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2022年12月10日 (土)

複数の不動産を一括して分割の対象とする共有物分割と地方税法73条の7第2号

最高裁R4.3.22

<事案>
Xは、他の共有者と複数の不動産を共有していたところ、これを一括して分割の対象とする共有物の分割により、そのうちの一部の不動産につき、他の共有者の持分を取得して、これらを単独所有することになった。
前記の持分の取得(「本件各取得」)に対し不動産取得税の賦課決定処分を受けたXが、Y(東京都)を相手に、本件各処分の取消しを求めた。
地税法73条の2第1項は、不動産取得税は、不動産の取得に対し、当該不動産の取得者に課する旨を規定し、地税法73条の7第2号の3(「本件規定」)は、共有物の分割による不動産の取得に対しては、その括弧書きに規定する「当該不動産の取得者の分割前の当該共有物に係る持分の割合を超える部分」(「持分超過部分」)の取得を除き、不動産取得税を課することができない旨を規定⇒Xは、本件各取得に対しては、本件規定により不動産取得税を課することができない旨を主張。

<原審>
本件規定にいう「共有物の分割」とは、土地については1筆の土地を対象とする共有物の分割をいい、数筆の土地を一括して分割の対象とする共有物の分割はこれに該当しない。
⇒Xの請求を棄却。

<判断>
複数の不動産を一括して分割の対象とする共有物の分割(「一括分割」)により不動産を取得した場合における持分超過部分の有無及び額については、分割の対象とされた個々の不動産ごとに、分割前の持分の割合に相当する価格と分割後に所有することとなった不動産の価格とを比較して判断すべきである。

<解説>
A:全体説
←本件規定にいう「共有物の分割」は民法の「共有物の分割」と同義であると解されるところ、民法において、1個の不動産を分割の対象とする共有物分割(個別分割)の場合と一括分割の場合とで異なる規律が予定されているわけではなく、両者を統一的に解釈するのが素直。

B:個別説(本判決)
持分超過部分の有無及び額については、一括分割の場合であっても、共有物の分割の対象とされた1個の不動産ごとに判断すべきものと解するのが、不動産取得税の課税の仕組みと整合的

不動産取得税に関する地税法の規定の内容等に照らせば、不動産取得税は、個々の不動産の取得ごとに課されるものであるということができる。
民法その他の法令において、「持分」ないし「持分の割合」とは、通常、個々の共有物ごとの持分の割合を意味し、複数の共有物全体における持分の割合を意味するとは解されない⇒本件規定の括弧書き中の「分割前の当該共有物に係る持分の割合」とは、取得された不動産に対応する分割前の1個の共有物に係る持分の割合をいうと解するのが自然

判例時報2532

大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文)HP

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