特殊詐欺の回収役の認定の事例
仙台高裁R3.12.16
<解説>
●被告人の犯人性については検察官が立証責任を負っている
⇒ アリバイの成立が確実とまで証明されなくとも、検察官の積極的立証とアリバイ立証を総合的に判断し、被告人のアリバイ供述を虚偽として排斥できないとして、被告人の犯人性に合理的な疑いが生じた場合には、無罪が言い渡される。
●特殊詐欺事案における包括的共謀について
特殊詐欺事案においては、
①犯行毎に実行犯等の関与者が変わることが多い
②役割によっては犯罪全体の実態を把握しておらず、また犯行組織との人的関係が希薄である場合も多い
包括的共謀が認められるためには、犯行組織を他の共犯者らと共に形成し、その構成員として犯罪を反復して遂行する旨の合意等がなされている必要
本件:
①被告人の枠割は回収役で代替性がある
②被告人が他の共犯者や組織における詐欺の実態につき詳細を認識しているともいえないこと等
⇒包括的共謀を否定。
原判決は、そのような認識の下、回収の依頼が撤回されるなどした時点での共謀の解消を認め、本判決もかかる判断を指示
判例時報2541
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