特定農林水産物等の登録に関する処分の取消しを求める訴えと行政事件訴訟法14条1項ただし書の「正当な理由」
東京地裁R4.6.28
<事案>
農林水産大臣は、特定農林水産物等の名称の保護に関する法律12条1項に基づく特定農林水産物等の登録に関する処分(「本件処分」)をした。
原告が、本件処分について、地理的表示13条1項3号イ及び同項4号イ所定の登録許否事由があるのにこれを看過した違法がある⇒その取消しを求めた⇒本件審査請求を棄却⇒本件処分の取消しを求める本件訴えを提起
原告:豆味噌に「八丁味噌」という表示をして事業を行う株式会社
八丁味噌協同組合(八丁組合)の組合員
八丁組合は、地理的表示法7条1項に基づき、登録申請⇒申請取り下げ
県組合が、地理的表示法7条1項に基づき、生産地を「愛知県」とする豆味噌につき、名称を「八丁味噌」とする登録を申請⇒農林水産大臣は本件処分
<規定>
行訴法 第一四条(出訴期間)
取消訴訟は、処分又は裁決があつたことを知つた日から六箇月を経過したときは、提起することができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。
2取消訴訟は、処分又は裁決の日から一年を経過したときは、提起することができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。
3処分又は裁決につき審査請求をすることができる場合又は行政庁が誤つて審査請求をすることができる旨を教示した場合において、審査請求があつたときは、処分又は裁決に係る取消訴訟は、その審査請求をした者については、前二項の規定にかかわらず、これに対する裁決があつたことを知つた日から六箇月を経過したとき又は当該裁決の日から一年を経過したときは、提起することができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。
<判断>
本件訴えは、行訴法14条1項本文所定の出訴機関を徒過しており、同項ただし書の「正当な理」由も認められない⇒不適法。
←
(1)本件審査請求をした者は八丁組合であり、原告と八丁組合の法人格は異なるものであるから、原告は14条3項の「審査請求をした者」には当たらない。
(2)
(3)
<解説>
●審査請求の主体
最高裁昭和61.6.10:地方団体の徴収金に関する滞納処分等の取消しの訴えは当該処分についての異議申立又は審査請求に対する決定又は採決を経た後でなければ提起することができないものとされているところ、被上告人が当該処分につき自らは審査請求をすることなく直接本件訴えを提起した事案において、
訴訟提起自身がその手続を経由していない以上、たまたま他の者が当該処分について訴訟提起者の主張と同一の理由に基づいて審査請求を経ていたとしても、両者が当該処分に対し一体的な利害関係を有し、実質的にみれば、その者のした審査請求は同時に訴訟提起者のための審査請求でもあるといいえるような特段の事情が存しない限り、訴訟提起者の訴えについて当然に審査請求の手続が経由されたと同視して、これを適法な訴えと解することはできない。
●行訴法14条1項ただし書の「正当な理由」
訴訟追行為の追完を規定する民訴法97条1項の当事者の「責めに帰することができない事由」よりも緩やかかな概念であり、出訴期間内に出訴しなかったことについての社会通念上相当と認められる理由を意味。
具体的な事案においては、処分等の内容・性質、行政庁の教示の有無及びその内容、処分等に至る経緯及びその後の事情、処分当時及びその後の時期に原告が置かれていた状況、その他出訴期間徒過の原因となった諸事情を総合勘案して判断。
原告は、八丁組合が本件処分の取消しを求める訴えを当然に提起することを想定
but提起せず。
vs.
もっぱら八丁組合を構成する原告と合資会社八丁味噌の内部事情をいうもの⇒「正当な理由」があったものとは解し難い。
●地理的表示法(いわゆるGI法)にいう先使用権
地理的表示法3条2項4号は、登録の日前から不正の目的でなく登録に係る特定農林水産物等若しくはその法曹等に当該特定農林水産物等に係る地理的表示(GI)と同一の名称の表示若しくは類似等表示を使用していた者等が継続して、当該農林水産物等又はその包装等にこれらの表示を使用する場合には、前記表示を使用することができる(登録の日から7年後は、・・当該農林水産物等に当該特定農林水産物等との近藤を防ぐのに適当な表示がされているときに限る。)。
●地理的表示法15条1項に基づく生産者団体を追加する変更の登録
判例時報2541
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