知的財産権

2022年4月21日 (木)

特許権の共有と特許法102条での覆滅

知財高裁R2.9.30

<事案>
「光照射装置」と称する特許(本件特許)の特許権者であるXが、Yの製造販売する被告各製品の製造販売等の差止め等、損害賠償(予備的に不当利得返還)を求めた。

本件特許については、2度にわたり訂正請求がされ、確定しているところ、
被告各製品が、2度目の訂正後の(本件特許の請求項1に係る)発明(本件再訂正発明)の構成要件を充足することに争いはなく、
訂正要件違反による無効の抗弁等の抗弁と、損害額が主たる争点。

<判断>
● 侵害論に係るYの抗弁を全て排斥し、被告各製品の限界利益の形成に対する本件再訂正発明の寄与割合を原審からさらに引き下げた。
特許権が共有に係るときは、各共有者は、別段の定めのある場合を除き、自己の持分割合にかかわらず、無制限に特許発明を実施することができる(特許法73条2項)。
but
例えば2名の共有者の一方が単独で特許法102条2項に基づく損害額の損害賠償請求をする場合、侵害者が侵害行為により受けた利益は、一方の共有者の共有持分権の侵害のみならず、他方の共有者の共有持分権の侵害によるものであるといえる

前記利益の額のうち、他方の共有者の共有持分権の侵害に係る損害額に相当する部分については、一方の共有者の受けた損害額との間に相当因果関係はない

侵害者が、特許権が他の共有者との共有であることを主張立証したときは、同項による推定は他の共有者の共有持分割合による同条3項に基づく実施料相当額の損害額の限度で覆滅され、
また、侵害者が、他の共有者が特許発明を実施していることを主張立証したときは、
同条2項による推定は他の共有者の実施の程度(共有者間の実施による利益額の比)に応じて按分した損害額の限度で覆滅される。
本件では、他の共有者の共有持分割合による実施料相当額の限度で推定の覆滅を認めた。

● 判決時には他の共有者との共有関係が解消し、共有関係を基礎とする密接な関係にはない
⇒連帯債権説を斥けた。

<解説>
特許権が共有である場合の特許法102条2項による損害額の算定について、
A:新会社の利益額を持分割合による按分するべき
B:共有者の売上額で按分すべき
C:共有者の利益額で按分すべき
D:原則として共有者の利益額で按分するべきであるが、利益額が明らかにならないときは持分割合により按分することもありうる
E: 原則として共有者の利益額で按分するべきであるが、当事者の同意があるときは持分割合でも差し支えない

共有者の1人のみが特許発明を実施していた場合:
①実施共有者の逸失利益相当損害賠償請求権と
②不実施共有者の共有持分割合による実施料相当損害賠償請求権
の関係が問題。

両者を認容すると、単独保有の場合に比べ、侵害者の負担が過大に
⇒実施共有者の逸失利益から、不実施共有者の共有持分割合による実施料相当損害額を控除するとの見解が有力。

不真正連帯債権であるとする見解

①実施共有者のみが原告となって判決がされた後、不実施共有者が後に提起した訴訟では、実施料相当損害額について異なる判断がされる可能性がある
②特許権の共有は共同研究によって生まれた成果である場合など、共有者の一体性が強い

判例時報2508

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2022年4月20日 (水)

特許権の共有者の1人が特許法73条2項の「別段の定」に反して製造販売した事案

知財高裁R2.11.30

<事案>
本件発明等についての本件特許権は、XとYとEとFの4名の共有であり、
これらの4名は、本件特許権について共同出願契約を締結。
その中に
「事前の協議・許可なく、本件の各権利(本件特許権)を新たに取得し、又は生産・販売行為を行った場合、本件の各権利ははく奪される。」との条項(本件条項)
Yは、Xから仕入れ、輸入した本件発明の技術的範囲に属する製品を販売。
but
ある時期から、本件発明の技術的範囲に属する製品(被告各商品)を、日本において製造させて販売。
特許法:特許の共有者は、契約で「別段の定」をした場合を除き、他の共有者の同意を得ないで特許発明を実施することができる(特許法73条2項)。

本件:
XがYに対し、本件条項は、特許法73条2項の「別段の定」に当たる⇒Yが被告各商品を日本において製造させて販売することは、本件特許権の侵害に当たる⇒損害賠償請求及び差止請求
本件条項によってYは本件特許権の共有持分権の持分4分の1の移転登記手続請求などをした。

<判断>
●中間判決:
本件条項は、特許法73条2項の「別段の定」に当たる⇒Yが被告各商品を日本において製造させて販売させることは、本件特許権の侵害に当たる⇒損害賠償請求の原因(数額を除く)がある。
他に判断した裁判例。

●終局判決
◎損害賠償請求について
Xの損害額の主張は、特許法102条2項に基づくもの
⇒同項に基づいて、Yが得た利益額をもとに損害額を認定。

対象期間のYの売上:
取引先からの調査嘱託の結果を中心として、Yの主張する売上額なども考慮して認定。
裁判所がYの取引先に対する調査嘱託を採用して、数多くの取引先に対して調査嘱託がされ、その結果に基づいてYの売上高が認定。

Yの経費:
Yの主張に基づき、個々の項目を個別に検討して、いわゆる限界利益を算定するに当たって、差し引くべき経費に当たるかどうかを判断。
Y:Yの顕著な営業努力を推定の覆滅事由として主張。
vs.
Yの宣伝活動は、広範囲にわたっているものの、スポーツ用品として用いることができる被告各商品の営業活動としては、通常考えられるものであって、特に顕著なものであるとは認められない。

Yの競合品の存在などの主張についても、終局判決は、Yが主張する各商品は競合品とはいえない⇒推定の覆滅を認めなかった。

◎差止請求について
Yが日本において被告各商品を製造、販売したことは、特許法73条2項の「別段の定」に反するものであり、本件特許権を侵害するもの
⇒特許法100条1項に基づくXの被告各商品の製造又は販売の差止請求には理由がある。

Yは、本件条項により、本件特許権をはく奪されることになり、本件発明の実施品の製造のみならず販売もできない⇒差止めの対象は、日本における販売にも及ぶと認めるのが相当。

◎持分移転登録手続請求について
Yが日本において被告各商品を製造させて販売したことは、本件各条項に違反⇒本件条項により、Yの本件特許権の持分ははく奪され、Yは無権利者となり、その者の持分が他の共有者に帰属することになる。

特許の移転、放棄による消滅は、登録しなければその効力を生じないとされているところ(特許法98条1項1号)⇒本件条項は、権利をはく奪された共有者の持ち分を取得することになる他の共有者に対し、違反者に対する持分移転登録手続き請求権を付与するとの内容をも含む。

判例時報2506・2507

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2021年11月 5日 (金)

銘菓の創業の表示等不正競争防止法と不正競争防止法

大阪高裁R3.3.11

<事案>
Xが、Yに対し、Yの表示等が、商品の品質を誤認させている⇒その差止め、廃棄及び損害賠償を求めた。

<争点>
①不正競争法2条1項14号(平成30年改正前のもの)(現20号)の規制対象の範囲
②Yの創業年や来歴に関する表示が、品質等誤認表示といえるか
③営業上の利益の侵害の有無並びにXに生じた損害の有無及び額

<規定>
第二条(定義)
 この法律において「不正競争」とは、次に掲げるものをいう。
二十 商品若しくは役務若しくはその広告若しくは取引に用いる書類若しくは通信にその商品の原産地、品質、内容、製造方法、用途若しくは数量若しくはその役務の質、内容、用途若しくは数量について誤認させるような表示をし、又はその表示をした商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供し、若しくはその表示をして役務を提供する行為

<判断>
●争点①について
一審判決を一部引用し、立法過程における議論や、不正競争防止法違反が刑事罰の対象にもなる⇒安易な拡張解釈は相当でない⇒20号の列挙は限定列挙。

20号の定める「品質」「内容」に、これらの事項を間接的に示唆する表示が含まれる場合がありうるにしても、そのような表示については、具体的な取引の実情の下において、需要者が当該表示を商品の品質や内容等に関わるものと明確に認識し、それによって、20号所定の本来的な品質等表示と同程度に商品選択の重要な基準となるものである場合に、20号所定の規制の対象となる。

●争点②について
品質や内容の誤認を生じさせるためには、客観的事実として異なる品質や内容を需要者に認識させる必要があり、誤認の対象は客観的に真偽を検証、確定することが可能な事実であることが想定されている。
本件で問題とされた創業年や来歴については、客観的に真偽を検証、確定することが困難で、品質等を誤認させるとは認められない

●争点③については、判断せず。

<解説>
類似の裁判例:
東京高裁H16.10.19:
ヤマダ電機対コジマ事件:価格に関する表示につき不正競争と認めなかった。

判例時報2491

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2021年10月22日 (金)

登録意匠の要部の認定と、出願後の公知意匠の参照

大阪高裁R2.7.31

<事案>
トレーニング機器の意匠(「本件意匠」)に係る意匠権を有するXが、Yによるトレーニング機器の製造・販売は本件意匠権の侵害⇒Y商品の製造・販売の差止め等を求めた。

<争点>
Y商品に係る意匠(「Y意匠」)との類否。

<原審>
Y意匠は本件意匠に類似しない⇒Xの請求を棄却。

<経緯>
Y意匠については、 Yにより意匠登録。
Y意匠は本件意匠に類似するから意匠法3条1項3号により意匠登録を受けることができないとしてXにより無効審判請求⇒Y意匠は本件意匠に類似しないとして請求不成立審決がされ、審決取消訴訟を経て確定。
原審判決において、Y意匠が本件意匠に類似しないことを理由に、被告意匠の登録の有効が確定。
Y意匠は、本件意匠又はこれに類似する意匠利用するものではなく(意匠法26条1項)、被告商品は、登録されたY意匠そのものの実施であって、Yが業としてY商品を製造等することは、Yが専有する登録意匠の実施権(同法23条)の範囲内の行為。

<判断>
原審判決は相当。

<解説>
●意匠の類似判断の枠組
意匠権侵害訴訟における意匠の類似判断の枠組について「意匠を全体として観察することを要するが、この場合、意匠に係る物品の性質、用途、使用態様、さらに公知意匠にはない新規な創作部分の存否等を参酌して、需要者の最も注意をひきやすい部分を意匠の要部として把握し、登録意匠と相手方意匠が、意匠の要部において構成態様を共通にしているか否かを観察することが必要」(近時のほとんどの裁判例で採用されている)

公知意匠を参酌

意匠の新規性(意匠法3条1項)及び創作非容易性(同条2項)という創作性の登録要件を充足して登録された意匠の範囲については、その意匠の美感をもたらす意匠的形態の創作の実質的価値に相応するものとして考えなければならず、公知意匠を参酌して、登録意匠が備える創作性の幅を検討する必要がある

●要部を把握する意匠
ほとんどの裁判例は、被疑侵害意匠の要部のみを把握して両意匠の類否判断。

「登録意匠と被疑侵害意匠とが類似するか」という両意匠を等値した観点からではなく、
「被疑侵害意匠が登録意匠に類似するか」という観点、
すなわち登録された意匠の範囲内に被疑侵害意匠が含まれているかという観点からなされている。

●参酌する公知意匠について
前記枠組みにおいて参酌する公知意匠は登録意匠の出願前のもの。
but
本判決:登録意匠の要部を認定するに当たり、出願後の公知意匠を観察することによってもの、当該登録意匠に含まれる当該形態が、需要者の注意を引くかどうかを判断することができると考える

本件意匠に先行、後行する公知意匠を総合しても、本件意匠のパッド片の形状等がありふれたものであるとか、需要者の注意を引くものではない。

ヒット商品こそ往々にして模倣品が表れる⇒登録意匠を真似た後行意匠が多数出現したという出現後の事情を参酌することにより、その登録意匠のそれが出願された時点の要部が事後的に明確になることもあろう
登録意匠に先行、後行する意匠を参酌しても登録意匠に含まれる特定の形状等がありふれたものとはいえない⇒登録意匠に先行する意匠のみを参酌した場合は理論上なおさらその形状等はありふれたものとはいえない。

商標と同様、登録意匠と別の登録意匠が類似することは本来ないという考え方がある。

先行登録意匠Aと後行登録意匠Bについて、
Aを引用意匠とするBに係る意匠登録無効審判と
Bを被疑侵害意匠とするAに係る意匠権侵害訴訟
とで類否判断の結論が異なってはならない

前者でAの出願後かつBの出願前に公知となった意匠が参酌されるのであれば、その意匠はこの意匠権侵害訴訟においても参酌されることになる。
その場合、Aを真似た後行意匠を多数参酌することにより、Aのそれが出願された時点の要部が事後的にあり触れたものであるとされることがあり得る。

判例時報2490

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2021年8月13日 (金)

均等侵害の成否の判断、特許法101条2号関係

大阪地裁R2.5.28

<事案>
クランプアーム、スイングクランプ、流量調整弁から構成され、名称を「クランプ装置」とする特許発明を有するXが、・・・「本件製品群1~8」 の製造販売等は本件特許権の間接侵害である⇒本件製品群1~8の製造販売等の差止め、同製品及びその半製品の廃棄並びに損害賠償を請求。

<説明>
スイングクランプとスピードコントロールバルブとのセット(「本件製品群1~3」)
リンククランプとスピードコントロールバルブとのセット(「同4~6」)
スピードコントロールバルブ(「同7、8」)

<争点>
①間接侵害の成否
②差止請求の成否
③特許法102条2項に基づく推定の覆滅

<解説>
●争点①について
◎本件製品群4~5について
〇特許権の均等侵害については、ボールスプライン軸受事件最高裁判決(H10.2.24)において、均等侵害が成立する5つの要件のうち、第5要件として、
「対象製品等が特許発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情もない」という要件が判示されている。

マキサカシトール事件最高裁判決(H29.3.24):
出願人が、特許出願時に、特許請求の範囲に記載された構成中の対象製品等と異なる部分につき、対象製品等に係る構成を容易に想到することができたにもかかわらず、これを特許請求の範囲に記載しなかった場合において、客観的、外形的にみて、対象製品等に係る構成が特許請求の範囲に記載された構成を代替すると認識しながらあえて特許請求の範囲に記載しなかった旨を表示していたといえるときには、対象製品等が特許発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたもにに当たるなどの特段の事情が存するというべきである。


①本件製品群4~6にクランプアームを組み合わせるとリンククランプを有するクランプ装置となる。
②本件発明に係る特許出願時の特許請求の範囲にはリンククランプを有するクランプ装置が含まれていた

マキサカルシトール事件最高裁が判示する「出願人が、特許出願時に・・・対象製品等に係る構成を・・・特許請求の犯にに記載しなかった場合」に該当するわけではない。
同判決以前から、本件におけるリンククランプを有するクランプ装置のように補正前は特許請求の範囲に含まれていたが補正により特許請求の範囲から除外されたものはボールスプライン軸判決にいう、「特許発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたもの」に当たる⇒そのものについては第5要件を充足しないとされる場合が多かった。
but
本判決は、マキサカルシトール判決の判示を引用した上、
その判示は特許請求の範囲につき複数回行なわれた前後の補正の経緯を検討する場合においても同様であるとして本件を処理。

特許請求の範囲に含まれていたものが補正により特許請求の範囲から除外された場合についても第5要件を客観的、外形的に判断すべき旨を強調。

◎本姓製品群7及び8について
非専用品形間接侵害の主観的要件のうち「その物が発明の実施に用いられること」:
A:著作権侵害幇助刑事事件であるWinny事件最高裁判決(H23.12.19)の判示を参考に、部品等の供給者において、その部品等が例外的とはいえない範囲の者によって特許発明に係る物の生産に用いられる蓋然性が高いことを認識していれば足りると緩やかに解する考え方
B:部品等の供給者において、その部品等が特定の者によって特許発明に係る物の生産に現実に用いられていることを認識していることを要すると厳格に考える考え方

本判決:
当該部品等の性質、その客観的利用状況、提供方法等に照らし、当該部品等を購入等する者のうち例外的とはいえない範囲の者が当該製品を特許権侵害に利用する蓋然性が高い状況が現に存在し、部品等の生産、譲渡等をする者において、そのことを認識、認容していることを要し、またそれで足りる

Winny事件最高裁判決と同様の判示。
幇助事件における考え方より緩やかなわけではないという意味で、同最高裁判決との不整合は来していない。

●争点②について
非専用品型間接侵害における非専用品の差止の範囲:
A:同部品を製造、販売する行為について間接侵害が成立するとみて、間接侵害行為と目される当該行為について限定なく差止めを認める
B:具体的な商品名を掲げて当該商品の製造販売の差止を命ずる判決や、当該部材等を専ら侵害用途に使用している顧客の名称を掲げた上で当該顧客への販売の差止めを命ずる判決は許されるが、無条件に当該部材を対象に掲げただけの差止判決を発することは許されない

学説は非専用品の差止めの範囲を適切に画することが必要であるとする考え方が多数派。
but
裁判所は、個々の範囲を限定しない差止請求を認めている。

●争点③について
◎特許法 第一〇二条(損害の額の推定等)
 
2特許権者又は専用実施権者が故意又は過失により自己の特許権又は専用実施権を侵害した者に対しその侵害により自己が受けた損害の賠償を請求する場合において、その者がその侵害の行為により利益を受けているときは、その利益の額は、特許権者又は専用実施権者が受けた損害の額と推定する。

◎特許法102条2項の損害の額の推定規定について:

紙おむつの処理容器事件知財高裁第合議判決(H25.2.1)
「特許権者に、侵害者による特許権侵害行為がなかったならば利益が得られたであろうという事情が存在する場合には、特許法102条2項の適用が認められる。」

二酸化炭素含有粘性組成物事件知財高裁第合議判決(R1.6.7)
「特許法102条2項・・・所定の侵害行為により侵害者が受けた利益の額とは、原則として、侵害者が得た利益全額であると解するのが相当であって、このような利益全額について同項による推定が及ぶ」

◎その推定の覆滅について:
二酸化炭素含有粘性組成物事件知財高裁第合議判決:
侵害者が主張立証責任を負うものであり、
侵害者が得た利益と特許権者が受けた損害との相当因果関係を阻害する事情がこれに当たる。
例えば、
①特許権者と侵害者の業務態様等に相違が存在すること(市場の非同一性)
②市場における競合品の存在
③侵害者の営業努力(ブランド力、宣伝広告)
④侵害品の性能(機能、デザイン等特許発明以外の特徴)
などの事情について、・・これらの事情を推定覆滅の事情として考慮することができる。

特許発明が侵害品の部分のみに実施されている場合においても、推定覆滅の事情として考慮することができる。
but
特許発明が侵害品の部分のみに実施されていることから直ちに上記推定の覆滅が認められるでのではなく、特許発明が実施されている部分の侵害品中における位置付け、当該特許発明の顧客誘引力等の事情を総合的に考慮してこれを決するのが相当。

◎間接侵害に特許法102条2項が適用されるか:
A:肯定説(多数派)
but
その要件については、
特許権者が特許発明を実施していることや間接侵害品と競合する製品を販売等していることは不要であると穏やかに解する考え方や、
特許権者が間接侵害品と競合する製品を販売等していることを要すると厳格に解する考え方

非専用品型間接侵害に特許法102条2項が適用される場合の推定の覆滅について:
非専用品のうち特許発明に係る物の生産以外の用途に用いられている分は推定を覆滅する事情であるとした裁判例
本件製品群7及び8のうち適法な用途に用いられている分が
「Xの損害の額=Yらが受けた利益の額」という推定を覆滅する事情とされた

適法な用途に用いられている分も含めた本件製品群7及び8の製造販売等の全体が侵害行為であることを前提としている。

◎紙おむつ処理容器事件知財高裁大合議判決において、
特許法102条2項を提供するための要件である
「特許権者に、侵害者による特許権侵害行為がなかったならば利益が得られたであろうという事情が存在する場合」の「利益」は特許発明の実施による利益に限らない旨が判示。

一般的に特許権者の事業が侵害者の非専用品の製造販売等それ自体と競合することもあり得る

非専用品の製造販売等の全体が侵害行為であるとする場合、そのうち特許発明に係る物の生産以外の用途に用いられている分を常に同項に基づく推定を覆滅する事情としてよいかどうかについては、議論が生じよう。
学説には、事案によっては非専用品を個別具体的に把握して特許発明に係る物の生産に用いられる者の製造販売等のみを侵害行為であるとすべきとの考え方

前述の競合の有無にかかわらず、非専用品のうち特許発明に係る物の生産以外の用途に用いられる分はすいての覆滅の段階ではなく侵害行為により侵害者が受けた利益の額を算定する段階で考慮されることになる。

判例時報2481

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特許権の通常実施権者による訴訟が確認の利益を欠くとされた事例

最高裁R2.9.7

<事案>
本件各特許(日本特許と米国特許)の通常実施権者であったXが、特許権者であったYを相手取り、YのA(補助参加人)に対する本件各特許権の侵害を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求権が存在しないことの確認を求めた。

<争点>
本件確認訴訟に確認の利益があるか

<原審>
確認の利益を肯定

①YのAに対する本件損害賠償請求権の行使によりAが損害を被った場合、
XはAに対し本件補償合意に基づき同損害を補償しなければならず、
Xはその補償額についてYに対し本件実施許諾契約の債務不履行に基づく損害賠償請求をすることになるところ、
②この請求権の存否の判断に要する主要事実に係る認定判断は、本件損害賠償請求権の存否の判断に要する主要事実に係る認定判断と重なる。

<判断>
原審が指摘する事実があるとしても、
Xが、Yを被告として、YのAに対する前記不法行為に基づく損害賠償請求権が存在しないことの確認を求める訴えは、確認の利益を欠く

原判決中本件確認請求に関する部分を破棄し、同部分に関するXの控訴を棄却。

<解説>
● 確認の訴え:
給付の訴えと異なり、確認の対象となり得るものが形式的には無限定訴えの利益(確認の利益)によってそれが許容される場合を限定する必要が大きい。

確認の利益:
確認判決を求める法律上の利益であり、原告の権利又は法的地位に危険・不安が現存し、かつ、これを除去する方法として原・被告間で当該訴訟物について確認する判決をすることが有効適切である場合に認められる。

確認の利益は、
①方法選択の適否(給付訴訟や形成訴訟でなく確認訴訟による必要性)、
②確認対象の適否、
③即時確定の利益
の各観点から判断されるところ、
即時確定の利益とは、原告の権利又は法的地位に現実的な危険・不安が生じており、これを除去するために確認判決を得ることが必要かつ適切であること。

● 本件確認請求:Y(被告)とA(第三者)との間の権利関係の確認を求める訴訟。
即時確定の利益があれば、第三者との間の権利関係の確認を求める訴えも適法

当事者の一方と第三者との間の権利関係の確認の訴えで確認の利益が認められる例:
①第三者のためにする契約について、当該第三者が当事者となった、契約の存在又は不存在を前提とする権利又は法律関係の確認の訴え、
②2番抵当権者が、1番抵当権者に対し、1番抵当権又はその被担保債権の不存在の確認を求める訴え
③債権者代位訴訟において第三債務者(被告)が債権者(原告)の債務者に対する被保全債権を争う場合に債権者が提起した、同債権の存在確認の訴え
④土地の転借人が、土地所有者から別個に当該土地の使用権を取得したと主張する者に対し、自己の土地使用権の確認を求める訴え
⑤自称債権者同士の争いで、自己が第三者(債務者)に対する債権を有することの確認を求める訴え
①~⑤の類型は、
原告の権利と被告の権利が競合していたり、原告の権利の直接の発生原因である基本的な法律関係に係る確認を求めているなどのケース

● 本件:A(第三者)のY(被告)に対する債務の不存在確認を求めるもの⇒どのような意味で「原告の権利又は法的地位に危険・不安」が基礎付けられるか?
XがAに対し本件補償合意に基づき保障債務を負う危険
vs.
本件確認請求を認容する判決が確定したとしても、その既判力がY・A間には及ばない⇒YのAに対する本件損害賠償請求権の行使を法的に抑制することはできず、XがAに対する補償債務を負う危険を除去できない。
Yによる本件損害賠償請求権の行使を事実上抑制することができ、かつ、これをもって即時確定の利益を基礎付けられるといえるかも疑問。(Y・A間には別件米国判決のような本件損害賠償請求権の認容判決がある)

原審:XのYに対する本件実施許諾契約の債務不履行に基づく損害賠償請求権に係る紛争が生じる可能性があることにより基礎付けようとした。

別件米国判決のようなYのAに対する本件損害賠償請求権の認容する判決が確定した場合にXがAにその損害賠償請求金を補償しなければならない分についての将来のXのYに対する前記債務不履行に基づく損害賠償請求権を念頭に置いている
vs.
YがAに対して本件損害賠償請求権を行使したとしても、X自身同請求権が存在しないといっていたこともあり、
(1)それを認容する判決が確定するか否かは全く不確実
(2)そのよう認容判決が確定したとしても、
①AがYに対し同判決どおりの損害賠償金を支払わない(Aに対する強制執行も奏功しない)可能性や、
②XがAに対し同判決通りの損害賠償金を支払わない可能性がある
Xに損害が発生するか否かは、なおも不確実。

以上:
実際にAが損害を被り、これに対する補償を通じてXに損害が発生するかは、事前には(損害が発生する前の段階では)不確実⇒Xが事実上の期待のレベルを超えて保護に値するほど具体化された権利又は法的地位を有するとはいえない。
②他方で、Xに現実に損害が発生した段階では、Xは、Yに対して前記債務不履行に基づく損害賠償請求訴訟を提起すれば足りる。

本件確認請求が、Xの権利又は法的地位への危険又は不安を除去するために必要かつ適切であるということはできない。

判例時報2481

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2021年7月 9日 (金)

特許法101条2号の「その発明が特許発明であること・・・を知りながら」「その物がその発明の実施に用いられることを知りながら」の要件が問題となった事案。

大阪地裁H30.12.13

<規定>
特許法 第一〇一条(侵害とみなす行為)
次に掲げる行為は、当該特許権又は専用実施権を侵害するものとみなす。

二 特許が物の発明についてされている場合において、その物の生産に用いる物(日本国内において広く一般に流通しているものを除く。)であつてその発明による課題の解決に不可欠なものにつき、その発明が特許発明であること及びその物がその発明の実施に用いられることを知りながら、業として、その生産、譲渡等若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為

<解説>
●「課題の解決に不可欠なもの」の要件
従来の裁判例:
従来技術の問題点を解決するための方法として、当該発明が新たに開示する、従来技術に見られない特徴的技術手段について、当該手段を特徴付けている特有の構成ないし成分を直接もたらす、特徴的な部材、原料、道具等がこれに該当するものと解するのが相当
で、本判決もこれを踏襲。

●特許請求の範囲の訂正が行われた場合の、「その発明が特許発明であること・・・を知りながら」要件の判断時期
Y:特許法101条2号の文言上、主観的要件は譲渡等の行為時に具備されていなければならず、訂正前の行為についてこれを具備することはありえない
⇒訂正後の特許請求の範囲に係る発明を知った時に、この要件を満たすことになる。

本判決:
「特許請求の範囲の訂正が認められる場合が・・・限定されていること」等を理由として、訂正前の特許請求の範囲に係る特許発明を知っていれば足りる。
かつそれは、特許法101条2号が主観的要件を要求する趣旨に反しない。

●「その物がその発明の実施に用いられることを知りながら」要件における認識の程度
A:厳格説
「自己の供給する部材等が、他人緒特許発明に係る物の生産又は方法の使用に用いられ得るという、一般的な利用可能性の認識では足りず、現実に当該部材等が特定の者によって特許発明の実施に用いられている事実を認識していることを要するというべき」(三村量一)
「半会社において例外とはいえない範囲の者が部品等を違法用途に利用する蓋然性が高いことを認識していたとしても、幇助の過失責任が問われる場合はあるものの、主観的要件を充足しない。条文の文言上、あえて「過失」を除くこととした既定の趣旨からすれば、特許権の効力の不当な拡張にならないよう、主観的要件については厳格に解するのが相当」(高部眞規子)

B:緩和説
①部品等を違法用途に使用している購入者が特定している場合については、販売者において、当該購入者が部品等を違法用途に使用していることを認識しているときは、悪意が認められ、当該購入者に対する販売する行為および販売のための製造行為について間接侵害が成立し、
②部品等を違法用途に使用している購入者が特定していない場合については、販売者において、部品等が違法用途に使用される一般的可能性があることを認識ていたとしても、悪意は認められず、間接侵害は成立しないが、部品等の性質、その客観的利用状況、提供方法などに照らし、販売者において、部品等を入手する者のうち例外とはいえない範囲の者がその部品等を特許権品議に利用する蓋然性が高いことを認識しているときは、悪意が認められ、同部品を製造、販売する行為について間接侵害が成立するとみて、間接侵害行為と目される当該行為について限定なく差止めを認めるという考え方も成り立つであろう。

本判決は、緩和説を採用。

判例時報2478

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2021年6月30日 (水)

特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件を充足するための要件

知財高裁R2.7.2

<事案>
Y(A事件被告)は、本件特許につき無効審判を請求し、無効理由として、進歩性欠如及びサポート要件非充足を主張。

審決:
進歩性欠如の無効理由については、本件化合物発明及び本件製法発明のいずれも理由なし(請求不成立)
サポート要件非充足の無効理由については、本件化合物発明につき理由なし(請求不成立)
審決において特許無効とされた部分についてXが、請求不成立とされた部分についてYが、それぞれ審決取消訴訟を提起し(前者が「A事件」、後者が「B事件」)、知財高裁はこれらを併合審理。

<争点>
中心的な争点:本件化合物発明のサポート要件

<判断>
●サポート要件充足性の判断手法
特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、
特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、
特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断。
サポート要件を充足するには、明細書に接した当業者が、特許請求された発明が明細書に記載されていると合理的に認識できれば足り、また、課題の解決についても、当業者において、技術常識も踏まえて課題が解決できるであろうとの合理的な期待が得られる程度の記載があれば足りるのであって、厳密な科学的な証明に達する程度の記載までは不要。

①サポート要件は、発明の公開の代償として特許権を与えるという特許制度の本質に由来するものであるから、明細書に接した当業者が当該発明の追試や分析をすることによって更なる技術の発展に資することができれば、サポート要件を課したことの目的は一応達せられる
②明細書が、先願主義の元での時間的制約もある中で作成されるもの⇒その記載内容が、科学論文において要求されることまで要求するのは相当ではない。

● ・・・・

<解説>
平成15年の特許審査基準の改定⇒明細書のサポート要件が「実質化」され、特許請求の範囲に記載された発明が、明細書の記載により実質的に裏付けられている必要がある。
本件は、明細書による裏付けがどの程度の確からしさを要するかという点について、一般論を明確に述べたもの。

判例時報2477

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2021年6月15日 (火)

部分意匠との類似性が問題となった事案

大阪高裁R1.9.5

<事案>
意匠に係る物品を検査用照明器具とする意匠権を有するXが、検査用照明器具であってXの有する意匠権に係る部分意匠と類似する意匠を備える各製品(「Y各製品」)を製造、販売するYに対し、
Xの有する意匠権を侵害したとして、
Y各製品の製造、販売等の差止、Y各製品の廃棄、及び意匠権侵害の不法行為に基づく損害賠償等を請求。

<争点>
①Y各製品の意匠が本意匠に類似するか
②本件意匠は意匠登録無効審判により無効とされるべきか
③YがXの有する意匠権を侵害するおそれがあるか
④Xの損害額、Xの損失・Yの利得の額

<判断>」
●争点②
◎無効理由1(乙8意匠に基づく新規性欠如)
公知意匠である乙8意匠は、「代表的ヒートシンクの形状」として図示されている「タワー型」の意匠であって、意匠に係る物品は、電子機器用の部品であり、本体である電子機器を放熱により冷却する用途、機能を有しているところ、乙8意匠にかかる物品は、電子機器の放熱用部品⇒本件意匠とは意匠に係る物品は同一又は類似であると認められない。
but
本件実戦部分が検査用照明器具の放熱部
⇒更に本件意匠と乙8意匠とを対比することとする。

・・・共通性を凌駕し美感が異なる⇒新規性欠如を認めなかった。

◎無効理由2及び6(乙7等意匠・乙12意匠に基づく新規性欠如)
新規性欠如を認めず。

●争点①
Y各製品のうち、イ号ないしハ号物件の意匠⇒本件意匠に類似
ニ号ないしヘ号物件の意匠⇒本件意匠に類似しない。

登録意匠と対比すべき意匠とが類似であるか否かの判断
は、需要者の視覚を通じて起こさせる美感に基づいて行なう(意匠法24条2項)ものとされており、意匠を全体として観察することを要する
but
この場合、意匠に係る物品の性質、用途及び使用態様、並びに公知意匠にはない新規な捜索部分の存否等を参酌して、取引者・需要者の最も注意を惹きやすい部分を意匠の要部として把握し、登録意匠と対比すべき意匠とが、意匠の要部において構成態様を共通にしているか否かを重視して観察を行うべき
本件意匠は・・・検査用照明器具の放熱部材の表面積の大小や部材相互の空隙の大小から放熱性能の高低を推し量るという観点から、放熱部材であるフィン構造体の発光部との位置関係、フィンの形状、数、大きさ(支持軸体の径との関係)、配置(フィン相互の間隔)に注目。
・・・・

●争点③
イ号物件ないしハ号物件の製造、販売の差止請求に理由があるとする一方で、
廃棄請求には理由がないとした、
原審の判断を維持。

●争点④
意匠法39条2項に基づく損害額の算定において、
寄与度ないし推定覆滅事由として、イ号物件ないしハ号物件において本件意匠に対応する部分の占める面積比、製造原価、需要者の購買動機に結び付く度合いを考慮した原審の判断を維持。

<解説>
意匠:
物品(物品の部分を含む、以下同じ。)の形状、模様若しくは色彩若しくはこれらの結合・・・であって、視覚を通じて美感を起こさせるもの(意匠法2条1項)

意匠法上の類似概念は、意匠権の効力を画する概念(法23条)であるだけでなく、新規性判断においても、公知意匠に類似する意匠は新規性を欠く(法3条1項3号)⇒登録の場面でも重要
後者は無効事由(法48条1項1号)。

侵害訴訟では、意匠が意匠登録無効審判により無効にされるべきものと認められるときには権利行使が阻止される(法41条が準用する特許法104条の3)。
意匠が類似するためには、その意匠にかかる物品も同一又は類似である必要。
but
部分意匠においてもこの理が妥当するか?

判例時報2476

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2021年5月20日 (木)

Y2が特許権侵害となるOEM製品を国内で製造して輸出⇒Y1、Y2、Y3には国内での製造・輸出に関して共同不法行為が成立するとして、特許法102条2項の推定を肯定

東京地裁H31.3.7

<事案>
発明の名称を「磁気記録媒体、磁器信号再生システムおよび磁器信号再生方法」とする特許第4459248号に係る特許権(「本件特許権1」)及び発明の名称を「磁気記録再生システム及び磁気記録再生方法」とする特許第3818581号に係る特許権(「本件特許権2」)を有するXが、Yらによるデータカートリッジの製造・販売等が本件特許権1・2を侵害すると主張⇒Yらに対し、自社製品の製造・販売等の差止め、廃棄並びに製造設備の除却を求めるとともに、Y製品に係る総額約51億4670万円の損害賠償を求めた。

<判断>
Y製品による本件特許権1の侵害を認める一方、
本件特許権2に係る特許については、進歩性欠如の無効理由がある。
特許法102条2項に係る「輸出を伴う取引形態における利益の範囲」について、
OEM製品は、その性質上、Yらが、OEM供給先の発注を受けて製造し、OEM供給先に対してのみ販売することが予定されたもの

Y2がOEM製品を日本国内で製造して海外に輸出し、Y1やY3に販売し、さらにY1やY3がこれを顧客(OEM供給先)に販売するという一連の行為が行われた際には、その前提として、当然、当該製品の内容、数量等について、YらとOEM供給先との密接な意思疎通があり、それに基づいてY2による日本国内での製造と輸出やその後におけるYらによる販売が行われたことを優に推認することができる。

前記一連の行為の一部が形式的にはOEM製品の輸出後に行なわれたとしても、前記一連の行為の意思決定は実質的にはOEM製品が製造される時点で既に日本国内で行なわれていたと評価することができる。
少なくとも、本件特許権1の侵害行為であるOEM製品の国内での製造及び輸出がYらによる共同不法行為であると認められる
Yらによる販売行為が、全てY2がOEM製品を海外に輸出した後に行なわれたものであるとしても、Yらの販売行為による利益は、Yらによる国内における前記共同不法行為(OEM製品の国内での製造及び輸出)と相当因果関係のある利益(原告にとっての損害)ということができ、侵害行為により受けた利益といえる。

当該取引形態によってYらが得た利益についても、特許法102条2項の推定が及ぶと解すべきであり、このように解しても、わが国の特許権の効力をわが国の領域外において認めるものではない⇒属地主義の原則とは整合する。

<解説>
特許権における属地主義の原則:
最高裁:
各国の特許権が、その成立、移転、効力等につき当該国の法律によって定められ、特許権の効力が当該国の領域内においてのみ認められることを意味する。」

後段については、特許権の効力は特許権が成立した国以外に及ばないという特許権の効力についての実質上の原則を定めたもの。

本判決:
①Yらが製造から販売までを行なうグループ会社であること
②OEM製品が、その性質上、発注・製造時点で供給先への販売までが予定されているという特殊性

国内での製造・輸出から海外での供給先への販売までの一連の行為の意思決定が実質的には国内での製造時点で既に国内で行なわれていたと評価でき、海外での販売を前提としたYらの国内での製造・輸出が共同不法行為に当たる

特許法102条2項の適用について、海外での販売による利益をその「行為による利益」と捉えることができる。

前記のほか、本判決は、
特許法102条2項の適用において、
特許権者が発明を実施していないことは適用を妨げる事情ではないと判示。

同条項のいわゆる推定覆滅事由の存在について、推定覆滅事由として認められるためには、特許権侵害がなかったとしても、侵害品(Y製品)の販売等による利益(の一部)は特許権者(X)に向かわなかったであろう事由の存在が必要侵害品の顧客の購入動機が単に本件発明の作用効果に着目していなかったというのでは足りず、侵害品の顧客の購入動機が、侵害品の独自の技術や性能に着目したものであったことを具体的に主張立証する必要がある⇒その存在を認めなかった。

判例時報2472

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