国賠

2015年4月 5日 (日)

重病児の親の窓口相談に対する市の窓口担当者の対応と国賠請求(肯定)

大阪高裁H26.11.27   

重病児の親の窓口相談に対する市の窓口担当者の対応が違法な行政指導であるとして市の国家賠償責任が認められた事例 
 
<事案>
Xらの子訴外Aが脳腫瘍に罹患⇒平成13年4月20日Yの窓口に重病を患って長期療養が必要となった児童の監護者に対する援助の有無について相談
Yの職員が、特別児童扶養手当の制度が存在するにもかかわらず、援助制度はないと回答

Xらは、Yの職員には、本件手当についての教示義務に違反があり、これによりXらが経済的な苦境に陥るなど精神的な苦痛を受けたと主張し、国賠法1条1項に基づき、損害賠償を請求。 
 
<原審>
Yの職員の教示義務違反を否定して、Xらの本訴請求を棄却。 
 
<判断>
Xらの相談の趣旨が経済的な援助を受けたいとすることにあったことは明らかであり、かつ、その相談内容に照らして、脳腫瘍に罹患したAが本件手当の対象となる可能性が相当程度あった

Yの窓口の担当者としては、本件手当に係る制度の対象となる可能性があることをXらに教示するなどして、本件手当を受給する機会を失わないようにすべき法的義務を負っていた

そうであるにもかかわらず、窓口の担当者は本件手当に係る制度の対象となる可能性があることを教示することもせず、本件手当に係る制度も含め、援助の制度はないと回答
⇒窓口の担当者には教示義務違反があり、裁量権を逸脱。
⇒Yの国賠責任を認め、Xの本訴請求を認容。

判例時報2247

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2015年3月 2日 (月)

米軍岩国基地に勤務する軍属が職務行為中に起こした交通事故については国のみが責任を負い、軍属個人は責任を負わないとされた事例

山口地裁岩国支部H26.9.12   

米軍岩国基地に勤務する軍属が職務行為中に起こした交通事故については国のみが責任を負い、軍属個人は責任を負わないとされた事例
 
<規定>
自賠法 第3条(自動車損害賠償責任) 
自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によつて他人の生命又は身体を害したときは、これによつて生じた損害を賠償する責に任ずる。ただし、自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかつたこと、被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があつたこと並びに自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかつたことを証明したときは、この限りでない。

国賠法 第1条〔公務員の不法行為と賠償責任、求償権〕 
国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。
②前項の場合において、公務員に故意又は重大な過失があつたときは、国又は公共団体は、その公務員に対して求償権を有する。
 
<請求>
Aの遺族であるXらは、
Y1に対し、自賠法3条に基づき
Y2(国)に対し、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第6条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う民事特別法(「民事特別法」)1条に基づき損害賠償請求。 
 
<判断>
Y2に対し、約3400万円の賠償を命じたが、
Y1に対する請求については、公権力の行使に当たる国の公務員が、その職務を行うについて、違法に他人に損害を与えた場合には、公務員個人はその責任を負わないのとと同様に米軍構成員個人は責任を負わないものと解するのが相当であるとして、その請求を棄却。
 
<解説>
民事特別法1条

合衆国軍隊の構成員又は被用者が、その職務を行うについて日本国内において違法に他人に損害を加えたときは、国がその損害を賠償する責に任ずるとしている⇒Y2(国)の責任を認めたことに問題ない。

国賠法1条による国賠請求については、国又は公共団体が賠償の責めに任ずるのであって、公務員個人はその責任を負うものではない(最高裁昭和30.4.19)。

判例時報2243

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2015年1月14日 (水)

拘置所内での鼻からの栄養剤注入と安全配慮義務違反(肯定)

大阪高裁H26.1.23   

拘置所に収容中の者に同意なく鼻からチューブを挿入して栄養剤を注入したことは安全配慮義務に違反するとして国の損害賠償責任が認められた事例 

<事案>
11回続けて食事拒否⇒鼻からカテーテルを挿入して栄養剤注入

<判断>
「安全配慮義務」とは、ある法律関係に基づいて特別な社会的接触の関係に入った当事者間において、当該法律関係の付随義務として当事者の一方又は双方が相手方に対して信義則上負う義務として一般に認められるところ、 被収容者の生命及び身体の安全を確保し、危険から保護すべき必要性は、雇用契約における雇用者と労働者との間の関係などと別異に解すべき論拠がなく、むしろそれ以上の必要性が認められる。

国は、被収容者の診療行為に関して、安全配慮義務を負担すると解するのが相当。

拘置所の医師は、絶食しているXに対し、点滴処置や経腸栄養剤の自主的嚥下などの実施を試みることなく、Xの同意を得ることなく、本件措置を実施。

安全配慮義務違反が認められる。

Yに対して50万円の支払を求める限度で、本訴請求を認容。
 
<解説>
強制力の伴う収容施設内の事故について安全配慮義務が適用されるか否かについては、積極説と消極説がるところ、本判決は積極説を採用。 

判例時報2239

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2015年1月13日 (火)

死刑確定者の信書の発信不許可と国賠請求(肯定)

大阪高裁H26.1.16   

死刑確定者の信書の発信を許可しないことは違法であるとして、国の損害賠償責任を認められた事例 
 
<事案> 
Xは、殺人、殺人未遂等の被告人として起訴され、平成21年5月19日、死刑判決が確定し、大阪拘置所に収容されているが、同年7月22日、右判決に対して再審の請求をした。 
Xは、平成22年9月28日と29日に、大阪拘置所職員に対し、本件信書の発信を申請したが、発信が許可されない信書であるとしてXに返戻された。
⇒Xは、本件信書の返戻は違法であり、これにより肉体的精神的苦痛を受けたとし、Yに対し、国賠法1条1項に基づき、100万円の損害賠償を請求。
 
<規定>
刑事収容施設法 第139条(発受を許す信書)
刑事施設の長は、死刑確定者(未決拘禁者としての地位を有するものを除く。以下この目において同じ。)に対し、この目、第百四十八条第三項又は次節の規定により禁止される場合を除き、次に掲げる信書を発受することを許すものとする。
一 死刑確定者の親族との間で発受する信書
二 婚姻関係の調整、訴訟の遂行、事業の維持その他の死刑確定者の身分上、法律上又は業務上の重大な利害に係る用務の処理のため発受する信書
三 発受により死刑確定者の心情の安定に資すると認められる信書

2 刑事施設の長は、死刑確定者に対し、前項各号に掲げる信書以外の信書の発受について、その発受の相手方との交友関係の維持その他その発受を必要とする事情があり、かつ、その発受により刑事施設の規律及び秩序を害するおそれがないと認めるときは、これを許すことができる
 
<一審> 
Xの請求を棄却 
 
<判断>
①本件信書は、刑事収容施設法139条1項により原則として発信を許可すべき信書には該当しない。
刑事収容施設法の条文の構造・趣旨からすれば、同法139条2項の信書の発受により刑事施設の規律及び秩序を害する結果を生じるおそれがある場合を除き、基本的に信書の発受は許されなければならないと解するのが相当。
③本件信書のうち弁護士以外の4名に関する部分は、4名との間の良好な交友関係を維持するためのものであると解され、他方、本件信書の発信により刑事施設の規律及び秩序を害する結果を生ずるおそれがあるとは認められない

大阪拘置所長としては、基本的に、本件信書の発信を許可すべき義務を負っていた。

本件信書は、刑事収容施設法139条2項の要件を満たしており、大阪拘置所長はその発信を許可する義務を負っていた⇒その発信を許可しないことは、裁量権を逸脱・濫用したものであって、国家賠償法上違法である、と判断。

Yに対して、慰謝料2万円の支払を求める限度で、Xの本訴請求を認容。

判例時報2238

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2014年4月14日 (月)

弁護人の死刑確定者との立会いのない面会拒否が国賠法上違法となる場合

最高裁H25.12.10   

死刑確定者又はその再審請求のために選任された弁護人が再審請求に向けた打合せをするために刑事施設の職員の立会いのない面会の申出をした場合にこれを許さない刑事施設の長の措置が国家賠償法1条1項の適用上違法となる場合 

<規定>
刑訴法 第39条〔被疑者・被告人との接見・授受〕
身体の拘束を受けている被告人又は被疑者は、弁護人又は弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者(弁護士でない者にあつては、第三十一条第二項の許可があつた後に限る。)と立会人なくして接見し、又は書類若しくは物の授受をすることができる。
②前項の接見又は授受については、法令(裁判所の規則を含む。以下同じ。)で、被告人又は被疑者の逃亡、罪証の隠滅又は戒護に支障のある物の授受を防ぐため必要な措置を規定することができる。
③検察官、検察事務官又は司法警察職員(司法警察員及び司法巡査をいう。以下同じ。)は、捜査のため必要があるときは、公訴の提起前に限り、第一項の接見又は授受に関し、その日時、場所及び時間を指定することができる。但し、その指定は、被疑者が防禦の準備をする権利を不当に制限するようなものであつてはならない。

刑訴法 第440条〔弁護人の選任〕
検察官以外の者は、再審の請求をする場合には、弁護人を選任することができる。
②前項の規定による弁護人の選任は、再審の判決があるまでその効力を有する。

憲法 第34条〔抑留・拘禁に対する保障〕
何人も、理由を直ちに告げられ、且つ、直ちに弁護人に依頼する権利を与へられなければ、抑留又は拘禁されない。又、何人も、正当な理由がなければ、拘禁されず、要求があれば、その理由は、直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示されなければならない。

刑事収容施設法 第121条(面会の立会い等)
刑事施設の長は、その指名する職員に、死刑確定者の面会に立ち会わせ、又はその面会の状況を録音させ、若しくは録画させるものとする。ただし、死刑確定者の訴訟の準備その他の正当な利益の保護のためその立会い又は録音若しくは録画をさせないことを適当とする事情がある場合において、相当と認めるときは、この限りでない。

<判断>
死刑確定者又は再審請求弁護人が再審請求に向けた打合せをするために秘密面会の申出をした場合に、これを許さない刑事施設の長の措置は、秘密面会により刑事施設の規律及び秩序を害する結果を生ずるおそれがあると認められ、又は死刑確定者の面会についての意向を踏まえその心情の安定を把握する必要性が高いと認められるなど特段の事情がない限り、裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用して死刑確定者の秘密面会をする利益を侵害するだけではなく、再審請求弁護人の固有の秘密面会をする利益も侵害するものとして、国賠法1条1項の適用上違法となる。

<解説>
死刑確定者の秘密面会の利益について、刑訴法39条の準用の有無の見解が分かれる。
死刑確定者が再審請求をするためには、再審請求弁護人から援助を受ける機会を実質的に保障する必要がある。
死刑確定者には秘密面会の利益が認められると判示。

憲法34条の弁護人依頼権が弁護人との接見交通権を保障する趣旨を含むとことと同様に、刑訴法440条の弁護人依頼権も弁護人との秘密面会を保障する趣旨を含むと解したもの。

本判決:
秘密面会の利益が保護されることは、死刑確定者の弁護人による弁護権の行使においても重要なものであるのみならず、刑訴法39条1項によって保障される秘密交通権が弁護人にとってはその固有権の重要なものの1つであるとされていることも踏まえれば(最高裁昭和53.7.10)、秘密面会の利益も、再審請求弁護人からいえばその固有の利益であると判示。

本判決:
死刑確定者の秘密面会の利益が刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律121条ただし書にいう「正当な利益」に該当。
but
再審請求弁護人の秘密面会の利益は右「正当な利益」に該当するとはしていない。

同条はあくまで死刑確定者の利益と刑事施設の規律等の確保等との調整を図る規定であって、必ずしも再審請求弁護人の秘密面会の利益までをも直接規律の対象とするものとはいえないと解した。

刑事施設の長が再審請求弁護人固有の秘密面会の利益を配慮すべき義務は、刑事収容施設法の「第2編第2章第11節第2款」の面会に関する規定全体の趣旨から導かれるという理解に立つものと思われる。

判例時報2211

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2013年5月 5日 (日)

町職員による戸別訪問と国賠請求

名古屋高裁H24.4.27   

町企画の小学校の統廃合に反対する署名者名簿を使用して町長の命を受けた町職員が戸別訪問をしたことにつき、署名者らが表現の自由、請願権を侵害されたとして求めた国家賠償請求が認められた事例

<事案>
Y町が町立小学校を統合することに反対する同町の住人Xらが、これに反対するため署名活動したところ、Yの職員が町長の指示によりXらに対して行った本件戸別訪問により表現の自由、請願権を侵害されたとして、Yに対し、国賠法1条に基づき、1人当たり55万円の損害賠償を請求した事案。 

<判断>
①民意の確認が本件戸別訪問の目的であるとは認められない。
②本件戸別訪問は、不当な目的を有していたと認められる。
③本件戸別訪問がその手段として相当性に欠ける。

これによりXらの表現の自由、請願権を侵害し、違法というべき。

それぞれ5万5000円の支払を求める限度で、Xらの本訴請求を認容。 

<解説>
国賠法1条1項の「違法」とは、国又は公共団体の公権力の行使に当たる公務員が個別の国民に対して負担する職務上の法的義務に違背すること(最高裁昭和60.11.21)。

http://www.simpral.com/hanreijihou2013zenhan.html

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2012年12月30日 (日)

固定資産の評価と国賠請求

名古屋高裁H24.7.19   

市がゴルフ場敷地の固定資産の評価に関し山林部分とコース部分を分離せずに一括評価し課税したことを違法として求めた国家賠償請求につき、市の担当者らに通常尽くすべき注意義務違反はないとして請求が棄却された事例 

<事案>
Xは、ゴルフ場を経営する会社であるところ、Y市から平成2年から平成14年までの間、その所有する本件ゴルフ場用地の固定資産税を賦課され納付してきたが、固定資産の評価につきコース部分と敷地部分を分離せずに一括評価しちえ課税したことを違法であるとし、Yに対して、国家賠償法1条1項に基づき損害賠償を請求。 

<規定>
第1条〔公務員の不法行為と賠償責任、求償権〕 
国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。
②前項の場合において、公務員に故意又は重大な過失があつたときは、国又は公共団体は、その公務員に対して求償権を有する。

<判断>
平成11年から平成14年当時、固定資産の評価基準解説においても、ゴルフ場用地の評価について、全てを一体として評価するのが適切である旨の解説がなされており、実際にも、山林部分もゴルフ場のコース部分の効用を高めるものであって、コースの一部として評価している自治体があったことが認められる。

Yの担当職員らが、Xのゴルフ場用地について、山林部分とコース部分とを一体として評価している自治体があったことが認められるから、Yの担当職員らが、Xのゴルフ場用地について、山林部分とコース部分を一体として評価したことについて、職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と課税処分をしたとは認め難い。

<解説>
行政処分取消訴訟における違法性と国賠法1条1項の違法性について:
最高裁H5.3.11:
いわゆる「違法性相対論」を採用し、行政処分が違法であっても、それが直ちに職務上の注意義務に違反した違法行為との評価を受けるものではなく、担当者が、職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と職務を行ったと認められるような事情がある場合に限り、国賠法1条1項にいう違法があったとの評価を受けるとの判断基準を示した、
本件は、右判例理論に依拠し、課税処分が違法であるか否かについて明確な判断を示さず、国賠法1条1項の違法性はないと判断し、Xの本訴請求を棄却。

http://www.simpral.com/hanreijihou2013zenhan.html

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