東京都迷惑防止条例違反の事例
東京高裁R4.1.12
<原審>
撮影された動画の本数(3本)や時間(Aが写っているのは数秒以内)、内容(足元、左半身、後ろ姿と左横からの姿)⇒
性的な部分を狙ったものとはいえず、また、Aを付け狙うなどの執ようさも認められない
⇒本件条例5条1項3号に想定する「人を著しく羞恥させ、又は人に不安を憶えさせるような行為であって」「人に対し、公共の場所又は公共の乗物において、卑わいな言動をすること」(「本件禁止行為」)該当性を否定し無罪。
<判断>
原判決を破棄し、被告人を懲役8月に。
本件条例の趣旨⇒
「衣服を着用した身体を撮影し、又は衣服を着用した身体を身体に対して写真機等を構える行為であっても、その意図、態様、被害者の服装、姿勢、行動の状況や、写真機等と被害者との位置関係等を考慮し、被害者や周囲の人から見て、衣服で隠されている下着又は身体を撮影しようとしているのではないかと判断されるものについては」本件禁止行為に当たると解するのが相当。
<解説>
原判決:
あくまで、被告人が実体として性的に意味のある部位を狙っていたかどうかを決定的な事情と捉え、この点が否定されれば本件禁止行為該当性は認められないと解している。
本判決:
「被害者や周囲の人からどう見えるか」といういわば「らしさ」論を重視し、少なくとも、衣服で隠されている下着または身体を撮影しようとしているのではないか、と思われるようなら本件禁止行為該当性を肯定してよいと解している。
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迷惑防止条例の保護法益は被害者個人の法益ではなく、当該都道府県ごとの社会的法益、すなわち、県民生活の平穏。
判例時報2537
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