は、第一審のこのような判断が合理的なものといえるか否かを審査すべきであると判示。

死刑を言い渡す判決には、死刑の選択をやむを得ないと認めた具体的、説得的な根拠を示すべき重い説明責任が課されており(量刑傾向を大きく踏み出す懲役刑についても同じ問題がある。(最高裁H26.7.24))、

死刑選択を根拠として示された重要な量刑事実の認定・評価につき、控訴審が、その不合理性を具体的に指摘できるだけの理由をもって誤りと認めた場合には、死刑を選択した原判決が不合理であると判断され得る。

H27.2.3最高裁:
死刑は誠にやむを得ない場合に行われるべき究極の刑罰であって、その適用は慎重に行われなければならず、また、究極の刑罰であるがゆえに、その運用に当たっては、公平性の確保にも十分に注意を払わなければならない。

本判決:
死刑が究極の刑罰であることを踏まえて、
「死刑が相当かの判断は、無期懲役刑か死刑かどうかという連続性のない質的に異なる刑罰の選択であり、有期懲役刑における刑期のような、許容される幅といった考え方にはなじまないものである。」と説示。

判例時報2370

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2018年8月 4日 (土)

心神喪失等の状態で重大な他害行為⇒医療及び観察等に関する法律と憲法違反(否定)

東京高裁H29.7.14    
 
<事案>
対象者が、神奈川県内の書店において、被害女性(当時52歳)に対し、突然体当たりしてその場に転倒させる暴行を加え、よって、同人に全治約2か月間を要する仙椎骨折の傷害を負わせた
検察官は、対象者を心神耗弱者と認め、本件対象行為について公訴を提起しない処分をするとともに、心神喪失等の状態で重大な他害行為を行なった者の医療及び観察等に関する法律33条1項の申立て
 
<原審>
鑑定人作成の鑑定書及び横浜保護観察所長作成の生活環境調査報告書を含む1件記録に加え、審判期日の結果等

医療観察法42条1項1号により、対象者に対し、医療を受けさせるために入院させる旨決定。 
 
<抗告申立>
原審付添人は、
①医療観察法は、そもそも、憲法14条1項、22条1項及び31条に反するほか、
②原決定には、対象者について、医療観察法42条1項1号所定の入院をさせて同法による医療を受けさせる必要があると認めた点等において決定に影響を及ぼすべき重大な事実誤認がある。 
 
<判断>
①②を否定し、抗告棄却。 

判例時報2369

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