食道静脈瘤に対するEVLにおいて、鎮静剤であるミダゾラムの投与が問題となった事案 (過失あり)
神戸地裁R3.9.16
<事案>
Yが開設する病院において、食道静脈瘤に対する内視鏡的静脈瘤結紮術⇒本件手術中に心肺停止となるなどした結果、低酸素脳症により寝たきり
⇒
Yに対し、 選択的に不法行為又は債務不履行による損害賠償として合計1億5058万5330円及び遅延損害金の支払を求めた。
<争点>
鎮静剤であるミダゾラム10mgを側管注法で投与したことに過失又は注意義務違反があるか?
<判断>
①Xは、ミダゾラムの投与により呼吸抑制に陥りやすい状態にあり、実際にミダゾラム0.08mg/kgに相当する本件混合溶液を投与したことにより既に呼吸抑制が生じていた
②本件医師らはこれらの事実を認識していた
③ミダゾラムには呼吸抑制の副作用発生が警告されており、投与は緩徐な方法によるべきものとされていた⇒・・緩徐な方法によるべきであった。
④体動が激しいため、緩徐な方法によるとうよでは対応できないような場合には、Xに対するEVLが、どうしても本件手術の当日に実施しなければ、その日におけるXの生存にかかわるといった意味での急を要する手術というわけではなかった⇒本件混合溶液を追加投与するのではなく、EVLの続行を中止すべき注意義務があった。
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本件医師らは、前記注意義務があるにもかかわらず、EVLを中止する判断をせず、これを続行するために、側管注法により本件混合溶液の残量8ml全部をXに投与し、その結果、過鎮静による呼吸抑制が生じ、これによりXに低酸素状態がもたらされた。
⇒過失又は注意義務違反を肯定。
⇒
Yに対し、1億3830万5198円及び遅延損害金の支払を命じた。
<解説>
鎮静剤の投与等が医師の注意義務違反になるかを判断した裁判例
肯定例
否定例
判例時報2548
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