漁獲上限の定めと国賠請求
札幌高裁R3.12.14
<事案>
北海道内において沿岸漁業のくろまぐろ漁に従事するXらが、Y1(国)及びY2(北海道)は、遅くとも平成29年7月1日までに法的拘束力のある漁獲制限をする義務があったにもかかわらず、これを怠り、漁業者の自主管理に委ねた結果、第3管理期間において上限を大幅に超過する漁獲を招き、Xらは第4管理期間以降のくろまぐろ漁が事実上できなくなり、Y1の第4管理機関における超過差引きは裁量権を逸脱するものであり違法
⇒Yらに対し、国賠法1条1項に基づき、第4管理期間以降6年間の逸失利益及び慰謝料の損害賠償等を求めた。
<争点>
①Yらが資源管理法、漁業法等に基づく法的措置を執らなかったことが、規制権限の不行使として国賠法1条1項の適用上違法といえるか
②Y1によって第4管理期間に行われた超過差引きが、農林水産大臣の裁量権の範囲を逸脱した著しく不合理なものとして国賠法1条1項の適用上違法といえるか。
<原審>
争点①:
国または地方公共団体の公務員による規制権限の不行使は、その権限を定めた法令の趣旨、目的や、その権限の性質等に照らし、その不行使が著しく不合理と認められるときに、その不行使により被害を受けた者との関係において、国賠法1条1項の適用上違法となる(最高裁)。
資源管理法、漁業法及び水産資源保護法の趣旨、目的や農林水産大臣及び知事の権限の性質等を検討し、第3管理期間よりも前の時点で強制力のある数量管理や罰則を伴う採捕制限を行わなかったことが著しく不合理であるとはいえない。
争点②:
本件における超過差引きは資源管理法に基づく農林水産大臣の裁量の範囲内。
⇒請求棄却。
<判断>
控訴棄却。
判例時報2547
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