会社更生

2016年9月 5日 (月)

会社更生法100条に基づく役員責任査定申立ての事案

大阪地裁H27.12.14      
 
<事案>
会社更生手続中の更生会社Aの管財人である申立人Xが、更生会社の監査役であった弁護士Yに対し、平成17年法律第87号による改正前の商法277条に基づく損害賠償請求権の額を1億7781万8363円と査定する旨の決定を求めた、会社更生法100条に基づく役員責任査定申立ての事案。 

YはAの顧問弁護士であったところ、平成13年6月29日から平成18年3月31日までの間、Aの監査役の職にあって会計監査権限及び業務監査権限を有していた。

Bは、Aの代表取締役であり、株式会社Cの100%株主でもあった。
①Bは、Aの代表者として、Cとの間で業務委託契約(経営指導管理、コース管理及び建築設備管理)を締結し、Aは平成16年9月から平成18年3月までの間、Cに対し、業務委託料として合計1億1305万5594円を支払った(業務委託案件)
②Bは、Aの代表者として、A所有の不動産を7800万円でCに売却する旨の契約を締結した際、担保権設定等を行わずにCが長期間にわたって分割弁済することを許容する合意をした(分割弁済合意案件)

Xは、業務委託案件においてAがCに弁済した1億1305万559円及び分割払合意案件においてAがCから未だに弁済を受けていない6476万2769円について、Xが監査役としての任務を懈怠したためにAに生じた損害である旨を主張。 
 
<規定>
会社更生法 第100条(役員等の責任の査定の申立て等)
裁判所は、更生手続開始の決定があった場合において、前条第一項各号に規定する請求権が存在し、かつ、必要があると認めるときは、管財人の申立てにより又は職権で、決定で、当該請求権の額その他の内容を査定する裁判(以下この節において「役員等責任査定決定」という。)をすることができる。
2 前項の申立てをするときは、その原因となる事実を疎明しなければならない。
3 裁判所は、職権で役員等責任査定決定の手続を開始する場合には、その旨の決定をしなければならない。
4 第一項の申立て又は前項の決定があったときは、時効の中断に関しては、裁判上の請求があったものとみなす。
5 役員等責任査定決定の手続(役員等責任査定決定があった後のものを除く。)は、更生手続が終了したときは、終了する。
 
<判断>
●業務委託案件
①経営管理指導に関する業務委託契約については、その業務委託料がコース管理及び建築設備管理に係る業務委託料と比較すると比較的低額であった
②コース管理及び建築設備管理に関する業務委託契約については、それらの契約が締結される前にAからCへ従業員が転籍した事実はあるものの、Yがそのことを認識していたとは認められない

Yが、Aの監査役として活動する中で、業務委託料名下でAからCへ金員を支払ったことを是正しなかったとしても、Aの監査役としての職務を懈怠したとはいえない
 
●分割払合意案件
①Cが、分割払合意の際、相当程度の現預金を有するとともに経常利益を計上していた
②Aから買い受ける不動産により相当程度の事業収益を上げることができると予測しており、分割払合意のとおりに履行する可能性がないとはいえなかった
③Cの事業収益予測は、Cが金融機関から事業資金を借り入れる際に検討資料とされており、相応の合理性があったと推認される
④Aも、現金預金に一定程度の余裕があった

Aの取締役会において、分割払合意を承認する旨の決議がされたものの、Yに監査役としての任務懈怠があったとはいえばい
 
<解説>
平成17年法律第87号による改正前の商法277条は、「監査役がその任務を怠りたるときはその監査役は会社に対し連帯して損害賠償の責に任ず」と規定。
監査役の会社に対する責任追及がされる事案では、監査役が多数の取締役と一緒に被告とされることなどから、監査役固有の責任事由が主張されず、結果として監査役の責任が認められないことが多かった。

監査役の任務懈怠による損害賠償責任の成否を判断する上で必要な事実関係は何かということは、必ずしも明らかでなかった。

最高裁H21.11.27:
農業協同組合の事案で、監事としては、代表理事の言動に照らすと、補助金を受けることによって農業協同組合の資金的負担のない形で実行できるか否かについて疑問を持つことができた
事業のための資金の調達方法について調査、確認する義務があった。

大阪高裁H27.5.21:
破産会社の社外監査役が、自ら取締役会に出席をしたことによって、代表取締役の違法な業務執行行為の内容を熟知していた⇒監査役の任務懈怠による損害賠償責任を認める判断。

監査役の任務懈怠による損害賠償責任が肯定されるためには、取締役が違法な業務執行行為に実際に及ぶのではないかと推測させるに足りる具体的な事実が認められることが必要になると思われる。

本判決も、代表取締役であったBの業務執行行為が違法であることについて、監査役であったYが認識可能であったか否かを検討した上で、任務懈怠による損害賠償責任を否定。

判例時報2298

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2014年10月 5日 (日)

更生債権に関する訴訟が更正手続開始前に係属し受継されることなく終了した場合における当該訴訟に係る訴訟費用請求権の更生債権該当性(肯定)

最高裁H25.11.13    

更生債権に関する訴訟が更正手続開始前に係属し受継されることなく終了した場合における当該訴訟に係る訴訟費用請求権の更生債権該当性 

<事案>
更生債権に関する訴訟が更正手続開始前に係属し、当該訴訟が当然に終了した場合において、当該訴訟に係る訴訟費用請求権が更生債権に当たるか否かが問題となった事案。 

<事案>
Xは平成22年8月過払金返還請求訴訟を提起(「本案訴訟」)⇒武富士が同年9月に、保全管理命令⇒ 本案訴訟は中断⇒武富士は更生手続開始の決定を受け、Yが管財人に選任。
本案訴訟で請求していた金員の大半を更生債権として届出。
訴訟費用請求権については、更生債権としての届出をしなかった。
本案訴訟は、上記更生債権の確定及び認可決定により当然に終了。

Xが、民訴法73条に基づき、本案裁判所である札幌地方裁判所に対し、訴訟費用負担を命ずる決定の申立て(本件申立て)

原々審はY(管財人)に対し、訴訟費用の負担を命ずる決定。

原審は、原々決定を取消し、本件申立てを却下。
⇒Xが抗告許可の申立てをし、原審がこれを許可。
 
<Xの主張>
本件訴訟費用請求権は共益債権又は開始後債権に当たり、更生債権には当たらない⇒本件許可決定後においても訴訟費用の負担を命ずる決定の申立てをすることができる。 

<判断>
更生債権に関する訴訟が更正手続開始前に係属した場合において、当該訴訟が会社更生法156条又は158条の規定により受継されることなく終了したときは、当該訴訟に係る訴訟費用請求権は、更生債権に当たる。

原審の判断を維持し、本件抗告を棄却。 

<規定>
会社更生法 第2条(定義)
8 この法律において「更生債権」とは、更生会社に対し更生手続開始前の原因に基づいて生じた財産上の請求権又は次に掲げる権利であって、更生担保権又は共益債権に該当しないものをいう。
・・・・
 
<解説> 
会社更生法では、「更生手続開始前の原因」(法2条8項)に基づいて生じた財産上の請求権は、更生債権。

〇A:一部具備説:
更生債権の発生原因の全部が更正手続開始前に具備している必要はなく、主たる発生原因、あるいは、債権発生の基本的構成要件該当事実を具備していれば足りる

意思表示などの債権発生の基本的構成要件に該当する事実が、更生手続開始決定前に存在していれば足りる。弁済期が到来しているとか、停止条件が成就しているなどの要件は必要ではなく、確定期限未到来の再建、停止条件付債権、解除条件付債権も更生債権となる」

×B:全部具備説

訴訟費用:民訴法第4章第1節の規定に基づき、事件を完結する裁判や和解における特例の定め等又は申立てに基づく訴訟費用の負担が定められる。
訴訟の係属とともに現実の訴訟費用は生じるものの、上記裁判等がされるまでは、訴訟費用の総額、負担者、負担割合は定まらず、訴訟費用請求権の有無を含めて確定しない。

訴訟費用請求権は、訴訟費用の裁判の言渡しにより発生し、裁判以前は単なる期待権(期待利益、あるいは将来の請求権)にすぎない(多数説)。

条件付債権又は将来の請求権とされる請求権の倒産法上の法的性質:

無委託の保証人が破産手続開始後に弁済をした場合において取得する求償権
について、「保証契約が主たる債務者の破産手続開始前に締結されていれば、当該求償権の発生の基礎となる保証関係は、その破産手続開始前に発生しているということができる」として、破産債権該当性を肯定(最高裁H24.5.28)。

賃貸人が破産等した場合における建物賃貸借契約における敷金返還請求権について、倒産実務では、同請求権が契約終了後明渡完了時に具体的に発生するとしても、手続開始前の敷金契約に基づく債権であるとして、破産債権該当性を肯定

本決定:
「訴訟の当事者に生じた訴訟費用については、民訴法に規定する要件及び手続に従って相手方当事者に対する請求権が発生するものとされている」

更生手続開始前にその訴訟費用が生じていれば、当該請求権の発生の基礎となる事実関係はその更生手続開始前に発生しているとうことができる

更生手続開始前に訴訟費用が生じていれば、訴訟費用請求権の主たる発生原因が具備されているということができ、当該請求権が更生債権に該当するとの見解。

訴訟が会社更生法156条、158条により受継された場合等、管財人が訴訟手続に関与。

破産債権確定訴訟における訴訟費用の負担については、異議者等が敗訴した場合、すなわち破産管財人が破産債権確定訴訟を遂行し敗訴した場合には、破産管財人は相手方の訴訟費用の負担を命じられ(民訴法61条)、この費用は財団債権となり破産財団が負担する(破産法148条1項4号)。

判例時報2228

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