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2023年2月 2日 (木)

地自法238条の5第4項に基づく賃貸借契約の一部解除(肯定)

大阪地裁R3.10.29

<事案>

X⇒Y:
本件土地1のうち、道路拡幅相当部分に関する賃貸借契約をそれぞれ解除する旨の意思表示をした上で、本件訴訟を提起。

本件訴訟において、本件土地1に隣接する土地の各所有者であるYに対し、境界の確定を求めるとともに、本件土地1の一部の賃借人であるYらに対し、本件道路の拡幅の必要があるため地自法238条の5第4項に基づき賃貸借契約の一部を解除したなどと主張し、賃貸土地の一部の明渡し、解除後の土地の占有につき損害賠償請求金の支払及び解除後の借地権の範囲の確認を求めた。

<争点>
地自法238条条の5第4項に基づく本件解除の可否

規定 第二三八条の五(普通財産の管理及び処分)
4普通財産を貸し付けた場合において、その貸付期間中に国、地方公共団体その他公共団体において公用又は公共用に供するため必要を生じたときは、普通地方公共団体の長は、その契約を解除することができる。

<主張>
X:
従来から、防災上必要であるとして各種整備計画において本件道路を幅員6.7mに拡幅することとし、現実に周辺土地の取得や借地権bの解除を行っている⇒本件解除部分の土地を公共用に供するための必要がある。
Y:
①地自法238条の5第4項の必要性は、法令又は条例に基づくものでなければならないところ、Xの主張する整備計画は、法律又は条令に基づくものではない。
②防災上の拡幅の必要性に理由がない。
③本件解除の対象地を公共用に供するための必要がない。
⇒解除無効

<判断>
地自法238条の5第4項について:
公有財産は普通財産であっても元来公共性を有するものであり、当該普通財産を特に公用又は公共用等の公益目的のために供する必要が生じたときには、その管理処分に当たっては公益を優先させるのが原則であるとして民法等の一般原則の特例を定めたもの⇒民法等に優越する。
①本件において、「第3次庄内地域住環境整備計画」において本件道路を含む道路について幅員6.7メートルを標準として整備する計画が策定され、本件解除時においても維持されていた
②防災上の観点から本件道路を拡幅する旨の計画には合理性がある
③本件解除について、建築主にとって支障が小さい時期に合わせて必要な限度でされている
④そもそも、XとYらの賃貸借契約においては、Xが対象と地を他の用途に使用処分し、又は行政上必要とするときは賃貸借契約を解除することができる旨記載されている

本件解除の対象地を本件道路に供する必要があり、公共用に供する必要があった

<解説>
普通財産は、行政財産と異なり、主としてその経済的価値の保全運用によって生じる収益を普通地方公共団体の財源に充てることを目的とする財産であり、その管理処分は純然たる私経済行為⇒原則として一般私法の規定が適用される。
but
元来公共性を有するもの⇒当該普通財産を特に公用又は公共用等の公益目的のために供する必要がある場合について、民事法上の契約の解除に関する一般原則に対する特例が定められたものであり、国有財産法24条の例にならったもの。

契約の解除に際しては、借主に生じた損失についての補償が要求されるとともに(地自法238条の5第5項)、当該財産を公用又は公共用に供することの必要性についての慎重な判断とそのための公正な手続保障が望ましい。

判例時報2538

大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文)HP

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