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2023年5月 7日 (日)

重婚的内縁関係にあった内妻からの遺族厚生年金等の請求(肯定事例)

東京高裁R3.11.11

<事案>
老齢厚生年金等の受給権者であり死亡した男性Aと重婚的内縁関係にあったXが厚年法上の「配偶者」に当たる⇒遺族厚生年金の給付を請求⇒厚生労働大臣から支給しない旨の決定⇒本件不支給処分の取消しを求めた。

<規範>
遺族厚生年金を受けることができる遺族としての「配偶者」には、婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む(厚年法3条2項、59条1項)。
重婚的内縁関係の場合には、戸籍上届出のある配偶者(本妻)であっても、その婚姻関係が実体を失って形骸化し、かつ、その状態が固定化して近い将来解消される見込みのないとき、すなわち、事実上の離婚状態にある場合には、「配偶者」に当たらず、事実上婚姻関係と同様の事情にある内妻が「配偶者」に当たる。

本妻が事実上の離婚状態にあるとはいえない場合には、内妻は「配偶者」には当たらない。

<一審>
亡AとBとの婚姻関係が形骸化しているとはいえず事実上の離婚状態にあったとは認められない。

<判断>
亡AとBの婚姻関係は実体を失って形骸化し、その状態が固定化して近い将来解消する見込みがない場合であり、事実上の離婚状態であった⇒Xは事実上婚姻関係と同様の事情にある者であったとして、遺族厚生年金等についての「配偶者」要件を満たす。
⇒1審判決を取り消しXの請求を認容。

<解説等>
亡AとBとの別居後の音信、訪問等の状況:
一審判決:平成24年(亡Aが自身の設立した大阪府に本店を置くSの取締役を退任した頃)まで夫婦としての相応の交流が維持されていた。

本判決:遅くとも平成15年以降は夫婦としての音信、訪問による精神的交流はほとんど失われていた。
←控訴審において、Xが亡Aと親しかった会社関係者の陳述書により亡AとBの関係につき補充立証をしたのに対し、Bは補助参加しておらず、Yからは抽象的な記載にとどまるB側の回答書が提出されていただけであった。
Bの亡Aへの経済的な依存関係:

本判決:
亡AとBが長期間にわたり別居し、音信、訪問による精神的交流もない状態が続いていた状況において、積極的に婚姻関係の維持存続を図る趣旨ではなく、実子の負担も考慮してBに対する経済的支援を続けてきたこと等の事実関係を総合的に考慮し、経済的支援のない状態が2年程度にとどまる本件において、亡AとBが事実上の離婚状態にあったと判断。

本判決:
亡AのBに対する経済的支援が事実上の離婚給付の性格を有するとまで判断していない(当事者は、この点の主張の応報)

最高裁昭和58.4.14が当該事案における原審の具体的判断を摘示する場面でそのような表現をもちいているにとどまる⇒本判決としては、経済的支援がある場合にそれを事実上の離婚状態であると認定するための要件とまではみておらず、そこまで評価できない場合でも夫婦関係の諸事情の総合考慮の中で事実上の離婚状態と認定される場合があり得ると考えたのであろう。

参考判例

判例時報2547

大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文)HP

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