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2022年11月25日 (金)

政務活動費の一部を政務活動に該当しない選挙活動等に係る記事も混在した広報紙の作成・配布に係る経費に充当⇒不当利得返還請求等を求める住民訴訟(一部認容)

神戸地裁R3.4.22

<事案>
Xら:兵庫県の住民
Y:兵庫県議会事務局長
Y補助参加人Zら:権利能力なき社団であり県議会における各会派であるA党県議団及びB党県議団と、各会派に所属する県議会議員6名
兵庫県は、各会派に対し、兵庫県政務活動費の交付に関する条例に従って、平成29年度の政務活動費を交付し、各会派はそれぞれ所属議員に対し、政務活動費を交付。
各議員は、それぞれの広報紙を作成・配布し、その経費の支払に広報広聴費として、政務活動費を充てた。

Xら:本件各広報紙には、各議員の宣伝であって県政報告とはいえなない部分があり、本件各記載に対する支出は違法・不正な支出⇒各支出のうち、総額211万7516円を各会派を通して各議員から返還させる措置を求める住人監査請求⇒認められなかった⇒本訴を提起

<規定等>
兵庫県:地自法100条14項ないし16項までの規定に基づき本件条例を定めており、本件条例には会派への政務活動費の交付に関して必要な事項が規定されている。

県議会議長:
会派及び議員が政務活動費に係る請求、執行、収支報告書の提出などの手続を行う際のマニュアルとして「政務活動費の手引」(「本件手引」)を作成して具体的な使途基準を示す。
「政務活動費により県報告紙を発行する場合の留意事項について」という通知(「本件通知」)を発出し、議会活動、政務活動費及び県政に関する政策等について県民に報告し、PRするための記事に政務活動費を支出することができるが、それ以外の活動(政党、選挙、後援会、私事)を報告するための記事には政務活動費を支出することができないことに留意すべき旨や、政務活動に係る記事の例を示す。

<判断>
本件手引や本件通知は本件条例 の会社の指針となる。
会派を通して政務活動費の交付を受けた議員が本件条例の定めに反する支出にこれを充てた場合は、会派はこれらの支出に充てられた部分に相当する額を県に不当利得として返還すべき義務を負う。
・・・広報広聴費として政務活動費が充てられたことが本件条例に反しないかどうかについては、本件各広報紙の作成・配布が、その客観的bな目的や性質に照らし、政務活動及び県政に関する政策等の広報広聴活動との間に合理的関連性を欠くものである場合、当該部分に係る経費に政務活動費を支出することは許されない。

<解説>
地自法100条14項ないし16項に定める政務活動費については、各地方公共団体で条例等が規定。
使途基準としては、
①調査研究費、②研修費、③広報広聴費、④要請陳述等活動、⑤会議費、⑥資料作成費、⑦資料購入費、⑧事務所費、⑨事務費、⑩人件費をもって会派又は議員の活動に資するために必要な経費を定める例が多い。

会派の議員が広報紙を作成・配布したが、県政報告等事項のほか、議員の氏名、役職、プロフィール、写真等の議員個人情報等掲載部分が、選挙活動等の性質を有するもので広報広聴費に該当しないとして争われた。

本判決:
客観的にみて、表現・構成において、県民の県政に対する興味を引いて、県政報告等事項の報告や意見聴取を効果的に行うという観点から工夫されたものであり、かつ、当該掲載部分が県政報告等事項の報告部分や意見聴取部分に付随して一体となっている場合には、広報広聴活動と合理的関連性を有するものであるとして、個々の広報紙の内容を検討。
広報紙作成・配布等に支出した経費のうち、広報広聴活動との合理的関連性が否定される議員個人情報等掲載部分の割合に相当する部分に政務活動費を充てることは違法⇒合理的関連性が否定される掲載部分の紙面に占める割合により返還すべき金額を算出。

判例時報2529

大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文)HP

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