国民年金法の平成24年改正の違法(否定)
高松高裁R4.5.26
<争点>
平成24年改正法及び本件処分が
①憲法25条及び人権A規約に違反するか
②憲法29条1項(財産権)に違反するか
③憲法13条に違反するか
④平成25年改正政令が法の委任の範囲を逸脱するか
<判断>
●争点①
平成24年改正法の立法目的は、世代間の公平及び年金財政の安定を図り、公的年金制度の持続可能性を確保する点にあったところ、このような立法目的自体は正当。
平成25年度から3年間にわたって段階的に年金額を減額するという手法は、特例水準(物価スライド制による年金額の減額改定を行わない特例法が適用された結果生じた年金額の水準)の解消を図ることとした平成24年改正法の立法目的達成のために必要⇒不相当とまではいえない⇒不合理であるということはできない。
●争点②
目的が正当で、手段は不相当ではない。
●争点③
①特例水準の解消が、生活保護を受けることを強制するものとまではいえない
②公的年金制度はそれのみによって健康で文化的な最低限度の生活を保証するものではなく、老齢基礎年金が生活保護における給付水準を下回るからといって、それが直ちに、年金受給者の憲法13条によって保障された人格的権利を侵害するものとまえいうことはできない。
●争点④
平成25年改正政令が平成24年改正法の委任の範囲を逸脱するとは認められない。
<解説>
Xらは、社会経済立法における立法裁量についても、行政裁量において論じられてきたいわゆる判断過程統制審査(判時1932、11頁)が妥当する旨主張
vs.
判断過程統制審査において考慮されるような事情は、立法目的の合理性、その目的達成のための手段の必要性・相当性について検討する際の考慮要素になるものとするのが相当であり、このような判断手法をとること自体は、前掲判例に反するものではない。
判例時報2542
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