離婚

2014年12月30日 (火)

2人の未成熟児のいる有責配偶者(フランス国籍の妻)からの離婚請求が認められた事例

東京高裁H26.6.12   

2人の未成熟子がいる夫婦のフランス国籍の妻が日本国籍の夫に対し婚姻を継続し難い重大な事由があるとして離婚及び親権者の指定等を申し立てている事案において、妻は有責配偶者であるとして離婚請求を棄却した原判決を取り消し、離婚請求及び親権者の指定等が認容された事例
 
<事案>
我が国の方式により婚姻し、長男と長女が誕生した夫婦において、フランス国籍の妻である控訴人が未成年者らを連れて家を出て別居した後、日本国籍の夫である被控訴人に対し、婚姻を継続し難い重大な事由があるとして、離婚を求めるともに、その附帯処分として、未成年者らの親権者を控訴人に指定すること、養育費として未成年者ら1人当たり月額6万円を支払うこと及び財産分与として300万円を支払うことを申し立てた事案。 
 
<規定>
法の適用に関する通則法 第25条(婚姻の効力)
婚姻の効力は、夫婦の本国法が同一であるときはその法により、その法がない場合において夫婦の常居所地法が同一であるときはその法により、そのいずれの法もないときは夫婦に最も密接な関係がある地の法による。.
 
法の適用に関する通則法 第27条(離婚)
第二十五条の規定は、離婚について準用する。ただし、夫婦の一方が日本に常居所を有する日本人であるときは、離婚は、日本法による。.
 
<一審>
控訴人(妻)はフランス国籍を有する者であるが、被控訴人(夫)は日本国籍を有し、日本に常居所を有する者と認められる⇒法の適用に関する通則法27条ただし書により、本件の準拠法は日本法。

控訴人が離婚話を切り出し、間もなく別居したのは、控訴人が他の男性との生活を望んだからであって、別居期間は1年半余にすぎない。
控訴人がその行動を改めさえすれば夫婦関係は修復される可能性がある。
婚姻関係は未だ破綻していない

仮に、控訴人の離婚意思が強固であり、現段階においては控訴人と被控訴人の婚姻関係が破綻しているとしても、その原因は、控訴人が他の男性との生活を望んだからであることは明らか⇒控訴人の離婚請求は、有責配偶者からの離婚請求であって、信義誠実の原則に反し許されない
⇒控訴人の請求を棄却。
 
<控訴提起>
控訴人は、控訴人が離婚した場合の在留資格についてフランス領事や弁護士に相談したり、被控訴人に対して仕事を始めたいと伝え、経済的に自立する準備を始めたこと、被控訴人は、控訴人のクレジットカードを取り上げ、控訴人に対し、「家から出て行け」と言ったりしたこと、控訴人は、日本で永住者ビザを取得し、離婚しても日本で暮らせるようにしたこと⇒控訴人と被控訴人の婚姻関係は、別居前の平成23年9月21日には既に破綻していたなどと主張し、控訴を提起。
控訴人は、控訴審におて財産分与の申立てを取り下げた。
 
<判断>
●婚姻関係の破たんの有無 

もともとは被控訴人が、控訴人が被控訴人の言うことを聞かないとして離婚を切り出した、控訴人に被控訴人の言うことを聞かせようとして、被控訴人が控訴人の携帯電話やメールを使えないようにしたり、クレジットカードをキャンセルしたりした⇒控訴人は被控訴人に対する信頼を失い、夫婦としての亀裂が決定的なものになった。

控訴人は、フランス人男性と交際するようになり、平成23年11月頃には被控訴人との離婚を決心し、平成24年5月上旬頃には被控訴人に対して離婚してほしいと告げ、被控訴人は同年8月頃まで考えさせてほしいと答えたものの、被控訴人が同年5月30日には未成年者らを連れて自宅を出て被控訴人と別居し、同年6月には横浜家庭裁判所に離婚調停を申し立てた⇒被控訴人も、控訴人に対して自宅に立ち入らないように申し渡し、控訴人に対して家の鍵を返すよう要求した上、控訴人が残した物を全て廃棄すると通告しただけではなく、同年9月頃には、控訴人が外国人男性宅から出てくるのを待ち構え、暴力沙汰となって、警察官が臨場する騒ぎになった。

控訴人も被控訴人も、夫婦としての関係を修復するための具体的な行動は何もとっておらず、かえって被控訴人においても、控訴人の自宅への立ち入りを拒絶し、離婚に備えて未成年者らとの関係を維持するためのフランスのビザ取得の方法や内容等を相談するなどして、控訴人との婚姻関係の破綻を前提とする行動をとっている。

⇒もはや2人の婚姻関係が修復される見込みはないと考えられ、控訴人と被控訴人との婚姻関係は、遅くとも平成24年9月頃には決定的に破綻していた⇒民法770条1項5号所定の「婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」に該当する。
 
●控訴人の離婚請求が認容できるか 

控訴人は、2人の外国人男性と交際し、被控訴人に対して離婚してほしいと伝えている⇒控訴人と被控訴人の婚姻関係が決定的に破たんしたのは、主に控訴人が2人の外国人男性と不貞行為に及んだため控訴人は有責配偶者

有責配偶者からの離婚請求が否定されてきた実質的な理由の1つには、一家の収入を支えている夫が、妻以外の女性と不貞関係に及んで別居状態となり、そのような身勝手な夫からの離婚請求をそのまま認めてしまうことは、残された妻子が安定的な収入を断たれて経済的に不安定な状態に追い込まれてしまい、著しく社会正義に反する結果となるため、そのような事態を回避するという目的があった。

仮に、形式的には有責配偶者からの離婚請求であっても、実質的にそのような著しく社会正義に反するような結果がもたらされる場合でなければ、その離婚請求とぉどうしても否定しなければならないものではない

②・・・控訴人がもはや被控訴人と婚姻関係を継続することはできないと考えるようになり、二人の外国人男性と交際するようになったことについては、フランス人として個人の自由や権利を尊重することを当然のこととする控訴人の気持ちや人格に対する十分な理解を欠き、控訴人を追い詰めていった被控訴人にも相応の原因があるというべき。
⇒控訴人と被控訴人との婚姻関係が破綻した責任の一端が被控訴人にもあることは、明らか。

③・・・控訴人としては、働きながら両名(6歳の長男と4歳の長女)を養育監護していく覚悟であるkとが認められ、控訴人による養育監護の状況等に特に問題もない
⇒控訴人の本件離婚請求を認容したとしても、未成年者の福祉が殊更害されるものとは認め難い

④・・・被控訴人は、もともと控訴人との離婚を求めていた経緯があるだけでなく、平成25年度において約961万円の年収がある。
⇒本件離婚請求を認めたとしても、(被控訴人が)精神的・社会的・経済的に著しく不利益な状態に立ち至るわけでもないと考えられる。

⑤形式的には有責配偶者からの離婚請求ではあるものの、有責配偶者である控訴人の責任の態様・程度はもとより、相手方配偶者である被控訴人の婚姻継続についての意思及び控訴人に対する感情離婚を認めた場合における被控訴人の精神的・社会的・経済的状態及び夫婦間の子である未成年者らの監護・教育・福祉の状況別居後に形成されている相互の生活関係等を勘案しても、控訴人が求めている離婚請求は、社会正義に照らして到底許容することができないというものではなく、夫婦としての信義則に反するものではない
原判決を取り消し、本件離婚請求を認容
 
<解説> 
● 
最高裁昭和27.2.19:「踏んだり蹴ったり」判決:有責配偶者からの離婚請求は認められない。
最高裁昭和38.6.7:「婚姻関係が破綻した場合においても、その破綻につきもっぱら又は主として原因を与えた当事者は、自ら離婚の請求をなしえないものと解するのを相当とする」
 
最高裁昭和62.9.2:判例変更
有責配偶者からされた離婚請求であっても、夫婦の別居が当事者の年齢及び同居期間と対比して相当の長期間に及びその間に未成熟の子がいない場合には、相手方配偶者が離婚によって精神的・社会的・経済的に極めて苛酷な状態におかれる等離婚請求を認容することが著しく社会正義に反するといえるような特段の事情のない限り有責配偶者からの請求であるとの一事をもって許されないとすることはできない
② 有責配偶者からされた離婚請求であっても、夫婦の別居期間が36年に及び、その間に未成熟子がいない場合には、相手方配偶者が離婚によって精神的・社会的・経済的に極めて苛酷な状態におかれる等離婚請求を認容することが著しく社会正義に反するといえるような特段の事情のない限り、認容すべきである。


離婚法は、①夫婦の一方に姦通その他一定の有責行為がある場合にのみ離婚を認める「限定的有責主義」⇒②広く有責的行為によって婚姻を破綻させた場合に離婚を認める「一般的有責主義」⇒③相手方の行方不明、回復の見込のない精神病のような責任のない事実によっても離婚を認める「限定的破綻者義」⇒④広く婚姻関係の破綻そのものを離婚原因とする「一般的破綻主義」へと発展。

当初は、婚姻関係が破綻しているとしても、その破綻を自ら作り出した者が離婚請求をすることは許されないとする「消極的破綻主義」が多数説。
⇒婚姻関係が破綻した場合には有責性の有無を問わず離婚を認める「積極的破綻主義」へ⇒昭和62年判例へ。

尚、昭和62年判例の①相当長期間の別居、②未成熟子の不存在、③苛酷な状態の不存在という3要件が必ずしも貫徹されていない。


本件は、別居期間も短く、未成熟子もいる
⇒有責配偶者からの離婚請求として離婚を認めないとうい結論(第一審)になりそう
but
本判決は、
最高裁昭和62年判決について、これまで有責配偶者からの離婚請求が否定されてきた実質的な理由の1つには、一家の収入を支えている夫が妻以外の女性と不貞関係に及んで別居状態となり、そのような身勝手な夫からの離婚請求を安易に認めると、残された妻子が安定的な収入を断たれて経済的に困窮するなど、著しく社会正義に反する結果となるため、そのような事態を回避するという目的があったものと理解。

本件では、①既に婚姻関係は破たんしており、②妻の不倫が認められるとはいえ、夫の無理解がそのような妻の不倫の引き金になっており、必ずしも妻だけに責任があるわけではないこと、③妻は、働きながら未成年者らの養育監護をしていく覚悟があり、現に養育監護の情況等に特段の問題はなく、離婚を認めたとしても未成年者らの福祉が殊更に阿木されるものとは認め難いこと、④仮に離婚を認めて夫が酷な状態の置かれるわけでもないこと等の事情を考慮し、有責配偶者である妻からの離婚請求を認容しても著しく社会正義に反する結果とはならないと判断し、これを認容


最高裁昭和62年判決から27年の歳月が経過し、この間に離婚に対する社会的な受け止め方は大きく変化。
女性の経済的な自立も促進され、有責配偶者であるとして離婚を制限しようとすることは、必ずしも女性保護につながるものではなく、婚姻は両性の合意のみに基づいて成立するとの憲法24条1項の理解にも影響を及ぼす問題。

判例時報2237

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