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2022年11月28日 (月)

固定資産課税台帳に登録されたゴルフ場用地の評価

最高裁R4.3.3

<事案>
ゴルフ場用地に係る固定資産税の納税義務者である原告が、土地課税台帳に登録された本件各土地の平成27年度の価格を不服として下松市固定資産評価審査委員会に審査の申出⇒これを棄却する旨の決定⇒被告(下松市)を相手に、その取消しを求めた事案。

固定資産評価基準:
ゴルフ場用地の評価について、大要、
当該ゴルフ場を開設するに当たり要した当該ゴルフ場用地の取得価額に当該ゴルフ場用地の造成費を加算した価額を基準としてその価額を求める方法によるものとし
②この場合において、取得価額及び造成費は、当該ゴルフ場用地の取得後若しくは造成後において価格事情に変動があるとき、又はその取得価額若しくは造成費が不明のときは、附近の土地の価額又は最近における造成費から評定した価額によるものと規定。
本件各土地及びその周辺の土地は、古くは塩田跡地。下松市長は、本件各土地に関し、本件定めによることを前提に、不動産鑑定士による鑑定の結果に基づき、附近の工場用地に比準する方法により工場用地としていの取得価額を評定した上で、本件登録価格を決定。

<争点>
本件登録価格につき、塩田跡地としての取得価額を評定せず工場用地としての取得価額を評定したことが、評価基準の定める評価方法に従っているといえるか。

<一審・原審>
本件各土地について本件定めにより附近の土地の価額から評定されるべき取得価額は、ゴルフ場に造成される前の塩田跡地の基準年度における客観的時価をいうものと解すべき。
but
下松市長が実施した鑑定によってはこれを求めることができない。
⇒本件決定を取り消すべき。

<判断>
下松市長が附近の工場用地に比準する方法により工場用地としての取得価額を評定しており、塩田跡地としての取得価額を評定していない点について、
土地に係る固定資産税の課税標準となる登録価格は、当該土地の基準年度に係る賦課期日を基準として定めるべきものであるところ、平成27年度の固定資産税の賦課期日である平成27年1月1日において、本件各土地の周辺の土地は工場等の敷地となっていた
②本件定めを含む評価基準は、ゴルフ場用地の評価に際し附近の土地に比準して取得価額を評定する方法として、特定の具体的な方法を挙げていないし、造成から長時間が経過するなどの事情により、当該ゴルフ場用地の造成前の状態を前提とした取得価額を正確に把握できない場合も想定される

本件各土地の価格の算定に当たり塩田跡地としての取得価額を評定しないことをもって、評価基準の定める評価方法に従っていないと解すべき理由は見当たらない。
⇒原判決を破棄し、本件を原審に差し戻した。

自治省税務局資産評価室長が発出した「ゴルフ場の用に供する土地の評価の取扱いについて」と題する通知が、周辺地域の大半が宅地化されているゴルフ場につき本件定めにより取得価額を評定する場合に関し、大要、当該ゴルフ場の近傍の宅地に比準しつつ(宅地としての取得価額ではなく)山林としての取得価額を評定するという、本件各土地に係る下松市長の評定の方法とは異なる方法を挙げている点について、ゴルフ場通知は、基本的には山林を造成したゴルフ場用地の評価を念頭に置くものと解され、また、本件定め等の具体的な取扱いを例示するにとどまる⇒ゴルフ場通知の内容により判断が左右されるものではない。

<解説>
●最高裁H25.7.12:
土地の基準年度に係る賦課期日における登録価格>評価基準によって決定される価格
の場合、適正な時価(正常な条件の下に成立する当該土地の取引価格、すなわち、客観的な交換価値)を上回るか否かにかかわらず、当該登録価格の決定は違法となる。
最高裁においては、専らこの違法事由に関し、本件登録評価に従って算定されたものと言えるか否かの点が争われている。

●下松市長の決定過程:
①「附近の土地」として、ゴルフ場に造成される前の状態の工場用地を把握
②附近の工場用地に比準し、本件各土地の工場用地としての取得価額を評定

①について:
評価額は、賦課期日を基準として定めるもの(地税法249条1項)
賦課期日において厳に存する状況に従って「附近の土地」を把握することが予定されていると解される。

平成27年の固定資産税の賦課期日である平成27年1月1日において、本件各土地の周辺の土地は工場等の敷地となっていたとの本件の事実関係⇒工場用地を「附近の土地」として把握し、これに比準することとすることが、評価基準の定める評価方法に従ったものといえる。

②について:
原判決
vs.
①本件定めによりゴルフ場に造成される前の状態の取得価額を評定するからといって、当該ゴルフ場の造成前の状態としての価額を評定しなければならないというのは飛躍。
②時間が経過し、当該ゴルフ場の造成前の状態を基に取得価額を正確に把握することが困難な場合を念頭にに置くと、合理的な評定に支障を来たすときが来る。

本件定めは、当該ゴルフ場を賦課期日に当時において再度調達するとすれば、取得及び造成の方法でどれだけの費用を要するかという考え方を基礎としているものと解される⇒賦課期日当時において附近に存する工場用地としての取得価額を評定するという方法が自然。

●ゴルフ場通知:
本件定めによる取得価額の評定の方法として、大要、式aの関係が成り立つことを前提に、式bにより(本件のように)周辺地域の大半が宅地化されているゴルフ場に係る取得価額を求める方法を挙げる。
式a:山林の時価+山林に係る宅造費(※)
=宅地評価額×地積×漏れ地以外の土地の割合
※:ゴルフ場と同一規模の山林を宅地に造成する場合に通常必要とされる造成費。

式b:宅地評価額×地積×漏れ地以外の土地の割合ー山林に係る宅造費

ゴルフ場通知は、宅地評価額を山林としての取得価額にいわば引き直す方法を挙げている。
⇒(宅地である)工場用地としての取得価額を求めた本件登録価格に係る評定の方法は、ゴルフ場通知の考え方と異なり、またそれに準じたものともいえない。

●原判決は、塩田跡地としての取得価額を求めていない 点に違法があるとし、その余の点を判断していない⇒更に審理が尽くされる。

判例時報2530

大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文)HP

 

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