X(適格消費者団体)のYら(消火器のリース業を営む会社)に対する訴訟。
仙台高裁R3.12.16
<判断>
消費者契約法12条3項に基づく請求:
事業者であるYらが、消火器の設置・使用ないし保守点検に関する継続的契約にあたる消費者契約を締結するに際し、不特定かつ多数の消費者との間で、同法8条1項1号に規定する事業者の損害賠償責任を免除する条項又は同法10条に規定する消費者の利益を一方的に害する条項にあたる消費者契約の条項を含む消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示を行うおそれがある
⇒これらの行為の停止又は予防として、これらの条項を含む意思表示を差止め、前記の停止または予防に必要な措置として、前記条項が記載された契約書用紙の破棄を命じた。
パッケージリース条項①及び②は、いずれも消費者契約法8条又は10条により無効となる条項が多数含まれ、これに関連する契約条項が全体として一体のものとして、消費者の権利を制限し又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項となり、信義則に反して消費者の利益を一方的に害する契約条項となっている
⇒同法10条により、契約条項全部が無効。
特定商取引法58条の18第2項2号に基づく請求については、
契約が解除されたときにリース料残余相当額を支払わなければならない旨を定めた特約が、同法10条1項3号及び4号の規定に反する
⇒行為の停止または予防として前記特約を含む契約の申込み又はその承諾の意思表示を差止め、前記の行為の停止又は予防に必要な措置として前記特約が記載された契約書用紙の破棄を命じた。
特定商取引法58条の18第1項に基づく請求については、
・・勧誘行為は、顧客が当該契約の締結を必要とする事情に関する事項(同法6条1項6号)又は当該契約に関する事項であって顧客の判断に影響を及ぼすこととなる重要なもの(同項7号)について、不実のことを告げる行為に当たる
・・・勧誘行為は、役務の種類及びこれらの内容(同法58条の18第1項1号イ)の不可欠の要素となるリース物件の種類及びその性質につき、故意に事実を告げない行為(同項2号)にあたる
⇒
前記勧誘行為の停止又は予防として前記勧誘行為を差止め、
前記の行為の停止又は予防に必要な措置として前記勧誘行為を記載した文書等の破棄を命じた。
景表法30条1項に基づく請求については、
同項1号に規定する優良誤認表示、または同項2号に規定する有利誤認表示にあたると判断
⇒
これらの表示をする行為の停止又は予防として前記表示を差し止めた。
<解説>
消費者契約法39条1項に基づき、消費者庁のホームページに、判決の概要、差し止め請求に係る相手方の名称等が公表。
差し止命令については、侵害態様の変更による強制執行回避への対応策が、特に知財侵害訴訟の分野において重要な課題して認識されて、実効的な救済を確保する観点から、包括的ないし抽象的な差止命令の必要性が論じられている。
本判決:パッケージリース契約条項①及び②について、契約条項が全体として一体のものとして信義則に反し、消費者の利益を一方的に害する契約条項となっていると評価⇒消費者契約法10条により契約条項全部が無効になると判断。
~
契約条項全部の使用を差し止める包括的な差止命令により、実効的な救済を志向した判断として、実務上参考となる。
判例時報2541
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