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2022年12月30日 (金)

1審無罪⇒控訴審で被告人質問で黙秘⇒有罪認定(刑訴法400条ただし書の違反なし)

最高裁R3.5.12

<事案>
被害者が飲酒酩酊のため抗拒不能であるのに乗じ、同人と性交したという、準強姦の事案

<1審>
被害者が抗拒不能であったことは認められるが、その認識がなかった旨述べる被告人の公判供述の信用性は否定できず、被告人に本件認識があったことには合理的な疑いが残る⇒被告人を無罪

検察官:本件認識についての事実誤認を主張し控訴。

控訴審 職権による被告人質問
弁護人は質問を行わず、検察官及び裁判官の質問に対して、被告人は黙秘。
被告人質問で被告人が終始黙秘
⇒原審で取り調べた実質的証拠は存在しないとしつつ、
訴訟記録及び第1審において取り調べた証拠に基づき、被告人に本件認識があったことは明らかであり、第1審判決の判断は論理則、経験則に反する⇒事実誤認で第1審判決を破棄し、懲役4年に。

被告人が上告
原審が実質的な事実の取調べのないまま第1審の無罪判決を破棄して有罪の自判をしたのは判例に相反する。

<判断>
弁護人の上告趣意は刑訴法405条の上告理由に当たらない。
原判決に刑訴法400条ただし書違反がない旨職権判示して、被告人の上告を棄却。

<規定>
刑訴法 第四〇〇条[破棄差戻移送・自判]
前二条に規定する理由以外の理由によつて原判決を破棄するときは、判決で、事件を原裁判所に差し戻し、又は原裁判所と同等の他の裁判所に移送しなければならない。但し、控訴裁判所は、訴訟記録並びに原裁判所及び控訴裁判所において取り調べた証拠によつて、直ちに判決をすることができるものと認めるときは、被告事件について更に判決をすることができる。

<解説>
控訴審が、事実の取調べを行わないで、第1審の無罪判決を事実誤認により破棄し、有罪の自判をすることは、刑訴法400条ただし書きに違反するという判例法理

●控訴審で実施すべき事実の取調べの内容・程度
A:判例の直接主義・口頭主義を手続保障の要請⇒本件判例法理の根拠を控訴審における手続保障とする理解(手続保障説)
B:判例のいう直接主義を実質的にとらえ、本件判例法理の根拠を、控訴審における人証の取調べに関する直接主義の保障と理解する見解(実質説)
C:本件判例法理の根拠は控訴審において書面審査だけで有罪の認定をすることに伴う危険を防止する政策的配慮と理解する見解(政策的配慮説)

判例時報2533

大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文)HP

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