判例

2018年7月17日 (火)

だまされたふり作戦での荷物の受取役⇒詐欺未遂罪の共同正犯(肯定)

最高裁H29.12.11       
 
<事案>
被告人は、氏名不詳者による被害者に対する欺罔行為の後、氏名不詳者により依頼され、被害者から発送された荷物の受取役として本件に共謀関与したものと認定。

共犯者による欺罔行為後、だまされたふり作戦の開始を認識せずに、共謀の上、被害者から発送された荷物の受領行為に関与した者が、詐欺未遂罪の共同正犯の責任を負うか? 
 
<一審>
①被告人の共謀加担前に共犯者が銀網行為によって詐欺の結果発生の危険性を生じさせたことについては、それを被告人に帰責することができず、かつ、
②被告人の共謀加担後は、だまされたふり作戦が開始⇒被告人と共犯者らにおいて詐欺の実行行為がされたとはいえない。
⇒無罪 
 
<原審>
①承継的共同正犯の成立を肯定
未遂罪として処罰すべき法益侵害の危険性の有無の判断に際しては、当該行為時点でその場に置かれた一般人が認識し得た事情と行為者が特に認識していた事情を基礎とすべきであり、だまされたふり作戦の開始によっても受領行為に詐欺の既遂に至る現実的危険性があったといえる。

詐欺未遂罪の共同正犯の成立を肯定。
 
<判断>
だまされたふり作成の開始いかんにかかわらず、被告人は、その加功前の本件欺罔行為の点も含めた本件詐欺につき、詐欺未遂罪の共同正犯としての責任を負うと解するのが相当。
 
<解説>

詐欺罪の承継的共同正犯を肯定
だまされたふり作戦の開始は詐欺未遂罪の共同正犯の成立に影響を及ぼさない 
 
●詐欺未遂罪の承継的共同正犯の問題
承継的共同正犯の問題については、従来から、全ての犯罪類型に統一的な処理の指針を見出すのは困難⇒犯罪の種別ごとの個別的検討の重要性。

詐欺を完遂する上で欺罔行為と一体のものとして予定されていた受領行為への関与」という点を指摘。

原判決の指摘:
詐欺罪の保護法益は個人の財産であり、欺罔行為はこれを直接侵害するものではなく、欺罔行為を手段として錯誤に陥った者から財物の交付を受ける点に法益侵害性があるという詐欺罪の特質。

判例時報2368

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2018年7月16日 (月)

窃盗保護事件における第一種少年院送致決定が著しく不当ととされた事案

大阪高裁H29.7.19    
 
<事案>
当時、定時制高校に在籍(身柄拘束後に退学処分)していた少年が、約2週間のうちに、アルバイト先などにおいて、8回にわたって財布などを窃取したという窃盗の事案。 
 
<原決定>
①常習性のうかがえる非行の悪質性、
②窃盗に対する抵抗感の乏しさ
③広範性発達障害の疑いもある少年の資質上の問題及びそれと非行との結びつき

父母の注意では窃盗に対する抵抗感が涵養されておらず、資質上の問題に照らすと在宅での監護を継続して問題点を改善除去するのは困難。
⇒少年を第一種少年院に送致。
 
<判断>
原決定が重視した少年の資質上の問題等について理解を示しながら、
件数が多いとはいえ、非行の内容が重要ではなく
窃盗の常習性についても非行性が固着する段階に至っていない

軽微な前歴しかなく、保護者によって受け皿が準備されている少年に対して、原審が試験観察に付すなどして在宅処分との優劣を検討せず、直ちに施設内処遇を選択した点を挙げ、処分が著しく不当であるとした。
 
<解説>
試験観察:少年に対する終局決定を留保し、家庭裁判所調査官が少年の行動などの観察を行うための中間決定によってとられる措置(少年法25条)。
試験観察の不実施に言及した上で、処分不当を理由として少年院送致の処分を取り消した抗告審決定例は少なくない

判例時報2367

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2018年7月15日 (日)

検証許可状⇒パソコンからインターネットに接続し、メールサーバーにアクセスしメールの送受信歴及び内容を保存(違法)

東京高裁H28.12.7      
 
<事案>
被告人が、有印公文書である国立大学の学生証2通、危険物取扱者免状1通及び自動車運転免許証2通並びに有印私文書である私立大学の卒業証書2通をそれぞれ偽造し、さらに
共犯者らと共謀の上、建造物損壊3件及び非現住建造物等放火1件の各犯行に及んだ。
 
被告人 前記各事件への関与を否定。

弁護人は、捜査機関が行ったパーソナルコンピュータの検証には重大な違法⇒違法収集証拠排除の主張。 
 
<規定>
刑訴法 第二一八条[令状による差押え・捜索・記録命令付捜索・検証・身体検査、通信回線接続記録の複写等]
差し押さえるべき物が電子計算機であるときは、当該電子計算機に電気通信回線で接続している記録媒体であつて、当該電子計算機で作成若しくは変更をした電磁的記録又は当該電子計算機で変更若しくは消去をすることができることとされている電磁的記録を保管するために使用されていると認めるに足りる状況にあるものから、その電磁的記録を当該電子計算機又は他の記録媒体に複写した上、当該電子計算機又は当該他の記録媒体を差し押さえることができる。

刑訴法 第二二二条[準用規定等]
第九十九条第一項、第百条、第百二条から第百五条まで、第百十条から第百十二条まで、第百十四条、第百十五条及び第百十八条から第百二十四条までの規定は、検察官、検察事務官又は司法警察職員が第二百十八条、第二百二十条及び前条の規定によつてする押収又は捜索について、第百十条、第百十一条の二、第百十二条、第百十四条、第百十八条、第百二十九条、第百三十一条及び第百三十七条から第百四十条までの規定は、検察官、検察事務官又は司法警察職員が第二百十八条又は第二百二十条の規定によつてする検証についてこれを準用する。ただし、司法巡査は、第百二十二条から第百二十四条までに規定する処分をすることができない。

刑訴法 第一二九条[検証上必要な処分]
検証については、身体の検査、死体の解剖、墳墓の発掘、物の破壊その他必要な処分をすることができる。
 
<本件検証>
神奈川県警の警察官は、刑訴法218条2項のいわゆるリモートアクセスによる複写の処分が許可された捜索差押許可状に基づく、当時の被告人方を捜索し、本件パソコンを差し押さえた。
but
本件パソコンにログインするパスワードが判明していなかった⇒リモートアクセスによる複写の処分をしなかった

本件パソコンを検証すべき物とする検証許可状の発付を受け、本件パソコンの内容を複製したパーソナルコンピュータからインターネットに接続し、本件パソコンからのアクセス履歴が認められたメールアカウントのメールサーバーにアクセスし、メールの送受信履歴及び内容をダウンロード保存
 
<原審>
本件検証は、「検証すべき物」として本件パソコンが記載されているにすぎない検証許可状に基づく検証における必要な処分としてリモートアクセスを行ったもので、メールサーバーの管理者等の第三者の権利・利益を侵害する強制処分に他ならない。

捜査機関が、このような強制処分を必要な司法審査を経ずに行ったということは、現行の刑訴法の基本的な枠組みに反する違法なもの。 

サーバコンピュータが外国に存在すると認められる場合には、基本的にリモートアクセスによる複写の処分を行うことは差し控え、国際捜査共助を要請する方法によることが望ましく、本件においても、サーバーコンピュータが外国にある可能性が高く、捜査機関もそのことを認識していた⇒この処分を行うことは基本的に避けるべき。
本件検証には、令状主義の精神を没却するような重大な違法がある

本件検証の経過及び内容を記載した検証調書や、本件検証の結果をまとめた各捜査報告書は、本件検証の結果そのもの⇒証拠能力を排除。

弁護人が排除を求めるその余の証拠については、
個々に本件検証との関連性等を検討した結果、
いずれも本件検証と密接に関連するとまではいえない。

証拠排除を否定。
⇒被告人の犯人性を肯定し、有罪判決。
 
<判断>
公訴棄却 
 
<解説>
平成23年の刑訴法改正(「情報処理の高度化等に対処するための刑法等の一部を改正する法律」)によっていわゆるリモートアクセスによる複写の処分が導入
but
この複写の処分は、あくまで電子計算機の差押えを行う場合に付加的に認められた処分であり、差押え後に行うことは想定されていない

また、検証(刑訴法128条、218条1項)については、前記法改正によっても、リモートアクセスを許す規定は設けられなかった。 

本判決:
電子計算機を検証対象とした検証許可状に基づき、リモートアクセスに相当する処分を行うことは、現行法上、許容されない

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2018年7月13日 (金)

業務内容・問題対応・上司との関係⇒強い精神的負荷⇒うつ病⇒自殺で、公務起因性を肯定

名古屋高裁H29.7.6      
 
<事案>
Aが平成29年11月26日に自殺したことについて、処分行政庁に対し、公務災害の認定請求⇒本件災害を公務外災害と認定する旨の処分⇒不服審査請求も棄却⇒前記処分の取消しを求めた。 
 
<原審>
●公務起因性の判断基準について:
最高裁昭和51.11.12を引用し、
地方公務員災害補償法31条の「職員が公務上死亡した」とは、
公務に基づく疾病に起因して死亡した場合をいい、
その疾病と公務との間に相当因果関係が必要であり、
最高裁H8.3.5等を引用し、
前記の相当因果関係があるといえるためには、
その疾病が当該公務に内在又は随伴する危険が現実化したものであると認められることが必要

と判示。 

相当因果関係の判断に当たっては、
職場における地位や年齢、経験などが類似する者で、
通常の職務に就くことが期待されている平均的な職員を基準とすべきであり、
平均的な職員には、一定の素因や脆弱性を抱えながらも勤務の経験を要せず通常の公務に就き得る者を含む
 
●公園整備室は・・・もともと事務職の室長は、かなりの精神的負荷を受ける。
Aが執務に就任した当時の事情として






Aは、これらによって強い精神的負荷を受け、同年10月下旬から11月初めの時期に、周囲の者から見ても異常を感じさせる抑うつ状態

①Aがそのような抑うつ状態で、P1部長に対し、同年11月初めころ、降格覚悟で年度途中の異動を希望したが、年度途中の異動は難しいと言われ動揺し、
そのころ公園内で発生した事故の記者発表、市議会の対応に追われ、
同年11月26日に公園内で新たな人身事故が発生した旨の報告
業務の精神的負荷に耐えられなくなり本件災害に至った

②Aはうつ病に親和性の強い性格傾向であったが、勤務の軽減を要せず通常の公務についていた
本件災害について公務起因性を認め、Xの請求を認容。 
 
<本判決> 
原審判決を肯定。 
 
<解説>
疾病と公務の間に相当因果関係が必要であり、その疾病が当該公務に内在又は随伴する危険が現実化したものであると認められることが必要。

その判断に際しては、
精神障害は環境由来の心理的負荷の程度固体側の脆弱性の双方により発症するとの理解(「ストレスー脆弱性」理論)を前提として
一定の素因や脆弱性を抱えながらも勤務の軽減を要せず通常の公務に就き得る者を含む平均的な職員を基準とする。

Aの自殺の原因となった精神疾患について、
口頭弁論終結時における医学的知見に基づき、
本件災害後の新認定基準である「精神疾患等の公務災害の認定について」(平成24年地基補第61号)及びその運用指針(同第62号)に基づいて検討し、
Aが強度の精神的負荷を与える事象を伴う公務に従事していたと認め、
公務起因性を肯定


本件災害前のAの時間外労働時間は月50時間前後であって、それほど長時間であるとはいえない。

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2018年7月12日 (木)

歯科医師が歯科医師法違反の容疑で逮捕された旨の記事⇒検索事業者に対する検察結果削除請求(否定)

横浜地裁H29.9.1      
 
<事案>
Xは、自ら診療を行う診療所において、歯科医師資格を有しない者に問診やエックス線照射等の心療行為をさせた歯科医師法違反の被疑事実で逮捕され、新聞報道された(処分は罰金50万円の略式命令)。 

XがYに対し、
Yの提供する検索サービスを利用してXの氏名に「歯科」との語を加えた条件で検索すると前記逮捕事実が書き込まれたウェブサイトのURL,表題及び抜粋(URL等情報)が表示。
人格権に基づき検索結果の削除を求める
 
<判断>
プライバシーに属する事実を含む記事等が掲載されたウェブサイトのURL等情報について検索結果からの削除を求めるための要件を示した最高裁H29.1.31の規範に基づいて検討。

①本件逮捕等の事実が歯科医師の資格に関わる重大な事柄であり、②Xが今もなお現役の歯科医師
Xの歯科医師としての資質に関する社会の正当な関心事であると評価できる。(●事実の性質及び内容)

前記検索条件との関係⇒事実が伝達される範囲がXの歯科医師たる資質に正当な関心を抱く者に限られる(●事実が伝達される範囲)

Xの主張する職業上、私生活上の被害は、仮に存在するとしても本件検索結果の表示との間に因果関係を認め難いものであるか、正当な関心事としてXにおいて甘受すべき性質のもの(●具体的被害の程度)

削除を求める記事等がXの逮捕等を客観的に報道する正当な目的に基づくもの(●記事等の目的や意識、記事等において当該事実を記載する必要性)


本件検索結果を表示する意義及び必要性がなお少なからず存在しており、
事実の公表されないXの法的利益の優越が明らかとはえいない

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2018年7月11日 (水)

面会交流審判⇒禁止に変更。

名古屋高裁H29.3.17      
 
<事案>
調停離婚により未成年者の親権者と定められ、未成年者を監護するX(母)が相手方Y(父)に対し、面会交流審判事件に係る前審判で定める面会を、新たな協議が成立する等までの間、禁止することを求めたもの。 
 
<原審>
未成年者のYに対する面会を拒否する感情は強固
but
XもYとの面会に賛成していることなど、Yを未成年者の父親として尊重するなどの態度を示せば、未成年者のYに対する消極的感情を和らげることを期待できる。

前審判の定める面会を認めるのが相当であるととしたが、Xの立会いを認める期間については平成30年までと変更。 
 
<判断>
①未成年者が当初からYを頑なに拒否し続けていることは明らか
②現実の問題として、従前から通算して10回にわたる試行面会を経ても、未成年者のYに対する拒否的態度は一層強固なものとなっており、
遅くとも平成28年12月に一部実施した面会交流において、未成年者とYとの面会交流をこれ以上実施させることの心理的、医学的弊害が明らかとなったものと認められ、それが子の福祉に反することが明白になった

同月以降の直接的面会交流をさせるべきでないことが明らかになったということができる。

Yは、未成年者との面会交流につき、Xとの間でこれを許す新たな協議が成立するか、これを許す審判が確定し又は調停が成立するまでの間、未成年者と面会交流してはならない。

判例時報2367

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2018年7月10日 (火)

政務調査費の支出の一部が違法とされた事例

仙台地裁H29.11.2      
 
<事案>
仙台市民オンブズマンである原告が、仙台市議会の会派である補助参加人らにおいて、仙台市から交付を受けた平成23年の政務調査費の一部を違法に支出し、これを不当に利得した⇒地自法242条の2第1項4号に基づき、
仙台市長である被告に対し
補助参加人らに対して違法に支出した政務調査費相当額の金員の返還及びこれに対する遅延損害金又は法定利息の支払を請求するよう求めた

 
<争点>
①政務調査費の支出の違法性に係る判断枠組み
②選挙期間中の政務調査費の支出の適法性 
 
<判断>
●政務調査費の支出の違法性に係る判断枠組み 
◎違法性の判断基準 
法が政務調査費の制度を設けた趣旨を指摘した上で、
条例における使途に係る定めが法の趣旨に反しない限り、その定めに基づいて政務調査費の支出の違法性を判断するのが相当。
具体的な支出の違法性は、本件使途規準(本件条例の委任を受けて定められた本件規則において定められている使途基準)に合致するか否かを基準に判断

本件使途規準に合致しない場合:
当該支出の客観的な目的や性質に照らして、当該支出と議員の議会活動の基礎となる調査研究活動との間に合理的関連性がない場合をいう。

仙台市においては、政務調査費の対象外となる経費や支出手続等の本件条例の施行に関し必要な事項を定めた要綱(本件要綱)があり、法の趣旨に反しない限り、これを具体的支出の本件使途規準への適合性判断の指標とする。
 
◎主張立証責任 
原告において、支出が本件使途規準に合致せず違法であることを主張、立証することを要する
but
本件各支出が本件使途基準に合致せず違法であることを具体的に明らかにすることは困難である一方、被告らが本件使途基準に合致することについて説明することは比較的容易
法の趣旨には、政務調査費の使途の透明性の確保も含まれている

原告は、当該支出と議員の議会活動の基礎となる調査研究活動との間に合理的関連性がないことを示す一般的、外形的な事実の存在を主張、立証すれば足り、前記の事実が認められた場合には、被告らにおいて、当該支出により市政に関する具体的な調査研究が現にされたなどの特段の事情を立証しない限り、当該支出は本件使途規準に合致せず違法である。
 
◎本件要綱に基づく経費の按分 
本件要綱は、政務調査費に係る経費と政務調査費以外の経費を明確に区分し難く、従事割合その他の合理的な方法により按分することが困難である場合には、按分割合について2分の1を上限として計算した額を政務調査費の支出額とすることができる旨規定
前記規定は、法の趣旨及び前記の会派の活動の性質に照らして合理的

原告が、調査研究費活動以外の活動にも利用されることが推認される経費であることを示す一般的、外形的な事実を立証した場合は、
被告らにおいて、当該経費が調査研究活動のみに利用されたこと、又は、当該経費に関し、調査研究活動に利用された割合とそれ以外の以外の活動に利用された割合について、客観的資料に基づき立証することを要する。
 
●選挙期間中の政務調査費の支出の適法性 
①議員にとって、次回の選挙に当選するか否かは議員としての活動を続けようとする自らの立場を左右する重要な事項
②会派代表者の尋問結果に照らせば、会派及びその所属議員は選挙期間中には選挙活動に集中しており、調査研究活動はほとんど行われていないことが推認される

選挙期間中の活動に対し政務調査費が支出されたという事実は、当該支出と議員の議会活動の基礎となる調査研究活動との間に合理的関連性がないことを示す一般的、外形的事実であることが認められ、
原告がその事実の存在を立証した場合には、被告らにおいて当該支出により市政に関する具体的な調査研究が現にされたことを客観的資料に基づいて立証しない限り、当該支出は本件使途規準に合致せず違法であると判断するのが相当。
 
<解説>
●政務調査費の支出の違法性に係る判断枠組み 
◎違法性の実体要件
違法性の実体要件について、
A:裁量説:
議員側に市政との関連性や支出の必要性等について広範な裁量があることを前提に、裁量権の逸脱濫用があることを前提に、裁量権の逸脱濫用がある場合にのみ、違法となる。
B:合理的解釈説:
政務調査費の使途に応じて、比較的緩やかに必要性が認められるものと、それほど緩やかに解されないものがあるとして、個別の事案ごとに、条例等の使途規準に係る規定の合理的な解釈によって解決するとの見解。

◎主張立証責任 
①不当利得の要件事実的な考え方と
②現実の立証問題への配慮
一般的、外形的な事実の立証を原告に求める一般的、外形的事実説が妥当であると考えられている。
but
どのような事実をもって一般的、外形的事実とするかはなお議論

判例時報2367

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2018年7月 9日 (月)

少年の成人後起訴の場合と検察官送致決定

名古屋地裁H29.3.24    
 
<事案>
被告人は、少年であるうちに家庭裁判所で20条の検察官送致決定を受け、成人に達した後に起訴され被告人に。 
 
<弁護人>
本件の検察官送致決定には保護処分を選択しなかった点で同条の解釈適用を誤った重大な違法がある⇒無効。
その決定を受けてなされた本件控訴の提起も違法で無効。
⇒公訴棄却されるべき。 
 
<判断・解説>
●本判決:検察官送致決定後起訴前に対象者が成人に達した場合においても有効な検察官送致決定の存在が刑事事件の訴訟条件となる

◎ 少年法:
少年の処遇については専門性を有する家庭裁判所の判断に委ねる
⇒司法警察員及び検察官に対して、犯罪の嫌疑がある少年の被疑事件を前件家庭裁判所に送致することを義務づけ(家裁先議主義)。

家庭裁判所に、相当と認めるときに事件を検察官に送致する権限を与え(20条)、検察官送致決定による事件の送致を受けた検察官に一定の例外を残しつつ公訴提起を強制(45条5号)。

適法な検察官送致決定の存在が起訴後の刑事事件の訴訟条件

本件のように、検察官送致決定後控訴提起前に対象者が成人した場合も、起訴強制の効力は続く。

①事務処理繁忙等により起訴が遅れて対象者が成人に達した場合に起訴強制が働くなくなるのでは少年の処遇を専門性を有する家庭裁判所の判断に委ねた少年法の趣旨が損なわれる
②45条柱書及び同条5号は、起訴強制の要件として検察官送致決定の存在のみを掲げ、対象者が起訴時に少年であるかどうかを問わない書き方

対象者の成人後も起訴強制の効力が存続⇒対象者が少年のままである場合と同様、起訴は検察官送致と一体と捉えらえるべきであり、検察官送致決定の違法性を引き継ぐ。

●どのような瑕疵がある場合に検察官送致決定が無効あるいは不存在とされるか? 
◎ 最高裁H9.9.18:
家庭裁判所のした保護処分決定に対する少年側からの抗告に基づきその決定が取り消された場合に、差戻を受けた家庭裁判所は検察官送致決定をすることは許されず、検察官送致決定後の公訴提起は違法、無効。 

最高裁H26.1.20:
家庭裁判所が禁錮以上の刑に当たる罪の事件として検察官送致決定した事件について、検察官が、それと同一性が認められる罰金以下の刑に当たる罪の事件として公訴を提起することは許されず、同起訴を受けた刑事の裁判所は公訴棄却の判決をするべき。

公訴を提起した事件については検察官送致決定が不存在であると解したもの

仙台高裁昭和24.11.25:
非行時に13歳であることを看過してなされた検察官送致決定は違法であり、その後の公訴提起もまた違法。

検察官送致決定は存在する場合についてその実体的要件の欠缺を問題としたもの。

尚、判決時もなお少年の被告人については、55条移送が可能
⇒公訴棄却となるような検察官送致決定の違法性は違法性の程度が重大なものに限られるとの解釈。

◎ 本判決:
①検察官送致決定に対する不服申立ての規定はなく、刑事手続の中で55条による家庭裁判所移送の職権発動を促すことで検察官送致決定に対する事実上の不服申し立てを行うことができる
②家庭裁判所の判断は、同様の一件記録を使用する保護処分の抗告審との関係でも十分に尊重すべきものと位置づけられている
③刑事裁判所では判断資料も限られる

刑事裁判所は、訴訟条件としての検察官送致決定の適法性を審査するとしても、実質的判断内容の当否に踏み込むことは躊躇すべきであり(不服申立審でもない刑事事件を取り扱う裁判所が家庭裁判所の検察官送致決定の判断内容の当否について踏み込んだ審査をすることに適さない面もある。)

検察官送致決定が違法・無効であるとされ、送致を受けた検察官による公訴の提起もまた違法であるとして無効となる場合(刑訴法338条4号)とは、例えば検察官送致決定を行うこと自体が職務犯罪を構成する場合や、家庭裁判所が故意に事件を長期間にわたり放置していたにもかかわらず検察官送致決定を行なった場合など、極限的な場合に限られる

◎保護教育主義を採る少年法においては、検察官送致は例外的な存在。
検察官送致が許されるのは、原則として、
保護不能か保護不適の場合のみ。

(通説)

判例時報2366

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2018年7月 8日 (日)

贈収賄事件(1審無罪、控訴審有罪)

名古屋高裁H28.11.28       
 
<弁護側>
検察官と贈賄したと自認するP1の間に取引(刑訴法改正により導入された合意(刑訴法350条の2以下)、特に不起訴合意や求刑合意にちかいもの)があったとして、P1には、虚偽供述の動機があることを強く主張。 
 
<原審>
現金供与を認めたP1の公判証言の信用性を否定⇒現金授受の事実を認めるには合理的な疑いが残る⇒被告人は無罪。
 
<検察主張>
事実誤認の主張
㋐P1証言を離れ、現金授受に関連する状況証拠(関節証拠)のみによっても現金授受の存在が認められる。
㋑P1証言は、それらの情況証拠に整合し、かつ合理的に説明する内容であり、供述過程からも虚偽であるとは考えられず、信用性に疑いを容れる余地はない。 
 
<判断>
●㋐について:
実績のないP1の事業が被告人の働きかけによって、短期間で市の受け入れるところとなったように見えるが、それのみでは、現金の授受を推認することはできない。

●㋑について 
P1の平成25年4月2日に10万円(第1授受)、同月25日に20万円(第2授受)を被告人に供与したとの証言の信用性を肯定。

①供述が具体的、詳細で、弁護人からの反対尋問にも揺らいでおらず、
②供述内容に不合理な点がない。
③以下の事由

◎情況証拠との整合性
情況証拠だけでは現金授受の存在を認めるに足りないとしても、その情況証拠によって直接証拠であるP1証言が支えられ、これにより現金授受の存在が認定できるかどうかは、別途検討する必要がある。

①授受の資金の流れがP1証言と合致
②各現金供与の動機、経緯に関するP1証言が、美濃加茂市における浄水プラント設置の動きや被告人の市長選立候補をめぐる事実経過と整合的
③被告人の市長選挙に協力する(裏選対活動)ために美濃加茂市内に宿泊したP3の宿泊代金を、事前の合意に基づきP1が負担しており、被告人のための費用をP1が負担するという関係が形成されていたといえる、
④P1が、第二授受があったとされる前日、知人のP4に対し、市長選当選が確実な被告人に恩を売っておきたいから50万円貸してくれと頼み、また、別の知人P12に対しても、P1が逮捕される5か月以上前に、被告人に30万くらい渡したと述べていた

これらの事情がP1証言の信用性を高める。

◎供述経過 
P1証言の信用性は、その内容からすれば、P1が記憶通り真実を述べているのか、それとも意図的に虚偽を述べている疑いがあるのかという問題。
①原審で取調べ済みのP1の捜査段階の供述調書
②控訴審で取り調べたP1の取調べを担当した警察官の証言
③同警察官作成の取調べメモ等
に基づきP1の供述経過を詳細に検討
P1の供述は、その時々における自己の記憶に従ってなされたものであり、供述経過を理由にP1証言の信用性が否定されることはない。

◎原判決の証拠評価について 
原判決:
P1は捜査当時既に融資詐欺で起訴され、さらに別の融資詐欺での追起訴も予想される状況にあり、なるべく軽い処分を受けるために捜査機関の関心を他の重大事件に向けて融資詐欺の捜査の進展を止めたいなどという、虚偽供述の動機があったと指摘。
vs.
①P1が原判決指摘のような考えを持っていた可能性は否定できないと指摘しつつも、仮にP1が虚偽供述をしていたとすると、P1は実際に犯していない贈賄罪も併せて処罰を受けるおそれがある一方、融資詐欺の捜査等が止められる保証はなく、これは極めて危険な賭け
②捜査機関の関心を他の重大事件に向けるためには第二授受だけ話しておけば十分であるのに、わざわざ第一授受の件を付け足した理由の説明が付かない

P1証言の信用性を否定する理由にならない(本判決)。
 
<解説>
●控訴審判決が第一審判決を事実誤認で破棄するには、論理則、経験則に照らして、不合理であることを具体的に示す必要がある。 
 
●本判決:
P1証言は、自分の記憶通りの供述なのか、後から全くの虚偽の事実を作り上げた疑いがあるのかという視点から検討。

原判決:
そのような明確な視点は読み取れず、
供述内容については、一般的な信用性判断の枠組みで評価し、それ以外の事情として、虚偽供述の動機を検討。 

本判決:
取調官とのやりとりの中で分かっていたと思われる事項については、仮に客観的事実と整合していても、虚偽性を排除できないことを認める一方で、
後から作り上げることができない事実については、虚偽性を排除しうるものと位置付け。

P1が被告人に渡す金と明示して、借金した相手のP4や、
被告人が逮捕されるよりも前に、被告人に金を渡したことを話した相手のP12の供述を重視。


P1が本件について供述を始めるよりも前に、P4はその点を既に捜査機関に話していた
⇒P1証言は、秘密の暴露ではない。
but
P4の供述は、そのことを最初に話したものとして、信用性が高まる

P1自身が本件について供述を始めるよりも前に、P1が収賄罪となる可能性もあることを友人であるP4が供述するについては、虚偽である可能性は格段に低い。

本判決は、原判決が、そのようなP1証言の虚偽性を排除する可能性の高い証拠を取調べながら、そのような観点からの検討を怠った結果、P1証言の信用性判断を誤ったものと評価(=原判決が、論理則、経験則に照らして不合理であることを具体的に示した)

判例時報2366

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2018年7月 6日 (金)

大学教授に対する懲戒解雇が無効とされた事案

東京地裁H29.9.14      
 
<事案>
学校法人である被告に雇用された大学教授である原告が、被告から懲戒解雇
懲戒解雇が無効であるという仮処分確定後に予備的に普通解雇

これらの解雇が無効であると主張して、
被告に対し、地位確認、 未払賃金及び賞与の各支払を求めた。
懲戒解雇の対象となった行為:
①原告が被告から研究目的で貸与され、原告の研究室に置かれていたパソコンの中に、原告が配偶者以外の女生との性交の場面を自ら撮影した動画を保存。
②本件動画を入れた外付けハードディスクを学内外に持ち歩いて研究室に置かれていたパソコンにコピーしたことが、被告のコンピュータ利用規則及び就業規則に違反。

懲戒解雇を無効とする仮処分事件の確定後に被告が行った予備的な普通解雇の対象となった事由:
前記①②に加え、
③懲戒解雇の2年以上前に戒告処分を受けた上で学部長を解任され、商学部から講義を持たない教育研究推進機構に異動される原因となった同僚及び職員に対する恫喝的な言動
④原告が教育研究j推進機構への異動後、約2年半にわたり大学に出勤せず、その間の業績が低下している
⑤原告が被告に届出をせずに副業をしていた
 
<解説>
予備的解雇については、主位的解雇の意思表示が撤回され又は裁判によりその無効が確定されなくても許される(最高裁H8.9.26)。

使用者の設備の目的外使用については、
私立専門学校の教員が学校のパソコン及びメールアドレスからいわゆる出会い系サイトに登録し、大量のやりとりを行った事案について、
学校のメールアドレスであることを推知し得るメールアドレスを用いて露骨に性的関係を求める内容のメールを送信し、同メールの内容を第三者が閲覧可能な状態においたことは学校の品位体面、名誉信用を傷付けるもの
私用メールの送信の労力を職務に宛てればより一層の効果が得られた
懲戒解雇が有効(福岡高裁)。

風紀紊乱について、
独身の女性事務員が配偶者のいる男性社員と恋愛関係になり、取引先を含めた噂となり男性社員の妻からも会社に苦情が寄せられるなどした事案:
懲戒事由には該当するものの会社の企業運営に具体的な影響を与えたものとはいえない懲戒解雇無効(旭川地裁)
 
<規定>
労働契約法 第一五条(懲戒)
使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。

労働契約法 第一六条(解雇)
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
 
<判断>   
●懲戒解雇について 
本件動画を外付けハードディスクに入れて持ち歩き研究室内のパソコンにコピーをして保存した行為が懲戒事由に該当する。
but
研究室において本件動画を作成したものではなく、自宅で作成したデータを誤って研究室内のパソコンにコピーしてしまったという事実関係を前提に、
本件動画が外部に流出したことはなく実際に被告の社会的名誉及び信用が侵害されたものではない
②2度目の懲戒処分ではあるが以前の戒告処分の事由となった行為とは種類が異なる
本件動画のデータの削除は容易

懲戒解雇は重きに失するものとして相当性を欠く
懲戒権を濫用したものとして無効
 
●予備的は普通解雇 
①原告が過去に同僚教員等に不適切な言動を取ったことは認定しつつも、教育研究推進機構へ異動としなった後は同僚教員や教職員との接触がほとんどない
②研究室に出勤しなかったことについても被告がこれを認容している面があった
③研究業績の低下についても就業規則上の直近5年間に研究業績のない選任教員に対する指導がなされるほどではなかった
無届事業についても別個の懲戒処分の対象となるとはしながら、直ちに解雇事由には該当しない
無効(労契法16条)
 
●賞与 
就業規則にその支払に関する規定が置かれている場合であっても、通常は使用者が会社の業績等に基づき算定基準を決定し又は労使で金額を合意したときに初めて具体的な権利として発生
本件においては、賞与の算定基準について夏季と冬季で基本給に同一の支給係数を乗じて賞与を支給するという労使慣行
支給係数が明らかな限度で請求が認容

判例時報2366

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