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2023年1月26日 (木)

ぐ犯保護事件及び強制的措置許可申請事件

千葉家裁R4.3.29

<事案>
児童自立支援施設入所中の14歳の少年が
保護者である同施設の正当な監督に服さず、3回にわたり職員に暴行を加えてけがを負わせ、窓ガラスを割るなどし、将来においても暴行、傷害、器物損壊等の罪を犯すおそれがあるというぐ犯の事案及び少年に対する矯正的措置許可申請の事案

<決定>
①ぐ犯保護事件について、少年を児童自立支援施設に送致
②強制的措置許可申請事件について、事件を児童相談所長に送致し、強制的措置を許可
施設内でのルールを遵守せず、感情をコントロールできずに粗暴な行為が続いており、施設内に限られたものとはいえ、その非行の危険は大きい。
少年は、自閉症スペクトラム障害等の資質面を有しており、幼少期の被虐待経験を始め、被受容感や愛情を感じることができにくい家庭環境において、情緒の安定性が育まれず、社会適応力全般の発達が阻害されている。
その愛着形成の問題から、周囲の身近な大人に対する愛情の求め方が不適切出謝ったものとなっており、規則の不遵守や粗暴な言動により構ってくれるだろうという誤学習が生じている。
少年の母は単独で監護養育を行うことは困難で、現在の施設では指導困難。
・・・・
少年院送致までの必要はなく、少年を児童自立支援施設に送致することが相当。
少年の行状から、必要な処遇を行うためには強制的措置をとる必要があり、施設の準備が整う予定の日から2年の間に通算120日を限度として許可することが相当。

<解説>
●児童自立支援施設と強制的措置

児童自立支援施設:
不良行為をなし、又はなすおそれのある児童等を入所させ、必要な指導を行い、その自立を支援する施設(児福法44条)。

寮で生活し、中学校の分校等に通学するなどの家庭的な雰囲気の下で行われる解放処遇が実施されており、中学生を中心とした年少少年が対象とされることが多い。
but
少年が自傷他害をし、無断外出をするなどの場合には、
少年の行動の自由を制限する強制的措置(閉鎖施設への入所等)が必要となる場合があり、
人権保障の観点から、都道府県知事又は児童相談所長は家庭裁判所の許可を求めなければならない(児福法27条の3、少年法6条の7第2項)。
家裁は、これを許可する場合には、決定により、期限を付して強制的措置をとることができる旨を明示した上で、事件を児童相談所長に送致(少年法18条2項)。
実際に強制的措置が実施されているのは、2か所だけ。
文献。

●年少少年の児童自立支援施設送致に関する処遇選択のあり方
児童相談所に一時保護中であったり、児童自立支援施設に入所中の年少少年について、
児童相談所長からぐ犯等の事件送致がされた場合、収容処遇を選択するとしても、
児童自立支援施設送致と少年院送致のいずれを選択するのかが問題となることが多い。

本決定:
専門的な教育を施す必要性を認めつつ、
①少年の問題性が愛着形成に起因するものであること
②問題行動が施設内に限定されていることや少年の内省状況等

少年院送致までの必要はなく、児童自立支援施設送致が相当

本件は、すでに児童自立支援施設において指導困難となっている⇒強制的措置を前提。
but
①本件のぐ犯事由が生じるまでは施設において概ね落ち着いて過ごせていた
②本件の調査審判による働きかけの結果
⇒福祉的な支援による原則的な解放処遇で足りるものと判断。

●強制的措置許可の可否
強制的措置が必要となるのは、少年が心理的に不安定になり、自傷他害や無断外出のおそれがあるなど、解放処遇による指導が困難となる場合。
本決定では、少年の行状から、必要な処遇を行うためには強制的措置が必要。

本件のぐ犯事由が施設職員の指導に抵抗した際の暴行等を内容としており、解放処遇にyる指導が困難となるおそれがぐ犯の内容から明らか。

強制的措置の日数:
本決定では、申請どおり、2年の間に通算120日を限度として許可。

強制的措置の期間:
問題行動があった場合、1回につき、原則3週間/2週間以内で運用。

判例時報2536

大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文)HP

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