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2023年2月15日 (水)

特定商品等の預託等取引契約に関する法律違反及び不当景品類及び不当表示防止法違反に係る調査の結果に関する情報の不開示の事案

最高裁R4.5.17

<事案>
X(被上告人)が、行政情報公開法(平成26年法律第67号による改正前のもの)に基づき、消費者庁長官に対し、㈱安愚楽牧場に関する行政文書の開示を請求⇒本判決別紙目録記載の部分等に記録された情報が行政情報公開法5条6号イ等所定の不開示情報に該当⇒本件各不開示部分等を除いた一部を開示する旨等の各決定⇒Y(国)を相手に、本件各決定のうち本件各不開示部分等に関する部分の取消しを求めた
農林水産大臣は、特定商品等の預託等取引契約に関する法律における主務大臣として、農水省職員に、本件会社の事業所へ立入検査をさせ、その結果に基づき、財務諸表等を適切に作成し、かつ、その結果を定期的に報告するよう指示。
(平成21年法律第49号による改正前の預託法は、主務大臣が業務停止命令を行う。改正後:内閣総理大臣が業務停止命令等を行い、その権限は消費者庁長官に委任する旨を規定)

本件会社は、再生手続開始の申立て。

消費者庁長官:本件会社に対し、景表法6条に基づき、本件契約の内容についての雑誌広告における表示が景表法に違反するものである旨を一般消費者へ周知徹底することを命ずる措置命令。
目録記載1及び2の部分に係る各文書
目録記載3~11の部分に係る各文書

<争点>
6号イ所定の不開示情報該当性(検査に係る事務に関し、正確な事実の把握を困難にするおそれ又は違法若しくは不当な行為を容易にし、若しくはその発見を困難にするおそれの有無)

<原審・1審>
目録1及び2の部分に記録されている情報:
1審、原審とも、それぞれ一体的に6号イ所定の不開示情報に該当⇒取消請求棄却。
目録記載3~11の部分に記録されている情報:
1審:6号イ所定の不開示情報に該当

<原審>
①預託法等違反に係る調査の結果の内容等の客観的な事実に関する情報は、6号イ所定の不開示情報に該当しない
②同部分に記録されている情報は、預託法等違反に係る調査の結果に関するもの⇒6号イ所定の不開示情報に該当しない
⇒同部分に関する部分の取消請求を認容。

<判断>
●目録記載3~11の部分:
当該情報を公にすることにより、消費者庁長官等が預託法等の執行に係る判断をするに当たり、いかなる事実関係をいかなる手法により調査し、調査により把握した事実関係のうちいかなる点を重視するかなどの着眼点や手法等を推知され、将来の調査に係る事務に関し、正確な事実の把握を困難にするおそれ又は違法若しくは不当な行為を容易にし、若しくはその発見を困難にするおそれ又は違法若しくは不当な行為を容易にし、若しくはその発見を困難にするおそれがあるといえるか否かという観点から審理を尽くすことなく、当該情報が預託法等違反に係る調査の結果に関するものであることから直ちに6号所定の不開示情報に該当しないとした原審の判断には、違法がある。

●目録記載1及び2の部分に記録されている情報:
それぞれ一体的に6号イ所定の不開示情報に該当するか否かを判断した原審の判断には、違法がある。

原判決中、本件各不開示部分に関する部分を破棄し、本件各不開示部分に記録されている情報が6号イ所定の不開示情報に該当するか否か等につき更に審理を尽くさせるため、前記の破棄部分につき、本件を原審に差し戻した。

<解説>
● 行政情報公開法5条6号の解釈等:
公にすることにより国の機関等が行う事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある情報を含むことが容易に想定されるものを同号イ~ホに例示的に列挙するとともに、同号柱書きに包括的な規定を置いたもの

「適正な遂行に支障を及ぼすおそれ」(同号柱書き):
行政機関の長に広範な裁量権を与える趣旨ではなく、同号の要件該当性は客観的に判断する必要があり、「支障」の程度は名目的なものでは足りず実質的なものであることが必要。
「おそれ」の程度も単なる確率的な可能性ではなく、法的保護に値する蓋然性が要求される。

● 宇賀裁判官:
行政調査の過程において作成、入手した情報であって、客観的な事実に関するものは、一般的には、脱法的行為を防止するために不開示にせざるを得ない機微な情報に当たるということはできない。
but
そのような機微な情報を推知し得る場合があり得る⇒個別に6号イ所定の不開示情報該当性を判断すべきことが指摘。

判例時報2539

大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文)HP

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