「宗教法人が専らその本来の用に供する宗教法人法第3条に規定する境内建物」該当性(肯定事例)
東京地裁R3.9.21
<事案>
固定資産税等の各賦課決定⇒本件課税部分は地税法348条2項3号及び702条の2第2項の適用対象たる「境内建物」及び「境内地」に当たり非課税⇒Y(東京都)を相手に、本件処分の取消しを求めた。
<判断>
「境内建物」該当性につき、宗教法人法3条1号が、宗教活動に直接用いられる場所のみならず、住職・牧師等が起居する建物や、宗教法人の組織運営事務を行うための建物も含めているのは、これらが宗教法人の目的を達成するために通常必要であり、同法の各種規律にかからせるべきものであるため。
「その他宗教法人の・・・目的のために供される建物」も含まれるのは、宗教法人によって異なる教義等を考慮して境内建物該当性を判断すべきとの趣旨。
そして、専らその本来の用に供されている境内建物は、通常収益性がないから非課税とされる。
⇒
「境内建物」該当性につて:
①宗教法人法3条1号に例示的に列挙された建物に当たるか否かのほか、教義等に照らし、当該建物を用いることが、宗教の教義を広め、儀式行事を行い、信者を教化育成するという宗教法人の目的達成に必要なもので、当該建物につき同法の規律にかからせることが適当といえるかという観点からか検討し、それが肯定される場合
②当該建物が専らその本来の用に供されているか否かを検討すべき。
かかる各検討は、宗教法人内部の主観的な意図まで立ち入るのではなく、一般の社会通念に基づいて外形的、客観的にこれを行うべき。
本件において、
①バハイ教の宗教的活動が円滑に行われるためには管理人を配置して本件建物を常に開放する等の業務を行わせることが必要
②管理人が本件建物に通って前記業務を行うことは多大な困難を伴い、管理人を本件建物に起居させる必要がある
③本件管理人室から本件建物の外へ直接つながる出入口はなく、不特定の信徒が出入りする空間の一部であって、本件管理人室につき宗教法人法に定める規律にかからせることが適当である
⇒
本件管理人室は「境内建物」に該当し、前記業務のために管理人を起居させるという本来の用に供されている⇒本件処分は違法。
<解説>
本件の「管理人室」は、宗教法人法3条1項が具体的に列挙する施設には含まれておらず、「その他宗教法人の・・・目的のために供される建物」として「境内建物」該当性が問題となった。
Y:本件管理人室について、会社員であるAの私的生活に利用されている空間であり「境内建物」に当たらない旨主張。
but
本判決:
境内建物等に係る宗教法人法の規律及びその趣旨等を踏まえて判断枠組みを示した上で、バハイ教の教義を踏まえつつ、本件管理人室の利用状況等を具体的に検討し、本件管理人室が「境内建物」に該当し、専らその本来の用に供されていると判断。
裁判例
判例時報2539
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