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2023年3月20日 (月)

幼少期に発効された身体障碍者手帳が「・・・明らかにすることがでできる書類」に当たるとされた事例

名古屋高裁金沢支部R3.9.15

<事案等>
20歳未満のときに初診日がある傷病による障害者(20歳前障害者)については、障害福祉年金による各制度がある。
これらの給付を受ける権利は、受給権者の請求に基づいて、厚生労働大臣が裁定。
Xは、訴えの変更を繰り返し、最終的にはY(国)に対し、
主位的には、平成23年3月までの分の障害福祉年金及び障害基礎年金の支給を求め、
予備的には、社会保険事務所又は年金事務所の職員が、初診日を特定又は証明できる書類がなければ裁定請求はできないとの理由でXの最低請求を妨害したことにより、前記各年金の支給を受ける権利を時効により消滅させた⇒国賠法1条1項に基づき、前記同額の支払を求めた

<争点>
①YがXの平成23年3月以前分の障害福祉年金及び障害基礎年金の支給を受ける権利(基礎となる受給権から毎月発生する支分権)が国年法102条1項所定の時効により消滅した旨の主張をすることが信義則に反するものといえるか。
②社会保険事務所又は年季事務所の職員がXに裁定請求書を渡さないなどの対応をしたことが国賠法上違法か
③②の職員の違法行為によるXの損害

<原審>
いずれも棄却。
争点②について、・・・職員の対応は違法とはいえない

<判断>
・・・昭和63年11月頃にXが社会保険事務所を訪問した際に所持していた身体障害者手帳の記載内容及びXの右手の状態を見れば、いずれも受給要件も充たしていることを確認することができた⇒同身体障害者手帳は初診日(当該疾病又は負傷が発生した日も含む趣旨)を明らかにすることができる書類として必要十分
but
窓口担当者は、法令の解釈を誤り、裁定請求用紙を交付しようとしなかった

かかる窓口担当者の行為を国賠法上違法かつ過失のあるものと判断。

<解説>
原判決と本判決で結論を異にしたのは、認定事実が異なることによるのではなく、初診日を明らかにすることができる書類がどのようなものかを解釈するに当たって、原判決が国年法施行規則の文言を重視したのに対し、本判決が前記書類が必要とされる目的に立ち返ったことによる。
初診日を明らかにすることができる書類についての文献等

判例時報2542

大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文)HP

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