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2023年5月16日 (火)

インプラント手術での過失(肯定事例)

大津地裁R4.1.14

<事案>
・・・神経損傷を生じさせないために適切な術前検査をして神経の走行位置を確認し、インプラント体の埋込方向や深度に注意を払うべき注意義務を怠ってインプラント体を下顎管に入り込む位置に埋入したため、左側三又神経を損傷

Yに対し、診療契約の債務不履行に基づく損害賠償を求めた

<争点>
①本件手術による神経損傷の有無
②術前検査におけるP医師の過失の有無

<判断>
●争点①:
①本件手術後に他の病院で撮影されたCT画像上、インプラント体が下顎管に触れていると読影できる
②Xが本件手術の翌日からP医師に対し術部の傷みや知覚鈍麻の症状を訴えていた
③三又神経の損傷を示す他の病院の診断書がある
神経損傷がある

Yによる、神経の走行位置がXの指摘する位置より下であるとの主張
vs.
専門委員として関与した歯科医師等の説明を踏まえ排斥

●争点②:
術前検査におけるP医師の過失について、
①CT撮影すればインプラント体の先端が下顎管に重なる位置に達すると分かっていたはずであり、パノラマレントゲン写真でもそのような読影をし得る
but
P医師がそのような読影をせず、神経走行位置に関する誤解をした

P医師が本件手術に先立ち撮影したパノラマレントゲン写真を見た以上には、下顎管の位置を正確に把握しようと務めたとはうかがえず、Yの主張するような口腔模型によって歯茎内部の構造を正確に把握することはできない⇒適切な検討を尽くしたとはいえない

適切な術前検査をして神経の走行位置を確認し、インプラント体の埋込方向や深度に注意を払うべき注意銀無に反した過失がある。

<解説>
裁判例
専門委員の説明は、あくまでも説明にすぎず、それ自体が証言や鑑定の結果ではない
⇒当該説明の内容を直ちに事実認定に用いることはできない。
but
専門委員の説明によって裁判官及び当事者双方が争点を正しく理解し、当該説明を前提とした主張立証の補充がされたたような場合であれば、専門委員がした説明の内容を記録化(当該説明の要旨を調書に記載したり、専門委員が作成した説明文書を記録に編てつ)した上で、これを弁論の全趣旨として事実認定に用いることは許容されるであろう。

判例時報2548

大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文)HP

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