知的財産権

2020年3月20日 (金)

特許法102条2項、3項の損害額の算定

知財高裁R1.6.7   
 
<事案>
名称を「に参加炭素含有粘性組成物」とする発明に係る2件の特許権を有するXが、Yらに対し、Yらがそれぞれ製造販売する、顆粒剤とジェル剤のキットである炭酸パック化粧料は、前記各特許権に係る発明の技術的範囲に属する⇒特許権侵害の不法行為に基づく損害賠償金の支払を求めた。
Xは、特許権102条2項及び同条3項による損害額を主張。
 
<規定>
特許法 第一〇二条(損害の額の推定等)
特許権者又は専用実施権者が故意又は過失により自己の特許権又は専用実施権を侵害した者に対しその侵害により自己が受けた損害の賠償を請求する場合において、その者がその侵害の行為を組成した物を譲渡したときは、その譲渡した物の数量(以下この項において「譲渡数量」という。)に、特許権者又は専用実施権者がその侵害の行為がなければ販売することができた物の単位数量当たりの利益の額を乗じて得た額を、特許権者又は専用実施権者の実施の能力に応じた額を超えない限度において、特許権者又は専用実施権者が受けた損害の額とすることができる。ただし、譲渡数量の全部又は一部に相当する数量を特許権者又は専用実施権者が販売することができないとする事情があるときは、当該事情に相当する数量に応じた額を控除するものとする。
2特許権者又は専用実施権者が故意又は過失により自己の特許権又は専用実施権を侵害した者に対しその侵害により自己が受けた損害の賠償を請求する場合において、その者がその侵害の行為により利益を受けているときは、その利益の額は、特許権者又は専用実施権者が受けた損害の額と推定する。
3特許権者又は専用実施権者は、故意又は過失により自己の特許権又は専用実施権を侵害した者に対し、その特許発明の実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額の金銭を、自己が受けた損害の額としてその賠償を請求することができる。
4前項の規定は、同項に規定する金額を超える損害の賠償の請求を妨げない。この場合において、特許権又は専用実施権を侵害した者に故意又は重大な過失がなかつたときは、裁判所は、損害の賠償の額を定めるについて、これを参酌することができる。
 
<争点>
①特許法102条2項所定の利益の額
②特許法102条2項の推定覆滅事由
③特許法102条3項所定の実施に対し受けるべき金額の額 
 
<判断>
●特許法102条2項所定の利益の額 
同項所定の侵害行為により侵害者が受けた利益の額:
原則として、侵害者が受けた利益全額であり、このような利益全額について同項による推定が及ぶ。

侵害の行為より受けた利益について侵害行為と相当因果関係のある利益に限定しない見解(全額説)

「利益」:
侵害者の侵害品の売上高から、侵害者において侵害品を製造販売することによりその製造販売に直接関連して追加的に必要となった経費を控除した限界利益の額であり、
その主張立証責任は特許権者側にある。
 
●特許法102条2項の推定覆滅事由 
損害の一部または全部について、特許権者が受けた損害と相当因果関係が欠けることを主張立証⇒その限度で推定が覆滅される。

特許法102条2項における推定の覆滅については、同条1項ただし書の事情と同様に、侵害者が主張立証責任を負い、
侵害者が得た利益と特許権者が受けた損害との相当因果関係を阻害する事情がこれに当たる。

具体的には、
①特許権者と侵害者の業務態様等に相違が存在すること(市場の非同一性)
②市場における競合品の存在:
競合品といえるためには、市場において侵害品と競合関係に立つ製品であることを要する。
③侵害者の営業努力(ブランド力、宣伝広告)
④侵害品の性能(機能、デザイン等特許発明以外の特徴)などの事情:
侵害品における優れた効能や他の特許発明の実施といった事情から直ちに推定の覆滅が認められるのではなく、それが侵害品の売上げに貢献しているといった事情が必要。

従来、特許発明の「寄与率」による減額として議論されることの多かった、
特許発明が侵害品の部分のみに実施されている場合

特許法102条2項の推定の覆滅の事情と整理し、
侵害者がその主張立証責任を負うことを示した上で、その場合、特許発明が実施されている部分の侵害品中における位置付け、当該特許発明の顧客誘引力等の事情を総合的に考慮してこれを決すべき。
 
●特許法102条3項所定の受けるべき金銭の額 
同項は、特許権侵害の際に特許権者が請求し得る最低限度の損害額を法定した規定。
同項による損害は、原則として、侵害品の売上高を基準とし、そこに、実施に対して受けるべき料率を乗じて算定すべき。

平成10年法律第51号による改正において同項の「通常」の文言が削除された経緯⇒実施に対し受けるべき料率が通常の実施料率に比べて高額になるであろうことを考慮すべきとの一般論。

実施に対し受けるべき料率:
①当該特許発明の実際の実施許諾契約における実施料率や、それが明らかでない場合には業界における実施料の相場等も考慮に入れつつ、
②当該特許発明自体の価値すなわち特許発明の技術内容や重要性、他のものによる代替可能性、
③当該特許発明を当該製品に用いた場合の売上げ及び利益への貢献や侵害の態様、
④特許権者と侵害者との競業関係や特許権者の営業方針等
訴訟に現れた諸事情を総合考慮して、合理的な料率を定めるべき。
判例時報2430

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2020年3月13日 (金)

タイプフェイスの著作物性が問題とされた事案(否定)

東京地裁H31.2.28    
<事案>
Xが、YにおいてXの制作したタイプフェイスの一部の文字を、Yの配給上映した映画の予告編やパンフレット、ポスター等に無断で利用⇒Xの本件タイプフェイスに係る著作権(複製権)を侵害⇒Yに対し、不法行為に基づき、損害賠償金等の支払を求めた。 
 
<争点>
①本件タイプフェイスの著作物性の有無
②利用許諾の抗弁の成否 
 
<判断> 
●争点① 
最高裁H12.9.7を参照し、
タイプフェイスが著作物に該当するというためには、
①それが従来の印刷用書体に比して顕著な特徴を有するといった独創性を備えることが必要であり、
それ自体が美術鑑賞の対象となり得る美的特性を具えていなければならないと解するのが相当。

タイプフェイスの著作物性の判断は現に利用された文字について行うのが相当
Yにより利用された文字について、本件タイプフェイスと本件タイプフェイスの制作年に係るXの主張を前提として同年までに制作された他のタイプフェイスと対比

特定の文字以外の文字については、類似するタイプフェイスが認められ
前記特定の文字についても、顕著な特徴を有するといった独創性を具えているとまでは認め難い

件タイプフェイスが、前記の独創性を備えているということはできないし、また、それ自体が美術鑑賞の対象となり得る美的特性を備えているということもできない。

著作権性を否定。 
 
●争点②
Yにおいて実際に本件ポスター等のデザインを担当したデザイナーが本件タイプフェイスを表示するために使用したフォントファイルは、X主張に係る媒体からインストールされたものではなく、本件デザイナーが正規購入した他の媒体からインストールされたものと認められ、
後者では、正規購入者による本件タイプフェイスの利用が何ら制限されていなかった
本件タイプフェイスの利用は制作者による許諾の範囲内の行為
利用許諾の抗弁の成立を肯定
判例時報2429

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2020年2月22日 (土)

平成26年改正前の特許法の下において、特許無効審判請求を不成立とした審決に対する取消しの訴えの利益、進歩性の判断における引用発明の認定等

知財高裁H30.4.13    
 
<事案>
発明の名称を「ピリミジン誘導体」とする特許(「本件特許」)の無効審判請求を不成立とした審決の取消訴訟。 
 
<争点>
訴えの利益の有無(=本件の訴えの利益は、本件特許に係る特許権の存続期間の経過により、失われているか)
進歩性の有無(=本件特許は、特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(当業者)が、刊行物に記載された発明に基づいて容易に発明することができたものといえるか)
 
<判断・解説>

訴えの利益の存在を認めた上、
本件特許が進歩性の要件を充足することを認め
原告らの請求をいずれも棄却。 
 
●特許権消滅後の審決取消訴訟の訴えの利益 
審決取消訴訟の原告適格は、審判の当事者、参加人又は審判に参加を申請してその申請を拒否された者に限られる(特許法178条1項)が、
特許無効審判における「当事者」たり得る請求人適格については、特許異議申立制度の変遷に伴い、変遷してきた。
現行法である昭和34年特許法でも、特許無効審判の請求人適格は、条文上明記されず。but一定の限定があるものと解されていた。

平成15年改正:
付与後異議制度を廃止し、特許無効審判制度に統合するに当たり、
特許無効審判制度の請求人適格は、権利帰属に関する無効理由につき利害関係人であることが必要であるとされるとともに、
それ以外の無効理由つき「何人も」に拡大された(123条2項)。

平成26年改正:
付与後異議制度が再度創設されるに当たり、異議申立制度の申立人適格は「何人も」、
特許無効審判制度の請求人適格は「利害関係人」と明記(123条2項)。
 
◎本判決:
特許権消滅後の審決取消訴訟の訴えの利益について、
平成26年改正前の特許法が適用される場合においては、
特許無効審判請求を不成立とした審決に対する取消しの訴えの利益は、特許権消滅後であっても、特許権の存続期間中にされた行為について、何人に対しても、損害賠償又は不当利得返還の請求が行われたり、刑事罰が科されたりする可能性が全くなくなったと認められる特段の事情がない限り、失われることはない
という一般論を判示。 
傍論として、平成26年法改正後の特許法が適用される場合においては、
訴えの利益が消滅したというためには、・・・特許権の存続期間が満了し、かつ、特許権の存続期間中にされた行為について、原告に対し、損害賠償又は不当利得返還の請求が行なわれたり、刑事罰が科されたりする可能性が全くなくなったと認められる特段の事情が存することが必要

訴えの利益は職権調査事項であるところ、裁判所は、その審理のために、当事者に対して、例えば、自己の製造した製品が特定の特許の侵害品であるか否かにつき、現に紛争が生じていることや、今後そのような紛争に発展する原因となる可能性がある事実関係が存在すること等を主張するよう求めることとなる。
but
このような主張には、自己の製造した製品が当該特許発明の実施品であると評価され得る可能性がある構成を有していること等、自己に不利益になる可能性がある事実の主張が含まれ得るのであって、このような事実の主張を当事者に強いる結果となるのは相当ではない。

その前提として、特許法において、特許無効審判は、特許権の存続期間満了後も請求することができる(法123条3項)
⇒特許権の存続期間が満了したからといって、特許無効審判請求を不成立とした審決に対する取消しの訴えの利益も消滅するものではないと指摘。

本判決の射程は、特許無効審判請求の審決に対する審決決定訴訟、しかも、特許無効審判請求を不成立とした審決に対するものに限られる
 
◎本判決は、平成26年改正の前後で訴えの利益の消滅を認める場合の判断要素の1つを「何人」から「原告」に変えている。

平成26年改正により、特許無効審判制度が、万人の利益を保護するための制度から、利害関係人の利益を保護するための制度に変わったことを受け、その審決の取消訴訟における訴えの利益についても、同様に解したもの。
 
●進歩性の判断基準 
◎ 進歩性の判断方法:
進歩性に係る要件が認められるかどうかは、
特許請求の範囲に基づいて特許出願に係る発明(本願発明)を認定した上で、特許法29条1項各号所定の発明と対比し、一致する点及び相違する点を認定し、
相違する点が存する場合には、当業者が、出願時(又は優先権主張日)の技術水準に基づいて当該相違点に対応する本願発明を容易に想到することができたかどうかを判断。

その上で、引用発明の認定につき、
進歩性の判断に際し、本願発明と対比すべき特許法29条1項各号所定の発明(本件引用発明)は、通常、本願発明と技術分野が関連し、当該技術分野における当業者が検討対象とする範囲内のものから選択されるところ、
同条1項3号の「刊行物に記載された発明」については、当業者が、出願時(又は優先権主張日)の技術水準に基づいて本願発明を容易に発明をすることができたかどうかを判断する基礎となるべきもの⇒当該刊行物の記載から抽出し得る具体的な技術的思想でなければならない

引用発明として主張された発明が「刊行物に記載された発明」であって、当該刊行物に化合物が一般式の形式で記載され、当該一般式が膨大な数の選択肢を有する場合には、特定の選択肢に係る技術的思想を積極的あるいは優先的に選択すべき事情がない限り、当該特定の選択肢に係る具体的な技術的思想を抽出することはできず、これを引用発明と認定することはできない。

この理は、本願発明と引用発明との間の相違点に対応する他の同条1項3号所定の「刊行物に記載された発明」(副引用発明)があり、主引用発明に副引用発明を適用することにより本願発明を容易に発明をすることができたかどうかを判断する場合において、刊行物から副引用発明を認定するときも、同様。
 
◎進歩性の判断要素とその立証責任につき:
主引用発明に副引用発明を適用することにより本願発明を容易に発明をすることができるかどうかを判断する場合には、
①主引用発明又は副引用発明の内容中の示唆、技術分野の関連性、課題や作用・機能の共通性等を総合的に考慮して、主引用発明に副引用発明を適用して本願発明に至る動機付けがあるかどうかを判断
②適用を阻害する要因の要素の有無、予測できない顕著な効果の有無等を併せて考慮して判断することとなる。

特許無効審判の審決に対する取消訴訟においては、
上記①については、特許の無効を主張する者(特許拒絶査定不服審判の審決に対する取消訴訟及び特許異議の申立てに係る取消決定に対する取消訴訟においては、特許庁長官)が、
上記②については、特許権者(特許拒絶査定不服審判の審決に対する取消訴訟において、特許出願人)が、
それぞれそれらがあることを基礎付ける事実を主張、立証する必要がある。
 
◎本判決:
一般論として、刊行物に化合物が一般式の形式で記載されている場合における引用発明の認定につき判示。 
本件のような事案において進歩性を肯定するには、
①刊行物から引用発明が認定できないと解する
②刊行物から引用発明を認定できるが、これを発明の出発点とすることができた合理的な理由がなければならず、これがないと解する
③引用発明の適格性は認めるが、組合せの動機付けがないと解する
といった場合が挙げられる。

本判決:
ある技術的思想が、当業者が認識する範囲に属するといえる刊行物に抽象的に記載されていても、それだけでは引用発明として認定することはできず、当業者が当該刊行物から当該技術的思想を具体的に認識し得るといえるだけの記載がある場合に限り、具体的に当業者が認識する範囲に属するものとして、引用発明として認定し得るとの見解を採用。

当業者の具体的な認識範囲に着目したもの。
判例時報2427

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2020年2月 7日 (金)

著作権法41条の時事の事件の報道のための利用に当たると認められないとされた事例

東京地裁H31.4.16    
 
<事案>
Xが、未発表であったX創作に係る楽曲の一部をYらが共同してXの許諾なくテレビ番組内で放送⇒Xの公衆送信権及び公表権を侵害したと主張し、
Yらに対し、民法719条及び著作権法114条3項に基づき、
損害賠償金の連帯支払を求めた。 
 
<争点>
①本件楽曲の放送は時事の事件の報道のための利用(著作権法41条)に当たるか
②正当業務行為等により公表権侵害の違法性が阻却されるか
③公表権侵害による慰藉料の額 
 
<判断>  
●争点① 
Y主張:
本件楽曲は、視聴者がXによる覚せい剤使用の事実の真偽を判断するための材料であって、捜査機関がXを覚せい剤使用の疑いで逮捕する方針であるという事実の事件を構成するもの。
vs.
本件楽曲は、捜査機関がXが対する覚せい剤使用の疑いで逮捕状を請求する予定であるという時事の事件が報道された際に放送されたものであるものの、本件楽曲はその主題となるものではないし、かかる時事の事件と直接の関連性を有するものでもない時事の事件を構成する著作物に当たるとは認められない

Y主張:
本件楽曲は、Xが執行猶予期間中に更生に向けて行っていた音楽活動の成果物であって、「Xが有罪判決後の執行猶予期間中に音楽活動を行い更生に向けた活動をしていたこと」という時事の事件を構成するもの。
vs.
本件番組中におけるXの音楽活動に関する部分は、捜査機関がXに対する覚せい剤使用の疑いで逮捕状を請求する予定であることを報道する中で、ごく短時間に、断片的に紹介する程度にとどまっており、本件楽曲の紹介自体も、Xがそれまでに創作した楽曲とは異なる印象を受けることを指摘するものにすぎず、それ以上にXの音楽活動に係る具体的な事実の紹介はない

同部分が「Xが有罪判決後の執行猶予期間中に音楽活動を行い更生に向けた活動をしていたこと」という「時事の事件の報道」に当たるとはいえない。
 
●争点② 
Y主張:
本件楽曲の公表は、捜査機関が覚せい剤使用の疑いでXに対する逮捕状を請求する予定であることを報道する差し迫った状況において、有罪判決後のXの音楽活動や更生に向けた活動等を具体的に報道するととともに、Xによる覚せい剤使用の事実の真偽を判断するための材料を視聴者に対して提供することを目的として行われた
⇒著作権法41条の趣旨の準用、正当業務行為その他の事由により違法性が阻却される。
vs.
①本件番組ではXの音楽活動にごく簡単に触れたに止まり、
②具体的な事実の紹介もなく、
本件楽曲がXによる覚せい剤使用の事実の真偽を判断するための的確な材料であるとも認められない
⇒Yらの主張は前提を欠く。
 
●争点③
①Xが本件楽曲を創作した目的に即した時期に本件楽曲を公表する機会を失った
②本件楽曲が、捜査機関が覚せい剤使用の疑いでXに対する逮捕状を請求する予定であるという報道に関連して紹介された⇒その視聴者に対してXが本件楽曲を創作した目的とは相容れない印象を与えることとなった

公表権侵害に対する慰謝料の額は100万円が相当

Xは、本件番組において、Xが覚せい剤の使用により精神的に異常をきたしたかのような報道をされたことにより、精神的苦痛を受けた旨主張
vs.
本件請求はあくまで本件楽曲に係る公表権侵害を理由とするもの⇒公表権侵害の方法・態様として評価し得る事情の限度で考慮するにとどめるのが相当
 
<規定> 
著作権法 第四一条(時事の事件の報道のための利用)
写真、映画、放送その他の方法によつて時事の事件を報道する場合には、当該事件を構成し、又は当該事件の過程において見られ、若しくは聞かれる著作物は、報道の目的上正当な範囲内において、複製し、及び当該事件の報道に伴つて利用することができる
 
<解説>
本件は著作者人格権のうち公表権のみが侵害された事例。
著作者人格権のうち氏名表示権や同一性保持権の侵害、あるいはこれらの権利と公表権の侵害について慰謝料を認めた裁判例はあるが、
公表権のみの侵害について慰謝料を認めた先例は見当たらない。
判例時報2426

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2020年2月 3日 (月)

モデルチェンジと3年の保護期間(不正競争防止法19条1項5号イ)の起算点

知財高裁H31.1.24      
 
<事案>
X(控訴人・一審原告)が、Y(被控訴人・一審被告)の販売するサックス用ストラップが、Xの販売するサックス用ストラップの形態模倣に該当⇒Yに対し、不正競争法3条に基づき、被告商品の販売等の差止め及び廃棄を求めるとともに、同法4条、5条2項に基づき、880万円の損害賠償を求めた。 
 
<原審>
原告商品の形態のうち不正競争法2条1項3号の保護を受けるのは、モデルチェンジ前の商品の形態を実質的に変更した部分に基礎を置く部分に限られる。
前記部分と被告商品のうち前記部分に対応する部分とは、実質的に同一であるとはいえず、被告商品が原告商品に依拠したということもできない。

Xの請求をいずれも棄却。 
 
<解説・判断>
●不正競争法2条1項3号:
個別の知的財産権の有無にかかわらず、他人が商品化のために資金・労力を投下した成果を他に選択肢があるにもかかわらずことさら完全に模倣して、何らの改変を加えることなく自らの商品として市場に提供し、その他人と競争する行為を「不正競争」と位置づける。

①先行者が資金・労力を投下して商品化した成果にフリーライドすることが競争上不正と観念される。
②模倣を禁止するのは先行者の投資回収の期間に限定することが適切。

日本国内において最初に販売された日から起算して3年を経過した商品については、不正競争法2条1項3号の保護は及ばない(同法19条1項5号イ)。 
 
●本件:
被告商品の販売開始日:
原告商品が最初に販売された日から3年以内であったが、
原告商品のモデルチェンジ前の商品である旧原告商品が最初に販売された日から3年以上が経過。
⇒原告商品の販売日と旧原告商品の販売日のいずれが保護期間の基準時となるか? 

本判決:
原告商品と旧原告商品を対比すると、需要者が注意を引きやすい特徴的部分であるV型プレートの形態が相違
⇒原告商品から受け取る商品全体としての印象と旧原告商品から受ける商品全体としての印象は異なる
⇒原告商品の形態は、商品全体の形態としても、旧原告商品の形態とは実質的に同一のものではなく、別個の形態
原告商品の販売日が保護期間の基準時
 
不正競争法2条1項3号によって保護される商品形態は、いかなる範囲か? 
原判決:商品の形態において実質的に変更された部分に基礎を置く部分に限られる。
本判決:不正競争防止法2条1項3号によって保護される「商品の形態」とは、商品全体の形態をいう。
原告商品の形態と被告商品の形態とを対比すると、商品全体としての印象が共通し、その形態は実質的に同一。
 
モデルチェンジの前後で実質的に同一とはいえない
保護期間の起算点は、モデルチェンジ後の商品の販売時となるし、
保護される範囲は、商品全体 

不正競争法2条1項3号については、商品の一部のみ保護対象となることはないとの解釈が一般的。

判例時報2425

大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文)HP
真の再生のために(事業民事再生・個人再生・多重債務整理・自己破産)用HP(大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文))

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2020年1月28日 (火)

商標が国際信義に反するとして、商標法4条1項7号に該当するとされた事案

知財高裁H31.2.6    
 
<事案>
原告は、「envie CHAMPAGNE GRAY」の欧文字と「アンヴィ シャンパングレイ」のカタカナを上下2段に書してなり、第9類「眼鏡」等を指定商品として設定登録された本件商標の商標権者。
  被告は、本件商標登録の無効審判を請求⇒特許庁は、本件商標が商標法4条1項7号に該当するとして、無効審決⇒原告が、本件審決には同号の判断誤りの違法があると主張し、その取消しを求めた。 
 
<規定>
商標法 第四条(商標登録を受けることができない商標)
次に掲げる商標については、前条の規定にかかわらず、商標登録を受けることができない。
七 公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標
 
<判断>
・・・・
以上のような本件商標の文字の構成、指定商品の内容、本件商標のうちの「CHAMPAGNE」、「シャンパン」の文字がフランスにおいて有する意義や重要性、日本における周知著名性等を総合的に考慮

本件商標をその指定商品に使用することは、フランスのシャンパーニュ地方におけるぶどう酒製造業者の利益を代表する被告のみならず、法令により「CHAMPAGNE(シャンパン)」の名声、信用ないし評判を保護してきたフランス国民の国民感情を害し、日本とフランスとの友好関係にも好ましくない影響を及ぼしかねないものであり、国際信義に反し、両国の公益を損なうおそれが高いといわざるをえない。
本件商標は、商標法4条1項7号に該当
 
<解説>
特許庁の商標審査基準第3六:
①その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、矯激若しくは他人に不快な印象を与えるような文字または図形である場合、
②当該商標の構成自体がそのようなものでなくとも、指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の利益に反し、社会の一般道徳観念に反する場合
③他の法律によって、当該商標の使用等が禁止されている場合
④特定の国若しくはその国民を侮辱し、又は一般に国際信義に反する場合
⑤当該商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合等
についても、商標法4条1項7号に該当するものとして運用。 
本件は、特定の国の国民の国民感情を害することを理由に国際信義に反するものとして商標法4条1項7号に該当することを認めた事例。
判例時報2424

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2020年1月 3日 (金)

テーマパークでの標章の使用が非商標的使用とされた事案

大阪地裁H30.11.5    
 
<争点>
被告各商品における被告各標章の非商標的使用該当性 
 
<規定>
商標法 第二六条(商標権の効力が及ばない範囲)
商標権の効力は、次に掲げる商標(他の商標の一部となつているものを含む。)には、及ばない。
六 前各号に掲げるもののほか、需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができる態様により使用されていない商標
 
<判断>
●被告各商品に接した需要者が、被告各標章を『需要者が何人かの業務に係る商品・・・であることを認識することができる態様により使用されていない商標』 (法26条1項6号)と認識するか否かは、
ミニオンの図柄や被告各標章が服飾品のデザインとしての性質を有することを前提にしつつ、更に被告各標章の使用態様や取引の実情等を総合考慮して検討する必要がある。
①ミニオンが登場する映画が大ヒットとなっていること、
②被告のアンケート調査によるものであるがミニオンが高い周知性を有するキャラクターであることが認められ、需要者は被告各商品がミニオンのキャラクターグッズである点に着目し購入するものと考えられること、
③USJパーク内の看板等で、ミニオンのキャラクターに関連して「BELLO!」との表示がされており、需要者は被告各標章や「BELLO!」が、ミニオンのキャラクターと何かしらの関連性を有する語ないしフレーズであると認識すると考えられること等

被告各商品の出所については、それがUSJ(被告)の直営店舗で販売されるミニオンのキャラクターの公式グッズであることや、被告各商品にも一般に商品の出所が表示される部位である商品のタグやパッケージに本件被告ロゴが表示されていることによって識別すると認めるのが相当。

●本件各商標が周知なものであれば、需要者は被告各標章を出所表示として認識することになると考えられる。
but
本件各商標が被告各商品の需要者の間で周知性を有するとは認められない

その既知性に基づいて被告各商品の需要者が被告各標章を出所表示として認識するとはいえない。 

①USJのオンラインストアでの被告各商品の販売においても、トップページに本件被告ロゴが表示される
②USJオンラインストア以外のオンラインストアにおいて、その出所がUSJであるミニオンのキャラクターグッズであることが明記されている。
被告各標章をミニオンの図柄と関連がないものとして、また被告各商品の出所として、識別をすることが考え難い

証拠により示されたこれまでの取引の実情に基づく限り、被告各商品が販売されているいずれの局面においても、被告各標章が出所表示として機能していない⇒非商標的使用(商標法26条1項6号)に該当。

将来の被告各標章の使用についても、
取引きの実情の変化の有無やその態様が明らかでない⇒将来における取引の実情の変化を前提とする判断をすることはできない。
 
<解説>
本判決:
被告各標章が服飾品のデザインつぃての性質を有することを前提にしつつも、
本件で対象になった商品に限らず、被告各標章が使用されている具体的状況、一緒に表示されているキャラクター及び本件各商標それぞれの周知性、被告各商品が販売されている際にどのような表示がされているか等、
具体的な取引の実情等から、被告各標章が出所表示として需要者に認識されてないと判断。
判例時報2422

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2019年11月14日 (木)

ミキシングを行った者のレコード製作者性(否定)、外国映画配給会社の注意義務(通知⇒特段の事情⇒肯定)

大阪地裁H30.4.19     
 
<事案>
レコード会社であるXが、自己が販売する音楽CDに収録されている楽曲がBGMとして使用されている映画を複製した、外国映画の配給会社であるYに対し、レコード制作者の権利(複製権)侵害を理由として、損害賠償等の支払を求めた事案。 
 
<争点>
①Xが本件音源につきレコード製作者の権利を有するか
②本件音源を複製したことに関するYの過失の有無
③損害額 
 
<規定>
著作権法 第二条(定義)
この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
五 レコード 蓄音機用音盤、録音テープその他の物に音を固定したもの(音を専ら影像とともに再生することを目的とするものを除く。)をいう。
六 レコード製作者 レコードに固定されている音を最初に固定した者をいう。
 
<判断>
争点①について:
本件音源についてのレコード製作者、すなわち本件音源の音を最初に固定した者は、レコーディングの工程で演奏を録音した者というべき⇒Xがミキシング等を行ったことによりそのレコード製作者の権利を原資取得したとは認められない。
but
承継取得を肯定

争点②について:
Xからの通知書が送付⇒本件音源の権利処理が完了していないのではないかということを合理的に疑わせる事情が存在⇒Yには過失あり

争点③について:
上映地域が日本国内のみ
本件音源の使用期間がごく短期間

2万円を相当。
 
<解説>  
●レコード製作者:
レコード(著作法2条1項5号) に入っている音を初めて蓄音機用音盤、録音テープその他の物に固定した者、すなわち、レコードの原盤の製作者を指すものと解される。そして、レコード製作者であるためには、いかなる方式の履行も要しないものであるが(同法89条5項)、物理的な録音行為の従事者ではないく、自己の計算と責任において録音する者、通常は、原盤制作時における費用の負担者がこれに該当する」(東京地裁H19.1.19、同旨知財高裁H26.4.18)
より以前の裁判例には、起草担当者の見解に依拠しつつ、「音の最初の固定行為が創作的行為による正当化を行うものもある」

学説
A:伝統的には、起草担当者の見解をはじめ、固定行為者ないしは準創作的行為の保護であるとする見解
B:費用負担者ないしは投資の保護(近時多数説)
レコード製作者は投下資本の所在を基準に決せられることになり、事実行為としての物理的な固定行為や、その成果物としてのレコードの質的評価は、基本的に無関係であると解される

●実務上はレコーディングからミキシングまでが原盤制作と称されるところ、レコーディングとミキシングの主体が異なることは稀
but
両者が異なる場合となるリミックス盤の制作においては、加工部分の音源と制作においては、加工部分の音源の権利がエンジニアに新たに発生するという前提に立って契約実務がなされており、本判決は実務との甚だしい乖離を生じるとの指摘もある。 
 
●従来の裁判例:
著作権者を侵害して複製物を作成した者から発行の依頼等を受けてそのまま複製・頒布を行った他の者の過失については、諸般の事情を考慮して判断。
出版社、放送事業者等に関する事例が多く、一般的注意義務が肯定された例が多数みられる。 
学説においても、著作物利用者の過失は基本的に諸般の事情を考慮して判断すべきものとされるが、

A:出版社等に厳格責任を負わせるべき

①その者の行為による著作権侵害の拡大・拡散
②経済的利益の存在
③補償条項を設けることによって侵害物作成者に求償できる
④原告にとって被告側の内部関係を知ることは困難⇒事実上の過失推定を負わせるべき。
vs.
(1)現場において個別にチェックを行うことや、制作に関与していない発注元が調査を行うことは実際上極めて困難であり過重な負担
(2)民法における注意義務の一般的基準としては、一般に①危険が生じる蓋然性、②危険が生じた場合の重大性、③予防措置を取ることに対するコストの3つを勘案するのに対して、著作権法では、メディアの責任のような大上段な前提から出発する傾向にあり、十分な予防措置をとることに対する負担が考慮されていない。

B:これを消極に解する立場

本判決:
外国映画配給会社に映画に利用されている著作物等の権利処理有無の確認の注意義務を一般的に認めることは妥当でない。

①映画が多数の著作物等を総合して成り立つことから、権利処理が映画制作会社においてなされるのが通常
②外国映画配給会社の場合は、許諾の有無の確認に要するコストが膨大
③外国性が配給業界における実務慣行

その上で、
本国の映画製作会社等の権利処理が適切に行われていないことを合理的に疑わせる特段の事情が存在する場合には、侵害が予見可能⇒調査確認義務を負う上、調査確認を尽くしても前記疑いを払拭できないのであれば、当該音源を使用した当該映画の複製を差し控えるべき注意義務を負う。

判例時報2417

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2019年11月 6日 (水)

フラダンスの著作権性

大阪地裁H30.9.20    
 
<事案>
X(ハワイ在住のクムフラ(ハワイ在住のフラダンスの指導者)・Y間の契約関係解消

Yに対し、
①フラダンスの振りつけ(本件各振付け)につき著作権侵害に基づく上演の差止め
②フラダンスと同時に演奏される楽曲(本件各楽曲)につき著作権侵害に基づく演奏の差止め
③①②について著作権侵害の不法行為に基づく損害賠償を請求
④平成26年秋に予定されていたワークショップ等においてXがYないしKHAの会員に対してフラダンス等の指導を行うことを内容とする準委任契約(本件準委任契約)がYにより解除されたことに伴う民法656条、651条2項本文に基づく損害賠償を請求 
 
<判断> 
●ハンドモーションについて 
フラダンスの上演時に演奏さえる楽曲中の歌詞の解釈を示すもの

①当該歌詞から想定されるハンドモーション
②当該歌詞と同内容の歌詞について他に例があるハンドモーション
③前記①②に当たらないハンドモーションであっても、それらのものとの差異がわずか
~いずれも作者の個性の表れは認められない。 
個々のハンドモーションが前記①②③に当たる場合、
仮に踊り全体をみたときに個々のハンドモーションにおける振付けの選択が累積され、その組合せが他に類例のみられないものになっていたとしても、
それら個々のハンドモーションが限られた類例から選択されたにすぎない場合には、踊り全体としても作者の個性の表れは認められない。
あるハンドモーションにつき、その歌詞の解釈に独自性があったとしても、表現結果である振付けが前記①②③に当たるような場合には作者の個性の表れが認められない。
but
歌詞の解釈が独自のものであって、それによって振付けの動作が他と異なるものとなる場合には、作者の個性の表れが認められる


①ステップについては、典型的なものの組合せによって構成される
②歌詞を表現するものでもない

これに作者の個性が認められるためには既存のものと顕著に異なる新規なものであることが求められる。 


仮に特定の歌詞部分における短い振付け動作に作者の個性が表れているとしても、それは舞踏の一部分にすぎない
⇒当該部分に著作物性を認めることはできず、作者の個性が表れている部分とそうでない部分が相まったひとまとまりの動作の表れという単位で著作物性が判断されるべき。 
侵害の成否の判断に際しても、一連の動作たる舞踏としての特徴が感得されることを要する


各振付けに含まれる歌詞の一節ごとに当該歌詞に対応するハンドモーションを摘示し、主としてこれと同様のハンドモーションが他に存在するか、存在するとしてもこれとどのような差異があるかという観点から振付けの当該部分にXの個性が表れているか否かを検討した上で、改めて各振付けにつき全体として著作物性の判断を行い、結論として本件振付け6等のすべてについて著作権性を肯定
 

<解説>
舞踏の著作物の振付けにつき著作物性が実質的な争点となった事例として、
東京地裁h24.2.28のShall we ダンス?事件。

社交ダンスの振付けの著作物性を判断するに当たって「顕著な特徴を有する独創性」という高い基準が設定された。
but
本件では、「個性の表れ」という一般的な基準によって、著作物性の判断がなされている。 
 
<判断>
Yによる本件準委任契約の解除が「不利な時期」(民法651条2項)になされたことを認めたうえで、
本件準委任契約に基づきワークショップを開催することによってKHAからの脱会者がさらに増える見込みであった⇒「やむを得ない事由」(同項ただし書)があったことを認めている。

判例時報2416

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2019年10月21日 (月)

特許法102条2項の損害額の推定と共有者等

知財高裁H30.11.20      
 
<事案>
発明の名称を「下肢用衣料」とする本件特許の特許権を有する一審原告が、被告製品を製造販売等する一審被告らに対し、被告製品の製造販売等の差止め等を求めるとともに、
民法709条に基づく損害賠償請求をした。 
 
<原判決>
被告製品につき本件発明の技術的範囲に属する。
無効の抗弁を排斥。

被告製品の製造販売等の差止め等及び損害賠償請求の一部を認容。 
 
<規定>
特許法 第一〇二条(損害の額の推定等)

2特許権者又は専用実施権者が故意又は過失により自己の特許権又は専用実施権を侵害した者に対しその侵害により自己が受けた損害の賠償を請求する場合において、その者がその侵害の行為により利益を受けているときは、その利益の額は、特許権者又は専用実施権者が受けた損害の額と推定する。
3特許権者又は専用実施権者は、故意又は過失により自己の特許権又は専用実施権を侵害した者に対し、その特許発明の実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額の金銭を、自己が受けた損害の額としてその賠償を請求することができる。

民訴法 第一五七条(時機に後れた攻撃防御方法の却下等)
当事者が故意又は重大な過失により時機に後れて提出した攻撃又は防御の方法については、これにより訴訟の完結を遅延させることとなると認めたときは、裁判所は、申立てにより又は職権で、却下の決定をすることができる。

特許法 第一〇四条の三(特許権者等の権利行使の制限)
特許権又は専用実施権の侵害に係る訴訟において、当該特許が特許無効審判により又は当該特許権の存続期間の延長登録が延長登録無効審判により無効にされるべきものと認められるときは、特許権者又は専用実施権者は、相手方に対しその権利を行使することができない。
2前項の規定による攻撃又は防御の方法については、これが審理を不当に遅延させることを目的として提出されたものと認められるときは、裁判所は、申立てにより又は職権で、却下の決定をすることができる。
 
<判断> 
特許法102条2項の損害額の推定を受けるに当たり、共有者は、原則としてその実施の程度に応じてその逸失利益額を推定されると解するのが相当であり、持分権の割合を基準とすることは合理的でない。
but
同項に基づく損害額の推定は、不実施に係る他の共有者の持分割合による同条3項に基づく実施料相当額の限度で一部覆滅されるとするのが合理的。

本件における特別の事情として、訴外会社の一審被告らに対する損害賠償請求権が一審原告に債権譲渡されているが、
①当該請求権は一審原告固有の損害賠償請求権とその発生原因を異にし、債権譲渡の結果、一審原告の下に両立していると考えられる
②一審原告が、債権譲渡を受けた損害賠償請求権を行使しないで、固有の損害賠償請求権のみの行使を主張する旨明言

本件においては、結果として同一人に帰属しているからといって、結論的に異にすべき事情ということはできない。
 
●本件訴訟の経緯(控訴理由提出期限経過後に提出した書面において、少なくとも6項目に及ぶ無効理由に基づく無効の抗弁等の追加を主張)

①一審被告らの控訴審における無効の抗弁等の主張の追加が時機に後れたものであること、
②一審被告らにその点につき少なくとも過失が認められることは明らか

民訴法157条1項に基づき時機に後れた攻撃防御方法として却下。 
一審被告らは、原審において北条単位で4個もの無効理由を主張しているところ、控訴審において追加しようとする無効理由は少なくとも6項目に及ぶ。

控訴審におけるこれほど多数の無効理由による無効の抗弁の追加は、審理を不当に遅延させることを目的として提出されたものといわざるをえない。

無効の抗弁の追加主張については、特許法104条の3第2項によっても、却下されるべき。

判例時報2413

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