学校でのいじめ等での国賠請求
甲府地裁R3.11.30
<事案>
Y(山梨市)が設置する中学校に在学していたXが、
①同級生からいじめられているにもかかわらず適切な対応がとられなかったこと
②かえってXの体臭に問題があるとして衛生指導を受けたこと
③本件中学校の教員によって髪を切られたこと
について、Yに対し、国賠法1条1項に基づき、慰謝料等の支払を求めた事案。
<判断>
最高裁判例を引用し、
公務員による公権力の行使に国賠法1条1項にいう違法があるというためには、公務員が、当該行為によって損害を被ったと主張する者に対して負う職務上の法的義務に違反したと認められることが必要である。
争点①:
学校の教師は、学校教育活動ないしこれに密接関連する生活関係において、いじめその他の加害活動を防止し、これから生徒の安全を保護すべき義務を負っており、教員が、被害者から救済を求められた場合や、いじめを認識又は予見し得る場合は、被害を回避すべき具体的が義務が生じずと考えられる。
but
担任であるB教諭においてXがいじめられていると認識することができたとは認められない
⇒国賠法1条1項の違法なし。
争点②:
本件衛生指導は、Xの衛生面について指導する目的で行われたものであり、内容なや様においても、学年主任であるA教諭、B教諭及び養護教諭であるC教諭は、Xに対し相応の配慮をしていたというべき
⇒国賠法1条1項の違法なし
争点③:
A教諭は、本件中学校に登校したXから、Xの母親からA教諭に髪を整えてもらうよう言われたことを契機として、Xの同意を得ながら本件ヘアカットをした。
but
・・・
A教諭には、保護者であるXの母親に髪を切ることの当否を事前に確認する必要があり、Xの母親が本件ヘアカット行為の当否などを検討する機会が与えられる利益は、本件ヘアカット行為の当事者であるXにとってっも法的利益である
⇒国賠証1条1項にいう違法がある
⇒慰謝料10万円及び弁護士費用1万円の限度でXの請求を一部認容。
<解説>
教員は、教育法、学教法等の法令の趣旨、職務の内容・性質等に鑑み、学校教育活動により生じる危険から児童生徒保護すべき義務がある
最高裁:
学校の教師は、学校における教育活動により生ずるおそれのある危険から生徒を保護すべき義務を負う。
⇒
いじめの関係では、学校教育活動ないしこれに密接関連する生活関係において、いじめその他の加害行為を防止し、これから児童生徒の安全を保護すべき義務と解することができる。
最高裁昭和62.2.13:
小学校の児童が体育の授業中の事故により後日失明した場合に担当教師には事故の状況等を保護者に通知してその対応措置を要請すべき義務はないとされた事例。
but
同義務の有無については、
事故の種類・態様、予想される障害の種類・程度、事故後における児童の行動・態度、児童の年令・判断能力等の諸事情を総合して判断すべき
~
学校の教員の保護者への通知義務の有無を判断するに当たっての考慮要素を示したもの。
判例時報2547
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