民法

2017年12月22日 (金)

長野先生の不法行為責任内容論序説

■規範の内容
①権利回復規範:
侵害された権利の完全性を回復するために支出された費用⇒必要な限度で賠償されなければならない。

②価値補償規範:
侵害された権利が保障する権限ないし地位またはそこから得られたであろう利益が損なわれた場合⇒それらの価値が賠償されなければならない。

③権利保全規範:
権利の侵害を回避するために支出された費用⇒①と同様に賠償されなければならない

④利益保全規範:
侵害された権利が保障する権限ないし地位から得られたであろう利益の喪失を回避するために支出された費用⇒①と同様に賠償されなければならない

■規範の分類1
①権利回復規範、③権利保全規範
~権利の完全性、すなわち権利の保障内容の中核をなす「権限」または「地位」に向かられたもの

②価値補償j規範、④利益保全規範
~権利の保障内容をなす「利益」、すなわち中核たる「権限」または「地位」に基づき得られたであろう「利益」に向けられたもの

■規範の分類2
①権利回復規範、③権利保全規範、④利益保全規範
~いずれも不法行為に対する被害者の対抗措置が問題となっている⇒「対抗措置規範」

■対抗措置規範の賠償規準

①一定の費用の支出(の予定)が主張・立証されたことを前提として、
②問題となる費用の「必要性」が問題となる。
そこでの目的(権利の回復・保全、「利益」の保全)のために、被害者の立場にある合理人であればどのように行動したかが基準となる。
   
③被害者が自ら対抗措置⇒それに対する報酬を与えるという観点から一定の賠償が認められるべき。

■価値補償規範の賠償規準

①「権限」または「地位」自体の価値、あるいは
②それに基づき得られる「利益」の価値を算定。
   
①については、収益価値による算定が原則。
市場価値が存在する場合(所有権を初め、財産権の多くがそう)には、それが通常の利用の価値を表す。
   
②の「利益」については、
具体的な金額の形で生じる場合にはそれが基準となる。
そうでない場合にも、場合によっては具体的な金額を得る可能性があったならば、それを基に抽象的な利益の価値を算定すべき。
but
これについては、加害者の利益あるいは社会的負担軽減の観点から一定の閾値を設け、最低限の要保護性に達しないものについては賠償的確性を否定する可能性を留保しておくことが考えられる。

■規範間の適用関係 
   
これらの規範の適用が、目的が共通するため両立しない場合
⇒いずれが適用されるかは、原則として被害者の選択による。
but
他に適用可能な規範がある場合、被害者の選択した規範が排除され、当該他の規範が指示される場合がある。
その判断は、当該指示により得られる加害者の財産的利益または経済的効率性との衡量という、ハンドの定式と同様の判断枠組による。

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2013年4月 6日 (土)

刑務所での安全配慮義務違反と消滅時効の起算点

大阪高裁H24.10.25
   
受刑者に使用した革手錠の使用につき、安全配慮義務違反が認められるが、当該行為による損害賠償請求権は時効によって消滅しており、消滅時効の援用が権利の濫用あるいは信義則違反にあたるとはいえないとされた事例 

<事案>
名古屋刑務所に収容されていたXが、刑務官からの革手錠で締め上げられるなどの暴行を受けて骨盤骨折等の傷害を負い、数か月間の病舎での入院等を余儀なくされたとして、Y(国)に対し、安全配慮義務違反に基づき、550万円の損害賠償を請求した事案。 

<規定>
民法 第166条(消滅時効の進行等) 
消滅時効は、権利を行使することができる時から進行する。.

民法 第167条(債権等の消滅時効)
債権は、十年間行使しないときは、消滅する。

<一審>
損害賠償請求権の消滅時効の起算点は、Xが名古屋刑務所を出所した日である平成12年7月30日⇒消滅時効完成せず。

<判断>
損害賠償請求権の消滅時効の起算点は、革手錠が使用された平成10年4月17日か急性腎不全と診断された同月24日。
⇒時効期間経過している。

Yの消滅時効の援用が権利の濫用あるいは信義則違反と解することはできない。

<解説>
安全配慮義務の不履行に基づく損害賠償請求権の消滅時効期間は10年(民法167条1項)と解され、消滅時効は右請求権を行使し得るときから進行。

時効の成立が考えられる事案について、権利の濫用が主張される事例は少なくなく、これを認めた事例もあるが、時効援用が違法・不当と評価されるためには、かなり明白に特殊異常な要件を充たす場合に限定されるべきとされている。

http://www.simpral.com/hanreijihou2013zenhan.html

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