民事再生(法人)

2017年6月19日 (月)

関連会社の新規借り入れに際して担保のために行った約束手形の振出・裏書に対する無償否認(肯定)

東京地裁H28.6.6      
 
<事案>
再生債務者Aは、各種電気機械器具の製造販売等を業とする株式会社。
 
平成26年4月以降、Aの全株式をBが代表取締役を務める持株会社Cが取得し、BがAの代表取締役に就任。
Xは平成26年10月30日にCに対し1億円貸付、AはXに対し、額面3800万円の約束手形を振り出すとともに、額面6264万円のD振出の約束手形を裏書譲渡
 
平成27年2月18日、Aは東京地裁に民事再生手続開始申立て、同裁判所は同月23日午後9時付で再生手続開始決定及び管理命令を発し、Yを管財人に選任。 

Xは、手が金合計1億64万円及び利息を再生債権として届け出たが、Yは全額について認めない旨の認否⇒Xが査定の申立て⇒再生裁判所は本件再生債権の額をゼロ円と査定する旨の決定⇒再生債権査定異議の訴えとして本件訴訟を提起。
 
<規定>
民事再生法 第127条(再生債権者を害する行為の否認) 

3 再生債務者が支払の停止等があった後又はその前六月以内にした無償行為及びこれと同視すべき有償行為は、再生手続開始後、再生債務者財産のために否認することができる。
 
<Yの主張>
①本件貸付はもっぱらCのためになされたもの⇒Aは何ら関係ないから本件各手形の原因関係は存在しない。
②本件各手形がCのXに対する債務の第三者弁済ないし代物弁済としてなされたとしても、この手形債務負担行為は無償行為否認の対象となる。 
 
<判断>
●主張①について 
A及びX代表者らの供述

本件各手形は、その実質は本件貸付における担保として、後の貸付金弁済時に買い戻すことを予定して、形式としては第三者弁済(代物弁済)の形式をとり、Xに対して振出(本件手形1)又は裏書譲渡(本件手形2)したものと認定
⇒原因関係不存在の抗弁は認められない。
 
●主張②について 
旧破産法上の無償否認行為に関する最高裁昭和62.7.3を引用し、
再生債務者が義務無くして他人のためにした担保の供与は、それが債権者の主たる債務者に対する出捐の直接的な原因をなす場合であっても、再生債務者がその対価として経済的利益を受けない限り、無償否認の対象となる。

①本件貸付の債務者はCであり貸付金もCの口座に送金されている
②Aは保証料を得ていない
③以前にXに対する保証債務を負っていたものでもない
手形債務の負担によりAは直接的な利益を受けていない

①C口座からA口座への送金も見られるが、直後にCの事業協力会社への手形債務の決済に使用されている
②C口座からA口座への送金よりもA口座からC口座への送金が多くなっている
③これら送金の当時はCを親会社とするグループ全体の資金繰りが悪化した時期であり、BはAの取締役会の決議をとらずにCの債務をAに補償させていたことがあった

BはAの資産をCその他グループ会社の資金繰りのために頻繁に利用しており、本件各手形に関してもAは間接的な意味でも利益を受けていない

本件各手形の振出ないし裏書譲渡を無償否認の対象と認め、Xの主張を退けた。
 
<解説>
●民事再生法上の否認権の類型は、破産法及び会社更生法のそれと基本的に同じであり、
①支払停止発生後の危機時期またはそれに接着する時期において、無償でその責任財産を減少させたり、債務を負担する債務者の行為がきわめて詐害性の高いこと
受益者の側でも無償で利益を得ているのであるから、緩やかに否認を認めても公平に反しないこと
詐害行為否認の特殊類型として定められている。 

●債務の保証又は担保の提供の場合
XがAに対して融資を行う際、BがAのXに対する債務の保証人となったり、担保を提供したとして、Bが破産した場合の破産管財人は、債務保証や担保提供行為を否認できるか?(=Bにとって無償行為か?)
破産者の保証等が他人の既存債務についてなされた場合⇒学説の多くも無償否認を肯定。

その保証等が直接の原因となって新規の出捐がなされた場合。
A(かつての多数説):無償行為性を否定

①受益者たる債権者Xは、保証と引き換えに主債務者Aに対して融資を行っているから、受益者Xの側についてみれば無償で債務保証の利益を得たことにはならない。
②保証人は主債務者に対する求償権を取得するから、債務保証は無償行為とは言えない。

B(判例):破産者の受けた経済的利益の有無の観点から無償行為性を決している

最高裁昭和62.7.3:
同族会社の代表者で実質的な経営者でもある破産者が、同会社の債務を個人保証するとともに担保を提供した事案において、
破産者が義務無くして他人のためにした担保の供与は、それが債権者の主たる債務者に対する出捐の直接的な原因をなす場合であっても、破産者がその対価として経済的利益を受けない限り、無償否認の対象となる

最高裁H8.3.2:
会社の代表者等に対する信用保証協会の代位弁済による求償権行使の可否が争われた2つの事件において、連帯保証人がすでに包括的債務保証により金融機関に対して会社の金融機関に対する一切の取引上の債務を返済すべき義務を負っていた⇒無償否認を否定。

判例時報2327

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2015年3月31日 (火)

ライセンサーの再生手続開始後の契約解除が不当破棄であるとして、不法行為等が成立

東京地裁H26.9.11   

ライセンス契約のライセンサーが再生手続開始後、民事再生法49条1項、ラインセンス料の不払いを理由とする債務不履行による解除をした場合について、解除事由の認められない契約の不当破棄であるとし、ライセンサー、その代表取締役のライセンシーに対する不法行為責任等が肯定された事例
 
<事案>
ブランドに係るライセンス契約のライセンサーが解除したため、ライセンシー(X)が正当な理由のない解除である等と主張し、ライセンサーの損害賠償責任を追及した事件。 

Y1の再生手続開始決定がされたところ、同年9月13日、Y1の当時の代表取締役Aが契約継続の確認等を内容とする合意書をXに手交。その後、Y1(代表取締役はY2に交代)は、平成24年6月23日、Xに対し、本件各ライセンス契約を民事再絵師法49条1項に基づき解除すること等を書面で通知。

Y1とXとの間で、ライセンス料の支払、売掛金債権との相殺をめぐるトラブル⇒Y1は、Xに対し、ライセンス料の不払いによる債務不履行を理由に本件各ラインセンス契約を書面で解除。

Y1は、Xのサブライセンシーの一つであるB株式会社に本件ライセンス契約を解除し、商品等の販売を中止すること等を内容とする通知。

Xは、本件各ラインセンス契約を一方的に破棄した等と主張し、Y1に対し、債務不履行、不法行為、Y2(代表取締役)に対し、不法行為、会社法429条1項に基づき、逸失利益、サブランセンス料の回収不能額、信用毀損の損害、二重支払したライセンス料、弁護士費用につき損害賠償を請求。
 
<規定>
民事再生法 第49条(双務契約)
双務契約について再生債務者及びその相手方が再生手続開始の時において共にまだその履行を完了していないときは、再生債務者等は、契約の解除をし、又は再生債務者の債務を履行して相手方の債務の履行を請求することができる。
2 前項の場合には、相手方は、再生債務者等に対し、相当の期間を定め、その期間内に契約の解除をするか又は債務の履行を請求するかを確答すべき旨を催告することができる。この場合において、再生債務者等がその期間内に確答をしないときは、同項の規定による解除権を放棄したものとみなす

民事再生法 第93条(相殺の禁止)
再生債権者は、次に掲げる場合には、相殺をすることができない。

二 支払不能(再生債務者が、支払能力を欠くために、その債務のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態をいう。以下同じ。)になった後に契約によって負担する債務を専ら再生債権をもってする相殺に供する目的で再生債務者の財産の処分を内容とする契約を再生債務者との間で締結し、又は再生債務者に対して債務を負担する者の債務を引き受けることを内容とする契約を締結することにより再生債務者に対して債務を負担した場合であって、当該契約の締結の当時、支払不能であったことを知っていたとき。

三 支払の停止があった後に再生債務者に対して債務を負担した場合であって、その負担の当時、支払の停止があったことを知っていたとき。ただし、当該支払の停止があった時において支払不能でなかったときは、この限りでない。

四 再生手続開始、破産手続開始又は特別清算開始の申立て(以下この条及び次条において「再生手続開始の申立て等」という。)があった後に再生債務者に対して債務を負担した場合であって、その負担の当時、再生手続開始の申立て等があったことを知っていたとき。
 
<争点>
①民事再生法49条1項による解除の効力(その前提として、Y1による履行の選択の成否)
②債務不履行を理由とする解除の効力(その前提として、ラインセンス料債権の相殺合意の効力)
③Y1の責任の有無、損害の有無・額
④Y2の責任の有無等 
 
<解説>
●民事再生法49条1項による解除: 
XがY1に対して相当の期間を定めて本件各ライセンス契約の解除か、履行の選択かの催告をしたのに対し、当時の代表取締役によりY1が履行の選択の請求を確答
Y1は代表取締役が交代した後に初めて契約が解除されていることを主張し始めた。
解除の効力を否定
 
●債務不履行解除: 
民事再生法93条1項2号ないし4号所定の各相殺禁止に該当しない⇒解除の効力を否定。
 
●Y1責任: 
Y1がXに対して本件各解除通知を送付した当時、何らかの解除事由が存在しなかった不当な契約破棄行為等に当たり、債務不履行責任及び不法行為責任を肯定
逸失利益(3389万9000円)サブライセンス料の回収不能額(605万3810円)、二重払いのライセンス料(588万6827円)、弁護士費用(200万円)の損害を認定。
 
●Y2の責任:
Y2は、本件各ライセンス契約が継続していることを認識することができた状況であったにもかかわらず、Y1の代表者として、本件契約破棄行為等を行った

Y2には、Xに対する不法行為が成立し、Y1のXに対する損害賠償債務の連帯支払の責任を負う。

判例時報2246

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2014年11月24日 (月)

再生債務者が支払の停止の前に再生債権者から購入した投資信託受益権に係る再生債権者の再生債務者に対する解約金の支払債務の負担との相殺の可否(否定)

最高裁H26.6.5    

再生債務者が支払の停止の前に再生債権者から購入した投資信託受益権に係る再生債権者の再生債務者に対する解約金の支払債務の負担が、民事再生法93条2項2号にいう「前に生じた原因」に基づく場合に当たらず、上記支払債務に係る債権を受働債権とする相殺が許されないとされた事例 
 
<事案>
再生債務者であるXが、その支払停止の前に、販売会社であるY銀行から購入し、同銀行に管理を委託していた投資信託受益権(「本件受益権」)につき、支払停止の後、再生手続開始の申立て前に、信託契約の一部解約がされたとして、Y銀行に対し、その解約金(「本件解約金」)の支払等を求める事案。 

Y銀行は、Xに対する本件解約金の支払債務の負担が、民事再生法93条2項2号にいう「支払の停止があったことを再生債権者が知った時より前に生じた原因」に基づく場合に当たるとして、本件債務に係る債権を受働債権とする相殺を主張
 
<規定>
民事再生法 第93条(相殺の禁止)
再生債権者は、次に掲げる場合には、相殺をすることができない。

三 支払の停止があった後に再生債務者に対して債務を負担した場合であって、その負担の当時、支払の停止があったことを知っていたとき。ただし、当該支払の停止があった時において支払不能でなかったときは、この限りでない。

2 前項第二号から第四号までの規定は、これらの規定に規定する債務の負担が次の各号に掲げる原因のいずれかに基づく場合には、適用しない

二 支払不能であったこと又は支払の停止若しくは再生手続開始の申立て等があったことを再生債権者が知った時より前に生じた原因
 
<一審>
Xの請求を認容。 
 
<原審>
本件相殺は許される⇒Xの請求を棄却。 
 
<判断>
①本件受益権に係る解約実行請求は、YがXの支払停止を知った後にされたもの。
②Xは、本件受益権につき、原則として自由に他の振替先口座への振替をすることができた
Yが本件相殺をするためには、他の債権者と同様に、債権者代位権にもとづき、Xに代位して解約実行請求を行うほかなかったことがうかがわれる。

本件債務の負担が、民事再生法93条2項2号にいう「前に生じた原因」に基づく場合に当たるとは言えず、本件相殺は許されない

原判決を一部破棄し、Y銀行の控訴を棄却。
 
<解説>

最高裁H18.12.14は、振替制度導入前の投資信託(MMF)に係る受益者の販売会社に対する解約金支払請求権の差押えの可否が問題となった事案において、販売会社は、受益者に対し、解約金の交付を受けることを条件としてその支払義務を負うとする。

同様の仕組みにより発生する本件債務は、XがY銀行から本件受益権を購入し、その管理をY銀行に委託したことにより、Y銀行が解約金の交付を受けることを条件としてXに対して負担した債務であるということができる。

民事再生法93条1項1号と同様の規定である旧破産法104条1号にいう「債務の負担」は、停止条件付債務の場合には条件が成就したことをいうとされている(最高裁昭和47.7.13)。

本件債務の負担は、民事再生法93条1項3号本文にいう「支払の停止があった後に再生債務者に対して債務を負担した場合」に当たり原則として本件相殺は許されない
 

本件では、Xによる本件受益権の購入やY銀行への管理の委託がXの支払停止の前にされ、その時点で本件債務は停止条件付きのものとして成立していると考えられる。
⇒民再法93条2項2号にいう「前に生じた原因」に当たり、例外的に本件相殺は許されるのではないかが問題。 

手形の取立委任が旧破産法104条2号ただし書(民再法93条2項2号と同視)にいう「前に生じたる原因」に当たるかが問題となった最高裁昭和63.10.18は、同号の規定の趣旨について、債権者間の公平・平等な満足を目的とする破産制度の趣旨が没却されることのないよう、一定の場合に相殺を禁止する一方で、相殺の担保的機能を期待して行われる取引の安全を保護する必要がある場合には、相殺を禁止しないこととしたものである旨判示。

本判決:

再生債権者が相殺の担保的機能に対して合理的な期待を有していたといえるためには、その期待が他の再生債権者との公平等の観点から保護に値する合理性を有するものであることを要するとの考え方を前提。

判例時報2233

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2014年10月24日 (金)

別除権の行使等に関する協定における解除条件の解釈と再生計画履行完了前の破産

最高裁H26.6.5   

再生債務者と別除権者との間で締結された別除権の行使等に関する協定における同協定の解除条件に関する合意が、再生債務者がその再生計画の履行完了前に再生手続廃止の決定を経ずに破産手続開始の決定を受けた時から同協定が効力を失う旨の内容を含むものとされた事例 
 
<事案>
再生手続終結の決定後に破産手続開始の決定を受けたA株式会社の破産管財人であるXが、A社の工場等の土地建物(「本件各不動産」)を目的とする担保不動産競売事件において作成された配当表の取消しを求める配当異議訴訟。 

Xは、本件各別除権協定により、別除権の目的である本件各不動産の受戻しの価格定められ、各担保権の被担保債権の額がこれらの受戻価格に減額されたから、Yらは、これらの受戻価格から既払金を控除した額を超える部分につき、配当を受け得る地位にないと主張。

Yらは、本件各別除権協定は破産手続開始の決定がされたことにより失効したと主張
本件各別除権協定に係る協定書には、協定の解除条件を定めた条項が含まれており、「本件各別除権協定は、再生計画認可の決定の効力が生じないことが確定すること、再生計画不認可の決定が確定すること又は再生手続廃止の決定がされることを解除条件とする」というもの。


再生手続開始決定⇒本件各別除権協定締結⇒再生計画案が可決され再生計画認可の決定⇒平成17年10月、再生計画認可の決定が確定した後3年を経過したとして再生手続終結の決定
⇒平成20年1月破産手続開始決定を受け、破産管財人としてXが選任
⇒Yら側は、本件各不動産の担保不動産競売の申立てをし、平成20年10月、その開始決定
⇒競売事件の配当期日においてXが異議の申出
⇒原判決は、本件破産手続開始決定は本件解除条件条項で定められた解除条件のいずれにも該当せず、本件各別除権協定は失効していないとして、Xの請求を認容。
 
<判断> 
「別除権の行使等に関する協定(別除権の目的である不動産につきその被担保債権の額よりも減額された受戻しの価格を定めて再生債務者が別除権者に外資これを分割弁済することとし、再生債務者がその分割弁済を完了したときは別除権者の担保権が消滅する旨を再生債務者と別除権者との間で定めたもの)中にある再生手続廃止の決定がされること等を同協定の解除条件とする旨の合意は、再生計画の履行完了前に再生手続廃止の決定を経ずに破産手続き開始の決定がされることが解除条件として明記されていなくても、これを解除条件から除外する趣旨であると解すべき事情がうかがわれないなど判示の事情の下では、再生債務者が上記破産手続開始の決定を受けた時から同協定はその効力を失う旨の内容をも含むものと解すべきである。」と判示。

原判決を破棄した上、Xの請求を棄却した第一審判決は正当であるとしてXの控訴を棄却。 
 
<解説>

別除権協定:
別除権者と再生債務者等との間で、別除権の基礎となる担保権の内容の変更、被担保債権の弁済方法、順調に弁済されている間の担保権実行禁止と弁済完了時の担保権の消滅等を定める合意をいい、別除権の目的財産の受戻し(民事再生法41条1項9号)の合意や不足額確定の合意も別除権協定の一種。

別除権者は、再生手続外で権利行使ができる(法53条2項)⇒再生債務者としては、事業の継続のために必要不可欠な財産に設定されている担保権が実行されると、事業の継続が困難となり、再生手続が遂行できなくなってしまう
これに対し再生債務者が取りうる手段として、担保権の実行手続の中止命令(法31条)、担保権消滅の許可(法148条)が用意されているが、一定の制約や限界。

再生債務者としては、別除権者との間で別除権協定を締結する必要。

別除権者にとっても、経済的合理性の観点から、別除権協定を締結した方が有利な場合がある。


個別的な契約条項の解釈の問題として、
A:本件解約条件条項における解除条件を文言どおりに解釈して、本件では解除条件のいずれにも当たらないから解除条件は成就しないとする見解
B:本件解除条件条項における解除条件を例示的なものと解釈して、本件各別除権協定の趣旨・目的に照らして、本件では解除条件が成就することになるとする見解 

別除権協定が解除された場合:
A:担保権の被担保債権の額が別除権協定の締結前の額に復活する(復活説)
~担保権者の利益を保護
B:復活しない(固定説)
~不足額責任主義(法88条、182条)を重視


本判決:
契約当事者の合理的意思解釈として、本件各別除権協定においける本件解除条件条項に係る合意が、再生債務者がその再生計画の履行完了前に再生手続廃止の決定を経ずに破産手続開始の決定を受けた時から本件各別除権協定はその効力を失う。 

本件各別除権協定再生債務者につき民事再生法の規定に従った再生計画の遂行を通じてその事業の再生が図られることを前提としてその実現を可能とするために締結されたものであり、そのため、その前提が失われたというべき事由が生じたことを本件各別除権協定に定める解除条件としている。
②本件の場合が再生手続廃止の決定がされてこれに伴い職権による破産手続開始の決定がされる場合と状況的に類似
③本件各別除権協定の締結に際し、本件のような場合を解除条件から除外する趣旨で本件解除条件条項中に明記しなかったと解すべき事情もうかがわれない

判例時報2230

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2014年10月13日 (月)

共益債権に当たる債権を付記なしで再生債権として届出をし、再生計画案が付議された場合の共益債権としての権利行使(否定)

最高裁H25.11.21   

民事再生法上の共益債権に当たる債権につき、これが本来共益債権である旨の付記をすることもなく再生債権として届出がされ、この届出を前提として作成された再生計画案を決議に付する旨の決定がされた場合において、当該債権を再生手続によらずに行使することの許否 

<事案>
民事再生法条の共益債権に当たる債権につき、これが本来共益債権である旨の付記をすることもなく再生債権として届出がされた場合において、当該債権を再生手続によらずに行使することが許されるか否かが争われた事案。 

<判断>
「民事再生法上の共益債権に当たる債権を有する者は、当該債権につき再生債権とそちえ届出がされただけで、本来共益債権であるものを予備的に再生債権であるとして届出をする旨の付記もされず、この届出を前提として作成された再生計画案を決議に付する旨の決定がされた場合には、当該債権が共益債権であることを主張して再生手続によらずにこれを行使することは許されない」 

<解説>
民事再生法上の共益債権⇒再生手続によらないで、再生債権に先立ち、随時弁済を受ける(民再法121条1項、2項)。

再生債権⇒個別的権利行使が禁止され、原則として、再生計画に定めるところによらなければ、弁済を受けることができない(民再法85条1項)。
 
再生計画においては、再生債権者の権利の変更や共益債権の弁済等に関する条項を定めなければならないとされており(民再法154条1項)、届出再生債権や判明している共益債権の内容等に基づき、再生計画案が作成される。

再生計画案につき決議に付する旨の決定(民再法169条)がされた後は、再生債権の届出の追完、又は他の再生債権者の利益を害すべき届出事項の変更はできない(民再法95条)。

本判決は、再生計画案の確定及び再生手続の安定を図るという観点から、前記の届出を前提として作成された再生計画案につき付議決定がされた場合には、その後に当該債権につきこれを共益債権として再生手続によらずに行使することは不適切であって許されないと判断。

共益債権の「権利行使に関して手続的な制約が生ずるとする見解を採用したものと解される。
再生計画案につき付議決定がされると、再生計画案の基礎となるべき再生債権の範囲等が確定⇒この時点をもって、再生計画の対象とされている当該債権について上記の制約が生ずると判断。

「本来共益債権である旨の付記」をした「再生債権としての届出」は、いわゆる「予備的届出」として実務上従前から認められてきたもの。

再生手続においては、債権届出の追完は、付議決定がされた後は不可能となるが、付議決定までに権利関係が不明なままとなることもあるから、債権者が権利保全を図るために予備的に債権届出をしておく必要がある。

判例時報2229

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2013年5月27日 (月)

民事再生手続開始決定による強制執行中止後の手形金の受領

大阪高裁H22.4.23   

1.債権差押命令の差押債権者が同命令に基づく取立権を行使する過程で第三債務者からの支払の方法として手形を受領した場合、債務者に対し民事再生手続開始決定による強制執行中止後にその手形金の支払を受けたときは、法律上許されない支払受領になるから、不当利得に当たる。
2.差押債権者は、本件取立にかかる受領金のうち、手形に関するものは、手形の授受により取立行為が完了していると認識することも全く理由がないとはいえないから、不当利得の悪意の受益者とまでいえないが、民事再生手続開始決定後の現金振込に関するものは、不当利得の悪意の受益者に当たる、とされた事例

<事案>
被告銀行(Y)は、㈱Aに対する貸金債権請求についての確定裁判に基づく債務名義を有していたので、平成20年6月18日に同会社の第三債務者14社に対する売掛金債権に対する債権差押命令を得た上で、その取立権を訴訟外で行使し、交渉の結果、第三債務者B、C、Dから各被差押さ家kンを約束手形の振出ないし為替手形の譲渡の方法によって支払を受けることとし、同年6月30日から7月22日にかけて、支払期日を3ないし4か月先の9月20日から11月20日とする各手形の交付を受け、これと引き換えに本件差押命令の弁済金として受領した旨の領収書を交付。 

Yは、第三債務者Eから、Aとの間では売掛金の一部を現金振込で支払い、残額を手形で支払う予定であることを知らされたが、協議の結果、右の現金振込については予定どおり現金で支払いを受ける一方手形は発行せず、手形金相当額を現金で受領することを合意し、約定していた手形支払期日の平成20年10月20日に手形金相当額を現金振込で支払を受けた。

Aは、同年8月4日に民事再生手続開始の申立を行い同月12日その開始決定を受けたが、平成21年3月2日に再生計画の作成の見込みがないとして再生手続廃止決定がなされ、同月30日に破産宣告決定がなされ、原告破産管財人Xが選任された。

Xは、民事再生手続開始決定により再生債務者の財産に対してなされていた再生債権に基づく強制執行の手続は中止させることになっており、Yの保険差押命令による債権の取立は完了していなかったから、手形の支払金や現金振込金は強制執行手続中止後の支払であり、正当な権限に基づくものでなく不当利得に当たると主張して、その返還請求を求めて本訴に及んだ。

Yは、民事再生手続開始決定前に、取立権の行使の結果として被差押債権の弁済に代えて手形等の交付を受けたものであるから、本件差押命令による強制執行手続は、民事再生手続開始決定前に完了していたと主張。

<原審>
不当利得の成立を肯定
本件不当利得返還請求権は、Aと商取引によって生じたものではなく、法律の規定によって生じたもの⇒遅延損害金の割合は年5分 

<判断>
第三債務者Eに対して支払期限の猶予を与えて、本件民事再生手続開始決定後に手形に代わる現金支払を受けた被差押債権分についてはYが悪意の受益者に当たる。
⇒民法704条により遅延損害金の起算日を遅らせる変更。 

債権差押命令に基づく被差押債権の取立権の行使は、被差押債権の転付命令と異なり、被差押債権が取立権者に移転するするわけではない。

被差押債権自体の譲渡、免除、弁済猶予などの処分行為は、取立目的を超える行為として、差押債権者ができないこと、そのような処分行為をしても債務者にその効力が及ばないことを明らかにした。

<解説>

差押債権者の取立権

差押債権者の取立権の権能の内容は、取立の目的を遂行するのに必要な行為に限られる。
①取立のため第三債務者に出向いてその支払を受けること
②第三債務者との協議により、振込送金による支払方法をとることを合意すること(その場合に振込手数料の負担について合意することを含む)
③被差押債権の消滅時効の中断効果のある行為(催告、支払命令の申立、調停等申立、請求訴訟の提起)をすること
④支払を受ける方法として手形等交付を受けること、
など。 

差押債権者の第三債務者に対する債務と取立に係る被差押債権とを相殺することができるかは議論が分かれる。

被差押債権の内容を変更する行為(例えば、弁済期間の猶予、代物弁済の合意)、又は被差押債権の処分行為(例えば、債権譲渡、債務の放棄・免除)は取立の目的を超えることとしてできない。
but
差押債権者は、被差押債権の取立権能を行使するために、そのコストやリスクなどの効率を考慮して、手段を選択することはできる
⇒取立行為自体について、期限の猶予・分割弁済や手形等による代物弁済の許容などの合意や取立権の一部放棄を含む和解などの手段をとることができる。

取立権によって給付を求める実体的な処分としての限度で許されるものであり、被差押債権に対して実体的な効力を及ぼさず、また、債務者に対する関係では効力を及ぼさないで、そのリスク・不利益などを差押債権者のみが負う限り、相対的効力しかないものとして許される。


取立の完了と差押債権の弁済による消滅の時期及び強制執行の終了の時期 
被差押債権の弁済のための手形の交付の性格については、実務上、①支払確保のための手段である場合と②支払に代えての交付すなわち代物弁済である場合がある。

取引上不明なことがあるが、一般的に前者であると認識されており、裁判実務上も原則的にそのように推定。

手形による代物弁済の場合⇒原因関係上の債権債務はそれによって消滅⇒即時換金及び差押債権への弁済充当がなされたものとみなされる⇒取立行為はこれにより完了。

本件の場合、差押債権者の被差押債権の取立に際して、債務者A宛の手形でなく、わざわざ差押債権者宛の手形に書き直されて交付されて公布され、差押債権者が第三債務者に対して「本件差押命令の弁済金として受領した」旨の領収書を交付。
⇒代物弁済としての手形の交付と認定する余地もあり。
but
本判決は、本件手形の授受が代物弁済としてなされたとしても、その効力は、債権者に及ばないものであるとした。
vs.
倒産手続開始による強制執行中止効に巻き戻しの効果までないはず。


民事再生手続開始決定による強制執行手続の中止効 
民事再生法39条1項や同法26条1項、27条1項などの解釈問題。

民事再生法 第39条(他の手続の中止等)
再生手続開始の決定があったときは、破産手続開始、再生手続開始若しくは特別清算開始の申立て、再生債務者の財産に対する再生債権に基づく強制執行等若しくは再生債権に基づく外国租税滞納処分又は再生債権に基づく財産開示手続の申立てはすることができず、破産手続、再生債務者の財産に対して既にされている再生債権に基づく強制執行等の手続及び再生債権に基づく外国租税滞納処分並びに再生債権に基づく財産開示手続は中止し、特別清算手続はその効力を失う

民事再生法 第26条(他の手続の中止命令等)
裁判所は、再生手続開始の申立てがあった場合において、必要があると認めるときは、利害関係人の申立てにより又は職権で、再生手続開始の申立てにつき決定があるまでの間、次に掲げる手続又は処分の中止を命ずることができる。ただし、第二号に掲げる手続又は第五号に掲げる処分については、その手続の申立人である再生債権者又はその処分を行う者に不当な損害を及ぼすおそれがない場合に限る。
一 再生債務者についての破産手続又は特別清算手続
二 再生債権に基づく強制執行、仮差押え若しくは仮処分又は再生債権を被担保債権とする留置権(商法(明治三十二年法律第四十八号)又は会社法の規定によるものを除く。)による競売(次条、第二十九条及び第三十九条において「再生債権に基づく強制執行等」という。)の手続で、再生債務者の財産に対して既にされているもの
三 再生債務者の財産関係の訴訟手続
四 再生債務者の財産関係の事件で行政庁に係属しているものの手続
五 再生債権である共助対象外国租税(租税条約等の実施に伴う所得税法、法人税法及び地方税法の特例等に関する法律(昭和四十四年法律第四十六号。以下「租税条約等実施特例法」という。)第十一条第一項に規定する共助対象外国租税をいう。以下同じ。)の請求権に基づき国税滞納処分の例によってする処分(以下「再生債権に基づく外国租税滞納処分」という。)で、再生債務者の財産に対して既にされているもの

民事再生法 第27条(再生債権に基づく強制執行等の包括的禁止命令)
裁判所は、再生手続開始の申立てがあった場合において、前条第一項の規定による中止の命令によっては再生手続の目的を十分に達成することができないおそれがあると認めるべき特別の事情があるときは、利害関係人の申立てにより又は職権で、再生手続開始の申立てにつき決定があるまでの間、全ての再生債権者に対し、再生債務者の財産に対する再生債権に基づく強制執行等及び再生債権に基づく外国租税滞納処分の禁止を命ずることができる。ただし、事前に又は同時に、再生債務者の主要な財産に関し第三十条第一項の規定による保全処分をした場合又は第五十四条第一項の規定若しくは第七十九条第一項の規定による処分をした場合に限る。


差押債権者が強制執行手続中止効に反して、被差押債権の弁済を受けたことが無効とされた場合、本件は手形金による弁済のときは、民法703条の善意の受益者としたが、その論拠は、本案事案のよう、いろいろな解釈があり得ることを認めたうえで、それを考慮したのもの。
本来は、法解釈の誤りをした者は善意の受益者といえるわけではない。

http://www.simpral.com/hanreijihou2013zenhan.html

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