詐欺未遂ほう助保護事件で少年を第一種少年院に送致・収容期間2年の事案
東京高裁R4.6.3
<事案>
いわゆる特殊詐欺事件の詐欺未遂幇助の事案
少年の関与:犯行の際に見張りをするなどして幇助
原決定時19歳の特定少年
<原審>
事件が未遂に終わり、少年が幇助犯にとどまることを踏まえても、少年院送致も許容される。
←
①本件は、卑劣で組織的かつ計画的に行われたもの
②多数回の家庭裁判所係属歴があるのに本件に及んだ少年の規範意識の乏しさは顕著
要保護性:
本件に至る経緯
⇒
①忍耐強く努力を続けることができず、遊興志向が強いため、目先の欲求を優先させて手っ取り早い金策を求めがちであるという問題
②都合の悪いことは考えようとせず、自己本位な志向及び行動傾向、犯罪に対する抵抗感が希薄であるという問題
③保護観察処分を含む家庭裁判所係属歴等⇒内省が表面的で深まりにくいという問題
④少年の内省は不十分であり、保護環境を見ても更生は期待できない
⇒
少年を第1種少年院に送致し、収容期間を2年とする決定。
<判断>
少年が更に反省を深め、強い更生意欲を示したことは評価できる
but
①それを踏まえても少年の問題性が直ちに改善されるものとはいえない
②父親には少年を指導監督する意思は認められるものの、これまでの経緯に照らすと、少年の問題点の改善を期待することは困難
③現時点あるいは早期に少年に社会での生活を送らせた場合、再び従前の生活状況に戻ってしまい、犯罪に関与する可能性は相応に高い
⇒
在宅処遇で改善しなかった根深い問題性を改善するには第1種少年院への収容が必要不可欠。
収容期間をその犯情に鑑み2年間とした原裁判所の処遇判断に誤りはない。
<解説>
令和3年5月に「少年法等の一部を改正する法律」が成立、令和4年4月1日施行。
少年法上、18際以上の少年については「特定少年」と呼称。
「第5章 特定少年の特例」が新設。
本件:特殊詐欺事件とはいえ、未遂かつ幇助の事案⇒刑事裁判であれば執行猶予が付く余地はある。
but
原決定は、本件の犯情を検討した上、少年院送致も許容されると判断し、収容期間を2年間と定めた。
本決定は、収容期間の点も含め、少年院送致処分を洗濯した原決定の判断を是認。
判例時報2546
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