執行

2014年11月30日 (日)

諫早湾堤防開門禁止間接強制事件執行抗告審決定

福岡高裁H26.7.18    

国営諫早湾干拓事業の潮受け堤防排水門の解放禁止仮処分決定に基づく間接強制の申立てについて、制裁金の支払を命じた原決定を支持し、執行抗告が棄却された事例
諫早湾堤防開門禁止間接強制事件執行抗告審決定 
 
<事案>
国営諫早湾干拓事業の潮受堤防排水門の開門調査をめぐり、開門に反対する営農者であるXらが、国Yに対して開門の差止めを命じた仮処分決定に基づき、Yに対して間接強制の申立てをした事案。 
 
<規定>
民事執行法 第172条(間接強制)
作為又は不作為を目的とする債務で前条第一項の強制執行ができないものについての強制執行は、執行裁判所が、債務者に対し、遅延の期間に応じ、又は相当と認める一定の期間内に履行しないときは直ちに、債務の履行を確保するために相当と認める一定の額の金銭を債権者に支払うべき旨を命ずる方法により行う。
・・・
 
<原決定>
開門したときは、Y(国)は、Xらに対し、違反行為をした1日につき49万円を支払うよう命じた。 
⇒Yが執行抗告。
 
<判断>
(1)Yは、排水門を開門するための準備にとりかかり、必要な予算措置を講じていることなどからすれば、解放禁止決定に違反して開門するおそれを否定することはできない
(2)漁業者からの排水門の解放を求める確定判決と本件仮処分に基づく解放禁止を命ずる相矛盾する判決・決定があっても、当事者を異にするから本件確定判決の存在は、解放禁止義務の履行に関し、Yのみでは排除できない事実上の障害にはならないなどの理由を付加するほか、原決定の理由を引用し、原決定は相当であると判断し、抗告を棄却。
 
<解説>
民執法172条は、不作を命ずる債務の強制執行は、間接強制によって行うことを定めている。

間接強制決定を発令する要件として、債務者が不作為義務に現に違反している事実を立証する必要があるか?

最高裁H17.12.9:
債務者がその不作為義務に違反するおそれのあることを立証すれば足り、現にその不作為義務に違反していることを立証する必要はない。

判例時報2234

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2014年1月 5日 (日)

抵当権設定契約の公序良俗違反と競売手続での買受人の不動産取得否定の要件

東京高裁H25.7.30   

抵当権設定契約に基づき競売手続により買受人が不動産を競落した場合において、抵当権者が抵当権設定契約手続の際に印章を冒用して抵当権設定者が所有する他の土地の所有権移転登記をして資金調達を封じて競売手続に持ち込む企みを有していたときは抵当権設定契約は公序良俗に反して無効であるが、買受人が抵当権者と実質的に同一とまではいえず、企みを了知して買受申し出をしたともいえないとして、買受人の不動産所有権の取得を否定することはできないとされた事例

<事案>
SFCGの申立てにに基づき、担保不動産競売が開始され、Y1が本件競売手続により本件不動産を買い受けた。
Y1は、土地を分筆し、Y2は、本件不動産の一部を購入し、BがY2からさらにその一部を買い受けた。 

本件計画:SFCGの不動産担当者の甲と暴力団関係者乙が、本件抵当権設定契約の手続に紛れて印章を冒用して白紙委任状を作成し、偽造した印章により売買契約書を捏造するなどして、本件各土地と一帯としてマンション建設用地とする予定の土地の所有権をXから移転して、Xがこれを利用して資金調達ができず、SFCGからの融資を弁済できないようにした上で、本件各不動産を競売手続に父子、子会社に競落させてこれを取得するという、マンション建設用地の乗っ取り計画

<争点>
Xは、担保権の実行として競売手続において本件各不動産を競落したY1に対して、本件抵当権設定契約が公序良俗に反して無効であることを理由に、Y1が本件各不動産を取得していないと主張することができるか。 

<規定>
民執法 第182条(開始決定に対する執行抗告等)
不動産担保権の実行の開始決定に対する執行抗告又は執行異議の申立てにおいて、債務者又は不動産の所有者(不動産とみなされるものにあつては、その権利者。以下同じ。)は、担保権の不存在又は消滅を理由とすることができる

民執法 第183条(不動産担保権の実行の手続の停止)
不動産担保権の実行の手続は、次に掲げる文書の提出があつたときは、停止しなければならない。
一 担保権のないことを証する確定判決(確定判決と同一の効力を有するものを含む。次号において同じ。)の謄本
二 第百八十一条第一項第一号に掲げる裁判若しくはこれと同一の効力を有するものを取り消し、若しくはその効力がないことを宣言し、又は同項第三号に掲げる登記を抹消すべき旨を命ずる確定判決の謄本
三 担保権の実行をしない旨、その実行の申立てを取り下げる旨又は債権者が担保権によつて担保される債権の弁済を受け、若しくはその債権の弁済の猶予をした旨を記載した裁判上の和解の調書その他の公文書の謄本
四 担保権の登記の抹消に関する登記事項証明書
五 不動産担保権の実行の手続の停止及び執行処分の取消しを命ずる旨を記載した裁判の謄本
六 不動産担保権の実行の手続の一時の停止を命ずる旨を記載した裁判の謄本
七 担保権の実行を一時禁止する裁判の謄本
2 前項第一号から第五号までに掲げる文書が提出されたときは、執行裁判所は、既にした執行処分をも取り消さなければならない。
3 第十二条の規定は、前項の規定による決定については適用しない。
 
民事執行法 第184条(代金の納付による不動産取得の効果)
担保不動産競売における代金の納付による買受人の不動産の取得は、担保権の不存在又は消滅により妨げられない
 
<原審>
Y1が本件契約を知りながら買受申出をしたとは認められず、またY1とSFCGが実質的に同一であるとはいえない⇒Y1による本件各不動産の所有権の取得を否定することはできない。 

<判断>

本件消費貸借契約と、これに基づく本件抵当権設定契約も、それ自体は問題のないもの。⇒これを公序良俗により無効であるというために、Xの主張する本件計画なるものがあり、SFCGの甲(不動産担当部長)が本件計画を認識し、これに荷担していたことを要する

本件事実関係からすると、甲は、本件抵当権設定契約の当初から本件計画を認識・荷担していたと推認される。

本件抵当権設定契約は、本件計画のための一つの手段として締結されたものであり、公序良俗に反して無効


Xは、競売手続により本件各不動産を競落したY1に対して、本件抵当権設定契約が公序良俗に反して無効であることを理由に、Y1が本件各不動産を取得していないと主張しうるか:

Xは本件競売手続において所有者として扱われていた⇒Xが買受人であるY1に対して、本件各不動産の競落による取得を否定することができるのは、
①Y1が、本件抵当権設定契約が公序良俗に反して無効であることを了知していながら、買受申し出をした、又は
②Y1が、SFCGと実質的に同一であって、SFCG自身が買受人となっているとみることができる
など特別の事情が認められる場合に限られる。

本件計画は犯罪性があるから、経験則上、必要最小限度の関与者にしか知らせないようにする。
謀議の場にY1の関係者が同席していたことなど、Y1が本件計画を了知していたことを推認できる事情は認められない。
Y1の代表者と、SFCGの代表者との間に親族関係はあるが、資本関係があることは認められず、・・SFCGとY1とに取締役として共通する者もいない。
⇒本件の関係でY1が、SFCGと実質的に同一であると評価することは困難。

<解説> 
①②の事情があるときは、民執法184条の例外としたもの。

民執法184条を適用するためには、競売不動産の所有者がたまたま不動産競売手続が開始されたことを知り、その停止申立て等の措置を講ずることができたというだけでは足りず、所有者が不動産競売手続上当事者として扱われたことを要する(最高裁H5.12.17)。

本件では、Xは、不動産競売手続上当事者として扱われていた
⇒民執法181条ないし183条の手続に則って自己の権利を確保することができたが、本件では、Xはそれをすることなく、本件訴訟を提起。

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