家事事件

2020年2月16日 (日)

7年に及ぶ別居期間で、離婚請求が否定された事案

東京高裁H30.12.5    
 
<事案>
X(夫)かわY(妻)に対する離婚請求事件 
平成5年8月に婚姻の届出、2子(B及びC)をもうけた。
XとYは、Xの実家で一人暮らしをしていた実父Aが高齢のため1人暮らしが困難⇒話し合いの上、新たに購入したマンションでAと同居してYが日常生活の面倒をみる。
Xは、平成23年6月頃から仕事の関係で単身赴任を開始⇒同年7月25日、Yに対し、電話で、離婚した旨を告げた。
この間、Y及びB・Cの将来を気にかけたAが、Xの同意を得ないまま、Yとの間で養子縁組をし、実家不動産の売却剰余金をYに贈与するとともに、生命保険緒保険金受取人をB・Cに変更。
Xは、平成23年11月に離婚調停申立て⇒不調⇒平成24年10月離婚訴訟提起⇒棄却。平成25年10月30日に控訴棄却で確定。
Xは、Yに対し離婚調停申立て⇒平成29年4月26日に不成立⇒離婚訴訟提起。
 
<原審>
Xの離婚請求を認容。

①原審の口頭弁論終結時までに別居期間は6年10か月が経過しており、Xの離婚意思は強固。
②AからYに対してされた出来事は、Xの理解を求めずに行われた⇒XのYに対する信頼を失わせるの十分。

Yに復縁の意思があるとしても、離婚関係は破綻し、その修復は極めて困難であり、婚姻を継続し難い重大な事由が認められる。 
 
<判断>
原判決を取り消してXの請求を棄却。

有責事由のない家事専業者側が離婚に反対している場合には、離婚を求める配偶者は話し合いその他の方法により婚姻関係を維持するように一層強く努力すべき
それにもかかわらず、Xは、Yとの連絡、接触を極力避け、婚姻関係についてまともな話し合いをせず、婚姻関係維持の努力や別居中の家事専業者側への配慮を怠っている別居期間が長期に及ぶ場合であっても、直ちに婚姻を継続し難い重大な事由があると判断することは困難

別居期間が7年以上に及んでいることが婚姻を継続し難い重大な事由に当たる⇒離婚請求が信義誠実の原則に照らして許容されるかどうかが検討されなければならない。

その判断に際しては、
①離婚請求者の離婚原因発生についての寄与の有無、態度、程度、
②相手方配偶者の婚姻継続意思及び離婚請求者に対する感情、
③離婚を認めた場合の相手方配偶者の精神的、社会的、経済的状態及び夫婦間の子の
監護・教育・福祉の状況、
④別居後に形成された生活関係、
⑤時の経過がこれらの諸事情に与える影響
などを考慮すべき。

Yは、家事専業者であり離婚が認められた場合には居住環境を失うことにより、精神的苦境及び経済的窮地に陥るものと認められ、子への悪影響は必至
婚姻関係の危機を作出したのはXであって有責配偶者に準ずるような立場にあった

AからYに対してされた出来事がったとしても、離婚請求は信義誠実の原則に反する
 
<解説>
民法770条5号の「その他婚姻を継続し難い重大な事由」とは1号から4号までの離婚原因を一般化、抽象化したもので、「婚姻を継続し難い重大な事由」とは婚姻関係が深刻に破綻し、婚姻の本質に応じた共同生活の回復の見込みがない場合を言い、その判断は、婚姻中における当事者の行為や態度、婚姻継続意思や子の有無、当事者の年齢、性格、健康状態、経歴、職業、資産状態など婚姻関係に現れた一切の事情が考慮される。(判例・通説) 

別居期間は「婚姻を継続し難い重大な事由」の重要な判断事情の1つではあるが、別居期間は同居期間との関係でも期間の長短が問題となる⇒一概に破綻事由を認めうる年数を定めることはできない

本判決:別居期間には触れつつも、離婚請求者が婚姻関係維持の努力や別居中の他方配偶者への配慮を怠ったことをもって、婚姻を継続し難い重大案事由があるというのは困難であると判断。
判例時報2427

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2019年11月12日 (火)

請求時に成年に達している長男と婚姻費用分担請求

大阪高裁H30.6.21    
 
<事案>
婚姻費用分担審判
 
<原審>
長男は既に成人に達している⇒自ら扶養料の請求をすべき
二男(中学生)の学習塾費用の分担についてもAの明示の承諾がない⇒採用できない。

月額14万円の婚姻費用の分担を命じた。
 
<判断>
長男が二浪して大学に進学したのは成人に達した後
but
Aは長男の大学進学を積極的に支援していた

Aは長男を15歳以上の未成年の子と同等に扱うのが相当。 
二男の学習塾費用についても、Aが学習塾に通わせていた
⇒A・B双方の収入較差に照らしAが8割ないし9割を負担するのが相当
⇒原審を変更して、月額18万円の「婚姻費用の分担を命じた。
 
<解説> 
●父母間で未成熟子の養育費が問題となる場合、
実務では、
父母の婚姻中は婚姻費用分担請求(民法760条)の中で、
離婚後等には子の監護に関する処分(民法766条)の形で問題とされる。
いずれも扶養料の請求(民法877条)とは機能を同じくし、選択的に行使することができると解されている。 

●成年年齢に達した子が大学に進学したり、なお監護親に扶養されていたりするケースにおいて、これを未成熟子として取り扱うことができるのはどのような場合か?
実務では、現に経済的に自立していないというだけでは足りず、非監護親の進学への同意や承諾の有無、両親の学歴や経済状況等を総合考慮して決せられる
 
●その場合、婚費・養育費の支払の終期(未成熟状態の終焉)との関係で、子自身からの扶養料請求との棲み分けをどう考えるのか? 
成年年齢に達すれば本来自らの生活の糧を稼ぐのが原則であり(同意がある場合は別として)、いつまでも親に扶養義務、教育義務があるというのには疑問があり、子に稼働能力がない場合でも、ある程度の年齢以上になれば、婚費・養育費の問題ではなく、扶養の問題として処理するのが妥当な場合もあろうとする見解。

審判例でも、
前審判時点では高校在学中であた未成熟子について、その後、高校を退学し、25歳になって今も無職無収入の子について、その扶養義務を誰がどの程度負担するかは親族間の扶養義務として検討・考慮されるべき問題
当事者の一方が事実上そのような子を扶養している事実のみをもって、婚姻費用分担の一部として考慮することは相当でないとした事例
(大阪家裁H26.7.18)
but
本件は事案を異にする。
 
成年年齢の18歳への引下げ(令和4年4月1日)
but
改正法は、未成熟子の保護を現状から後退させる趣旨のものではなく、成年年齢が18歳に引き下げられても、なお20歳未満の者についてはその未成熟性に配慮し、保護の対象とすべきであるという説明。 

判例時報2417

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2019年10月 2日 (水)

妻(再婚)の夫に対する婚姻費用請求

大阪高裁H30.10.11      
 
<事案>
B(妻)とA(夫)は、平成24年に婚姻し、Aは、Bと前夫間の長女D(平成9年生)と養子縁組
Bは、平成28年、Dを連れて自宅を出た。 
 
<原審>
Aの収入を年額1958万円余ないし1566万円Bの収入をパートタイム労働者の半分(年額60万円)と認定、

Dを大学の卒業年次までは未成熟子として取り扱うが、標準的算定方式を超える教育費については、Aの同意がなく、前夫から養育費が支給されていることに鑑み加算しない。 
Aから支払われた既払いの婚姻費用約340万円を控除し、未払い婚姻費用344万円余と月額28万円(平成32年3月まで)ないし21万円(同年4月以降)の支払を命じた。
 
<判断>
Bは教員免許を有し、平成28年までは高校講師として勤務
⇒稼働能力を基に平成27年の年収250万円をその収入と認定

Dの教育費:
①Aの年収が標準的算定方式の予定する年収の2倍強に上る
②前夫から養育費とは別途受験費用等が支給されている
⇒原審同様加算しない。

婚姻費用の分担額を、
未払い婚姻費用720万円と月額32万円(平成30年1月まで)、26万円(平成32年3月まで)ないし16万円(同年4月以降)と試算。
未払い婚姻費用(Dの生活費を含む720万円)とDの生活費を含まない(DがBと同居していない場合の)未払い婚姻費用(480万円)との差額240万円は、
前夫から支払われたDに対する養育費(合計378万円)によって既に賄われており、その間、Dの要扶養状態は解消⇒前記未払い婚姻費用の額は480万円に止まる。
そこから既払い婚姻費用約340万円を控除して、原審決変更した上、未払い婚姻費用140万円余と月額26万円(平成32年3月まで)ないし16万円(同年4月以降)の支払を命じた。
 
<解説>
権利者が再婚し、監護する未成年者が再婚相手と養子縁組:
養子制度の目的
未成熟子との養子縁組には、子の養育を全面的に引き受けるという暗黙の合意が含まれている

養親が実親に優先して扶養義務を負う

通常は、養親の扶養義務が実親に優先し、
養親が無資力その他の理由で十分に扶養義務を履行できないときに、実親がその義務を負担

判例時報2412

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2019年2月 9日 (土)

ハーグ条約実施法の事案

大阪高裁H29.7.12       
 
<事案>
子の父であるX(米国在住)が母であるY(日本在住)に対し、Yによる連れ去りによりXの子に対する監護の権利が侵害されたとして、国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律(「実施法」)に基づき、子を常居所国である米国に返還することを求めた事案。 
原審がXの申立てを認容⇒Yが即時抗告
 
<事実>
Xが提起した離婚訴訟が米国の裁判所に係属し、その過程で、Xの書面による同意又は裁判所の命令がない限り、Yが子を連れて当該州の外に出ることを禁じる裁判所の命令が発令されているにもかかわらず、Yが子とともに日本に帰国。 
YがXによるDVを主張しており、その主張がYによる連れ去りの背景を成している。
 
<争点>
争点①:子の常居所地国 
 
Yの主張 日本へに単身帰国した時点ですでにX及びYの婚姻生活は破綻し、Yは米国での生活を引き払って日本で生活を開始したものであり、その後の米国への帰国も米国での裁判のための一時的なもの
⇒日本への単身帰国以降、Yの常居所地国は日本であり、その期間中に日本で出生した子の常居所地国も日本。 
 
<判断>
常居所とは、人が常時居住する場所で、単なる居所とは異なり、相当期間にわたって居住する場所をいうものと解され、
その認定は、居住年数、居住目的、居住常況等を総合的に勘案してすべき。
とりわけ、連れ去り時に未だ生後7か月余りの本件子について常居所地国を判断するに当たっては、その監護者の意思が重要な要素となる。

①出生からYとの渡米までの子の日本滞在期間が51日間であるのに対し、米国滞在期間は、日本への連れ去りまでで180日間となっている
②Y及び子の渡米後のX及びYとの電子メールのやりとりにおいて、Yが日本に帰る意思がない旨等を述べていた
③渡米時に子が片道チケットを使用し、日本に帰ることを当然の前提としていなかった

連れ去りがされた時点で子の常居所地国は米国
 
<争点>
争点②:重大な危険の例外 
 
Yの主張 Yは、XがYに対して銃口を向けたとか、重量のある箱をぶつけたとかいったYによる暴行等を主張するとともに、XがYと子を車で轢こうとしたと主張し、実施法28条1項4号のいわゆる重大な危険の例外の適用を求めた。
 
<判断>
前者の主張:
それらの事実を認めるに足りる客観的な証拠がない

後者の主張:
Xが子との面会交流後にYと子をYと子が入居しているDV保護シェルターまで送ろうとしたことでトラブルとなり、Yが子を抱いて車から逃げ出し、警察官が出動する騒動になったことは認められるものの、
XがY及び子を轢こうとした事実を認めるに足りる的確な証拠はない。

判例時報2388

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2018年12月14日 (金)

夫からの同居申立てを却下した事案

福岡高裁H29.7.14      
 
<事案>
X(夫)が、別居中のY(妻)に対し、同居するよう命じる審判を求めた事案。 
   
<事実>
平成21年に婚姻し、平成25年に別居。
Yは、別居の翌年に民法770条1項5号に基づき離婚訴訟を提起。

一審:婚姻関係が破綻⇒Yの請求を認容。

控訴審:平成28年、XとYが真摯に話し合えば婚姻関係の修復の可能性があり得ないとはいえないとして、Yの請求を棄却。 

Xは、Yに対し同居を命じる審判を求める家事審判の申立て(家事手続法別表第2の1項)。
 
<原審>
XがY及び長女Cのみと同居できる住居を定めたときに、Yに同居するように命じる審判。
   
Yが即時抗告
 
<判断>
同居義務が夫婦という共同生活を維持するためのもの
共同生活を営む夫婦間の愛情と信頼関係が失われる等した結果、仮に、同居の審判がされて、同居生活が再開されたとしても、夫婦が互いの人格を傷つけ、又は個人の尊厳を損なうような結果を招来する可能性が高いと認められる場合には、同居を命じるのは相当ではないといえる。

①YがXをストレッサーとする適応障害と診断されている
②当事者の作成した書面の内容等

同居を再開しても相互に個人の尊厳を損なうような状態に至る可能性は高いと言わざるを得ない

原審判決を取り消し、Xの申立てを却下。
 
<規定>
民法 第752条(同居、協力及び扶助の義務)
夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。
 
<解説>
最高裁昭和40.6.30:
夫婦の同居に関する事件についての審判は夫婦同居の義務等の実態的権利義務自体を確定する趣旨のものではなく、これら実体的権利義務の存することを前提として、その同居の時期、場所、態様等について具体的内容の定める処分

判例時報2383

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2018年10月20日 (土)

ハーグ条約実施法に基づく返還を命じる終局決定に応じない⇒人身保護請求の事案

最高裁H30.3.15      
 
<事案>
米国に居住するX(上告人、父親、日本人)が、Xの妻であるY(被上告人、母親、日本人)によりA(米国で出生した子、13歳、米国籍と日本国籍との重国籍)が米国から日本へ連れ去られ、法律上正当な手続によらないで身体の事由を拘束されていると主張
⇒人身保護法に基づき、Aの釈放を求める。

これに先立ち、国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律(いわゆるハーグ条約実施法)に基づいてYに対して米国にAを返還することを命ずる旨の終局決定が確定したが、その執行手段が奏功しなかった
⇒本件人身保護請求がなされた。
 
<規定>
人身保護法 第二条
法律上正当な手続によらないで、身体の自由を拘束されている者は、この法律の定めるところにより、その救済を請求することができる。

人身保護規則 第3条【拘束及び拘束者の意義】
法及びこの規則において、拘束とは、逮捕、抑留、拘禁等身体の自由を奪い、又は制限する行為をいい、拘束者とは、拘束が官公署、病院等の施設において行われている場合には、その施設の管理者をいい、その他の場合には、現実に拘束を行つている者をいう。

人身保護規則 第4条【請求の要件】
法第2条の請求は、拘束又は拘束に関する裁判若しくは処分がその権限なしにされ又は法令の定める方式若しくは手続に著しく違反していることが顕著である場合に限り、これをすることができる。但し、他に救済の目的を達するのに適当な方法があるときは、その方法によつて相当の期間内に救済の目的が達せられないことが明白でなければ、これをすることができない。

人身保護規則 第5条
法第2条の請求は、被拘束者の自由に表示した意思に反してこれをすることができない
 
<判断>
拘束者(母親)により国境を越えて日本への連れ去りをされた被拘束者(子)が、現在、13歳で意思能力を有し、拘束者の下にとどまる意思を表明しているとしても、次の(ア)(イ)など判示の事情の下においては、
被拘束者が拘束者の下にとどまるか否かについての意思決定をするために必要とされる多面性、客観的な情報を十分に得ることが困難な状況に置かれているとともに、
当該意思決定に際し、拘束者が被拘束者に対して不当な心理的影響を及ぼしている
といえる

被拘束者が自由意思に基づいて拘束者の下にとどまっているとはいえない特段の事情があり、拘束者の被拘束者に対する監護は、人身保護法及び同規則にいう拘束に当たる
(ア)
被拘束者は、出生してから来日するまで米国で過ごしており、日本に生活の基盤を有していなかったところ、
前記連れ去りによって11歳3か月の時に来日し、その後、米国に居住する請求者(父親)との間で意思疎通を行う機会を十分に有していたこともうかがわれず
来日以来、拘束者に大きく依存して生活せざるを得ない状況にある。
(イ)
拘束者は、国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律に基づき、拘束者に対して米国に被拘束者を返還することを命ずる旨の終局決定が確定したにもかかわらず、被拘束者を米国に返還しない態度を示し、子の返還の代替執行に際しても、被拘束者の面前で激しく抵抗するなどしている。

国境を越えて日本への連れ去りをされた子の釈放を求める人身保護請求において、国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律に基づき、拘束者に対して当該子を常居所地国に返還することを命ずる旨の終局決定が確定したにもかかわらず、拘束者がこれに従わないまま当該子を監護することにより拘束している場合には、
その監護を解くことが著しく不当であると認められるような特段の事情のない限り、拘束者により当該子に対する拘束に顕著な違法性がある
 
<解説> 
●人身保護法上の拘束の有無
最高裁昭和61.7.18:
意思能力がある子の監護について、当該子が自由意思に基づいて監護者の下にとどまっているとはいえない特段の事情のあるときは、前記監護者の当該子に対する監護は「拘束」(人身保護法2条1項、同規則3条)に当たる

前記の特段の事情の有無については、被拘束者の置かれた環境、被拘束者と拘束者との関係その他の事情に応じて、特に慎重に検討すべき場合があると考えられる。

最高裁昭和61.7.18最高裁H2.12.6は、いずれも、
当該子が拘束者の基にとどまるべきか否かの意思決定をするに当たり、その置かれた具体的状況や当該意思決定の重大性などに鑑みて必要な情報を十分に取得している状況にないと評価すべき場合
拘束者が当該子に対して不当な心理的影響を及ぼしていると評価すべき場合など

基本的に、当該子がその自由意思について監護者の下にとどまっているとはいえない特段の事情が存在するという理解を前提として、当該各事案の具体的内容に応じてその点を慎重に判断した事例。

本判決:
子を監護する父母の一方により国境を越えて日本への連れ去りをされた子が、
当該連れ去りをした親の下にとどまるか否かについての意思決定をする場合において、
当該意思決定には、このような国際的な事案に特有の重大性、困難性があるとともに、
当該子が連れ去りをした親から影響を受ける度合いが類型的に大きい


子が当該意思決定をするために必要な情報を偏りなく得るのが困難な状況に置かれることが少なくない

①当該子による意思決定がその自由意思に基づくものか否かを判断するに当たり、基本的に、当該子が前記の意思決定の重大性や困難性に鑑みて必要とされる多面性、客観的な情報を十分に取得している状況にあるか否か
連れ去りをした親が当該子に対して不当な心理的影響を及ぼしていないかなどといった点
を慎重に検討すべき旨を判示。

その上で、上記(ア)(イ)などの事情を、
AがYの下にとどまるか否かについての意思決定をするために必要とされる多面的、客観的な情報を十分に得ることが困難な状況にあり、
YがAに対して不当な心理的影響を及ぼしていると認めるための重要な要素として斟酌し、前記の特段の事情を肯定。
 
●人身保護法上の顕著な違法性 
人身保護法に基づいて子の引渡し等を求める事件のうち

(1)夫婦間における共同親権に服する幼児に係る人身保護請求について、

最高裁H5.10.19は、
幼児に対する拘束者の監護につき拘束の違法性が顕著であるというためには、同監護が、請求者の監護に比べて、子の幸福に反することが明白であることを要するという判断基準。

最高裁H6.4.26は、この明白性の要件を充足する場合として、
①拘束者の親権の行使が幼児引渡しを命ずる仮処分又は審判(家事手続法157条1項3号、154条3項)により実質上制限されているのに、拘束者がこれに従わない場合
拘束者の幼児に対する処遇が親権の行使という観点からも容認できないような例外的な場合であるとし、その判断基準を示した。

(2)監護権者から非監護権者に対して人身保護法に基づく幼児の引渡しを請求した場合(離婚した夫婦間で親権者として指定された者から他方に対する請求等)について、

最高裁H6.11.8:
幼児を請求者の監護の下に置くことが拘束者の監護の下に置くことに比べて子の幸福の観点から著しく不当なものでない限り、
拘束の違法性が顕著であるとする判断基準。

(3)離婚調停において調停員会の面前でその勧めによってされた合意により、夫婦の一方が他方に対してその共同親権に服する幼児を、期間を限って預けたが、他方の配偶者が、前記合意に反して約束の期日後も幼児を拘束し、前記幼児の住民票を無断で自己の住所に移転

前記拘束に顕著な違法性がある(最高裁H6.7.8)

(4)離婚等の調停の進行過程における夫婦間の合意に基づく幼児との面接の機会に夫婦の一方が前記幼児を連れ去ってした拘束に顕著な違法性があるとして、夫婦の他方からした人身保護法に基づく幼児の引渡請求を認めた最高裁H11.4.26

本判決:
違法性判断に際して、監護者の所在や子の幸福という観点を明示的に採っていない

監護権の所在や内容を一次的な考慮要素とはせず、
拘束者が、確定判決により形成された子の返還義務を履行しないという明白な違法行為に及んでいる状態で子を監護していること自体に着目して、
特段の事情のない限り顕著な違法性があると評価

 
●本判決:
国境を越えて日本への連れ去りをされた子である被拘束者の釈放を求める人身保護請求において、意思能力のある被拘束者が自由意思に基づいて拘束者の下にとどまっているとはいえない特段の事情の存在が認められる限界事例の1つ示すとともに、
拘束者の実施法に基づく子の返還を命ずる終局決定に従わないまま子を監護・拘束している場合における当該拘束の顕著な違法性の判断基準を初めて示したもの。

判例時報2377

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2018年10月 3日 (水)

財産分離(民法941条)の請求と財産分離の必要性

大阪高裁H29.4.20      
 
<事案>
大阪家裁は、平成28年、Dについて後見開始の審判をし、弁護士であるBを成年後見人に選任。
Aは、Dの財産を生前から事実上管理していたが、Bが成年後見人の職務としてのDの財産の開示、引渡しを求めてもこれに応じなかった。
Dは同年に死亡し、法定相続人は、Dの子であるAとCの2名。
Bは、後見事務を処理するのに立て替えた費用等についてDに対して債権を有している。
Bは、大阪家裁において、第一種財産分離の申立てをした
 
<規定>
民法 第941条(相続債権者又は受遺者の請求による財産分離)
相続債権者又は受遺者は、相続開始の時から三箇月以内に、相続人の財産の中から相続財産を分離することを家庭裁判所に請求することができる。相続財産が相続人の固有財産と混合しない間は、その期間の満了後も、同様とする。
 
<原審> 
①被相続人Dの財産を生前から事実上管理していた相続人Aは、後見人Bが職務上、Dの財産の開示、引渡し等を求めても応じることはなく、
②Dが平成28年に、死亡したことにより、Dの債権者の債権の引当てとなるべき被相続人Dの財産と相続人A及びCがDの相続開始前から有する固有財産(債権の引当となる固有の財産を有すると認めることはできない。)とが混合するおそれが生じた

相続人らの固有財産から被相続人の相続財産を分離するのが相当。

民法941条1項に基づき財産分離を命ずるとともに、
同法943条1項に基づき、職権で相続財産管理人としてBを選任する旨の審判をした。
 
 
<判断>
民法941条1項の定める第一種財産分離は、相続人の固有財産が債務超過の状態にある場合(もしくは近い将来において債務超過となるおそれがある場合)に相続財産と相続人の固有財産との混合によって相続債権者又は受遺者の債権回収に不利益を生じることを防止するために、相続財産と相続人の固有財産とを分離して、相続債権者又は受遺者をして相続人の債権者に優先して相続財産から弁済を受けさせる制度

家庭裁判所は、相続財産の分離の請求があったときは、申立人の相続債権、申立期間といった形式的要件が具備されている場合であっても、前記の意味における財産分離の必要性が認められる場合にこれを命じる審判をなすべきものと解するのが相当。 

本件においては、抗告人A及び相続人Cについて、その固有財産が債務超過の状態(もしくは近い将来において債務超過となるおそれがある状態)にあるかどうかは明らかではなく、財産分離の必要性について審理しないまま、財産分離を命じた原審の判断は相当ではない
この点について原審においてさらに審理を尽くす必要がある
 
<解説>
財産分離は、債権者がその債権回収について不利益を被ることがないように、相続財産と相続人の固有財産との混合を阻止して、まず、相続財産について清算を行う制度
相続債権者等が請求する第1種財産分離(民法941条以下)と
相続人の固有の債権者が請求する第2種財産分離(同法950条) 

第一種財産分離は、その間、遺産分割ができなくなるなど相続人の財産管理等や第三者にも大きな影響を及ぼすもの
⇒これを認めるためには、それなりの合理的な理由(財産分離の必要性)を要すると解すべき。

●本決定に対し、財産分離の要件に関する部分について抗告許可

最高裁H29.11.28:
本決定のいう「財産分離の必要性」の内容について
相続人がその固有財産について債務超過の状態にあり、またはそのような状態に陥るおそれがあることなどから、相続財産と相続人の固有財産とが混合することによって相続債権者等がその債権の全部又は一部の弁済を受けることが困難になるおそれがあると認められる場合」であるとされ、本決定もその趣旨をいうものとして是認。

相続人の固有財産が債務超過の状態にある場合でも、例えば、相続財産が極めて多額に及ぶケースでは、なお相続債権者が害されるおそれはないといえる。

家庭裁判所としては、事案に応じて、相続債権者等が債権の全部又は一部の弁済を受けることが困難となるおそれがあるかどうかを総合判断することになる。

●抗告審: なお書きで、原審判が財産分離を命じるとともに申立人の自薦に基づき申立人自身を相続財産管理人に選任
本件において、相続財産管理人の職務内容に鑑みれば、相続債権者を相続財産管理人に選任するのは相当でない旨を付言。

相続財産管理人の選任(民法943条、家事手続き法別表第1の97項)のみ独立して不服申立てができない(家事手続法202条2項)。

判例時報2374

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2018年9月26日 (水)

離婚後再婚と養子縁組⇒事情変更ありで養育費算定

札幌高裁H30.1.30      
 
<事案>
XがYと離婚後、公正証書により両名間の子の養育費として月額4万円を支払うとの合意⇒その後再婚し、再婚相手の子らと養子縁組⇒事情変更があたっとして、養育費を月額6616円に減額することを求めた事案。 
 
<原審>
事情変更を肯定⇒養育費の額を3万3000円に減額する旨の審判。 
 
<判断>
①前記公正証書作成後、Xが再婚相手の子らに対する扶養義務を負うに至った
②当事者双方の収入が変動
⇒公正証書が作成された後の事情を考慮して未成年者の養育費を算定するのが相当。 

前記公正証書が作成された当時の双方の収入や扶養家族の状況を前提として、標準算定方式を参考に養育費を試算⇒試算額は月額1万5282円。

当事者双方は、同公正証書において、これを2万4718円加算する趣旨であったと解するのが合理的

以上を参考に、本件にあらわれた一切の事情を考慮すると、Xの負担すべき未成年者の養育費の額を月額2万円とするのが相当
 
<解説>
民法 第766条(離婚後の子の監護に関する事項の定め等)
父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者、父又は母と子との面会及びその他の交流、子の監護に要する費用の分担その他の子の監護について必要な事項は、その協議で定める。この場合においては、子の利益を最も優先して考慮しなければならない。
2 前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所が、同項の事項を定める。
3 家庭裁判所は、必要があると認めるときは、前二項の規定による定めを変更し、その他子の監護について相当な処分を命ずることができる。

民法766条3項:
家庭裁判所は、離婚後の子の養育費に関する協議又は審判による定めを、必要があると認めるときは、変更することができる。

一般に、
法的安定性の要請から、前協議又は審判の際に予見されなかった事情であり、かつ、前協議又は審判を維持することが困難な程度の事情の変更が顕著であることを要する」と解されている。

養育費の算定方式:
労研方式、生活保護基準方式、標準生計費方式等

養育費の程度を決める算定基準:
一般的には、収入を按分し、同一水準の生活費を出す方法

本件:
新たな養育費の負担を定めるものではなく、合意で定められた養育費の額を変更⇒合意の意思を尊重するのが相当。
経済的には、一切の事情を考慮し、月額2万円が相当と判断

判例時報2373

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2018年9月 6日 (木)

任意後見より法定後見が優先された事案

福岡高裁H29.3.17      
 
<事案>

本人(X)は夫であるDと2人で暮らしていた。

平成2年からは、長男であるB及びその妻Eと同じ敷地内の棟続きの家に住み、内部ドアで行き来するようになった。

Dは、昭和43年にF株式会社(F社)を設立してその代表者となっていたが、
別途、Xと共有するマンションの賃料等の管理会社として有限会社Gを設立し、その代表者となった。
F社においては、平成20年にBがその代表者に。 
Bの妻Eは、F社やG社の経理を担当し、Xの預金通帳の管理を任さるるなどしていた
but
Xの了解を得ずにその口座から金銭を払い戻してF社への貸付に回したり、G社の口座からX名義の口座又はその他に移すべき金銭を、引き出した後にF社の債務弁済に充てる等の行為
⇒Xと両会社との間で不明朗な金銭貸借関係が生じた。
BもF社の代表者としてEの行動に起因するF社の債務につき、Xに対して同額の債務を負う。

Xは、平成21年に、BとEに対し自宅からの退去を求め、更に自宅の内部ドアに施錠してBらが行き来できないようにした。
Dは平成22年2月に入院。
Xは、平成22年12月28日に長女であるAとの間で、Aを後見受任者とする任意後見契約(「第1契約」)を締結し、その後認知症の症状が進み、平成26年7月からA宅に居住。
Xは同年8月6日にAと口論となって自宅に戻る。
Bは、Xを医師に受診させるようになった。


Aは、同月18日、原裁判所に任意後見監督人選任の申立て。
but
Xは家裁調査官の調査の際に、第1契約の発効について同意しなかった。

Aは同月30日に申立ての趣旨を法定後見開始に変更

同月29日に第1契約が解除されるとともに、XとBとの間でBを任意後見受任者とする任意後見契約が締結
⇒Bは任意後見監督人選任の申立て。 


原裁判所は、法定後見開始申立事件につき、2回にわたる鑑定を実施。
1回目は補佐相当
2回目は後見相当
との鑑定結果。 
 
<規定> 
任意後見法 第10条(後見、保佐及び補助との関係)
任意後見契約が登記されている場合には、家庭裁判所は、本人の利益のため特に必要があると認めるときに限り、後見開始の審判等をすることができる。
 
<原審>
第1契約の解除及び第2契約の締結はいずれも効力を生じている。 
Eの預金払戻しに起因するXとF社との間における金銭関係及びXとF社の代表者であるBとの金銭関係が解決していない
⇒Bは任意後見受任者としての適格性を有しない
⇒法定後見を開始することにつき「本人の利益のために特に必要がある

診察回数及び検査の実施内容に照らすと、
1回目の鑑定結果には疑問があり、2回目の鑑定結果は合理的

Xは事理弁識能力を欠く常況ににあると認定し、Aの申立てを認容し、Bの申立てを却下
   

Bは即時抗告を申し立てて原審結の取消し及びXの任意後見監督人の選任(予備的に本件の差戻し)を求め
抗告理由として、
①任意後見契約が締結された場合にはこれを発行させて法定後見開始の申立てを却下するのが原則であり、本件ではその例外とすべき事情がない
②Xの精神状態については1回目の鑑定結果に従い補佐相当と認定すべきであった
と主張。 
 
<判断>
E又はF社がXに返済すべき債務については完済されたかどうかが不明であり、
Eの一連の行為につきBが認識していなかったとは到底認められず、
Bが代表者であるF社とXとの債権債務関係はBの任意後見人としての適格性に関わる重要な事実


法定後見を開始するにつきXの利益のために特に必要がある
Xの精神状態についても原審判の判断に誤りはない。
 
<解説>
●任意後見法10条1項:
本人による自己決定を尊重すべき

既に任意後見契約が締結され、かつ、これが登記されている場合においては、
本人について法定後見開始の申立てがあったとしても、
家庭裁判所は、法定後見を発動することが「本人の利益のため特に必要があると認めるとき」でない限り、
当該申立てを却下しなければならない

●立法担当者:
具体例として
①任意後見人に委託された代理権を行うべき事務の範囲が狭すぎる上、本人の精神が任意の授権の困難な状態にあるため、他の法律行為について法定代理兼の付与が必要な場合
②本人について同意権・取消権による保護が必要な場合。

要件を厳格に絞ることで任意後見優先の原則をできる限り維持することを想定。
but
親族間紛争を背景に、自身を任意後見受任者とする任意後見契約を本人に締結させて後にこれを発効させることにより、意図しない者が成年後見人に選任されるのを妨害しようとするケース。

最近の実務は、本人の客観的な保護を重視して、この要件を広めに解釈して法定後見人を優先するが面が多くなっている。


大阪高裁H14.6.5:
「本人の利益のため特に必要があると認めるとき」について
諸事情に照らし、任意後見契約所定の代理権の範囲が不十分である、
合意された任意後見人の報酬があまりにも高額である、
任意後見契約法4条1項3号ロ、ハ所定の任意後見を妨げる事由がある等、
要するに、
任意後見契約によることが本人保護に欠ける結果となる場合を意味

大阪高裁H24.9.6:
本人名義の預貯金から多額の金銭が引き出されて任意後見受任者の口座に移されている等、任意後見受任者の本人の財産への関与に不適切な点が認められ、「本人の利益のため特に必要があると認めるとき」に当たるといえる事情が存在するにもかかわらず、原裁判所が任意後見法10条1項の要件を認めずに法定後見開始申立てを却下したのは相当ではない。
⇒原審判を取り消した上、事件を原裁判所に差し戻している。


学説:
「本人の利益のため特に必要があると認めるとき」とは、
本人の現在のニーズを当該任意後見契約によっては十分に充足することができず、本人の客観的福祉の観点から、法定後見に夜保護を発動することが望ましい事態を指すと考えればよい(新版注釈)。

判例時報2372

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2018年9月 1日 (土)

元夫が元妻に財産分与を求めた事案での不動産の持分の分与

東京高裁H29.6.30      
 
<事案>
元夫である原審申立人が元妻である原審相手方に対し財産分与を求めた事案。 

不動産について、
元夫と元妻がそれぞれ2分の1の持分で共有し、その購入のための借入金の債務が残っていた。
元夫は、本件不動産の元妻共有持分の取得を希望。
 
<原審>
①本件不動産の借入金について、元妻が主債務者、元夫が保証人となっている
②元妻の借入金債務を被担保債権として本件不動産に抵当権が設定されている

元妻が返済を怠った場合、抵当権が実行される可能性があり、
元夫が同債務を返済すると求償関係の問題が生じる

本件不動産の元妻持分を元夫に分与することは相当でない。
 
 
<判断>
財産分与の対象財産のうち元妻名義の普通預金は、元夫と元妻が本件不動産購入のために連帯債務として借り入れた住宅ローン(前記借入金債務)の預金担保となっており、その預金額と住宅ローン債務額がほぼ同じ

財産分与の対象となる資産としては預金、債務とも0円として、
本件不動産には抵当権が付されているが、不動産評価額から被担保債務額を控除しない。
 

元夫と元妻が被担保債権について連帯債務を負い、元妻名義の預金が担保とされている⇒本件不動産に設定されている抵当権が実行される可能性は相当程度に低く、本件不動産の元妻共有持分を元夫に分与することが相当。

判例時報2372

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