家事事件

2017年8月20日 (日)

親権停止審判申立事件を本案事件とする審判前の保全処分申立事件で、本案審判認容の蓋然性及び保全の必要性を認め、未成年者に対する職務の執行を停止した事例

親権停止審判申立事件を本案事件とする審判前の保全処分申立事件
 
<事案>
児童相談所長は、未成年者を一時保護し、親権者らについて親権停止の審判を求めるとともに、同審判が効力を生じるまでの間、親権者らの未成年者らに対する職務の停止を求める審判前の保全処分を申し立てた。 
 
<判断>
未成年者の病状は今後予定される手術の内容等
⇒未成年者の親権者としては、未成年者を頻繁に見舞うとともに、医療従事者と十分に意思疎通を図り、緊急の事態が生じた場合も含めて、未成年者が必要としている医療行為が実施されるよう、迅速かつ適切に対応する必要がある。 

親権者らのこれまでの対応や現在の生活状況等
親権者らが迅速かつ適切に対応できるかどうか疑問がある。

本案審判認容の蓋然性及び保全の必要性があると判断し、申立人の申立てを認容
 
<規定>
民法 第834条の2(親権停止の審判)
父又は母による親権の行使が困難又は不適当であることにより子の利益を害するときは、家庭裁判所は、子、その親族、未成年後見人、未成年後見監督人又は検察官の請求により、その父又は母について、親権停止の審判をすることができる
2 家庭裁判所は、親権停止の審判をするときは、その原因が消滅するまでに要すると見込まれる期間、子の心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮して、二年を超えない範囲内で、親権を停止する期間を定める。

家事事件手続法 第174条(親権喪失、親権停止又は管理権喪失の審判事件を本案とする保全処分)
家庭裁判所(第百五条第二項の場合にあっては、高等裁判所。以下この条及び次条において同じ。)は、親権喪失、親権停止又は管理権喪失の申立てがあった場合において、子の利益のため必要があると認めるときは、当該申立てをした者の申立てにより、親権喪失、親権停止又は管理権喪失の申立てについての審判が効力を生ずるまでの間、親権者の職務の執行を停止し、又はその職務代行者を選任することができる。

2 前項の規定による親権者の職務の執行を停止する審判は、職務の執行を停止される親権者、子に対し親権を行う者又は同項の規定により選任した職務代行者に告知することによって、その効力を生ずる
 
<解説>
●未成年者が病気・事故等のために手術や治療を必要としている場合、医療機関がその未成年者に対し医療行為を行うには、通常、親権者の同意が必要。
but
親権者が正当な理由もなく未成年者に対する医療行為についての同意を拒否して放置することにより、未成年者の生命・身体が危険にさらされている場合がある(=医療ネグレクト)。 

親権停止(民法834条の2)は、平成23年の民法改正によって設けられた制度であり、親権を喪失させるまでには至らない比較的程度の軽い事案や、一定期間の親権制限で足りる事案において、必要に応じて適切に親権を制限することができるようにするために設けられていたもの。

家庭裁判所は、親権喪失・親権停止等の申立てがあった場合において、親権者による虐待の程度が重大で子の心身に危険が生じている場合など、「子の利益のため必要がある」と認められる場合には、本案事件の申立人の申立てにより、本案審判が効力を生ずるまでの間、親権者の職務の執行を停止し、又はその職務代行者を選任することができる(家事事件手続法174条)。

● 本件では、保全処分の内容として、親権者の職務執行停止のみが申し立てられており、職務代行者選任は申し立てられていない。

未成年者につき一時保護が行われているため、親権者の職務の執行を停止しさえすれば、児童相談所長において親権の行使が可能とされている(児童福祉法33条の2)。
but
職務代行者を選任しない場合、職務代行者に告知をすれば親権者への告知を待たずに審判の効力が生ずるとする家事事件手続法174条2項を適用することができない(同法74条2項及び109条2項により、親権者に告知されたときに効力を生じる)。

● 医療ネグレクト事案における本案審判認容の蓋然性及び保全の必要性についての考慮要素
①未成年者の疾患及び現在の病状
②予定される医療行為及びその効果と危険性
③予定される医療行為を行わなかった場合の危険性
④緊急性の程度
⑤親権者が未成年者に対する医療行為を拒否する理由及びその合理性の有無等

本件についても、前記の考慮要素等を総合考慮の上、未成年者の病状が深刻であって、直ちに治療及び手術を受ける必要性があり、これを受けなった場合には未成年者の生命に危険が生じかねない事態であることを重視し、親権者らがこのような緊急事態に迅速かる適切に対応できるかどうか疑問であるとして、本案審判認容の蓋然性及び保全の必要性を認めた

判例時報2333

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2017年8月12日 (土)

普通預金債権、通常貯金債権及び定期貯金債権の遺産分割対象性(肯定)

最高裁H28.12.19      
 
<事案>
被相続人Aの遺産分割審判における許可抗告事件。 
Aの法定相続人はXとYのみで、その法定相続分は各2分の1。
Aは、不動産(評価額合計約258万円)のほかに預貯金債権(合計4000万円以上)を有している。
 
<規定>
民法 第427条(分割債権及び分割債務) 
数人の債権者又は債務者がある場合において、別段の意思表示がないときは、各債権者又は各債務者は、それぞれ等しい割合で権利を有し、又は義務を負う。
 
<原審>
預貯金債権は預金者の死亡によって法定相続分に応じて当然に分割され、相続人全員の合意がない限り遺産分割の対象とすることはできない。
Yに特別受益があり、その額は5500万円程度と認めるのが相当⇒Yの具体的相続分は0⇒Xが前記不動産を取得すべき
   
Xが許可抗告の申立てをしたところ、原審がこれを許可。
 
<判断>
「共同相続された普通預金債権は、いずれも、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはなく、遺産分割の対象となる」

原決定を破棄し、本件を原審に差し戻した。 
 
<解説>
●預金債権の遺産分割対象性 
最高裁判決(昭和29.4.8):
「可分債権」について相続により債権者が数人となった場合に、共同相続人の数に相当する個数の債権に分割されて各共同相続人に帰属すること(民法427条が定める分割債権関係。ただし、その割合は相続分による。)を判示。

最高裁H16.4.20:
相続財産中に可分債権があるときは、その債権は、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されて各共同相続人の分割単独債権となり、共有関係に立つものではないと解される。
債権が各共同相続人に当然に分割されて帰属⇒共同相続人による当該債権の準共有状態は存在しないから、当該債権は遺産分割の対象とならないというのが、昭和29年判決や平成16年判決の論理的帰結。

「可分債権」は原則として遺産分割の対象とならないが、共同相続人全員がこれを遺産分割の対象に含める合意をした場合には、遺産分割の対象となるとの見解が、家裁実務の大勢。

近似の判例で、①定額郵便貯金債権、②委託者指図型投資信託の受益権、個人向け国債、③委託者指図型投資信託の受益権につき相続開始後に発生した元本償還金等に係る預り金について、当然分割を否定。
but
これらは、それぞれの事案で問題とされた財産権が昭和29年判決や平成16年判決にいう「可分債権」に当たらないことを理由に(前記両判決等の射程を限定して)当然分割を否定し、その裏返しとして当該財産権を遺産分割の対象とすることを認めたもの。

中田:
給付がその性質上可分である債権には、相続開始と同時に当然に分割債権となる「分割型」と、そうでない「非分割型」とがあり、後者には債権者全員が共同して出ないと行使することができない債権(共同債権)が含まれる。

潮見:
債権発生原因である契約により内容・属性を与えられた金銭債権が相続の結果として共同相続人に承継される場合に、分割単独債権として各自に帰属するのか共同相続人の準共有となるのかは、前記の内容・属性に則しは判断されるべきであるが、預金債権の相続に関しては、<預金債権=準共有=相続人全員による共同行使>構成の採用を正面から検討すべきである。
 
●本決定の考え方 
遺産分割制度の趣旨・目的について説示し、共同相続人間の実質的公平を確保するという目的に照らして、具体的な遺産分割の方法を定めるに当たっての調整を容易にする財産を遺産分割の対象とすることを指摘。
②預貯金に関する事務の内容、預貯金の決裁手段としての性格や現金との類似性等について詳細に説示した上で、遺産分割の実務において当事者の同意を得て預貯金債権を遺産分割の対象とする運用が広く行われていることを指摘。

預貯金債権が遺産分割の対象とすることになじむ財産であることを示す。

普通預金債権・通常貯金債権(普通預金)について、
普通預金契約(通帳貯金契約を含む。以下同じ。)が、一旦契約を締結して口座を開設すると、以後預金者が自由に預入れ、払戻しをすることができる継続的取引契約であり、口座に入金が行われた場合、これにより発生した預貯金債権は口座の既存の預貯金債権と合算され、一個の預貯金債権として扱われる(一個の債権として同一性を保持しながら常にその残高が変動し得るものである)という特殊性を指摘。

普通預金債権等が相続により数人の共同相続人に帰属するに至る場合、各共同相続人に確定額の債権として分割されることはない

相続開始時における各共同相続人の法定相続分相当額を算定することはできるが、預貯金契約が終了していない以上、その額は観念的なものにすぎない

共同相続人が全員で預貯金契約を解約しない限り、例えば、相続開始時の残高が100万円であったとしても、その翌日には残高が110万円になっているかもしれないのであり、本質的にそのような可能性を有するものとして普通預金債権等は存在⇒相続が開始された場合、各共同相続人はそのような1個の債権の上に準共有持分を有すると解すべきであるという趣旨。
以上のような普通預金債権等の特殊性を捉えて、本決定は、共同相続された普通預金債権等は相続開始と同時に当然に分割されることはなく、遺産分割の対象となると判示。

本決定:
株式会社ゆうちょ銀行に対する定期貯金債権について、契約上分割払戻しが制限されており、このことは単なる特約ではなく定期貯金契約の要素となっている

共同相続された定期貯金債権は相続開始と同時に当然に分割されることはなく、遺産分割の対象となる。

以上の説示は、近時の判例と同様に、本件で問題とされている普通預金債権等及び定期貯金債権が、その内容及び性質に照らして昭和29年判決にいう「可分債権」に当たらない旨をいうものと解される。

本決定の考え方は、貯金債権が相続開始と同時に当然に分割される旨を判示した平成16年判決等と相反するものであり、これを変更したもので、昭和29年判決を変更したものではない
 
●個別意見の概要 
鬼丸意見:
①多数意見が述べる普通預金債権等の法的性質⇒相続開始後に被相続人名義の預貯金口座に入金が行われた場合、当該口座に係る預貯金債権の全体が遺産分割の対象となる(相続開始時の残高相当額部分のみが遺産分割の対象となるものではない。)
②果実、代償財産、可分債権の弁済金等が被相続人名義の預貯金口座に入金された場合、具体的相続分の算定の基礎となる相続財産の価額をどう捉えるかが問題となることになる。
 
●本決定の射程等 
本決定:
普通預金債権等及び定期貯金債権について、権利の内容及び性質に照らし遺産分割の対象となることを判示。

定額貯金債権に関する説示(=分割払戻しの制限が契約の要素となっていること)の考え方は、ゆうちょ銀行の定額貯金のほか、その他の金融機関の定期預金・定期貯金にも及ぶ(約款上一部解約が認められることは定期預金等の本質に影響しないのではないか。)。

共同相続人の1人が相続開始前に被相続人に無断でその預貯金を払い戻した場合に発生する不当利得返還請求権や不法行為に基づく損害賠償請求権(いわゆる使途不明金問題)については、本決定の射程外

平成16年判決の事案のように、相続開始後に共同相続人の1人が相続財産の預貯金を払い戻した場合、他の共同相続人は、自己の準共有持分を侵害されたものとして、払戻しをした共同相続人に対し、不法行為に基づく損害賠償又は不当利得の返還を求めることができるものと解される(結論において、平成16年判決が説示したところと同じに帰するが、理由を異にする。)

本決定の考え方⇒相続人は全員で共同しなければ預貯金の払戻しを受けることができない(民法264条本文、251条)

共同相続人の一部が、被相続人の預貯金債権を相続分に応じて分割取得したと主張して、金融機関に対しその法定相続分相当額の支払を求めた場合、その請求は棄却されるべきものとなる。
(このことと、金融機関が顧客の便宜のために相応のリスク判断の下で一定の便宜を行うことは、もとより両立し得るものと思われる。)
 
●確定判決等に与える影響 
既に確定している遺産分割審判や預貯金払戻請求訴訟の判決に影響を与えるものではない
but
預貯金債権が残存する場合には、別途これについての遺産分割をすることを要する

本決定と異なる解釈を前提として遺産分割の協議や調停がされた場合に、その協議や調停の効力が当然に錯誤等により影響を受けるものではない

判例時報2333

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2017年7月13日 (木)

養育費の減額事例

東京高裁H28.7.8      
 
<事案> 
相手方(元夫)xが、抗告人(元妻)Yに対し、離婚の際に公正証書により合意した養育費の減額を求めた事案。 
 
X(元夫)とY(元妻)は、離婚の際、公正証書により、両名の間の3人の子の養育費について、XがYに対し子1人につき月額2万5000円(合計月額7万5000円)を支払うとの合意。
離婚後Yは再婚し、再婚相手と子ら(この子らは再婚相手と養子縁組していない)と共に生活。

Xは、Yの再婚や経済状況の変化などを理由に養育費の減額を求める調停の申立て。but審判移行後、申立てを却下するとの審判が確定。

事情の変更を肯定した上、公正証書による合意はいわゆる標準算定方式により算定される額を月額5万5000円上回っている⇒この合意の趣旨を反映させるべく、前件審判時の双方の収入により算定される養育費月額6万円に5萬5000円を加えた月額11万5000円とすべき
他方、Yの再婚相手がXとYとの間の子らの扶養に一定の責任を負うことは否定できない
Xが負担すべきは11万5000円の3分の2であるとし、結論としては変更の必要なし

その後、Xも再婚し、その再婚相手との間に一児をもうけた⇒再度、養育費の減額を求める審判申立て。
 
<判断>
前記審判後にXが再婚相手及びその間に生まれた子の扶養義務を負うに至ったことは、養育費の額を変更すべき事情変更に当たる。 
前件審判を前提に、
子それぞれについての養育費の額を生活費指数(親を100とした場合の子に充てられるべき生活費の割合)に応じて按分し、結論として、減額が相当
 
<解説>
●父母が養育費について合意し、あるいは審判により養育費が定められた後に、その合意等を基礎付ける事情が変更⇒養育費の増減額を求めることができる。 
事情の変更は、一般に、「法的安定性の要請から、前協議又は審判の際に予見されなかった事情であり、かつ、前協議又は審判を維持することが困難な程度に事情の変更が顕著であることを要する。」

●前に合意し、あるいは審判により定められた養育費の額がいわゆる標準算定方式により算定される額と相違する場合には、増減額の検討に当たってこの相違を考慮する必要がある。 
両者の差額を①固定額としてとらえて考慮したり、②両者の比率に着目して考慮したりするなどの方法があり得るが、最終的には、事案ごとに判断することになる。

●本件では、5万5000円の加算を、XとYの間の3人の子のみに配分すべきか、Xとその再婚相手との間の子等にも配分すべきか?
本決定「未成年者ら以外に相手方が扶養義務を負う子を未成年者らより劣後に扱うことまで求める趣旨であるとまで解すことはできない

Xが、Yとの間の3人の子に対して負う扶養義務と、再婚相手との間の子に対して負う扶養義務との間に差異はない。 

原審判は、5万5000円をXの基礎収入(養育費を捻出する基礎となる収入)に加算することで、同額をX自身にも配分してしまっている。
~合意の趣旨を超えている。

Y(元妻)の再婚相手は養親ではない以上、Xの養育費支払義務の検討においてYの再婚相手の存在を考慮すべきでないという考え方もあり得るが、考慮するという考えもあり得る

以上の検討を経て、XとYとの間の3人の子の養育費の合計額を算定した上で、これを3人の各生活費指数に応じて按分して、子ごとの養育費の額を算定。
←標準算定方式による算定の過程において、子ごとに異なる生活費指数を用いている。

判例時報2330

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2017年7月 8日 (土)

在日韓国人間の婚姻無効確認請求の準拠法

大阪高裁H28.11.18       
 
<事案> 
在日韓国人A(平成25年3月死亡)と在日韓国人Yとの平成10年1月19日付の婚姻の届出について、Aの子らであるXらが、本件届出について届出の意思はなく無効であるなどと主張し、婚姻が無効であることの確認を求めた事案。 
 
<規定>
法の適用に関する通則法 第24条(婚姻の成立及び方式) 
婚姻の成立は、各当事者につき、その本国法による。
2 婚姻の方式は、婚姻挙行地の法による。
 
<一審>
在日韓国人の届出意思の欠缺を理由とする婚姻無効に関し、
届出意思は「婚姻の成立」に当たり、 通則法24条1項に基づき韓国民法による。
韓国民法に基づき、Aには婚姻の意思があったと推定される⇒Xらの本訴請求を棄却。
 
<判断>
在日韓国人の届出意思の欠缺を理由とする婚姻無効に関しては、届出意思は「婚姻の方式」に当たる
⇒通則法24条2項により、婚姻挙行地法である日本民法が準拠法。 
Aに無断で婚姻届を提出したと認定したが、その後Aは届出意思を追認した
⇒同旨の原判決は相当。
 
<解説>
「婚姻の成立の要件」とは、婚姻の実質的成立要件を意味、
「婚姻の方式」とは、法律上有効な婚姻を成立せしめるために、当事者に要求される外面的行為を意味するものと解すべき。 

民法の「届出」は、婚姻の合意に含まれる意思表示がさような意思表示として効力をもつための方式であって、民法は、届出によって「その効力を生ずる」としているが、届出は、単なる効力の要件ではなく、成立要件と解されている(我妻)。
⇒届出の意思は「婚姻の成立」の問題か、それとも「婚姻の方式」の問題かの判断は、微妙で困難。

判例時報2329

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2017年7月 7日 (金)

支払期限が到来していない養育料債権(強制執行認諾文言のある公正証書あり)を被保全債権としての仮差押命令(否定)

最高裁H29.1.31      
 
<事案>
元妻であるXが、元夫であるYとの間で作成した強制執行認諾文言のある公正証書(「本件公正証書」)で定められた長男A及び二男Bの養育料(1人当たり月額3万円)のうち、Aに係る支払期限が到来していない養育料債権(平成28年2月~平成32年3月の50か月分、合計150万円)を被保全債権として、Y所有の土地及び建物(「本件不動産」)に対して仮差押命令の申立てをした。
 
<原審>
金銭債権について債務名義が存在する場合には、債権者は、特別の事情のない限り、速やかに強制執行をすることができる。
本件申立ては、権利保護の利益を欠き不適法であるから、これを却下すべき。
 
<判断>
抗告棄却 
 
<解説>   
●最高裁H24.9.6:
(いわゆる例文の形ではあるが)債務名義がある債権を被保全債権とする仮差押命令の申立てについて、権利保護の必要性を欠くとの理由でこれを却下すべきものとした原決定を正当として是認。 

例外が認められる場合:
・債務名義に条件又は期限が付されている場合
・執行停止命令があった場合等
 
●本件の養育料債権については、債務名義(執行証書)がある
支払期限が到来したもので未払のものについては、これを請求債権として強制執行の申立てをすることができる。
but
Yが給料その他継続的給付に係る債権を有していない
養育料債権のうち支払期限が未到来のものを請求債権として強制執行の申立てをすることはできない(民執法30条、151条の2。ただし、同法167条の16による間接強制の余地はある。)。 

養育料債権を被保全債権とする仮差押命令の申立ての権利保護の必要性の有無については、各月ごとの債権を切り出して議論するのではなく、養育料債権全体実現方法の問題として議論すべきであり、既に支払期限が到来した未履行のものがあれば、基本的には、まず、それについて強制執行に着手すべきものであるという考え方が背景にあるように思われる。
 
●本件では、Xが、本件不動産の強制競売を申し立てたとしても無剰余を理由に手続が取り消される可能性が相当程度ある。 

債権者が債務名義を有している場合に債務者所有の不動産が無剰余でること(又は無剰余の見込みが高いこと)が、当該不動産に対する仮差押命令申立てについて例外的に権利保護の必要性(保全の必要性)を認める事情となり得るか?
A:必要性を肯定するもの
B:必要性を否定するもの
C:近い将来に剰余が生じる見込みが高いことが証明された場合に例外的に必要性を肯定することを明言するもの

平成24年最高裁判決:
債権者が債務者所有の不動産に対して強制執行をしたが無剰余取消しされる直前に当該不動産について仮差押命令の申立てをした事案において、権利保護の必要性を否定した原決定を正当として是認
but
この決定が、例えば、遠くない将来に剰余が生じる見込みが高いことが証明されたような場合にまで例外を否定する趣旨であるかは明らかではない。

判例時報2329

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2017年6月18日 (日)

韓国法での相続分・法定相続分の確認請求

東京地裁H28.8.16      
 
<事案>
韓国籍を有している被相続人Aは昭和14年頃来日し、昭和20年に原告X1と婚姻し、日本において複数の事業を行い、平成21年8月に死亡。
Aには相続人として、配偶者X1のほか、合計7人の子がいる。 

法の適用に関する通則法38条は、相続は被相続人の本国法によるとしているところ、韓国民法は被相続人に子が数人ある場合、その相続分は平等であり、被相続人の配偶者の相続分は子の相続分に5割を加算した割合とされている。

X1の相続分は17分の3、子は17分の2となる。

X1は、Y1らを被告として、Aを被相続人とする相続において、通則法42条を適用して、韓国民法の配偶者の法定相続分の規定の適用が我が国の公の秩序又は善良の風俗に反するとして韓国民法の同規定の適用を排除し、日本民法の配偶者の遺留分割合を最低限の法定相続分として、妻X1の相続分を4分の1、その余の子の相続分を韓国民法に従って平等の割合すなわち28分の3とするべきであるとして、法定相続分割合の確認を求めた。 
 
<規定>
法の適用に関する通則法 第36条(相続) 
相続は、被相続人の本国法による。

法の適用に関する通則法 第42条(公序)
外国法によるべき場合において、その規定の適用が公の秩序又は善良の風俗に反するときは、これを適用しない。

民法 第899条
各共同相続人は、その相続分に応じて被相続人の権利義務を承継する。

民法 第905条(相続分の取戻権)
共同相続人の一人が遺産の分割前にその相続分を第三者に譲り渡したときは、他の共同相続人は、その価額及び費用を償還して、その相続分を譲り受けることができる。
2 前項の権利は、一箇月以内に行使しなければならない。
 
<被告主張>
請求の棄却を求めるとともに、
本案前の抗弁として:
遺産分割の前提となる具体的相続分の確認を求める訴えは確認の利益を欠くと解される(最高裁H12.2.24)のと同様に、法定相続分割合の確認を求める本件訴えは、確認の利益を欠き、不適法。 
 
<判断>
●本案前の抗弁について
法定相続分は、遺産分割の前提となるべき計算上の価値又は割合にすぎない具体的相続分と異なり、実体法上の権利であって、その割合に争いがある限り、その確認を求める訴えが直ちに確認の利益を欠くものであるとはいえない
but
法定相続分の確認は認められるが、相続財産を掲げて法定相続分の確認を求めることは許されない
⇒「亡Aを被相続人とする相続についての」法定相続分の確認請求として認容。
 
●本案請求について 
通則法42条にいう公序に反するときとは、外国法の規定の適用が日本の法秩序にとって容認し難い結果をもたらすような場合をいうと解される。

法定相続分及び遺留分の割合は各国ごとに配偶者及び子の権利の均衡に配慮して定められていることから、外国の規定が適用される場合には、遺留分割合が日本の民法の規定による遺留分割合を下回ることも当然に予想され、このような結果をもたらす外国法の規定が直ちに公序に反するものではなく、①被相続人Aと原告X1が日本に生活の基盤を有し、韓国との特段のつながりを有していないこと、②被相続人Aが日本で財産を築き、原告X1がこれに多大な貢献をしたこと、③原告X1の相続額など原告らの主張する事実を全て考慮しても、本件相続に韓国民法の法定相続分割合の規定を適用することが公序に反するということはできない
⇒原告の請求を棄却。

相続分の譲渡の対象となる相続分は、法定相続分ではなく具体的相続分である
⇒法定相続分の譲り受けにより法定相続分の加算を主張した原告の主張を排斥。
 
<解説> 
法定相続分の確認請求の訴えの適否 
法定相続分が権利性を有する⇒その確認請求は許される。
法定相続分が特別受益及び寄与分によって修正されて具体的相続分が形成される。

A:具体的相続分は法定相続分を修正した相続分であるが、具体的な相続分計算を待たずに相続財産に対する観念的な権利として実在し、これにしたがって相続財産が書く共同相続人に承継されるとして、民法899条にいう「相続分」を具体的相続分であると解する相続分説。

〇B:持戻計算は特別受益によって相続分を修正するのではなく、特別受益者が現実に相続分に対して持つ取得分に変更を加える操作に過ぎず、かつ具体的相続分の計算は遺産分割審判の審理とともに初めて明らかになるもので、算定された具体的相続分は、具体的権利ないし法的関係ではなく、単に分割の過程で設定される一種の分割基準であるとする分割分説

最高裁H12.2.24:
具体的相続分遺産分割審判手続における分配の前提となるべき計算上の価額又はその価額の遺産の総額に対する割合を意味するものであって、それ自体を実体法上の権利関係であるということはできず、遺産分割審判事件における遺産の分割や遺留分減殺請求に関する訴訟事件における遺留分の確定等のための前提問題として審理判断される事項であり、このような事件を離れてこれのみを別個独立に判決判決によって確認することが紛争の直接かつ抜本的解決のため適切かつ必要であるということはできない

共同相続人間において具体的相続分についてその価額又は割合の確認を求める訴えは、確認の利益を欠くものとして不適法。
~
遺産分割分説に立つことを明言。
具体的相続分の権利性を否定する分割分説は、法定相続分が権利性を有することを前提にしているものと思われる。
⇒法定相続分権利性を有する以上、その割合に争いがある場合には、確認請求訴訟が許されるのは当然。
 
●通則法42条の適用の可否
本判決は、通説・判例に従い、
通則法42条が適用されるのは、外国法の規定の適用が日本の法秩序にとって容認し難い結果をもたらすような場合をいうと判示。

外国法の適用の結果が公序に反するか否かは、
我が国法律の適用結果との差異の大きさ
事案の我が国との牽連性
の双方を総合的に考慮すべきものと解されている。
 
●相続分の譲渡 
原告X2は、訴外の相続人から相続分の譲渡を受けたことを前提として、同人の法定相続分割合を自己の法定相続分割合に加算して主張。
本判決は、相続分の譲渡において譲渡の対象となるのは、法定相続分ではなく具体的相続分とし、X2の相続分の譲受を認めない旨の判示。
but
法定相続分に権利性を肯定する以上譲渡性も肯定されるのではないか

判例時報2327

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2017年6月 1日 (木)

離婚訴訟で父親を親権者(一審)⇒監護者である母親を親権者に(控訴審)

東京高裁H29.1.26      
 
<請求>
Xは、YのXに対する身体的・経済的・精神的・性的暴力により婚姻関係は破綻したとしてYに対し離婚と慰謝料500万円の支払を求め、
附帯処分として養育費月額10万円及び年金分割を求め、

Yは離婚について請求棄却を求め、
予備的にA親権者としてYを指定することを希望し、
その場合の附帯処分として別紙共同養育計画案に基づきXとAの面会交流の時期・方法等を定めることを求めた。 

<原審>
離婚は認容。
X(母親)の慰謝料請求は否定。
Y(父親)をAの親権者に指定。
本判決確定後直ちにAをYに引き渡すことをXに命じる。

面会交流を認め、Yが前記条項に基づく面会交流に応じない場合は、それが親権者変更事由になることを認める旨の条項を付加。 
①XはYの了解を得ることなくAを連れ出し、以来今日まで約5年10か月Aを連れ出し、以来今日まで約5年10か月間Aを監護し、その間Y・A間の面会交流を合計で6回程度しか認めておらず、今後も一定の条件の下で月1回程度の頻度とすることを希望
②YはAが連れ出された直後から取り戻しについての数々の法的手段に訴えたが奏功せず、爾来今日までAとの生活を切望しながら果たせずに来ており、それが実現した場合は整った環境で周到に監護する計画と意欲を持っており、XとAの交流に関しては、親密な親子関係の継続を重視して、年間100日に及ぶ面会交流の計画を提示

Aが両親の愛情を受けて健全に成長することを可能にするためには、YをAの親権者に指定し、本判決確定後直ちにAをYに引き渡すことをXに命ずるのが相当。
 
<控訴の趣旨>
①原判決中X敗訴部分の取消し
②A親権者X指定
③養育費月額6万円
④慰謝料500万円の支払等
 
<Xの主張>
Aは主たる監護者であるXの下で安定した生活を送っているのに、
原判決は、
Yの提案する年間約100日面会交流を認めるとの主張について、その現実性、父母間を高頻度で行き来する8歳の長女への影響を考慮せず、Xが提案するY・A間の面会交流が少ないことをもって、Aの親権者をYと定めたもので、
現実に生きているAの福祉という観点に立たず、面会交流の回数のみから親権者の適格性を判断するという過ちを犯している。 
 
<判断>
●親権者指定の判断基準として、
①これまでの子の監護養育状況
子の現状や父母との関係
父母それぞれの監護能力や監護環境・監護に関する意欲
子の意思その他子の健全な生育に関する事情
を総合的に考慮して、子の利益の観点から判断すべき。

面会交流の頻度等に関しては、親権者を定めるにあたり総合的に考慮すべき事情の1つであるが、父母の離婚後の非監護者との面会交流だけで子の健全な生育や子の利益が確保されるわけではない
⇒①~④について総合的な観点から検討。

年間100日面会のYの主張に対しては、
X・Y宅は片道2時間半程離れており、現在小学校3年生のAが年間100回の面会交流のたびに両宅を往復するとすれば、身体への負担のほか、学校行事への参加、学校や近所の友達との交流等にも支障が生ずるおそれがある
⇒必ずしもAの健全な成育にとって利益になるとは限らない。

Xは、Y・A間の面会交流の頻度は当面月1回を想定しており、当初はこの程度で面会交流を再開することがAの健全な生育にとって不十分でAの利益を害するという証拠はない。

以上のほか、
Aの現在の監護養育状況にその健全な生育上問題なく、
Aの利益からみてAに転居・転校させて現在の監護養育環境を変更しなければならないような必要性があるとの事情は見当たらず
Aの利益を最も優先して考慮すれば、その親権者をXと定めるのが相当

●Xによる長女Aを伴う別居に関しては、
①別居当時Aは満2歳4か月であり、業務が多忙なYにAの監護を委ねることは困難であり
②破綻的別居で予めAの監護について協議することは困難であった
③Xはそのころ8回にわたり面会交流の場を設け、更に電話による交流もさせていた
④平成22年9月26日以降は面会交流をさせなかったが、これは同月8日にYがXに対し、AとYが寺日番組で放映される旨、他のマスメディア関係者もこの問題を取り上げる旨等を記載したメールを送り、実際に同日Yがマスメディアに提供した面会交流時のAの映像が、目の部分にぼかしが入れられたものの、放映され、Xがこれに衝撃を受けたことによるもの(Xはマスメディアの取材やYによるAの撮影がないことを条件に同月26日の面会に応じたもの)

これらをもってAの利益の観点からみて、Xが親権者としてふさわしくないとは認め難い。 
 
<解説>
Xは離婚と親権者指定とを求めたが、面会交流に関しては、予備的にせよ附帯処分として申立てをしていない。
⇒本判決で面会交流の頻度方法等について判断していないのは、不告不理の原則から当然。 

判例時報2325

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2017年5月17日 (水)

面会交流の間接強制金につき、債務者の資力を考慮し、毎月1回の不履行ごとに100万円とされた事案

東京家裁H28.10.4    
 
<事案>
非監護親である外国人妻が監護親である日本人夫に対し、離婚前の面会交流の申立⇒東京家裁がこれを認容し、東京高裁がこれを維持:監護親が毎月1回、第1日曜日、午前11時から午後4時まで面会交流をさせる義務を負担したにもかかわらず、履行せず⇒非監護親が間接強制の申立
 
■面会交流決定
●東京家裁
いわゆる原則的実施論に基づき、相手方による、申立人の育児放棄や連れ去りの危険の主張、あるいは未成年者の申立人との面会拒否の主張等はいずれも退け、申立人との面会交流の実施が未成年者の福祉を害するものと認められる特段の事情はない⇒母子直接面会を認めるべき。

未成年者は既に12歳であり、十分な判断能力を有し、意思を表明することができることを考慮しても、未成年者の負担や生活上の利益に対する配慮をしたうえで、面会交流の具体的な方法を定め、相手方に未成年者の引渡義務を課さなければ、面会交流を実現することはできない⇒面会交流義務の履行を命じた。

審判時12歳になっている未成年者の意思に関し、未成年者は11歳時の調査官調査によれば、現在の父の監護状態が変更されなければ申立人との面会交流を受容している
離婚訴訟において親権者が相手方に指定され、これが確定した後にという未成年者の発言は、相手方の意向を反映したものであり、これが面会交流を妨げるべき特段の事情に当たらない

●抗告審
未成年者の拒否的発言は未成年者の考えというよりも相手方監護親の主張を受け売りするものであり、同相手方が申立人に対する否定的情報を与え続けたことで、未成年者の認知が歪んでしまった結果である
 
<判断>
債務者の平成27年度の年収が給与収入合計2640万円であること等を考慮し、不履行1回につき100万円の間接強制金の支払を命じたもの。 
 
<解説> 
●間接強制金の額としては、これまでの裁判例では、毎月5万円、8万円などが多く、他の実務例でも5万円から10万円が多い。
双方医師の場合でさえ20万円と抑えられている。
実務的には、①債務者の支払能力や②養育費の額等によって定められている。
債務者の多くは女性で資力がない場合が多い⇒低額化傾向にある。
 
●面会交流の不履行に対する間接強制について、判例は積極説。 
 
●未成年者の意思表示について、家事事件手続法152条が15歳以上の子の陳述を聴かなければならないとしているほか、同法65条はそれ以下の未成年者でも年齢に応じた子の意思を考慮しなければならない旨を定めている。
but
未成年者が意思表示をしても、それは監護者の影響によるもので、子の真意ではないとする認定判断がされることがある
(米国でも、PAS・PA問題として議論されている) 

家事事件手続法 第152条(陳述の聴取)
2 家庭裁判所は、子の監護に関する処分の審判(子の監護に要する費用の分担に関する処分の審判を除く。)をする場合には、第六十八条の規定により当事者の陳述を聴くほか、子(十五歳以上のものに限る。)の陳述を聴かなければならない。

家事事件手続法 第65条
家庭裁判所は、親子、親権又は未成年後見に関する家事審判その他未成年者である子(未成年被後見人を含む。以下この条において同じ。)がその結果により影響を受ける家事審判の手続においては、子の陳述の聴取、家庭裁判所調査官による調査その他の適切な方法により、子の意思を把握するように努め、審判をするに当たり、子の年齢及び発達の程度に応じて、その意思を考慮しなければならない。
 
●本件は東京高裁に抗告され、制裁金があまりに過大であるとして30万円に減額する決定。 

判例時報2323

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2017年5月 4日 (木)

①子の入寮(私立高校)による食費・光熱費の権利者の負担減、②義務者の再婚に伴う相手方の子との縁組⇒養育費減額

大阪高裁H28.10.13      
 
<事案>
2003年(平成15年)に公表されその後実務に定着した養育費等の標準的算出方法(簡易算定方法)に立脚しながら、①未成年者が平成28年4月に私立高校に入学したが入寮したたま権利者の負担額が減少したこと、②義務者が再婚して再婚配偶者の子と養子縁組したため義務者の負担額が増加したこと等
⇒抗告審において、義務者(父)が権利者(母)に支払うべき養育費を減額変更。 
 
<原審>
標準的算定方法⇒
平成27年においては月額8万円から10万円の枠の下域に
平成28年度では6万円から8万円の下域に。
高校の寮費等に年間85万円余円がかかる⇒算定表において考慮されている公立高校の学校教育費相当額33万円余円を超過する52万余円については、双方で基礎収入の割合に応じて按分負担すべき。
義務者の負担額を38万余円(月額3万2000円)とし、
当事者双方の生活状況等、諸般の事情から、時期を分けて、月額8万円、6万5000円、9万7000円とした。
 
<判断>
未成年者は入寮の限度で権利者は食費・光熱費の負担が軽減⇒月額2万8000円を養育費から控除
義務者の再婚者の子(縁組)の養育費を控除

義務者の負担すべき養育費の額は月額4万4000円
 
<解説>
日弁連の新簡易表が家裁実務等に広く使われる可能性。
⇒義務者の負担額はかなり増える。

判例時報2322

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2017年4月23日 (日)

不貞行為を認定しその者からの婚姻費用分担請求につき、子らの養育費相当分に限って認めた事例

大阪高裁H28.3.17      
 
<事案>
Yは、XとYが別居に至った原因は、専らX(妻)の不貞によるもの⇒Xによる婚姻費用分担金の請求は権利濫用に当たる。
 
<規定>
民法 第760条(婚姻費用の分担) 
夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する。
 
<原審>
XとYが再度同居した後、Xと別の男性乙(長女の習い事の先生)とのソーシャルネットワークサービス上の通信において、一定程度、相互に親近感を抱いていることをうかがわせる内容ものがあることが認められる。
but
このことをもって、Xと男性乙が不貞関係にあったとまではみることはできず、XとYが別居に至った原因が専らXの不貞によるものとみることはできない。
⇒Yに対し、婚姻費用の支払を命じた。 
 
<判断>
Xと男性甲との関係については、(Yとの別居中に)不貞関係があったからといって、直ちにXの婚姻費用分担請求が信義に反しあるいは権利濫用に当たるとは評価することはできない。 
but
(XとYとの再度同居後の)Xと男性乙との関係については、ソーシャルネットワークサービスを使い、単なる友人あるいは長女の習い事の先生との間の会話とは到底思われないやりとりをするような関係⇒これによれば不貞行為は十分確認される。

XのYに対する婚姻費用分担請求は、信義則あるいは権利濫用の見地から、子らの養育費相当分に限って認められる。
 
<解説>
夫婦は、その資質、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する(民法760条)。

婚姻関係の破綻そのものによって婚姻費用分担義務が軽減されると解した裁判例もある。
vs.
婚姻費用分担義務は、婚姻という法律関係から生じるもので、夫婦の円満な関係、協力関係の存在という事実関係から生じるものではないとする立場も有力。

破綻ないし別居について専ら又は主として責任がある者の分担請求は、信義則あるいは権利濫用の見地から許されない、あるいは軽減されるとするのが裁判例の大勢

判例時報2321

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