保護観察中の特定少年の特殊詐欺の受け子としてのキャッシュカード窃取で第1種少年院送致(期間3年)の事案
東京家裁R4.6.15
<事案>
特殊詐欺に受け子として関与⇒保護観察⇒同処分の継続中に、再び特殊詐欺に受け子として関与⇒審判時19歳の特定少年を第1種少年院に送致
<判断>
●犯罪の軽重
①特殊詐欺という事案の悪質さ
②共犯者間においては少年の立場が末端で従属的なものであったことを踏まえても、少年の責任は軽視できない
③同種事案である前件の保護観察中に本件に及んでいる
⇒
犯情は重く、少年院送致が許容される。
●要保護性
①・・・・保護観察処分を経ても少年の問題性はほとんど改善されていない
②自身の就労状況をありのままに報告していなかったなどの保護観察状況や少年の資質上の問題が本件に至る経緯等に与えた影響等
⇒
少年の問題性を社会内で改善することが困難
⇒少年を第Ⅰ種少年院に送致することが必要不可欠。
●上記犯情⇒少年院に収容する期間を3年。
<解説>
●特定少年に対する処遇判断
◎令和3年少年法改正⇒18歳及び19歳の少年を「特定少年」とし、特定少年に対して保護処分をする場合には、犯情の軽重を考慮して相当な限度を超えない範囲内において、保護処分の内容を選択(64条1項)。
特定少年を少年院送致とする場合には、その決定と同時に、3年以下の範囲内において犯情の軽重を考慮して少年院に収容する期間を定めなければならない(同条3項)。
⇒
特定少年に対して保護処分をする場合には、
①認定した非行事実の犯情の軽重を評価し、その行為責任の幅を上回らない限度において選択し得る保護処分の範囲はどこまでか(最も重い処分は何か)を把握
②その把握した選択し得る保護処分の範囲内において、要保護性の程度に応じて、具体的な保護処分の内容を選択
③少年院送致の場合、犯情の軽重を考慮して収容期間を定める
◎ 刑事裁判においては一般情状として考慮されることが一般的である前歴について、同種事案の再非行等の具体的な事案によっては、犯情として考慮できる前歴もある。
上記①について、
犯情の評価として、刑事事件において執行猶予付きの自由刑が想定される事案であっても少年院送致を許容し得る。
上記③について、
刑事裁判における量刑傾向が一定程度参考になる。
●要保護性の判断のあり方
特に末端である受け子や出し子として特殊詐欺に関与した少年の要保護性は、その犯情の悪質さに必ずしも比例しない。
家庭環境
判例時報2549
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