試験観察⇒無断退去⇒第1種少年院送致の事案
東京家裁R4.1.13
<事案>
保護処分歴のない少年が、共犯者らと2度にわたり同一の被害者から現金等を強盗取し、1度はその際に傷害を負わせたという、強盗及び強盗致傷と、これらによる試験観察中の、補導委託先からの無断退去というぐ犯行状の事案。
<判断>
強盗及び強盗致傷の各非行(「当初事実」)⇒少年の問題性を指摘しながら、身柄付き補導委託の方法による試験観察の余地があった。
無断退去の経緯と少年の説明⇒不快感情の蓄積に対する脆弱さ、不良交友に対する親和性の強さ、愛情欲求の不満の強さといった少年の問題性⇒指導者等との関係構築にも悪影響を及ぼす⇒試験観察により少年の問題性の根深さと矯正の難しさが浮き彫りになった。
⇒
少年が再非行に及ぶ危険性は高く、その防止のために種々の指導を実施することが必要不可欠⇒第1種少年院に送致。
<解説>
試験観察:
①それまでの調査を補強・修正し、要保護性についての専門的判断を一層的確にするという調査の機能
②終局決定が留保されていることによる心理的な強制効果を利用して少年に指導援護を行うという教育的処遇の機能
少年を委託先に宿泊等させて行う身柄付き補導委託の措置⇒従来の環境等から切り離し、家庭的な処遇を行い、受託者の人格的な感銘力に触れさせるなどしながら、社会内における改善更生の可能性を見極めることができる。
判例時報2539
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