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2023年5月 1日 (月)

不正競争防止法2条1項10号の「技術的制限手段の効果を妨げる」の意味

最高裁R3.3.1

<事案>
コンピュータのソフトウェアの開発・販売等を業とする会社の代表者や販売責任者であった被告人らが、D社が電子書籍の影像を配信するに当たり、営業上用いている電磁的方法により前記影像の市長及び記録を制限する手段であって、視聴等機器が、D社が提供する専用ビューアによる変換を必要とするよう、前記影像を変換して送信する方法によるもの(「本件技術的制限手段」)により、 ライセンスの発効を受けた特定の視聴等聞きにインストールされた本件ビューア以外では視聴ができないように前記影像の視聴及び記録を制限しているのに、不正の利益を得る目的で、法定の除外自由がないのに、平成25年、顧客2名に対し、本件ビューアに組み込まれている影像の記録・保存を行うことを防止する機能を無効化する方法で本件技術的制限手段の効果を妨げることにより、本件ビューア以外でも前記影像の視聴を可能とする機能を有するプログラムである「F3」を、電気通信回線を通じて提供し、もって不正競争を行ったという事案。
G:復号後の電子書籍の影像が」表示さえr多パソコン画面のキャプチャができないようにすることで、影像の記録・保存を防止する機能を有し、本体ビューア以外で前記影像の視聴ができないよう影像の視聴等を制限するプログラム。
F3:Gの前記機能を無効化し、画面キャプチャができるようにするソフトウェアであり、復号後の電子書籍の影像を記録・保存することにより、本件ビューア以外での前記影像の視聴を可能とする機能を有するプログラム。

<主張>
検察官:改正前不正競争法2条1項10号にいう「技術的制限手段の効果を妨げる」とは、信号の除去・改変や、暗号の復号に限られるものではなく、技術的制限手段の効果を弱化又は無効化することであり、これに該当するか否かは、技術的制限手段を営業上用いている者が技術的制限手段を施した際に意図した効果が妨げられているかどうかによって実質的に判断すべき⇒F3の提供は不正競争に当たる。
弁護人:「技術的制限手段の効果を妨げる」とは、信号の除去・改変や暗号の復号といった技術的制限手段そのものの無効化に限られると解すべき。

<原審>
「技術的制限手段の効果を妨げる」とは、 技術的制限手段そのものを無効化することに限られない。
保護されるのは技術的制限手段の効果として通常理解できる範囲に限られる。
Gの前記機能はその範囲に含まれる。

これを妨げるF3は技術的制限手段の効果を妨げるものとしてその提供は不正競争となる。

<判断>
弁護人の上告趣意は、刑訴法405条の上告理由に当たらない。
F3は、改正前不正競争法2条1項10号にいう「技術的制限手段の効果を妨げることにより影像の視聴を可能にする機能を有するプログラム」に当たる。

<解説>
●検察官の非限定説

①改正前不正競争法2条1項10号の文言は「技術的制限手段の効果を妨げる」というもので、「技術的制限手段を妨げる」などとはしていない
②限定説を採ると技術的制限手段を講じた意味がなくなる場合がある
③立法提案者による解説に寄れば、「技術的制限手段の効果」は、それを用いる者が(営業上の利益のために)意図したところとするものであり、限定説を採るものではない。

弁護人の限定説
←著作権法の「技術的保護手段」の「回避」と調和的に解釈すべき
②非限定説を採ると処罰範囲が不明確又は過度に広範になる

判例時報2545

大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文)HP

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