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2022年12月11日 (日)

複合構造家屋の登録価格の決定の違法と国賠請求

東京地裁R3.3.26

<事案>
A所有の非木造家屋(複合構造家屋) (「本件家屋」)につきY(富山市)の市長が課してきた固定資産税に過納付が生じている⇒Aを相続したXらが、Yに対し、国賠法1条1項に基づき、過納金相当額等の損害賠償を求めた。

<評価>
地税法388条1項、403条1項
評価額=再建築価格(再建築費評点数)×損耗の状況による減点補正率×評点1点当たりの価額
複合建造家屋の主たる構造を基準を基準に基準表が適用されるが、その認定方法としては、①登記簿表題部方式、②低層階方式、③床面積割合方式等があり、全国的な取扱いが統一されていない。

<事案>
Y市長:昭和45年以降、登記簿表題部方式で鉄骨・鉄筋コンクリート造(SRC造)と認定。
Aを相続したXら:床面積割合方式⇒鉄骨作(S造)
⇒本件家屋の主たる構造が誤って認定されてきたことで生じた過納金を、過年度に遡及して返還するよう求めた⇒Yが拒絶⇒国賠請求。

<判断>
固定資産税の賦課処分の客観的違法性の判断基準(最高裁H25.7.12)を示し、国賠法上の違法性判断につき職務行為基準説が妥当するとした上で、
「Y市長による登録価格の決定が 客観的に違法であったとしても、当該登録価格が、価格決定当時の他の自治体の取扱いや裁判所の判断等諸般の事情を踏まえて合理性を否定し難い方法(すなわち、それを採用して登録価格を是正しても、当該市長の職務上の注意義務に違背したとまではいえない方法)により是正されたときの価格を上回らない場合には、職務上の注意義務に違背して納税者に損害を加えたとはいえず、また、Y市長において積極的に登録価格を改めない結果となる取扱いがされたとしても、国賠法上違法とはいえないものと解される」

一般的に合理性を有しない登記簿表題部方式に従った本件家屋の登録価格の決定は客観的には違法たり得るが、同登録価格は、合理性を否定し難い低層階方式により是正されたときの価格を上回らないため、Y市長が同登録価格を是正しなかったとしても、その職務上の注意義務に違反したとはいえない⇒Xらの請求を棄却。

<解説>
国賠法上の違法性について
A:結果不法か
B:行為不法(職務行為基準説)

本判決:
国賠法上の違法性判断につき職務行為基準説が妥当とする旨判示しつつも、
Y市長の職務上の注意義務違反の判断において、本件家屋の登録価格を是正しな取扱いが納税者に「損害」を加えたか否かを重要な考慮要素に位置付けた。
その上で、侵害行為がなかった場合の「原状」と侵害行為により発生した「現状」の差を損害とする差額説に依拠し、登記簿表題部方式を前提に算出された固定資産税(「現状」)と低層階方式を前提に算出された固定資産税(「原状」)との間に差がない⇒納税者には損害は生じていない。

床面積割合方式に従った本件家屋の登録価格の是正は、地税法432条に基づく審査の申出及び地税法434条に基づく抗告訴訟の提起に委ね
国賠法上の違法性判断においては、本件家屋の登録価格を是正しない取扱いにつき、これを正当化する合理的な理由があるかを審理判断すべきものとした。

判例時報2532

大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文)HP

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