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2023年2月 6日 (月)

危険運転致死の事案

金沢地裁R3.12.7

<主張>
弁護人:
自動車死傷法2条4号の「人又は車の通行を妨害する目的」(「通行妨害目的」)について、人又は車の自由かつ安全な通行を妨げることを積極的に意図する場合のほか、通行の妨害を来すことの確定的認識が必要。

<判断>
通行妨害目的:
人又は車の自由かつ安全な通行を妨げることを積極的に意図する場合のほか、
危険回避のためやむを得ないような状況等もないのに、人又は車の自由かつ安全な運行を妨害する可能性があることを認識しながら、あえて走行中の自動車の直前に侵入し、その他通行中の人又は車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転すること(「危険接近行為」)を行う場合も含む
被告人は危険回避のためやむを得ないような状況等もないのに、被害者運転車両に急な回避措置をとらせるなど通行を妨げる可能性があることを認識しながら、あえて危険接近行為を行った
⇒通行妨害目的があった。

<解説>
● 自動車死傷法2条4号(刑旧法208条の2第2項前段)は「人又は車の通行を妨害する目的」(通行妨害目的)を要件とする目的犯。

判例上、本判決と同様に目的の実現について未必的な認識認容で足りるとされた犯罪:
虚偽告訴罪「人に刑事又は懲戒の処分を受けさせる目的」
私文書偽造罪「行使の目的」
・・・

● 通行妨害目的:
A:相手方の自由かつ安全な通行を妨げることを積極的に意図することをいい、これらについての未必的な認識認容があるだけでは足りない
B:積極的意図がある場合のほか、危険回避のためやむを得ないような状況等もないのに、人又は車の自由かつ安全な通行を妨げる可能性があることを認識しながら、あえて危険接近行為を行った場合にも認められる

通行妨害目的に要件が規定された趣旨を、外形的には極めて危険かつ悪質な行為のうち危険回避等のためにやむをえなくされたものを処罰の対象から除外することにあると捉え、
このような目的犯の構造は背任罪における図利加害目的(「本人の利益を意図していた場合は処罰しない。」という命題の裏側として、処罰すべき「本人の利益をいとしていなかった場合」を表現するために設けられたもの)に類似

判例時報2538

大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文)HP

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