婚費における年金収入についての計算
東京高裁R4.3.17
<事案>
X(妻)とY(夫)は、いずれも60才代で婚姻し、別居。
XはYに対し、月額8万円の婚姻費用分担金の支払を求めて家事調停申立て。
<原審>
いわゆる標準的算定方式によることが相当
相手方が支払うべき婚姻費用分担金の額について、
①令和2年6月から令和3年8月までは、
Xが年金収入、相手方が事業収入及び年金収入を得ていたことを前提に、月額9万1666円と試算し、Xの申立ての限度内である月額8万円を相当。
②令和3年9月から当事者の離婚又は別居状態の解消までは、X、Yの双方が年金収入を得ている⇒月額3万8500円を相当
<判断>
上記①について6万円を相当。
<解説>
●標準的算定方式における総収入
標準的算定方式及び算定表:
基礎収入は「総収入」から公租公課(所得税・住民税・社会保険料)、職業費及び特別経費を控除したものとし、その算定は、前期費用を理論値又は統計資料に基づく推計を用いて割合的に算出した上で、これを「総収入」から控除。
自営収入については、前提となる「総収入」として、確定申告書の「課税される所得金額」をベースとし、税法上控除されているものの現実には支出されていない費用(雑損控除、寡婦・寡夫控除、勤労学生・障害者控除、配偶者控除、配偶者特別控除、扶養控除、基礎控除)の額や青色申告特別控除額等を加算して修正したものを想定し、基礎収入は、「総収入」から所得税、住民税及び特別経費を控除した金額としている。
「総収入」から基礎収入を算出するに当たり、給与収入と自営収入とで控除される費用が同じでない
←
自営収入における「総収入」が、給与収入と異なり、既に職業費に相当する費用と社会保険料とが控除済のものである。
●年金収入に対する標準的算定方式の適用
年金収入のように、職業費の支出を要しない収入を標準的算定方式に当てはめるにあたって、
給与収入と同様に収入額から公租公課、職業費及び特別経費を控除して基礎収入を算定⇒実際にはかからない職業費が控除され、基礎収入が低くなりすぎる⇒実務上、何らかの修正を加える考え方が大勢
A:基礎収入の割合を修正して算定
B:年金額を(1ー職業費の割合)で女子て給与所得者の収入額に換算して算定
Yは、令和3年8月までは自営収入と年金収入を得ていた
本決定:同月までの年金収入を自営収入に換算した上で、前記自営収入と合算した収入額を標準的算定方式に当てはめている。
判例時報2540
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