船場センタービルの上を通っている阪神高速道路の占有料をめぐる争い
大阪高裁R3.12.14
<事案>
大阪市中心部にある船場センタービル(「本件ビル」)の上を通っている阪神高速道路の占有料をめぐる争い 。
Y:阪神高速道路公団が行っていた本件ビルに係る業務等を承継した独立行政法人
X:本件ビルの区分所有者全員で構成される団体の管理者
Yは、平成25年度以降毎年、Xに対し固定資産税等と同額の占有料について納入告知をしている。
<争点>
①本件各納入告知の行政処分性
②本件各納入告知の理由の提示の適法性(手続的適法性)
③本件各納入告知の信義則違反ないし裁量権の逸脱・濫用の有無(実体的適法性)
<原審・判断>
●
争点①:
本件各納入告知は行政処分
争点②:
平成26年度納入告知は理由の提示に不備があるが
平成27年度~平成30年度納入告知に不備はない
●
争点③
◎ 平成27年度納入告知は違法
原審:裁量権の逸脱・濫用
本判決:信義則違反ゆえに裁量権の逸脱・濫用がある
平成28年度~平成30年度納入告知:
原判決:裁量権の逸脱・濫用の違法
本判決:適法
◎ 原審:
①本件ビルが本件高速道路と不可分一体のものとして建設されたという特殊性
②Xは本件ビルの敷地相当部分の事業費(用地費・補償費)の約30%に相当する47億円余を分担しており、この分担金は占有料の前払い的な性格を有する
③公団とその承継人であるYが昭和46年以降40年以上にわたって占有料を免除してきた
⇒
占有料を固定資産税等の額と同額と定めたYの判断には裁量権の逸脱・濫用があり、平成27年度~平成30年度納入告知はいずれも違法。
判断:
①
Xが分担した47億円余は占有料の前払いとは認められない。
but
40年以上の長期間にわたって占有料が免除され続けてきた事実には重みがあり、Xには占有料を徴収されないという強い信頼があった⇒平成27年度納入告知の実体的適法性を検討するに際してはこの信頼保護の必要性が重視される。
②
Yの側にも長年にわたって免除されていた固定資産税等が賦課されるようになったという事情はある
but
大阪市に対し不服申立てや取消しの訴え提起などの法的措置をとっていない
⇒平成27年度納入告知は信義則に反し違法。
平成28年度~平成30年度納入告知:
基礎となる事情は異ならない。
but
Yに対して固定資産税等を賦課し続ける大阪市の強固な姿勢が一層明白になってきた。
・・・資金調達等について準備する時間がXにあった。
⇒
平成27年度納入告知と異なり、Xの信頼を裏切る処分であるとの評価を低減させる事情がある。
信義則違反とまではいえず、平成28年度~平成30年度の納入告知は有効。
判例時報2545
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